「いっけー!」
「負けるかー!」
学校の帰り道にある公園。
そこから響いてきた子供の声にふと足が止まる。
「ベイブレードか。従兄の勝っちゃんがハマってたっけ」
懐かしいな。
30過ぎて独身の従兄の勝っちゃん。
ベイブレードやらミニ四駆やらハイパーヨーヨーやら教えてくれた勝っちゃん。
そんなんだから嫁さん貰えないんだねって姉ちゃんに言われてガチ凹みしてた勝っちゃん。
元気かなぁ。
「わ、私もま、交ぜてくれる、かな?」
「ん?」
独身貴族の従兄に思いを馳せていると、小学生たちの元に一人の女性が近付いていた。
ボッサボサでもさい黒髪。
BonBonという文字が入ったダサい白Tに黒ジャージ。
「おばさん、誰?」
「怪しい人だなー」
「Tシャツダセー」
「おば?! あや!? ダセェ?!?!」
容赦の無い子供の声にダメージを受けている女性。
黒縁メガネとモサい髪で片側隠れた目が怪しくダサい印象を強くしてる。
んー、美人っちゃ美人だが俺から見てもおばさんだなぁ。
「せ、せめてお、お姉さん、と呼ん、で?」
「えー、でも母さんと同じくらいだよ?」
「ボクのママより年上かもー?」
「髪型もイモ臭くてダセー」
「ぐっはぁー!!!」
ボディブローを食らったボクサーの様に身体をくの字に曲げる女性。
ぶるんッとめっちゃ揺れたな。
90以上無いか? あの胸。
「そ、そう。そ、それなら、それでいい、けど、ま、交ぜてもらっても、いい?」
足ガクガク言わせて、黒縁メガネの奥の瞳に涙を浮かべながら再度交ぜてとお願いする女性。
正直めちゃくちゃ怪しいので警察に連絡しようか悩んでる。
しかし、従兄の勝っちゃんのようにいい歳して友達もいない人なのかと思うと可哀想な気がしてなんとも。
あと乳尻デカくてエロいからもう少し眺めていたい気持ちもある。
「えー、どうするー?」
「いいんじゃない? なんか可哀想だし」
「いいよ、交ぜてやるよ。乳デカダサTおばさん」
おお、心優しいお子達だ。
最後の子とは仲良くなれそうだ。
「あ、ありがとう、えへ、えへへ」
「おばさんはどんなベイ持ってるのー?」
「大人だからレアなヤツー?」
「レアでも使いこなせなきゃ意味ないぜー?」
子供たちの輪の中に入れた女性をもうしばらく見守ろうと、少し近づく。
大人を交えても変わらずワイワイはしゃぐお子達。
そんな子供たちを見る女性の視線は、どこか優しい。
ただの子供好きなおば、お姉さんなんかな?
そう思いながらお姉さんとお子達の様子を伺う。
「べ、ベイブレードはも、持ってない、よ。わ、私のは、こ、これ、だよ」
「なにそれー?」
「見た事ないよー?」
「変なもん持ってんなー、ケツデッカBBA」
お姉さんの出てきた独楽はベイブレードではなかった。
あの形状は…………?
「ふ、ふふふ。ま、まあまあ、しょ、勝負、しよー、よ?」
「うん、まあ、いいけど……」
「そんな変なので勝てるのー?」
「負けたらその乳揉ませろよばあさん」
困惑しつつもベイブレードを構える子供たち。
そんな子供たちを先程のように優しい視線を送るお姉さん。
うーん、負けたら止めに入るか。
乳揉ませるのは流石に、ね。
「いっくぞー!」
「勝負だー!」
「ゴー…………!」
「「「シュー……!」」」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「「「「えええぇぇぇぇぇぇぇ?!」」」」
吃りまくっていたお姉さんの猛々しい雄叫びに驚く俺とお子達。
いや、死ねって、貴女……?
「ああ! ボクのベイが!」
「ボクのも!?」
「オレのルシファーが!?」
俺の戸惑いを余所にお姉さんのベイ、いや独楽が子供たちのベイを吹き飛ばす。
あの叫びに相当な負の念が詰まっていたのか、禍々しい雰囲気を纏ってるように見えるな。
「ふ、ふひ! ふひひひひ! み、見たかぁ! な、何がベイブレードだ!わ、私のバトルトップの方が強いんだぁぁぁ!!」
バトルトップ?
それがあの独楽の名前か?
いや、しかし怖いな。
子供たち、めっちゃ怯えてんじゃん。
「バトルトップ! そしてすげゴマ! その2つのノウハウがあったからこそベイブレードは売れた!そうとも! ベイブレードは大人気だった!私も好きだったよ!愛のアスリート!ドラグーン!ドランザー!ドラシエル!ドライガァァァァァァ!!」
「ひぃぃぃぃ!」
「何なのこの人ー!」
「母ちゃーーーん!!」
「だけど!だぁけどねぇ!! 人気が無いからって! 失敗だからって!! バトルトップやすげゴマがベイブレードより弱いなんて誰が決めたぁぁぁぁ!! コロコロよりボンボンが下だなんて、誰が決めた! だァれが決めたんだぁぁぁ!!!!あ゙ぁ゙ん゙ッ!!」
「うわぁぁん! うわぁぁん!」
「怖いよぉ! 誰かー!」
「ひぃぃ!妖怪乳デカに食べられるぅー!」
いかん。お子達がガチ泣きしてる。
これ以上は本当に警察案件だ。
「お子達! 逃げろ!」
「あ゙ぁ゙ん゙ッ!? 誰だキミはぁ! 君もベイブレーダーかぁ!! コロコロの愛読者かぁ!! 」
今にも子供たちに襲い掛かりそうなお姉さんを羽交い締めし、子供たちに逃げるように促す。
肩越しに俺を睨んでくるお姉さん、というかバーサーカー。
すっげぇ力だな、おい!?
あと臭ぇ! なんかこう、雌臭ぇ!
あ、やべ。
ちょっと息子か起き上がりそう。
新しい扉(性癖)が開きそう。
「は、早く逃げろぉ!俺が目覚める前にぃぃぃぃぃ!!!」
「ぐぉおおおお!! はぁなぁせぇぇぇぇぇ!! コロコロ好きに負けるものかぁぁぁぁぁ!! ボン太くん! Bゴン! 私に力をォォォォォォォ!!」
「ちょァァァァァァァァァ!? 動かすな! そのデカい尻を動かすなぁぁぁぁ! マジでヤバいから!今はマジでやめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「うわぁぁぁん! 変態が増えたぁぁ!」
「もうやだぁぁぁぁぁぁ! 」
「変態カップルの特殊なプレイぃぃぃぃ!!」
不名誉な事を叫びながら逃げていくお子達を訂正する余裕なんぞ無く、俺はお姉さんと開きそうになる扉を抑えるのに精一杯だった。
「いくぞぉ! マキシマムプァウワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「ぎゃあああああああああ! なんか力上がったぁ!? てか胸ぇ! 柔らかい感触が腕に当たるぅぅぅぅ!? 嫌だ! こんなワケの分からないラッキースケベは嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
これが俺と、『ボンボン大好き陰キャニッチお姉さん』との出会いだった。
コロコロよりボンボン派です。