後遅くなってすみません
俺とカーリーはいつも通り護衛をしていた筈だった...まぁちょこっとだけいちゃついたりはしたが...
まぁそんないつもの日常だったけど...どこかイヤな予感がした...俺はその場をカーリーに任せて少し席を外した...頭を冷やすという建前でな
そして俺はカルメンの部屋の前にいた...そして聞いてしまったんだ...
「——なんでっ!なんでっ!!」
「......ごめんね...私も......全力は尽くしたんだけど...」
エリサの泣き声が部屋中に響く...後に聞いた情報によるとエノクが実験の事故で死んでしまったらしい...
「うぅっ!!!...エノクッ!!...エノクゥ!!」
「.....................」
この時の俺は割り込んで入る度胸はなかった...ただただ盗み聞くだけ...それしか出来なかったんだ...
咽び泣いていたエリサがゆっくりと口を開く...そしてその目には小さな憎悪が宿っていた
「あんたが...あんたが死ぬべきじゃないの!!なんで...なんでエノクなのよ!!」
その言葉を聞いたカルメンは...表情を暗くして俯き、こう言った
「そうね......私も...そう思うわ...」
俺は確信した...あのクソッタレな地獄の都市で長年生き抜いた俺だから分かるんだ...俺はいろんな奴の感情を声だけで分かる...いくら掠れる様な声でもな......そして分かったんだ...エリサのあの言葉は単なる怒りに任せたでたらめかもしれない...けど——
——カルメンのその言葉だけは...全部本心だったんだ...
それから俺は部屋の中で煙管を吸いながら考える
「.................」
「悩み事か、ヌベス?」
「...あぁ」
悩み込んでいる俺にカーリーが話しかけてくる...そして俺は少し頷いて、煙を吐きながら話す
「フゥー...エノクの件を聞いたか、カーリー?」
「..............」
カーリーは顔をしかめて言った
「あぁ...それを聞いた時は何かの間違いかと思った...けど間違いじゃなかった...現実であり、悲しい事故だった...」
「......そうだな」
カーリーは火をつけて煙草を吸い、俺は煙管を吸う...そんなヤニ臭い空間に沈黙が続く...
そして俺はふと呟いた
「あの中で一番悲しんでいるのは...カルメンだろうな...」
「...なんでいきなりカルメンの事を?」
俺は煙管の煙を吐きながら答える
「...少し盗み聞きした...お前がこの事故を知る前にな」
「............そうか」
カーリーの問いかけに俺は煙管の灰を捨てながら答えた
「お前も知ってるだろうけど、俺は人の感情を声だけで分かる...長年あのクソッタレの都市で生きたせいでな」
「......それで...カルメンはどんな感情を抱いているんだ?」
その質問は...答えるべきなのかは分からなかったのかもしれない...けど俺は深く息を吸って答えた
「あいつは...
「—————ッ!」
カーリーはその言葉に不意で煙草を落としてしまった...俺はそんな不安がっているカーリーを冷静に落ち着かせる...
「落ち着け、少なくとも死なせない様にするさ」
「ヌベス......」
「言いたいことは分かる...うし、先に行ってるぞ」
そう言いながら俺は護衛を再開の為に歩き出して、カーリーもそれに続くように俺の後ろをついて行った...
カルメンの自室
「...私も......落ちぶれちゃったな」
カルメンがソファの上で寝そべって天井を見ながら呟く...
「......痛い」
カルメンはそっと自身の左手に巻かれた包帯を取る...そこにはまだ新しく、そしてまだ血が出ている無数の傷痕が切り刻まれていた
「...やっぱりカッターは痛いなぁ...でも死ぬならせめて...あの子の分まで苦しんでおかなきゃ...」
カルメンのいつもの赤く光っている目はもう見る影もなく、ただただ赤暗い虚な目になっていた......
カルメンはそんな虚な目で自信の傷をただ眺める...
「......あの子の...言う通りなのかもね」
「あんたがっ...あんたが死ぬべきだったじゃない!!!」
「....................」
エリサの言葉がカルメンの頭の中で呪いの様に根付いてくる...カルメンはそれを受け入れるしかなかった...
カルメンの自虐行為はは...彼女の実験で亡くしてしまったエノクの為の贖罪である事だ...
「..................」
コンコンコン
「...今行くわ」
カルメンは左手の傷に包帯を巻き直してから扉の方へ向かう...ドアを開けるとベンジャミンが立っていた
「あっ...!ベンジャミン、どうかしたの?」
カルメンは左手の包帯を隠しながら極力いつも通りに接してベンジャミンに話しかける...
ベンジャミンをはどこか残念そうな顔をしていた
「...?どうしたの?」
「......カルメン...その—–」
ベンジャミンがゆっくりと口を開いて話す...そしてカルメンは衝撃の事実を知る
「落ち着いて聞いてくれ...実は—–」
—–エリサが行方不明になった
「え.........?」
それを聞いたカルメンは...ただ絶望した
冷や汗が止まらない...
息が荒くなる...
これもまた自分のせいだと...そう頭で呪詛の様に唱える...
「......ぁ...ぁ...」
「カルメン...私もすごく悲しい事だと思う...もうこれで2人も失ってしまったのだから」
(やめて...掘り下げないで...)
「でも実験の過程の中で犠牲も必要だと思うんだ...私は」
(お願いだから...やめて...やめて...)
「だからカルメンも—–」
ベンジャミンがそう何かを言いかけた時に、誰かが彼の肩を掴む
「.......え?」
「ベンジャミン?ここはちと俺に任せてくれねぇかな?」
そこにはヌベスがいた...今日もいつも通り護衛で会う時間は少し遅い時間のはずなのに...それでも彼はそこにいた
ベンジャミンは戸惑いながらヌベスに聞く
「なんでですかヌベス...私はカルメンの事を思って—–。」
ベンジャミンが再び言いかけた時にヌベスは口を開く
「大丈夫大丈夫...俺に任せとけって...自慢出来ねぇ事だけど、こういう事は結構慣れてるからな。」
ベンジャミンは少し黙り込んだ後に、振り向いて歩き去って行った
「邪魔をしてしまいましたねカルメン...私はそろそろアインの所へ戻らないといけませんから...」
そう言いながら彼はそのままカルメンの部屋の前を後にした...
こうしてヌベスとカルメンの2人だけが残り、沈黙が流れる...そしてカルメンは喋りながらドアを開ける...
「...入る?」
「...おう、邪魔するぞ。」
そう言いながら彼は最低限の礼儀を踏まえてきちんと身を整えて部屋に上がる...そしてテーブルの椅子の上に座る
「それで?なんで私の部屋に来たの?...浮気だったりして〜」
カルメンは普段通りの声で冗談を飛ばしながら話す...だがヌベスはそれを見越して彼女を鋭い目つきで見る
「.......やっぱり誤魔化せない?」
「当たり前だ...こちとらあんたと似た様な顔をした奴を何人も見てきてんだ...後浮気なんてぜってぇするか。」
カルメンがコーヒーのカップに注いでヌベスに持っていく...そして席について彼に尋ねる
「あなたは...この痛みをどこまで知っているの?」
そう言いながら彼女は自分の手で胸をギュッと掴む...そして左手をテーブルの前に置いて少しずつ包帯を取る...
「.......ふむ」
ヌベスはその傷を見ながらその質問に少し考え込む、そして見上げてヌベスは口を開く
「...人を失う気持ちは
そう言いながらヌベスは煙管に火をつけてそれを吸う
「スゥー...ハァ...こっちは長年フィクサーやってきて...何人もあんたと似た様な奴らを見たことがある...けどな—」
ヌベスは煙管を手に持ってその鋭い目つきでカルメンを見つめながら続ける
「あんたはまだ希望がある...俺の長年のフィクサーとしての勘がそう言ってるんだ...俺の勘を信じろ、そして
それを聞いたカルメンは左手の傷を見つめながらその言葉を飲み込む...そして少し不器用ながらも笑みを見せた
「ありがとう、ヌベス......でも私は辞めないわ」
「...そうか...それはなんでだ?」
カルメンは再び左手の傷を見ながら話す
「私は...あの子を殺した...それが事故だろうと関係ない...殺したっていう事実で充分なの......そして私はこの罪を背負いながら生きていく自信がないの...」
「...そうか」
カルメンはヌベスの止めようともしない態度に少し笑ってしまう
「止めないのね...?」
「やめろと言ってあんたはやめるのか?」
「ふふっ...いいや?」
「じゃあ止めようとするだけ無駄だ...カーリーだったらこうはしないかもだけどな...」
「...ヌベスらしいわね」
「そうか?...まぁあんたが言うならそうかもしれないな、ふっ」
ヌベスは最後に煙管を吸ってその灰を灰皿に捨てた...そして立ち上がって灰皿を持った
「わざわざ
「いやいや、全然!...どうせ私はすぐ–『カルメン』」
カルメンが何かを言いそびれた後にヌベスがそれを遮って何かを話す
「?...どうかしたの?」
「...頼むから...出来る限りそんな"死ぬ"なんて言葉は使わないでくれ...いくら事実でもあんたには似合わねぇからな」
「......うん」
「分かってくれて何よりだ」
そう言いながらヌベスは扉の方へ歩いて、最後にカルメンの方へ振り向く
「またな...まぁ、多分もう会えないけどな」
「...うん...またね...」
そう最後かもしれない挨拶を交わした後にヌベスが歩き出そうとした時
「待って—」
カルメンがヌベスを引き留めた
「...なんだ?気が変わったか?」
「そうじゃないけど......ヌベス、あなた含めてカーリーに伝えて...」
「...いいぜ、言ってくれ」
カルメンは深く息を吸って、少し微笑んでヌベスに何かを伝える
「————————————————」
それを聞いたヌベスは少し目を見開いた後笑みを浮かべた
「ふっ、そんな事かよ...あぁ、分かった...約束するさ」
そう言い残してヌベスはその場を去っていった...これが彼女との最後のやり取りだと知った上で...ヌベスは彼女を止めずにその場を去った...
ヌベスとカーリーの自室
「...そうか、カルメンが」
「あぁ......俺を責めるなら責めてくれ...止められなかったのは俺の責任でもあるからな...」
それを聞いたカーリーは少しだけ怒りの表情を見せた...俺は腹を括ったがカーリーは煙草に火をつけて責めも殴りもしなかった
「別に責めはしないさ...カルメンがそう望んだのなら私は否定しない...」
「......そうか」
「それに、止められなかったって言ってるお前も...結局はカルメンの望み通りにしてやったんだろ?」
「当たりだ...流石相棒だな」
「...今はもう恋仲だろボソッ」
「ハハッ、そうだったな」
カーリーの小声を指摘されてカーリーは顔を赤らめる...咄嗟に拳骨をかまされそうになったが俺は容易く避けて笑った
しばらく茶番を続けるが...やはりカルメンの事が忘れられない...俺の考えじゃ笑って少しの間だけでも忘れられると思ったんだがなぁ...
「......なぁ、カーリー」
「......何だ?」
「俺は...最善の選択をしたのだろうか?」
それを聞いたカーリーは眉を少し寄せて少しイラついた...その理由は分かってる...俺がまた自分を責める...俺のそんな悪い癖にイラついてる事を俺は知っている
「いや、忘れてくれ...これは俺が悪かった......俺はもう寝る」
そう言って椅子から立ち上がって自分のベッドに寝転がる...すると後ろからカーリーが優しい口調で話す
「お前が最善だと思うならそれでいい...その最善かどうかは私にも分からないからな...」
そう言いながらカーリーは俺のすぐ真後ろに近づいてきて耳に囁く
「おやすみ...ヌベス...チュッ」
カーリーは不意打ちで俺の頬にキスをする...俺は目を見開いて起き上がり振り向くとカーリーは既に布団に包まっていた
「...はぁぁぁぁぁ(可愛いけどこういうトコあるよなぁ...)」
俺は溜め息をついて頭を抱えた後、再びベッドに寝転がって眠りについた
真っ暗だ...
何も見えない...
ここは一体...どこだ...?
そう呟きながらゆっくりとその暗闇の中を歩く...途方もない暗闇を歩き続けると、研究所のみんなの死体が転がっている...
「何だよ...コレ...」
そう思いながらさらに奥へと進む...そしてそこには疲弊して膝をついているカーリーがいた
「カーリー...?」
カーリーは俺のことが見えていない様だった...そしてカーリーの目線の先を見ると、黒と金色の衣装で不気味な笑顔をした謎の人物がいた...俺はそれに少し見覚えがあるがよく見えない
そう思いながら見つめると、カーリーは立ち上がって突然飛び出す
「おい!カーリー!」
ガキィン!
俺の声は届かず、カーリーはその人物と激しい戦いを繰り広げる...俺は止めに出ようとするが身体が動かない...まるで鎖に縛られたように動けず、その戦いを見つめるしかなかった
「カーリー!やめろっ!」
俺は声をかけるがカーリーは耳を傾けず激しい戦いを続ける...そして不気味な笑顔をしたその謎の人物がカーリーの腕をもぎ取った
「っ...ぁ....あ....」
そして最終的にカーリーは殺された...俺の目の前で...謎の人物が俺の絶望を嘲笑うかの様にニヤリと笑った...
俺は激しい怒りを覚えて、俺は咄嗟に身体が動く
「お前は...てめぇだけはっ–!!」
俺はE.G.Oを発現させて奴に飛び出す...
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「てめぇはぶっ殺-!!」
俺は叫びながら自分の
「カー...リー......?」
「...起きたか、ヌベス?」
カーリーは俺の咄嗟の行動を冷静に対処する...冷や汗が止まらず、呼吸が荒くなる...そう感じながら自分の身体を見るとほぼ身体の半分がE.G.Oを発現させていた...
カーリーは溜め息をつきながら頬のかすり傷を拭い、話す
「さすがの私もびっくりしたよ...お前がうなされていて起きてみたらそのザマだ...もしやと思って身構えていたが...私の判断は間違ってなかったみたいだ」
俺はハッと気がついてカーリーに近づき、頬の傷を確認する
「わ-悪い...お前だと思わなくて...本当に悪かった!」
俺が焦り気味でそういうと、カーリーは頭をかきながら答える
「ただのかすり傷だから平気だ...それよりだ、ヌベス」
カーリーは早速本題に入って俺を鋭い目つきで見つめながら俺に問う
「何でうなされてたんだ?」
「...それは—」
全て話した...夢の中で研究所のみんなが死んでいたこと...謎の人物がカーリーと戦ってカーリーが目の前で殺された事......俺はそれに怒りを覚え、そいつを殺そうとした事...
「——ってな訳だ...ハァ、嫌な夢だった」
「......そうか」
カーリーは優しい口調で俺を撫でる
「安心しろ...私はそんな事でくたばる奴じゃない...そんな事はお前も知っているだろう?」
「.......そうだな」
俺はベッドから起き上がって、少し伸びをしながら自分の冷や汗を思い出す
「うわ、びっしょりじゃねぇか......少しシャワーを浴びる...嫌な夢をこの冷や汗と一緒に洗い流したいからな」
「分かった、私は朝食をとりに行ってくる」
「おう、ありがとさん」
そうしてカーリーは部屋を出て、俺はシャワー室へ入ってシャワーを浴びる
「................」
結局...奴は誰だったのだろうか...あの不気味な笑顔を思い出すだけで腹の底から憎悪が込み上がってくる
「...あいつの特徴...どこかで聞いたことがあるんだよなぁ」
黒と金色を身にまとった不気味な野郎...そしてその特徴をどこかで聞いたことがあった...だが今はそんな事はどうでもいい
「そろそろ上がるか...」
シャワーのお湯を止めてタオルを手に取り、身体の隅々を拭いていつもの衣装を身にまとった
「ふぅ...すっきりしたぜぇ」
「あ...ヌベス」
俺がシャワー室から出て気が付くとカーリーが戻っていた...だがカーリーはどこか暗い表情をした
「どうしたカーリー?そんな暗い顔をして...」
「......カルメン」
「っ......そうか」
カーリーは表情をさらに暗くする...そして俯きながら言った
「カルメンの部屋の浴槽で遺体が発見されたそうだ...その浴槽の水はカルメンの手首から出てる血で染まって真っ赤で...そこに浮かんでいたみたいだ」
「......その情報は誰からだ?」
「アインと...ベンジャミンだ...」
「...そうか」
俺もつられて顔を暗くしながら食事を口に運ぶが、味がしなかった
「...メシが不味くなったか?」
カーリーがそう聞くと俺は溜め息をつきながら頷いて煙管の火をつけて立ち上がる
「今日はメシ抜きだ...行こうぜ」
「...あぁ」
俺が扉に手をかけて出ようとした時、思い出したかの様に立ち止まって振り向く
「なぁ、カーリー」
「今度は何だ?」
俺は息を吸ってカーリーに伝えた...あの時カルメンに託された事を
「カルメンの奴 "改めてお願い...研究所のみんなを...ここに居るみんなを守って" ...だとよ」
カーリーはそれを聞いて目を見開いた後に俺より前に進む
「当たり前だろ、そんな事」
「あぁ、同感だ...それじゃ行くか」
俺はカーリーと共に扉を開けて歩き出す...そしてまた同じ護衛の仕事を...カルメンが残していったものを護り続ける...それだけだ
......だがコレから起こる厄災を...俺達はまだ知らなかった