都市の右腕   作:プティパット

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遅くなってすまねえ......

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アンゲロス、そして地獄

 

研究所へ戻り、戦い...というより殲滅をして疲れ切った身体を休ませる為にシャワーに入った後にベッドに寝転ぶ俺...そうしてふとイオリの言葉を思い出す

 

 

怒りを向ける先を間違えれば破滅へと向かうよ...覚えておきなさい

 

 

その言葉はもしかしたら間違ってはいないのかもしれない...現に俺は抑えられぬ怒りのせいでミョを殺しかけた...マキシムが奇跡的に止めていなかったら...俺は——

 

 

「はぁ...疲れた...」

 

 

考えに浸っていた俺は今までの疲労が溜まっていた為、すぐに眠りに落ちてしまった...

 

 


 

 

「お願い、ここの人達を守ってあげて.......あなた達が居てくれたら心強いわ」

 

 

また...この夢だ...

 

 

「っ...私だって...私だって...!カルメンやみんなの力になりたかったの!...なのにっ...なのにっ—」

 

 

 

目の前でみんなが死んでいく...

 

 

「もうどうすることもできないんです...私は...私は—」

 

 

..................

 

 

「頼むから...邪魔はしないでくれ......カルメンのために出来ることはこれしか無いんだ...」

 

 

いつまで...続くんだろうな...

 

 

「私はそれでも...お前を......愛して...いたから...」

 

 

そうしてふと見上げると、ガリオンが不気味な笑顔で近づき、なくなった俺の左目を無言で抉り始める...夢のはずなのに...痛みが広がる...

 

 

...ああ——

 

 

——痛い...苦しい......みんな...行かないで...

 

 


 

 

「——ッッッ!!...ハァッ、クソッ......」

 

 

俺は目を覚ましてガバっと起き上がる...頬を伝って冷や汗が流れるのを感じる...

 

 

「チッ......煙草...」

 

 

俺は煙草を咥えて火をつけた後にゆっくりとベッドから降りて立ち上がる...あの夢のせいで吐き気や目眩がするが、俺は着替えて今日もまた護衛を続けるために部屋を出て歩き出した...

 

 


 

 

そうしてアインがいるであろう場所に到着する...そこにはベンジャミンと、もう1人、扉の窓からうっすら見える人物がいた...顔は蒼白く、水色の長い髪、そして黄色に輝く瞳...俺がこの前みた()()()()だ...

 

俺は壁にもたれながら会話を盗み聞きする...

 

 

「本当に似てませんね」

 

「..............」

 

「でもアインさん、あなたにもはっきり分かってたじゃないですか...それともあなたは1番のボタンを押せばいちご味のソーダが出てくる自販機みたいなのが良かったんですか?」

 

「......そうかもな」

 

「じゃあ名前くらい決めてくださいよ...そんな顔しても、何も変わりませんよ。設計者が名前を決めるルールじゃないですか」

 

「はぁ...こんな出来損ないの名前なんか、お前が好きにしろ」

 

「僕に押し付けないでくださいよ...設計者はあなたなのに」

 

 

そうベンジャミンが言うとさらに重い溜め息を吐きながら、扉を開いて機械に言う

 

 

「お前は地獄に閉じ込められた俺達を引っ張っていく為だけの機械...アンゲロス...()()()()()

 

 

アンジェラはその黄色く輝く瞳でアインを見つめて、呟く

 

 

「アイン...あなたは笑顔が温かい人でしたね」

 

「...結局、たかが機械だ」

 

 

そう言いながらアインはすれ違い様に壁にもたれていた俺を通り過ぎる...気づいていないかどうかは分からなかったが、俺を視界の中に入れずに無視していたことは確かだ...

 

 

「...そこに居るのは、ヌベスですね?」

 

「え?...あ、ヌベスさん...いつの間に...」

 

「気づくのが遅いな、ベンジャミン......そこのきか——...っと、アンジェラだったな」

 

「ヌベス、ベンジャミン......私は、何か間違えてしまったのでしょうか?」

 

 

アンジェラのその言葉にベンジャミンは焦り気味に答える

 

 

「分かってくれ...あの方はまだ準備が出来ていないだけだ......ちょっと時間が必要なだけだから、心配しないで」

 

「ベンジャミン...一つ訪ねても良いですか?」

 

「うん。僕に答えられることなら何でも」

 

 

アンジェラはゆっくりとベンジャミンの方を見て、話す

 

 

「私には、全てが遅く見えます...あなたやヌベスさんの動きも、私自身までもが...遅く見えるのです......まるで体が考えに追い付けていないような感じがするんです」

 

「......なるほど、だからさっきベンジャミンよりも先に俺の存在に気づいたんだな」

 

 

ベンジャミンがゆっくりと口を開いて、アンジェラの回答に答える

 

 

「......それはアンジェラ、時間を1()0()0()()遅く感知できるように設計したからだよ」

 

「は!?!?100倍!?」

 

 

俺は驚きのあまりに声を漏らしてしまう......それもそうだ、時間を100倍も遅く感じようもんなら、動き自体は読めるが体が追いつけないまま、その100倍も遅い自分の思考で気が狂うってもんだ

 

 

「......どうしてですか?」

 

「これからやるべき事を進めていく上で様々の非常事態が起こると思うんだ。そしてアンジェラ、君がそんな状況に対処しなきゃならないだろうし...それに君は()()()()()()()()()()()()()()()事になるだろうね......」

 

 

その説明を聞いて俺は痛々しい表情をし、冷や汗が流れ出る...見る物、見た物全てを覚え続けるなら...俺の場合はあの時の...カーリーの事を......永遠に思い出す事になるのか...

 

 

「?...どうしたんですか、ヌベスさん」

 

「いや......気にしないでくれ...」

 

 

そう俺が答えると、ベンジャミンは少し疑問に思うが、アンジェラの方へ向いて彼女の回答を待つ

 

 

「そうですか。私の担当する仕事は何ですか?」

 

「......もうじき分かると思——...いや、君にとってはもうじきじゃないだろうね......ごめんね、アンジェラ」

 

「何故謝るのです...?」

 

「僕たちがあの方と君に悪いことをした気がしてならないから......」

 

 

時間を100倍も遅く感じる...これがどれほど待ち遠しく、そしてどれほど苦しくて狂ってしまいそうな事なのか......考えてみるだけでもヤバいか俺には分かる...

 

 

「さあ、僕が教えてあげる。この会社と都市についてね——」

 

 

そうしてベンジャミンはアンジェラに教える...都市のフィクサーや掃除屋達が吐瀉物にまみれながらそれらの物語を編み出す事.....外郭について、都市の巣や...他の翼について...そしてそれらを変えるのが、ロボトミー社だと.....

 

 

「——だからこそ、君にはやるべき事がたくさんあるんだ」

 

「......分かりました、それでは」

 

 

そうして、アンジェラは()()を渡された後に歩み去っていく...そしてベンジャミンは俺の方へ振り向く

 

 

「待たせてしまいましたね、ヌベスさん......もしかして——」

 

「決まってんだろ......あいつらに会わせろ。...ちゃんとやったんだろうな?」

 

「はい......ですが、もう少し準備が必要です...」

 

 

俺はその言葉を聞いて怒りを覚え、胸ぐらを掴んで冷たい視線を向けた後に告げる

 

 

「約束したはずだぞ、アイツらに会わせてやるって......そう承諾したのはそっちだろうが!!」

 

「うっ...ぁっ......ヌ-ヌベス...さん、分かって......ください——」

 

 

ドンッ!!

 

 

俺は片腕でベンジャミンを持ち上げて壁に押さえつける...

 

 

「っっ......!!」

 

「......さっさとその準備とやらを済ませろ...じゃなきゃ俺は......もう抑えられねえ」

 

 

「......分かり...ました」

 

 

ベンジャミンがそう告げた後に俺はベンジャミンを投げるように下ろした後...その部屋から歩み去っていった

 

 


 

 

———数日後...

 

 

いつもの悪夢に悩まされる日々が続きながらもロボトミーコーポレーションを乗っ取ろうとするならずもの達を追い返す......まあ大抵は殺しているが...

 

それはそれとして、俺は研究所の廊下を歩いていると、ふとこの間のアンジェラと、彼女を設計したアインの会話が聞こえる

 

 

「——どうしてあなたは私をちゃんと見てくれ無いんですか。いつも背を向けたまま......」

 

「機械は機械らしく。疑問を持つな...」

 

「それならどうして私は疑問を持てるように設計されたんですか?......どうして人工知能倫理改正案を破ってまで、私を作らないといけなかったんですか?」

 

「...どうしてあなたの知っている()()()を模倣して作る必要があったんですか?......私はこんなにあなただけを見つめていたのに」

 

 

 

アインは目を背けながら憎悪と嫌悪を混ぜたような声でアンジェラに話す

 

 

「見るな。話しかけてくるな。......お前は()()()じゃない、ただの()()だ」

 

 

そう言い残してアインが歩み去った後、俺は静かにアンジェラに歩みよって、ただ肩を撫で下ろす......この2人が言っていたあの人は、おそらくカルメンの事だろう...

 

 

「ベンジャミンの奴はああ言っていたが。アイン...アイツはカルメンが死んじまってから、変わっちまった......」

 

「......ヌベス、一ついいですか?」

 

「なんだ?言ってみろ」

 

 

アンジェラは静かに溜め息を吐きながら、悲しみを帯びた目で俺を見つめる... その目は俺が知っている義体や機械の目ではなかった.....

 

そのまま彼女は続けて俺に質問する

 

 

「ヌベス、...私は機械として生まれた事がいけないのですか?」

 

 

その質問に俺は少し考え込む... そして口を開く

 

 

「そうかもな......だが少なくとも、俺はそうじゃない」

 

「理由はなぜです?」

 

「さあな、...けどお前がどんな存在かはお前自身で決めればいい......機械だの人間だの、そんな事はどうだっていいさ」

 

「それなら、私が良い心を持とうとすれば......。あの人も振り向いてくれるでしょうか?」

 

 

その言葉に、俺は少しだけ笑みを浮かべて頭を撫でる

 

 

「そん時は自分で確かめろ。けど、やる価値は充分あると思うぞ?」

 

 

アンジェラはただ俺の手のひらが少し安心を感じたのか、少しすり寄った後に離れる

 

 

「ありがとうございます......私はあなたを信じてみます、ヌベス」

 

 

そう言って彼女は離れた...俺は手を振って見送った後に呟く

 

 

 

 

 

「...なあ、アインよ......お前はいつ、地獄から救い出されるんだ?...俺はもう......みていられる自信がねえ」






うーん...時系列が少しおかしいな......まあT-社のせいって事にするか()
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