16区裏路地のハルのアパート
「ゆっくりしてってね、ヤン君!...少し散らかってるけど」
「いえいえ、こちらこそ入れてもらってすみません」
冷蔵庫からリンゴジュースと炭酸水を取り出してコップに入れ、その2つをブレンドして出来た物をテーブルに置く
「ありがとうございます」
「気にしないで〜、流石に客人におもてなししない程ひねくれちゃいないよ」
「......業務はサボったり、規律違反したりしてるのに」
「痛いトコ突くね〜......アハハ」
そうしてしばらく時間が過ぎていき、ヤンはふと思った事を口にする
「そういえばハル先輩。どうして盾なんか持ってるんですか?」
「え?...あぁ、これ?」
「はい、...僕達人差し指の戦い方は自身の能力を解禁して戦う能力で、その工程の中でも特に速度が最重視されてるはずです......盾なんか使ってたらスピードも鈍くなって、かえって邪魔では?」
「......そういえばまだ話してなかったね」
「.......?」
ハルは自分の盾を持って膝に乗せ、我が子の様に扱う...そしてハルは盾を持つ理由を話す
「私ね、人差し指になる前はフィクサーだったんだ」
「フィクサー...ですか?」
「うん!思えばあの時が一番苦労した頃でもあったかな〜」
ヤンはジュースを飲んで首を傾げながらハルに別の質問をする
「ちなみに......階級の方は?」
「ふふんっ、驚かないでよ〜?......なんと一流の
一級フィクサー......それはフィクサーの階級の中ではトップクラスであり、都市の星の依頼を受ける権限もあり、何よりもそこまで這い上がったのであればハルは相当な実力者であることがわかった
「すごいじゃないですか!」
「でしょ〜?
「ああ。どおりで盾を...」
ハルはジュースとお菓子をちびちび食べながら盾に触れて、そのまま思い出話を続ける
「ヤン君、今度はなんで辞めたのか聞きたいんでしょ?」
「!......よく分かりましたね」
「ヤン君がこの質問し始めた時からこの質問する事は大体わかってたよ......そうだね〜」
ハルはコップをテーブルの上に置き、そして見上げて表情を暗くしながら話す
「まだツヴァイ一課にいたの頃、みんなから尊敬の象徴でもあった私はこの盾を使ってみんなを守ってきた...仲間も私に依頼してきた人も全部、私が守ってきた......でも——」
——
「あの日以来......?」
「うん、その日はある巣の中でツヴァイ総動員の護衛任務が遂行されてて...その時に油断しちゃって、みんなを守りきれなかった......だからまたみんなを守れなくなるのが怖いの」
笑いながら話すハルだったがその表情は暗く、涙を堪えてる様に見えた......そうして結局溢れた涙を拭いながら話す
「それで今じゃ片目を失って、その上その事がトラウマでツヴァイに戻る事なくこの『人差し指』に入って忘れようとした......でも私は盾を手放すことができなかった......なんとなく手放したくないし、私の唯一の愛武器でもあるから」
「......すみません先輩、僕がこんな質問をしたばっかりに」
「ううん...いいの、正直なところ、いつか言おうと思ってたから」
ハルは空になったコップを下げて台所へ向かって洗う
「洗っておくから、もう少しゆっくりしてって... 嫌な帰ってもいいけど」
「はい...分かりました」
ヤンはそう言われて席に座ったまま考え込む...そうしてヤンはふと盾に触れる
「......この盾で一体、どれほどの人を救ったんだろう」
ヤンはそう呟き、席から立ち上がって自分の大剣と荷物を手に取って玄関へ向かう
「およ?もう行っちゃうの?」
「はい、そろそろお暇させてもらおうかと」
「そっか!じゃあまた明日!」
「はい、では......」
そうしてヤンは挨拶を交わしたのちにアパートとから離れる...その様子を見たハルは部屋に戻って盾を眺める
「...ウソついちゃったな」
盾を持ち上げて眺める......今でも盾を持つ理由は、本当は違う理由だった
——数年前...
その頃、ハルはツヴァイを辞めて人差し指に入って間もない頃... ハルはトラウマで盾を持つのも辞めて、ただ
「おい、ハル...お前またやらかしたのか......」
「あ-あはは〜...すみません、ヒューバートさん〜、まだ慣れなくて〜」
「今日で5回目だぞ...少しは人差し指の伝令としての自覚を持って責任感を持て......」ゴゴゴゴゴゴ...
「は-はぁい...すみません......」
これも演技である...心には余裕と、その裏にはあの頃のトラウマが植え付けられていた......この頃ハルの盾はアパートに置いておいたまま飾ってある...理由はトラウマで手が震え、盾の重量感がいつもの比ではなかったからだ......昔のトラウマと守りきれなかったと言う恐怖が、更に重く感じさせる故にもう持つ事はないと思っていたからだ
帰り道の途中、未だに癒えきっていない右目の傷がズキズキと痛みを感じながらマントをなびかせて帰ろうとする...
そうしてふと、とある遂行者に目をやる
「...あの子」
それは、まだ遂行者の時代のヤンで。ハルはあんな子供も人差し指になってしまうのかと、この都市に嫌気がさした
「................」
そうしてしばらく...と言うのも、数日間ヤンも様子をみた......実力には申し分ないし強い...だが一つわかっている事は、彼自身も性格面で脆い上に
「(......もう辞めたいと思ったのに)」
アパートに着いて気がつけばハルは飾ってある彼女の盾の前に立ち、そして持ち上げて背中に背負う
「......あんな子供一人に、背負わせるわけにはいかない」
回想に浸り、そして目を開けばもう時間が八時を過ぎていた......明日も朝が早いので、ハルはシャワーを浴びてベッドに寝転が......とその前に、ハルは寝室の角に設置された小さな祭壇の前で正座をして、祈る...祭壇の中にはかつて守れなかった旧ツヴァイ一課のメンバー達の遺影と名前が飾られていた
「ねえ、みんな.......こんな人差し指みたいな組織に入っていても、私は......」
思い浮かぶは、昔目の前で死んでいった同僚達と、...いつかの日に自然の笑みを浮かべたヤンの顔が浮かぶ...何かを決意して目を開き、祭壇に飾られているみんなの遺影に対して告げる
「——私はまた、誰かを守ってみてもいいのかな......」
返事はなかった...だがしかしハルはふっと笑って再び手を合わせて祈り、ベッドに寝転がる
「明日もがんばろ、人差し指として...そして——」
——また絶対に誰かを守れる、盾として...
おまけ
「ねえねえヤン君〜、君っていま歳は幾つなの〜?」
「歳...ですか」
「言ってもいいじゃん、ねね!早く〜」
「急かさないでくださいよ...ハァ......25です」
ピシッ
「に-ニジュウゴ......?」
「?...そうですけど」
「.................」
ハルは見た目の年齢と実際の年齢が噛み合ってない謎の現象に振り回されるのであった......
最近ネタ切れ気味だし雑だし......この先不安なんだが......