都市の右腕   作:プティパット

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今回のシリーズの関する補足

今回のシリーズはかなり長めに続くかなーと思っていましたが、ヤン君の言及で「伝令者になってまだ1ヶ月」という言葉に多分今回のシリーズは前作と比べて短くなる可能性があります。そこら辺はご了承願います


それともう一つ、皆さんの応援と評価のお陰で赤色評価を得ました。もう感謝の極みです。「とある東方のにわかさん」、「荒屋さん」、「アカキシタさん」、「ウガァァァァ!!さん」、そして「桶の桃ジュースさん」ありがとうございます!


それでは本編どうぞ


2人の密着

 

 

都市鉄道△△号線…

 

 

「「…………」」

 

 

今日、2人は私服姿で電車に隣同士で座っている。距離は近いが2人はあまり気にしていない様に見える

 

 

「——にしても。粋な指令だよね〜。指令って何考えてるかわかんないや」

 

「同感です。僕もまさかこんな指令が来るなんて思っていなかったですし」

 

 

そうして2人は「とある指令」を取り出す……、そうしてその指令を2人は静かに読み上げる。

 

 

——伝令ハル/ヤンへ

「カップル」と称して身分を偽り、誰にも素性を知られずに一日過ごせ。人差し指や組織について怪しまれた時点で指令は完遂できなかったものとする。

 

 

「こんな直球で何の曖昧さもない指令って初めてだよ〜。」

 

「誰にも素性を知られてはならないという怪しまれたら即アウトな内容ですけどね。……あ、先輩。見えてきましたよ」

 

「おぉ〜!あそこか〜!」

 

 

列車がガタゴトと揺れながら進み、ヤンが窓の景色を指差す。そこには本来の都市ではあり得ないはずの晴天の青い空。その下に広がるのは少し離れていても分かってしまうくらい賑やかな中華街だった。

 

 

「あそこが今回僕たちが一緒に過ごす場所です。……パンフレットで適当に探し出した観光地ではありますが、問題ないでしょうか?」

 

「もう!ヤン君ったらそんな事でいちいち聞かなくていいの!ヤン君の選ぶ場所は大体当たりって私の中ではそう思ってるからね!」

 

「そう言っていただけるとありがたいです。……さぁ、もうじき駅に着きますよ」

 

 

ヤンがそう言いながら微笑み、駅に着くとヤンがハルの手を握って一緒に連れ出す

 

 

「さて、これから一日身分を偽りましょう。…今日の僕たちは()()()()ですから。いいですか?()()()()

 

「おぉ、珍しく積極的だね〜。そういうヤン君も嫌いじゃないよ、私は」

 

「……それでも、あくまで指令ですから」

 

「うん、分かってる」

 

 

そう言いながらお互いにギュッと手を握り合って列車の外に出る。改札を通り駅のホームへ着くとかなり賑やかな光景が目の前に広がった。遠くからでも賑やかだったのが、近くで見るとより一層祭りの様な雰囲気だった

 

 

「すっごいすっごい!ねねっ、ヤン君〜!あそこの屋台美味しそう〜!!」

 

「確かに凄いですね……何かのお祭りでしょうか?」

 

 

ハルの目がキラキラとまるで子供が欲しかったおもちゃを見る様な笑顔で輝いている...ヤンは一度見てみて何か違和感に気づき、もう一度見てみると。そこには潰れて白くなっていた右目の瞳孔が色を取り戻していて、まるで見えている様になっていた

 

 

「あれ、ハルさん……その右目。それに傷も消えて——」

 

「ん?…あー、これ?ヤン君と待ち合わせする前にこの傷と右目を他の人に見られたら雰囲気壊しちゃうかなーって思って。ちょっと高いカラーコンタクトを買ったの!傷は化粧で誤魔化せるし、悪くない作戦でしょ〜?」

 

 

ヤンがそれに小さく頷きながら納得した、それと同時にすぐにハルは先程の屋台があった場所に駆け足でヤンを一瞬で置き去りにされかけるが、ヤンは慣れた様にハルの方へ歩き出す

 

 

「お、嬢ちゃん!ウチの自慢の焼豚饅(チャーシャオバオ)、買ってくかい?」

 

 

そう言いながら店主は焼豚饅を一つ手に取って半分に割る、すると中から赤色で程よく調理された焼豚が現れて、そこから甘辛くて美味しそうな香りが漂い始める。その香りと光景にハルは思わず唾液が口から溢れていく

 

 

「わあぁ……っ!おいしそ〜っ!」

 

 

じゅるり、と口から少し溢れた唾液を飲み込む、そうしてヤンが到着するとハルは買ってと言わんばかりのキラキラした目つきで見つめる。ヤンはそれを見て頷き、店主の前に立って財布を取り出す

 

 

「店主さん、その焼豚饅2つ下さい」

 

「毎度ォ!……にしても、お熱い恋人同士だな。キミたち!」

 

「そう言ってもらえるとありがたいです。店主さん」

 

「ん〜!ひゃんふぅん!ほれふっほふおいひい〜!(ヤン君!これすっごく美味しい〜!)

 

 

ヤンは彼女の食いっぷりに少し苦笑する。そして店主はそのまま続ける

 

 

「いやぁ、キミたちを見ていると()()()()()の事を思い出すよ!」

 

「……え、()()()?」

 

 

焼豚饅を食べていたハルが口に含んでいた物を飲み込み、店主から発言された“シャオ夫婦”という言葉を聞いて視線を店主の方へハルは向けた。

 

シャオ……ヤンは少しだけその人物の事を耳にしたことがある。彼女はリウ協会一課のフィクサーであり、その戦略的な頭脳と圧倒的な実力を兼ね備えており、周りからは特色並みのフィクサーと言われている。また、その鉄の様に冷たくて固い意志から()()()()()()と言う異名を持つ。

 

そんな彼女の話にハルは店主に近づいてシャオについて問う

 

 

「ねねっ、シャオ夫婦って事は。あの子結婚したの?」

 

「ん?あぁ、そうだな……今じゃここらの地域——いや。この都市でこれを知らねえ奴は多分いねえかもしれんぞ?……最初聞いた時はあの鉄血のシャオが結婚するなんて、誰も思いはしなかっただろうさ。俺だってびっくりしたよ!」

 

「そんな人が結婚して幸せになるのを想像してみると。なんだか微笑ましくなりますね。君もそう思いませんか、ハルさん?」

 

 

そうヤンが質問するが、ハルは何かを小さく呟きながら少しニヤけていた。

 

 

「あの()()()()()()が結婚…か。ふふっ……」

 

「…………?」

 

 

しかし、ヤンにはその呟きの言葉が届くことはなかった。そんな中で店主がハルと話している

 

 

「なあ嬢ちゃんよ。この辺りは初めてかい?……だったらすぐそこで美味い飯屋があるんだ!嬢ちゃんの食いっぷりを見て食いしん坊みたいだからなぁ!」

 

「もぉ〜!店主さんったらからかうのが上手だね〜!…まぁでも、おすすめされたからには食べに行かないとね!」

 

「まだ食べるんですか、ハルさん……?」

 

「当たり前じゃない!またいつ来れるか分からないのに、食べれるものは食べておかなきゃ!!」

 

 

目を輝かせながらよだれを垂らすハルにヤンは呆れながら溜め息を吐くが、すぐに手を繋ぎながら懐から端末を取り出し、先程店主が言っていたその料理屋へと向かうのだった

 

 


 

 

それからも2人はデート、というよりも観光を楽しんだ

 

 

料亭で色々食べたり……

 

 

ちゅるるっ。ん〜!ヤン君!ここの牛肉麺とこの小籠包すごく美味しいね!」

 

「…………!モッキュモッキュ

 

 

ヤンもこの味を気に入ったようだ。

 

 


 

 

他にも色んな衣装を着てみたり……

 

 

「…………」

 

 

腕を組みながら暗い表情で不機嫌そうにハルを見つめるヤン、理由は簡単。ハルにほぼ強制的にチーパオ着せられた……勿論ハルも着ている

 

 

「その……すごく似合って——…ぷっ」

 

「……帰ったら絶対引っ叩きます」

 

「ご-ごめ——アッハハハハハ!も-もう無理、アハハハハ!!

 

「………………」ニブニブニブニブ

 

 


 

 

——そんなこんなであっという間に一日が終わり、宿を取って2人はベッドに寝転がる……そんな中でハルはヤンに話しかける

 

 

「……ねえ、ヤン」

 

「どうかしましたか、先輩?」

 

「ヤン君はさ、私の事どう思ってるのかなって……」

 

「?……どういう事ですか?」

 

「その、今回は指令だから恋人として偽ってたけどさ。……ヤン君は実際私の事好きだったりするのかなって」

 

「…………」

 

 

しばらくの沈黙が続く……ハルは少し不安になる。もしこれが自分の思い違いな上、ヤンの気分を悪くしてしまったなら彼に嫌なことを聞いてしまった事になる。

 

1秒…2秒と時間が過ぎて行き、ヤンはゆっくりと口を開いて答える

 

 

「正直……僕は先輩のことが好きです」

 

「えっ……」

 

「あ、誤解です、僕はあなたを恋人としてではなく。先輩の事を()()のような物だと思ってます」

 

「家族……?」

 

 

ヤンはゆっくり起き上がり、そのまま話し続ける

 

 

「あの日、先輩と手を繋いで、僕の過去の話を全て聞き入れてくれた時。……抱え込んでいた物が全部——っていう訳ではないんですが、凄く楽になったんです。あなたがあの時抱きしめてくれなかったら、心から受け入れてくれなかったら。今頃僕はあの時以上に何かを抱え込んでいたかもしれません」

 

「……ヤン君」

 

「ですから。先輩——」

 

 

ヤンはゆっくりと、少しずつハルの方へ近づいて手を握る。そしてあの時と同じで目を開いてハルの事をじっくり見る

 

 

「あの時、先輩は約束してくれました。“ずっと側にいてあげるから”と。……僕は、僕は信じても良いのでしょうか」

 

 

ハルは少し驚きながらも、ヤンを目から離さなかった。彼を守りたい、救ってあげたい。そう誓った……ハルの答えは一つ——

 

 

「うん、信じて。私はあなたの目の前で消えたりしないから。だから……さ——」

 

 

そう言いながらハルはヤンに優しく抱きつく、手をヤンの後頭部に回して添える。

 

 

「——あなたも、もう何も抱え込まなくて良いの。泣いてもいい、怖がってもいい……せめて私の前だけでも、そうあって欲しいの」

 

「——っ、先輩……」

 

「ハルでいいよ、ヤン君」

 

「ハルさ——……()()

 

 

ヤンはちゃんと心から呼んでくれた、指令でもなければ嘘偽りでもない。本心から立場上関係なく、彼女の名前だけで

 

 

「うん、それでいい。他の人の前でなくても、先輩後輩関係なくそう呼ぼう……ね?()()

 

「なんだか慣れませんね」

 

「あー!敬語外れてないって!」

 

「す-すみません。でもやっぱり慣れないので……」

 

 

抱きついていたハルはヤンから離れた後、溜め息を吐いて頭を掻きながら答える

 

 

「しょうがないなぁ、敬語でいいよ!最低でもさん付けはしないでね」

 

「はい……ありがとうございます」

 

「じゃあ、寝よっか」

 

「ええ、寝ましょう」

 

 

そうして2人はベッドで横になり、お互いに顔を合わせながら寝る

 

 

「おやすみ、ヤン」

 

「おやすみなさい、ハル」

 

 

そうして2人は共に夜を過ごし、また伝令として新たな一日が始まる

 

 


 

 

おまけ

 

 

それから数日後、ハルとヤンはいつも通り伝令の仕事をしている時にグローリアが突然ひょっこり現れる

 

 

「やっほー2人共ー!ねねっ、デート楽しかった〜?」

 

「その話どこから聞いたんですか。グローリアさん」

 

「そんな事は今どうでもいいじゃん〜、教えてよ〜!」

 

「グローリアちゃん?いくらなんでもプライバシーって物があるでしょ?」

 

「えぇ〜、ハルちゃんのケチ〜!」

 

 

義体の身体についている無数の腕でぽかぽかと2人を叩くグローリア。そんな彼女のわがままに免じて話す

 

 

「仕方ないな〜……まず、一緒にご飯食べたでしょ?色んな場所回ったでしょ?後ヤン君にチーパ——ん"むっ!?

 

「話したら引っ叩きますよ……?」

 

 

ヤンがそう小さく囁きながらハルの口を塞ぎ、それに何も言わずに困惑するグローリア。そしてヤンが離してくれた後にそのまま続ける

 

 

「まぁそんな所、後は特に何も無いかなー?」

 

「ふ〜ん、じゃあ普通にデートという名の観光旅行に行ってた感じか〜」

 

「強いて言うなら()()()()()くらいのしか……」

 

 

その一言を聞いたグローリアの動きと表情が固まる、そうして震え声で再び問いかける

 

 

「い-一緒に寝たって……同じベッドで?」

 

「あー確かに一緒に寝たね〜。あそこのホテル結構いいサービスしてたし、ベッドもふかふかだったし、何より——……あれ、グローリアちゃん?」

 

「……………」

 

「あの。グローリアさん、大丈——」

 

「ビーッ、ビビッ…ガガガガガガガ」

 

「「!?」」

 

 

グローリアが雑音を鳴らして煙が出ていて2人は急いで整備工場に出した所、なんらかの原因で脳が焼き切れて故障してしまった……見舞いに来たエスターから話を聞いた所、ヤンとハルのせいで脳が焼かれたと言っていた。当の2人はどういう事か分かっていないそうで……




最近なかなか締まりが悪いなー。どうしよ


あ、あとこっからしばらくゼンゼロの方へ移ります
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