L社の巣
「……あと何人だ?」
「193人残っている」
「ジッとしててよ〜!」
L-社の巣の内部にいる親指の構成員とカポを一人一人代行者のヒューバート、エスター、グローリアは皆殺しにしていく。殺した構成員は手足を切り取って串刺しにする。…人差し指は指令を完遂するのみ。ハルとヤンもその指令に従って遂行者と共に親指の構成員を抹殺する。途中で親指のカポらしき人物が弾丸を放ったが、ハルは大盾を素早く構えて弾丸を弾き、その隙にヤンが距離を詰めて構成員に襲い掛かる
「ぐぁっ……!?」
「ヤン君ナイス〜!」
「かハッ…クソが……もうすぐ指切りがあるのに、こんな事をしでかすなんて……!」
その言葉を聞き流しながらハルは腰のサーベルを抜き、そのサーベルでそいつの手足を切り落とす、カポは痛みに踠き苦しむ
「ぐっ……ぁあっ!?」
「言っておくけど、こんなことは一度や二度でもないのに今更何言ってるの。あんたたちのアンダーボスは図書館へ行っちゃったし、その上であるゴッドファーザーもこの件については適当にやり過ごすと思うよ〜?」
その言葉にカポは歯を軋ませ、口や切り落とされた手足からの出血が激しくなりながらもカポはハルに叫ぶ
「こ-このっ……!どこから来るのかも分からない指令如きに後先考えない……命を懸ける、この目も耳もぶっ壊れた狂信者どm————!!!」
そう言いかけたカポの心臓にサーベルを突き刺した後、槍で胴を串刺しにした後に地面に突き刺し、カポだったその肉塊を飾り上げた
「…………」
「先輩……」
「……うん、分かってる」
「そっちも終わったようだな。ヤン伝令、ハル伝令」
「今回の指令も完す〜い♪」
「……最後の指令だけが残りましたね」
グローリアがそう明るく告げる中で、ヤンが淡々と告げる。そんなヤンの言葉を聞きながら代行一同は並べた串刺しの親指構成員を見物する
「生きたまま串刺しになって足掻く姿は絶景だったな」
「へぇ〜、ヒューバートさんはこう言うの意外と好きなんですね?」
「いや、…ただもうこういうことに慣れちまっただけだ」
ハルはヒューバートにそう冗談を言うが、ヒューバートもその冗談を軽くあしらうように言葉を返す。そんな中でエスターが続ける。
「兎に角、これでL社の巣に残っている指は人差し指だけだ」
「R社の畜生どもと、青い残響だけが残ったな」
「それでも〜、やっぱり指令は〜私たちをイイところに導いてくれて良いねぇ〜」
グローリアが軽々しく発言したその言葉にヤンは眉をひそめる。ヤンにとって指令は良いものではない、そばにいたハルはヤンのその心境をよく知っていた。
「指令はただ、従わなければならないだけです。意味を与えたり、鑑賞するのはよくないと言うことですよ……」
「そうだよ〜、グローリアちゃん。指令は完遂されるだけで意味なんてないと私も思うな〜?」
「二人とも伝令だからか話し上手ねぇ〜?……そうだねぇ〜」
グローリアが少し悩んだ後、その大きな義体の頭部から覗かれる赤色のレンズが覗き込む
「ハルちゃんってさ〜、人差し指に入る前にすっごい怪我してたよね〜?」
「え、うん……それがどうかしたの?グローリアちゃん」
「二人はこう言ってるケド〜、もし指令でハルちゃんが助け出されるどころか、治療もされてなかったら〜。ハルちゃん、あのまま死んでたかもしれないんだよ〜?……何があったかは知らないけど、あの時のハルちゃんはなんかこう、全部失ったみたいな顔しながら色んなところから血を流してたし〜」
「ッ……」
その言葉にハルはその日の事を思い出す……目の前で爆散していった同僚たち、そんな彼らを守れずに、亡骸をただ残った片方の目で虚を見るように枯れた涙が頬に滲む、———同僚も、護るべきだった人物も全て失ったあの日を……
額に冷や汗が滲み始めて、息も荒くなる。ヤンはその変化に気づいたが何も言わずにただその光景を見ていた……それでもハルは息を整えて何かを決心したようにグローリアに強く言い返す
「それでも……私もヤン君も、指令がありがたいと思わない。さっきも言ったけど指令はただ完遂されて、遂行されるだけだから」
「伝令の言う通りです。指令はただ完遂されるべきもの。他の誰でもない、ヤン伝令が身を以て実践してみせた」
「……………」
「……ヤン君」
そうヤンの名前を呟いた直後、目の前から青色ベースの外套と楽団の指揮官のような身のこなしをした白の長髪と青の補聴器らしき髪から飛び出た物体、整った顔と青色の瞳から浮かぶ怪しげな笑顔、そして特徴的なのはそんな
「いやぁ……血の臭いが濃いね。俺も大概だけど、人差し指は相変わらず指令のために物騒な事をするんだよね」
「
「俺たちは顔を合わせて話し合えるくらいの仲だったのか?」
「青い残響」、その容姿の通りに「青色」を付与された特色フィクサーだ。……その笑顔から一見優しい人物に見えなくも無いが、そんな人程より人を殺めたりしているのだ…それも躊躇なく。かえってその不気味さと特色という称号が恐怖を引き立たせ顔を合わせた人は皆逃げるか警戒心を高めるしかできないのだ
「そんなに警戒しないでよ、俺はただお願いをしに来たんだ、代行者エスター。……その串に刺さった肉に塊を連れていってもいいかなって、見た感じ指令は完遂したみたいだし、何よりここに置いとけって話もなかったよね?」
「確かに、降ろせって話もなかったな」
「代行者ヒューバートの言う通り、だけど解釈はそっちの仕事だからお願いしてるんだよ」
彼の言葉を聞いて皆は顔を合わせて話し合う
「難しいわねぇ〜どうしよ〜?あいつの言う通りにするのは嫌なんだけど、だからってやってあげない理由も無いしね〜」
「……青い残響の言う通りにしろ。俺たちはただ、次の指令を完遂すればいいだけであって、余計な摩擦を生じさせるつもりはない」
「エスターさんの言う通り、ましてや相手は特色。仮に応戦できても、結局お互い内臓を見せ合う羽目になりますよ」
「二人とも、明快な解釈ですね」
そうして遂行者は一つ一つ親指の構成員だった肉塊が刺さった串を一つ一つ降ろし始める、それを見ながらアルガリアは呟く
「人差し指と話すといつも楽しいんだよね。俺と同じ臭いがするから……欲を言うなら、俺の楽団に一人は連れて行きたいな」
「……何をやらかすつもりかは分かんないけど、程々にしておいた方がいいんじゃ無いですか?」
「そう?君たちが聞けばきっと喜ぶ——……あれ?」
彼はハルにゆっくりと近づき、顔をじっくりと何かを確認するように見つめる
「な-なに……?」
「ははっ、なんでもないよ……ただまさか、噂で聞いていたツヴァイ一課の生き残りが人差し指に所属しているなんてね」
「……特色様が私のことをご存じだなんて。私の名前、意外にも知られてたのね?」
それを聞いたグローリアがハルに近寄ってジリジリと詰め寄りながら大きめの声で話す
「えー!?ハルちゃん、フィクサーだったの〜!?……しかも一課ってことは、超エリートの一級フィクサーじゃ〜ん!」
「……いつか言おうと思ってたけど、まさかそれがまさか青い残響の口から直接言われるとはね」
グローリアが目を輝かせながらハルの隣にいるのを横目に、青い残響はそのまま話を続ける
「さてと……とりあえずこの肉の塊は新鮮なときに持ってくのがいいよね?みんな、ちょっと働いてくれるかい?」
そう彼が呼んで現れたのは、3人……というより、2人と3匹の頭をした異形が現れた。1人はサメ、もう1人はオオカミ、そしてもう1人はイヌ、ニワトリ、ロバの集合体だ
「キャンきャン、キャキャン!!ヒヒぃ-ン!ココッ!!」
「はぁ〜……お前の言う通り、面倒臭いもんばっか寄越すんだな」
「カッカッカッ!串刺しになってるのがまるで……いい匂いの串焼きみたいだよね!?…ニンニクとタレを塗りこんで焼いて食べれば美味しそう!」
「落ち着いて、そんな事やってたら残らないよ。無事に運んでさえすれば……2、3個は許してあげる。もちろん、ゼボンが許してくれるとは限らないけどね」
そう騒がしくする青い残響の一味にヒューバートが痺れを切らして前に出る
「人を突っ立たせといて騒がしいな」
「ん?……あぁ、ごめんごめん。俺たちってこんなに仲がいいんだ〜」
そう愉快に彼が話すとエスターが近づいて彼を鋭い眼光と威圧で脅す
「……青い残響。お前らがこの巣に落ち着いた以上……いつかお前らの腹から内臓が溢れるだろう」
「君はそう思うの?むしろ僕は、君たちはR社の動物の内蔵しか見れないんじゃないかなって思うけど」
そうエスターの脅しをその言葉で返し、一触即発の雰囲気になるも彼の仲間のオオカミ頭が「おい、とっとと行くぞ」と言う言葉に反応してすぐに振り向いてその場を去って行った
そうして彼らが去った後、グローリアが愚痴を言うように彼の陰口をいっている
「青い残響相変わらず感じわるいし、気味悪いよね〜」
「司令が導かない以上、気にする必要はない……ヤン伝令。次の指令は準備できたか?」
「もちろんです、こちらを——」
「
「………!?」
ヤンが指令を取り出して見せる前にエスターはその指令をまるで分かって予測していたかのようにはっきりと答え、ヤンは想定していなかったかのような表情を浮かべる
「ん?図書館か〜。私たちも結局行くんだね〜」
「……どうして知ってたんですか?」
「予想外という顔だな、ヤン伝令。お前が伝達する指令が偽物だということはすでに分かっている」
その言葉を聞いてハルは目を見開きながら確信する……ヤンが渡す指令から感じる違和感も、そして今まで感じた何かを隠し通して心の奥深くで溜め込んでいる動作も、全てハルは理解した。
「なんですってぇ〜!?ずっと私だけが騙されてきたの!?」
そう思っているといきなりグローリアがエスターとヒューバートの方へ向いて大きな声で驚く、どうやらグローリアだけが気づいていなかったらしい。
「……いつから知ってたんですか?」
「そんなことは重要ではない」
「それなのに親指と戦争をして……図書館という墓に自らの足を入れようとしているんですか?」
普段から人差し指の仕事を通じて感情を押し殺しながら隠し通し、こういう場面でも感情をあまり出さないヤンでさえも取り乱して声を荒げながらエスターに問いかけるが、エスター冷たくきっぱりとその質問に答える。
「俺は指令に従っただけだ……
「……結局、指令に書かれていたんですね」
ヤンが肩を小さく震わせながら俯いている……そのままヤンはエスターに問い続ける。
「指令は一体……どこまで知っているんですか?」
「俺たちは指令から逃れられない。指令の外側から考え、行動することはできないということだ」
その最中にグローリアが割り込んできて、無数にある義腕でヤンの肩を掴んで小さく揺らす。
「理解できない!ヤンは今までの指令をうまく遂行してきたでしょ?ねえ、ヤン〜どうして裏切ったの!お金が必要だったの!?」
「…………」
グローリアはいまだに信じられないのかヤンの肩を揺らし続ける、その光景を見ていたハルとヒューバートが止めに入る。
「グローリアちゃん、落ち着いて……そんなことしてもヤンは何も答えないよ」
「それにな、グローリア。俺たちに裏切りなんてない。
「………はぁ」
ヒューバートのその言葉を聞いたヤンは暗い表情のまま溜め息を吐き、絞り出すように声を漏らし、話し続ける。
「もう、うんざりです。どこに行っても指令ばかり……僕は指令のせいで多くのものを捨てて、そして顔を背けてきたんです。指令のせいで家族も友達も殺して、他人の大切なものを奪って顔を背けて……罪悪感に苦しみながらも歯を食いしばって遂行しました。指令は遂行されるべきだから……!」
「ヤン君……」
ヤンが自身の今まで顔を背けて、心の中で溜め込んでいたものが水いっぱいの花瓶が溢れてしまうようにそう告げる、ハルはヤンに近づこうとするがヤンの閉ざされた目の睨みに後ずさり、顔を背けてしまった。
「そして指令は僕に伝令という責任を与えました。おぞましくて見たくもない指令を、僕の手で……だから嘘の指令をでっち上げて初めて僕の意志を貫けたと思ったのに……エスター。指令は全部、知っていたというんですか?これも僕の意思じゃ……無かったんですか?」」
その問いかけにエスターは再び冷たく答える
「それがお前の意思だろうと関係ない。俺たちは指令に従うのみ、これから指令に従って図書館へ行くだけだ……全員準備しろ。ハル伝令、お前も来い」
「え、わ-私も?」
「そうだ……お前の元ツヴァイとしての
「でも……あなたには招待状も——」
「招待状なら既に受け取った」
「……………」
そうハルが断言するように言うと、その言葉を遮って懐から一枚の招待状を取り出す、本来ならヤンがでっち上げた嘘であるはずなのに
「……やはり皆さんは図書館へ向かうのですか?」
「指令通りに」
「……僕がこの場で自殺しろって命令をしても結果は同じでしょうね」
「俺たちはいつであれ指令通りに行動する……行くぞ」
ヤンが呆気にまみれてその言葉を聞き、どうでも良くなったのか振り向いてその場を去ろうとすると突然背後から駆け足でハルが抱きつく。
「せ-先輩……?」
「……ヤン君」
しばらくしてハルはヤンを離し、そして顔を合わせる……ハルの表情は小さな罪悪感を感じていながら、無理をするように引きつった笑顔でヤンに伝える。
「待ってるね……
「!?……ま-待ってください、それってどういう——」
ヤンはハルの言葉の意を聞く為にハルを引き止めようとするが、ハルはまた駆け足で代行者と遂行者たちの方へ向かい、じきにページの形をした光に包まれて消えていく。
「———ッ。
「……もう、みんなが聞こえてたらどうするの。
それが、初めてヤンが誰かの前で立場関係なく誰かを呼んだ時だった……これから図書館という名の墓へ自ら足を踏み入れて死地に向かうようなものだった。こんな形であって欲しくなかったと、ハルはそう思っていたがたった一つだけ死んでもそれを信じて貫き通すことがある。
———待っている、と
……そういえば自分で読み直して気づいたんだけど、『赤い霧と灰の煙雲』篇のヌベス、まだ「黒昼、白夜」でもないのにどうやってE.G.O覚醒させたんだ?……カーリーみたくミミクリーみたいなE.G.O武器貰ったわけじゃないし。なんらかの共鳴で発現させたのか?
……作者である俺が今まで気づかなかったのが怖えよ