アンケートで残っている数の中で1d3しました、どうぞお楽しみください。
その日、幼子は拾われた。
裏路地 とある喫茶店
「ふむ。此の店の紅茶と茶菓子は美味しいな……裏路地に構えている店にしては質が良い」
不気味な笑みを浮かべ、紅茶を嗜んでいる彼女、ガリオン。『調律者』または『頭』とも呼ばれている彼女は今裏路地に位置している小さな喫茶店で雨が降り頻る中、紅茶と茶菓子を嗜んでいた。
「ガリオン様。紅茶と茶菓子は今一度控えてください……私にはまだやるべき作業があるのですから」
彼女の隣に居るのはC社の『足爪』、またの名を『処刑者』とも言う。彼は先程都市の禁忌を犯した者を処刑し、ガリオンはそれを見届けた。そして彼は本社へ戻って事務作業をしなければならないのだが、ガリオンが喫茶店へ寄って帰らせてくれないというめんどくさいことになっている様だ。
「そう焦らなくても良い……御前も少しは肩の力を抜いて見ればどうだ?」
「そういう訳では無くて……はぁ」
足爪はそう言ってため息を付きながらガリオンから紅茶と茶菓子を取り上げる。
「後の業務後のご褒美としてこちらを没収いたします。貴女は若くして都市の『頭』なんですからしっかりして頂かないと困ります」
「せっかちな奴だな、御前は」
「何がせっかちですか。全く……ほら行きますよ」
ガリオンはいつも通りの笑みを浮かべながら立ち上がり、足爪の『血清-W』を使って瞬間移動をしようとしたところにガリオンはふと小さな路地へと目をやる、そこには一つの影を見つける。
「……………」
「……ん?ちょ、ちょっと?ガリオン様?」
足爪の呼びかけを無視したままその場へと向かうガリオン。足爪が差した傘をも無視して雨濡れながらその場所へとゆっくりと歩んで覗き込む。そこに居たのはまだ10代かそれよりも下の小さな子供で。よく見てみると顔はおろか腕に打撲痕、衣類の下には更にあるだろう……それ以外にも首に締め付けられた跡がはっきりと見えていた。
「ほう……この場所に此の様なの幼子が生き永らえているとは」
「…………!」
ガリオンが思うには、恐らく親による虐待であろう。もしそうでなければ今頃無事では済まずに殺され、ましてや彼女の前にも現れていなかっただろう……
子供はガリオンが近づいてくることに気づいて目を見開く。ガリオンは構わずゆっくりと歩いて近づき、子供を見下ろしながら話す。
「……だがそれ以上に、御前の其の『瞳』も珍しい」
普通ならガリオンの様な『頭』や『調律者』に対してどの様な人物でも本能的に恐怖して逃げ出すはずが、その子供は小さく怯えて震えながらも逃げ出さずにずっと彼女だけを見つめていた……そしてその『無』の瞳とその内に秘めている「光」をガリオンは見逃さず、全てをみすえた。
心なしか、やがてそれは彼女の興味を引いた。
「御前の名前は、何と云う?」
「…あっ………ぇっと」
「ガリオン様!お待ちください!勝手にうろつかないでください!」
足爪が急ぎ足でこちらに向かって傘を差し出す……そして目の前の小さな子供を見ては冷たく語りかける。
「ガリオン様、いきなりどうしたんですか。そんな餓鬼放っておいてください……いずれ掃除屋がそいつもろとも掃除するだろうし。何より今そんな餓鬼に構っている暇なんてありませんよ」
ガリオンはその言葉を聞いて一瞬黙り込む。だがすぐにまた何を思い浮かんだのか、すぐに笑みを浮かべて足爪に問いかける。
「……一つ聞きたいことがあるのだが、もし
「え?それはまあ、とりあえず拾いますけど……なんですかいきなり?」
「そうだな……なら———」
ガリオンは当然と言える様な言葉を放ったあとに子供を突然抱き上げながら足爪の方へと振り向く。子供はわずかに目を見開き、足爪も突然の出来事に混乱している様でその様子を見たガリオンは再び笑みを浮かべる。
「———此の幼子が
「へっ……ッ!?」
「は、はああ!?……いきなり何を仰られているんですか貴女は!?」
「言葉通りの意味だよ。今から此の幼子は私の所有物だ……近頃茶を淹れて御呉れる召使いも欲しかった頃合いだ、何も間違いは無いと思うのだが」
「そんな無茶苦茶な!けど、本当に使えるんですかね……貴女に怯えていつか逃げ出してしまうんじゃ———」
確かに足爪の言う通り、先程まで子供はガリオンに怯えて小さく震えてはいたが、今はどうだろうか……子供はもうガリオンに怯えておらず、それどころかその無表情の顔とは裏腹にもガリオンに懐いて彼女の腕の中で甘える様に縋り付いてくる。
「……善い子だな、御前は」
「そ、そんな馬鹿な!?」
「先程から本当に五月蝿い奴だな御前は……急ぎの様が有るのだろう?」
「なっ…!誰のせいだと思ってるんですか貴女!」
「やれやれ……征くぞ、『処刑者』」
「………はぁ、はい。『頭』の仰せのままに」
重い溜め息を足爪は吐きながらも今度こそ『血清-W』を使用してA社の巣へと向かったのだった……
01区 巣 ガリオンの自室
ガリオンは子供を抱えたまま部屋へと入り、抱き抱えたままどうするか考える。その時、腕に抱え込んでいた子供が始めてガリオンに対して口を開く。
「……あ、あの」
「何か問いたい事でもあるのか、小さき子よ」
「おなまえ…なんですか……?」
一瞬の静寂。ガリオンは子供を下ろしながらその問いに簡潔に答える。
「……ガリオンと云う」
「がりおん……」
「そう云ば訊きそびれてしまったな……御前の名前は何と称ぶ?」
その質問に子供は言葉を詰まらせる……そして恐る恐る口を開いて答える。
「おなまえ……よばれたことない……」
「……………」
「おとうさん、ぼくをいつもたたいて、いたくするの……なにもできないから……だからおなまえもない」
「……そうか」
「……がりおんも、ぼくをいためつけるの?」
ガリオンはただ目を逸らしている子供をただ見つめる……また痛めつけられるかもしれない、その子供は小さく震えているのを見ながらガリオンはゆっくりと手を伸ばし、そして子供の頭をそっと撫でる。
「…………?」
「愚かな祖だな。名が無ければ此の子を呼べぬだろうに……」
「ぅあ……ん……」
ガリオンは優しくゆっくり撫で続け、しまいには屈んで目線を合わせるという、都市の「頭」らしからぬ行動を示しながら子供に名をつける。
「御前の名は……そうだな———」
「———
「のえ……る?」
「そうだ……気に入ったか、幼子よ」
子供、いや。ノエルは初めて名をつけられ、そしてかつての肉親以上の温もりをガリオンの手で感じ取る……ノエルはその温もりを長い間、ずっと求めていたかのように今自分を撫でているガリオンの手に擦り寄る。
「のえる……すき。がりおんも……」
「……縋らずとも私は此処に居るよ、ノエルよ」
これはただ1人、紅茶とお喋りが好きな調律者が幼子を拾い、その子供が優秀な使用人として、その調律者の右腕としての成長を見届ける
長くなりそうだなー……オリジナル展開が多分多めかもしれません。
*その分解釈違いも多いかも?…あとガリオン語(もといビナー語がむず過ぎる)