あれから数年経って、分かったことがある
結局.......裏路地は裏路地、そして裏路地で生きる人間も人間だ
自分が情に流されて誰かを守ろうとしても...
その誰かが別の人を傷つけるかもしれないって事だ......残酷だがそれ夢でも、悪戯でも、クソでもねぇ......汚ねぇ現実だよ
それはそうとして......カーリーと俺は2級フィクサーになり、報酬が美味い依頼が増えてきたからそのカネで俺の工房武器を強化したり、強化手術(俺の場合は刺青と強化手術両方)に注ぎ込んでいる
それはそうと...今日はカーリーと用事があるので出かけている、今はその帰り道と言った所か......
「なぁカーリー、あれから色々あったが.......大丈夫か?」
「そうだな......大丈夫と言えば嘘になる、だけどあの時お前が優しく抱きしめてくれたから.....少しは楽だ」
カーリーはタバコの吸い殻を捨て、俺の方へ向く
「あの時お前が居なかったら...私はコレよりも深い傷を負っていたかもしれないな...」
見た感じ数年前のゴミ屑隣人事件*1の時よりも心に余裕ができたみたいで良かった...正直安心してんだよなぁ...
「また落ち込むような事があったら、俺がお前をまた抱きしめてやるよ」
半分冗談のつもりで言ったが、カーリーは逆に口角を上げて微笑んだ
「フッ、ありがとう......お前は私にとって最高で最も信頼できる相棒だからな...まぁどこか抜けてるトコもあるが」
「オイオイ、そりゃ皮肉か?」
「どうだろうな...」
カーリーはあたらしいタバコを吸いながら微笑んで冗談を言い合う......なんだろう、何故か守りたい...この笑顔*2
その時、誰かが後ろから近づき声をかけられた
「あの...すみません」
そこには、茶色のポニテに、赤い瞳を持った不思議でどこか惹かれてしまうような女性が後ろにいた
「...アンタは?」
「私はカルメン、L-社の研究員をやっているの!」
カルメン...なんと言うか、不思議な奴だ......
「なぁ、質問に答えて欲しい......一つ、アンタは巣で育ったのか? 二つ、なんで俺らみたいなフィクサーに話しかけた? 」
俺は返答を待ち、カルメンが口を開く
「えぇ、私は巣で育ったわ、そして...私は貴方達に協力して欲しい」
カーリーは返答する
「内容によるが......まぁ聞かせてくれ」
「えぇ、分かったわ! それで協力して欲しい事なんだけど——」
——私のボディガードになってくれない?
「ほう、ボディガードか...」
俺は興味深そうに彼女に聞く、カルメンは微笑みながら俺に返答する
「うん! 今私は外郭の研究室で研究してるの...外郭はいろんな化け物でいっぱいだからね」
「へぇ、随分と面倒な場所で研究するんだな?」
俺はそのまま続ける...俺が一番気になったことを聞く
「それで?どんな研究内容なんだ?」
「それはね—–」
彼女が言うには都市の人々を蝕んでいる“心の病„と言うのを治療することができると言う...何を言っているのかと言うと、都市全体の裏路地と巣で暮らしている人々には色んな心の病を患っているらしい......そしてそれを握っている鍵が『コギト』という薬品...しかし、コレはまだ理想の範囲内でコレを抽出する為に奮闘しているそうだ......
「ほうほう...なーるほどな、にしても大層なもんだ...俺たちとは違って翼生まれの巣で育ったお嬢が人々を “心の病„ という名前の都市の苦痛から解放しようだなんて、なぁカーリー?」
俺はカーリーを見つめると、彼女の表情が暗かった......
「おい...カーリー?」
「......——だ」
「......え?」
突然カーリーがカルメンの胸ぐらを掴み、壁に押し付けた
「何が心の病だ! いいトコ育ちのお嬢様もいいご身分だな!!」
「おい! カーリ-『お前もだ、ヌベス! お前は何でこいつの事を信用できる!? 忘れたのか!?
そのままカルメンを掴む手が強くなり、カーリーは続ける
「裏路地で暮らした事も、見た事もない奴が......裏路地の痛みをどれだけ知った上でそんな事ほざいてんだよ!!」
カーリーが黄色く光る怒りに満ちた眼で掴み上げてるカルメンに睨み続ける、それは純粋な怒りと腹立たしさに満ちていた
「都市の...裏路地の人間は! お前が考えてるほど甘ったるいもんじゃないんだよ!! 結局最後の最後には利用されて騙し、裏切り、奪い!! 結局は卑しい欲の塊が這いずり回るゴミ屑の集まりなんだよ!!」
俺はふと、カルメンの方へ向いた......彼女は怖気ついていると思えば先ほどと同じような冷静な眼差しで微笑むながらカーリーを見ていた
そして、カルメンは口を開く
「...じゃあさ、カーリーは——」
——巣での痛みをどれだけ知っているの?
...理解が出来なかった...俺もカーリーも、思考が一瞬停止した......巣でも同じ苦痛があるのか...巣でも裏切り、騙したりするものなのか?
「お前、何言ってやがる—『所詮、そんな事は巣でも似たような物よカーリー......裏切り、騙したり......どこの巣でも、結局都市の人間は欲望の塊でしかないもの。』」
カーリーは気付けば、彼女を握る手から解放していた、そしてカルメンは俺とカーリーに名刺を差し出しこう答えた
「私が巣での痛みを教えてあげるから、貴方達も私に裏路地の痛みを教えて...それじゃ」
そう言うと彼女はその場を去って行った......
——数分後、カーリーのアパート
ベッドに寝転がりながらカルメンの名刺を見て呟く
「......なぁヌベス」
「なんだ?カーリー」
「......あいつの言った通り、巣でも裏路地でも一緒なのか?」
俺はタバコを咥えながら武器の手入れをしながら返答した
「...そうかもな」
俺はタバコの煙を吐きながら呟く
「フゥ......俺はカルメンの言う通りだと思っている...いくら巣の中でも、中身が一緒ならそれは別だ...そうだろ?」
カーリーは静かに頷き、まだ名刺をじっと見つめている
「.......あいつのボディガードの仕事、受けるのか?」
少しの沈黙の後、カーリーは起き上がって返答した
「あぁ...あいつが求む理想の都市...心の病の治療に少し......興味が湧いた」
俺は微笑み、カーリーに背中を軽くポンと叩く
「同感だ...俺も実際興味がある...それに外郭なんて言った事ないから行きたかったトコだ」
「フッ、能天気だなお前も....」
——次の日、外郭の研究室
俺達はカルメンのいる外郭の研究所へ到着してカルメンと顔を合わせる、カルメンは驚いた表情で俺達をみていた
「あー、カルメンさん?何でそんな顔をするんだ?」
「なんだ?私達が来る事が意外だったのか?」
俺達は困惑しながらもカルメンに尋ねる、そしてカルメンは口を開いた
「まぁ、すぐに来てくれるとは思っていたけど......こんなすぐとは思っていながったから......特にカーリーは険しい顔してたのに、もしかして私のこと好きになっちゃった?」
カルメンが冗談を言いながら笑うと、カーリーは少しだけ頬を赤くした
「な、何言ってんだ!」
「ほほーん?カーリーはカルメンさんに惚れてんのか...」
俺も悪ノリで冗談を言うとかなり強めの拳骨をもらった......バカ痛ぇ
「ヌベスだっけ?カルメンでいいよ! ......まぁ私は裏路地の世界やあの人達の苦痛を知らないの......呆れるよね、昨日私はあんな事熱心に語ったのになんも知らないなんて」
俺に対して俺は優しい言葉で励ます
「別に何でもねぇさ、都市は広い......それと同じくらい裏路地も広いからな。分からない事があっても不思議じゃねぇ」
そのままカーリーも続ける
「あぁ、実際私達は23区やその周辺の場所でしか任務を請け負っていない.....まぁいわば都市の西部だ...私達も都市の全てを知っている訳でもない」
カルメンは理解したように頷く
「あはは、お気遣いありがとう...それでね、遅かれ早かれ外郭の化け物以外にも大きな脅威が来るわ」
そのままカルメンは続ける
「あとね、私が他のフィクサーや組織じゃなくてあなた達を選んだ理由は.......」
「「...理由は?」」
しばらくの沈黙の後カルメンが遂に口を開く
「えぇっと...う-上手くいけば安く雇えそうかな〜って......」
「「...............」」
カルメンがそう言った後、俺達は振り向いて歩く
「「.......帰る」」
「ま-待って待って‼︎ 冗談だって‼︎」
カルメンが俺達を止めた、俺は悪ノリでやっただけなので冗談だと言った (でもカーリーはガチっぽかった)
しばらくして、カルメンは話した
「私はただ、あなた達が見知らぬお婆さんの葬式の費用を肩代わりしてるところを見てたの、そしてそんな優しい所が私は好きで期待しているの」
それに対してカーリーは返答する
「何度かあの婆さんに食べ物を分けてもらった借りを返しただけだ...」
そう言いながらタバコに火をつけ、それを吸いながら続ける
「......いいか?私は優しさとは縁のない奴だ」
カルメンはただ温かい笑みでカーリーを見る...それと同時に俺も優しい笑顔でカーリーをみつめた
「おい、何笑ってる!」
それに対してカルメンは厚かましい程の温かい笑みをカーリーに向けながら返答した
「いや、ただ私の目に狂いは無かったかもって、改めて自分の見つめに感動しただけ」
温かい笑顔をしている俺とカルメンに対し、カーリーは少し恥ずかしがりながら腹を立てた
「〜〜〜〜〜ッ‼︎」
「おいおいカーリー、キレてんのか〜?」
「黙れ‼︎」
カーリーがそう言いながら拳を放ってきた、俺はそれをかろうじて避けた
「うおッ、悪かったって......それよりカルメン?」
「何かな?ヌベス」
「あそこでずった俺たちを睨んでるあいつは誰だ?」
そう言って俺はドアの前で俺たちを睨んでいる白衣を着た目つきの悪い男に指を刺した
「あぁ、あれはアイン。ちょっと目付きが悪いだけだから気にしないで」
「そうか......」
俺は納得して、そのままカルメンは続ける
「お願い、ここの人達を守ってあげて.......あなた達が居てくれたら心強いわ」
そう言った後俺は手を伸ばした、カルメンは困惑した
「......ヌベス?」
「何だよ、握手だろ?あ・く・しゅ」
そう言ってカルメンは理解して俺と握手を交わした......カーリーとの握手を交わした
「よろしくね。カーリー、ヌベス」
「こちらこそ」「あぁ、こちらこそよろしく」
おまけ
「そう言えば二人ってどんな関係なの?」
「別に大した事ないぞ、ただの相棒だ」
カーリーはそう答えると俺も肯定する
「あぁ、ただの相棒だよ...
それを聞いたカルメンはどこか唖然としていた
「?...どうした?」
「.......付き合ってないんだよね?」
俺とカーリーはお互いを見ながらその後カルメンの方へ向き、首を傾げた
「「.............?」」
何故かカルメンは呆れた表情をしていた......後ろにいたアインも静かに同じ顔をしていた......何でだろうな?*4