インフィニット・ストラトス ~紅の騎士~   作:ぬっく~

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第25話

「というわけでね、いきなりふたり辞めちゃったのよ。辞めたというより、駆け落ちしたんだけどね。はは・・・」

 

「はぁ」

 

「・・・」

 

「でもね、今日は超重要な日なのよ!本社から視察の人間も来るし、だからお願い!あなたたちふたりに今日だけアルバイトをしてほしいの!」

 

女性のお店というのが、これまた特異な喫茶店だったのだ。

女性はメイドの格好、男性は執事の格好で接客をするという・・・いわゆるメイド&執事喫茶である。

 

「店長~、早くお店手伝って~」

 

フロアリーダーがヘルプを求めて声をかける。

すぐに店長は最後の身だしなみをして、バックヤードの出口へと向かった。

 

「あ!そういえば、このお店の名前はなんですか?」

 

店長は笑みを浮かべてスカートを摘み上げ、大人びた容姿に似合わない可愛らしいお辞儀をする。

 

「お客様、@クルーズへようこそ」

 

 

 

 

「十香ちゃん、4番テーブルに紅茶とコーヒーをお願い」

 

「はい」

 

カウンターから飲み物を受け取って、@マークの刻まれたトレーへと乗せる。

十香の行動力に臨時の同僚にあたるスタッフたちは、ほうっとため息を漏らす。

元々アルバイト経験があった為、こう言ったことに関しては特に問題ない。

 

「お待たせしました。紅茶のお客様は?」

 

「は、はい」

 

自身が年上なのに、女性は緊張した面持ちで十香に答える。

紅茶とコーヒーをそれぞれの女性に差し出す前に、十香は『とあるサービス』の要不要を尋ねる。

 

「お砂糖とミルクはお入れになりますか?よろしければ、こちらで入れさせていただきますが?」

 

「お、お願いします。え、ええと、砂糖とミルク、たっぷりで」

 

「わ、私も」

 

黒髪なのにメイド服がよく似合う十香の姿に見惚られて、女性客はぽかんとしたままだった。

 

「それでは、また何かありましたら何なりとお呼び出してください。お嬢様」

 

そう言って綺麗なお辞儀をする十香はまさしく『メイド』だった。

 

(助かったぜ、フレア)

 

(いえいえ、これぐらい)

 

フレアの能力のひとつに精神操作があるのだ。

体をある程度までコントロールできるという優れものなのだ。

実はメイドの作法は全てフレアに任せていたのだ。

 

(簪さんは大丈夫かな?)

 

仕事をこなしつつ、十香は簪を探す。

そして、ちょうど男性客3名のテーブルで注文を取っていた。

 

「ねえ、君可愛いね。名前教えてよ」

 

「・・・・・・」

 

「あのさ、お店何時に終わるの?一緒に遊びにーー」

 

ダンッ!と、テーブルに垂直に刺さったフォークが大きな音をたてる。

面喰っている男たちを前に、十香は現れる。

 

「お客様、こう言った行為はお控えください」

 

「は、はい・・・」

 

十香の右手にあるフォークとナイフを見て男たちは小さくながりながらすぐに引き下がった。

 

「十香さん・・・ありがとうございます」

 

「うん?ああ、いいよ。別にあの程度」

 

実際のところはフレアがやったことなんだが、黙っておこう。

そんな混雑が2時間ほど続いたところで、十香と簪ともに精神的に疲れが見え始めた所に事件が起こった。

 

「全員、動くな!!」

 

ドアを破る勢いで雪崩れ込んできた男が3人が怒号を発する。

 

「きゃあああっ!?」

 

「騒ぐんじゃねぇ!静かにしろ!」

 

男たちの背中のバックからは何枚かの紙幣が飛び出ていた。

見るからに、強盗だった。

 

「あー、犯人に告ぐ。君たちはすでに包囲されている。--」

 

警察機関の動きはこの上なく迅速で、店外ではもうパトカーによる道路封鎖とライオットシールドを構えた対銃撃装備の警官たちが包囲網を作っていた。

 

「ど、どうしましょう兄貴!このままじゃ、俺たちーー」

 

「うろたえるんじゃねえっ!こっちには人質がいるんだ」

 

リーダーらしき人物がそう告げると、逃げ腰だった他の2人も自信を取り戻す。

 

「へ、へへ、そうですね」

 

ジャキッ!と硬い金属音を響かせ、ショットガンのポンプアクションを行う。

 

「おい、聞こえるか警官共!人質を安全に解放したかったら車を用意しろ!もちろん、追撃車や発信機なんかつけるんじゃねえぞ!」

 

威勢良くそう言って、駄賃だとばかりに警官隊に向かって発砲する。

幸い、弾丸はパトカーのフロントガラスを割っただけだが、周囲の野次馬がパニックを起こすには十分だった。

 

「へへ、奴ら大騒ぎしてますよ」

 

「平和な国ほど犯罪はしやすいって話、本当ッスね!」

 

「まったくだ」

 

暴力的な笑みを浮かべる男たち。

それを、物陰から観察する目があった。

 

(ショットガンにサブマシンガン・・・そしてハンドガン・・・。多分、他にも予備で持っている可能性があるはず・・・)

 

目立たないようにしゃがみつつ、簪は状況を冷静に分析していく。

もう一度店内の状況を確認しようと目線をうごがすと、そこでぎょっとした。

 

「・・・・・・」

 

店内で強盗以外にただ一人立っていたのは十香だった。

 

「なんだ、お前。大人しくしてろっていうのが聞こえなかったのか?」

 

リーダーは十香の額に銃を当てるが、十香は顔色をひとつ変えなかった。

そして、銃を持つ手を自分から逸らすと同時にリーダーの顔を床に叩きつけた。

 

「がっ!」

 

手下どもは、突然の出来事に反応できずに一瞬遅れて銃を構える。

だが、その一瞬で近づくには十分だった為、そのままトリガーを構えている手にナイフやフォークを突き刺す。

 

「うぎゃあああ!!」

 

痛みから回復したリーダーが、早速ハンドガンをぶっ放す。

 

「ッざけんな!!」

 

だが、銃は暴発した。

 

「っ・・・!!!」

 

言葉では表せない声が店内に響いた。

銃が向けられた瞬間に銃口をナイフで塞いだのだ。

 

「兄貴っ!!」

 

手下の首に手刀が入叩き込まれ、男は糸の切れた操り人形のように倒れ伏せた。

 

『全制圧、完了です』

 

「フレア、勝手に体を使わないでちょうだい。まあ、いいわ。ありがとう」

 

しばらくして、『民間人』こと客とスタッフは、のろのろと頭を上げ始める。

 

「お、終わった・・・?」

 

「助かったの、私たち・・・」

 

危機を脱したことはわかるものの、まだ状況を正しく把握できていない人々は、何度も瞬きを繰り返す。

同じくまだはっきりとした意識が戻らない店長は、『黒髪の美少女メイドが銀行強盗を撃退しました』って本社に報告したら信じてくれるかしら・・・?と変にずれたことを考えていた。

 

「お、俺たち助かったんだ!」

 

助かった実感が今になってはっきりと自覚できたのか、突如店内はわっと騒がしくなる。

その様子を見て、状況に決定的な変化があったのかと警官隊も詰めかけて来る。

 

「どうやら、私たちはここまでのようね。簪さん!」

 

「う、うん」

 

ーーしかし、事態は再び一変する。

 

「捕まって務所暮らしになるくらいなら、いっそ全部吹き飛ばしてやらあっ!」

 

完全に戦意を消失させたつもりだったが、リーダーはそう叫んで立ち上がるなり、革ジャンを左右に広げる。

そこにあったには、プラスチック爆弾だった。

もちろん起爆装置は、手の中にある。

 

『あきらめの悪い人ですね・・・』

 

ふわっと、十香がスカートをなびかせるように右足を上げ、その奥にちらりと見えた白い布地に男の目線と意識が奪われ、その一瞬の隙に、十香は足を振り下ろす。

その踵はテーブルを勢いよく傾け、そこにあった拳銃が宙を舞った。

それを両手で受け取り、そしてーー

 

ダダダダダンッ!

 

「チェック・メイト」

 

高速五連射×2の弾丸が起爆装置と爆薬の信管、そして導線『だけ』を打ち抜いた。

 

「まだやる?」

 

ジャキッ!と二丁の拳銃を突き付けられ、さっきまでの威厳も高圧も震える声で謝った。

 

「す、すみっ、すみませんっ!も、もうしまっ、しませんっ・・・」

 

そんな敗北宣言を聞くことなく十香と簪のふたりは颯爽と立ち去った。

 

 

 

 

「アイク!」

 

とあるホテルのスイートルームにいた女性はアイクと呼ばれる男性が帰って来るなり、思いっ切り立ち上がる。

 

「やあ、エレン。どうしたかね?もう少し落ち着いたらどうだね」

 

アイクの楽しげな様子を見るなり、エレンが言ってくる。

 

「一体どこにいらしたのですか!!」

 

アイクは手に持っていた紙袋を手渡す。

 

「これは・・・」

 

「お土産」

 

袋には@のロゴが描かれた紙袋だった。

 

「プリンセスの様子を見に来ていたのだが、強盗にあってね」

 

「強盗!?」

 

クッキーをかじりながら、楽しげに話すアイク。

 

「まあ、プリンセスのパホーマンスが見れたから十分なんだけどね」

 

「・・・・・・」

 

外をみればそこにはIS学園がある島があった。

 

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