「やっぱりハヅギ社製のがいいなぁ」
「そう?ハヅギってデザインだけって感じがしない?」
「そのデザインがいいのよ!」
「私は性能的にミューレイがいいかなぁ。特にスムーズモデル」
「あー、あれねー。確かにいいけど、高いじゃん」
月曜日の朝。
クラス中の女子がわいわいと賑やかに談笑をしていた。
みんな手にカタログを持って、あれこれと意見を交換している。
「そういえば織斑くんのISスーツってどこのやつなの?」
(フレア、そういえばISスーツってどこのやつなんだ?)
(これは、母のオリジナルなんで・・・)
「あー。特注品らしい。それ以外あんまり知らないんだ・・・」
流石はISの開発者の一人だけはある。
最初から俺に渡す気満々だったらしく、初期設定で登録されていた。
「諸君、おはよう」
「お、おはようございます!」
それまでざわざわとしていた教室が一瞬で礼儀正しい軍隊整列へと変わる。
「では山田先生、HRを」
「は、はい」
連絡事項を言い終えた千冬姉が山田先生にバトンタッチする。
「ええとですね、今日は転校生を紹介します!」
「え・・・」
「「「ええええええっ!?」」」
いきなりの転校生にクラス中が一気にざわつく。
「失礼します」
「・・・・・・」
クラスに入って来た転校生は2人だった。
だが、それを見て、ざわめきがぴたりと止まる。
そりゃな、そのうちの一人が・・・男だったんだから。
◇
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。不慣れなことも多いと思いますが、よろしくお願いします」
転校生の一人、シャルルはにこやかな顔でそう告げて一礼する。
(なあ、フレア)
(やっぱり思いましたか?)
シャルルの自己紹介の時に疑問を感じた。
「こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて、本国から転入を・・・」
人なつっこそうな顔でこちらを見て来る。
(フレア、裏を取ってくれるか?)
(了解です!)
違和感を感じた以上、取り除きたい。
それが俺なのだが、この違和感はどこかで感じたことがあった。
もっと身近なところで・・・
「きゃああああああーーーっ!」
このクラスを中心に歓喜の叫びが発生する。
「あーもう、騒ぐなうっとうしい」
面倒くさそうに千冬姉はぼやく。
「皆さん、もう一人自己紹介が残ってるので・・・静かに・・・」
忘れていたわけではないが・・・と言うより意識の外にやるのが難しいもう一人の転校生は、見た目からしてかなり異端だった。
輝くような銀髪。
ともすれば白に近いそれを、腰近くまでおろしている。
綺麗であるが整えた風はなく、ただ伸ばしっぱなしという印象だった。
そして左目には医療用の眼帯ではなく、ガチな黒眼帯をしていた。
「ラウラ・・・挨拶しろ」
「はい・・・教官」
いきなり佇まいを直して素直に返事をする。
異国の敬礼を向けられた千冬姉はきっとまた違った面倒くさそうな顔をする。
「もう私は教官ではない。ここでは織斑先生と呼べ」
「了解しました」
そう答えるラウラはぴっと伸ばした手を体の真横につけ、足を踵で合わせて背筋を伸ばす。
先程千冬姉を『教官』と呼んでいた・・・つまり、ラウラはドイツ側の人間。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「・・・・・・」
クラスメイトたちの沈黙。
続く言葉を待っているのが、名前を口にしたらまた貝のように口を閉ざしてしまった。
「あ・・・あの・・・他には・・・」
「以上だ」
空気にいたたまれなくなった山田先生が出来る限りの笑顔でラウラに聞くが、返って来たのは無慈悲な即答だった。
「おい・・・貴様」
一夏の存在を確認するなり、ラウラは彼に近づき、そのまま左手で平打ちをしようとするが・・・
「っ・・・!!」
それは当たることはなかった。
ラウラの平手が一夏の頬に当たる前にその腕を掴んだのだ。
「ドイツの挨拶は随分と最悪なんだな・・・」
「っ・・・私は認めない・・・貴様があの人の弟であるなど、認めるもんか」
来た時同様すたすたと俺の前を立ち去って行くラウラ。
空いている席に座ると授業が始まるまで一夏に殺気を送り続けていた。