インフィニット・ストラトス ~紅の騎士~   作:ぬっく~

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第41話

福音の撃墜は失敗に終わり、肝心な『銀の福音』を取り逃がすと言う異例の事態になっていた。

そして、織斑一夏は行方不明となっていた。

唯一生還した簪は専用機持ちたちから、批難を受けていた。

 

裏切り者

人殺し

 

自分がしたことはわかっている。

私が織斑一夏を殺した。

 

 

◇

 

 

「お、織斑先生……」

 

「わかっていますよ……山田先生」

 

指令室では、未だに福音の捜索が行われていた。

だが、それより問題になっていたのが、織斑一夏の消息だった。

彼はISを身につけていない。

その為、捜索が困難になっていた。

 

 

◇

 

 

「…………」

 

簪は一人、電気も付けずに壁に寄り添っていた。

 

(私が……)

 

一夏のISは今、簪の手元にある。

七本の剣が付いたブレスレットは何かを関知したのか、ざわつき始めた。

 

【助けたい?】

 

ハイライトの消えた今の簪には幻聴にしか聞こえていなかった。

 

【彼を助けたい?】

 

「…………」

 

私は決して許されるとは、思っていない。

だから、助けたところで……意味がない。

 

【…………彼はなぜ、それをあなたに渡したと思う?】

 

それはわからない。

どうして…………なんだろう。

 

【彼はあなたのことを守る為に渡したのよ】

 

どういうこと……?

私は……

 

【彼はあなたに生きて欲しいと思って渡したのよ。だからあなたには、彼を助ける権利がある】

 

私は顔を上げるが、そこに誰もいなかったけど光る結晶があった。

 

【私が彼の元へと導いてあげる】

 

そして、私は結晶から放たれる光に包まれた。

 

 

◇

 

 

「あ……」

 

俺は闇へと落ちて行く。

簪さんを騙した罰が当たったのだろう…………

そう、思いながら奥へと奥へと沈んで行く。

 

「もし……叶うなら、ちゃんと……謝りたいな」

 

微かな希望を口にするが、叶うはずもなかった。

自分の命の鼓動が徐々に弱くなっていく。

 

「……さようなら…………世界」

 

目を閉じ、深い眠りに着こうとした時だった。

 

『まだ、行かないで下さい!!』

 

「!!」

 

突如、俺の腹に激痛が走った。

 

「ゲホ……ゲホ……何だよいきなり……」

 

「あう~、ご、ごめんなさい」

 

腹を押さえながら周りを見渡すと、先ほどは違って黒ではなく白の世界になっていた。

 

「ここは……」

 

俺はここを知っていた。

そこは、サーやエンペラーと出会った空間だった。

 

「おうおう、ようやく来たか。主よ」

 

年の頃は一夏たちとそう変わらい、橙色の髪に水銀色の少女。

なにより特徴的なのは装いだった。

暗色の外套を纏い、身体の各所を、ベルトのようなもので締め付けている。

おまけに右手右足と首に錠が施され、そこから先に引きちぎられた鎖が伸びていていた。

まるで途方もない大罪を犯した咎人か猟奇的な被虐快楽者(マゾヒスト)のような出で立ちである。

 

「同意。いつまで待たせるのです」

 

長い髪を三つ編みに括った少女だった。

隣の少女と瓜二つ顔をしているのだが、その表情は、どこか気怠そうな半眼に彩らていた。

こちらの少女もまた、少々デザインは異なるものの、似たような拘束服を身に着けていた。

ただ、錠の位置は首に左手、左足と、反対側だった。

 

「あわわわ……」

 

恥ずかしがるかのように、その後ろで俺を見る少女。

ウサギの耳のような飾りのついたフードを被った、青い髪の少女だった。

 

「そうですわ! 待ち合わせは1時間前って、一般常識ですわ」

 

昔のセシリアを描いたような、刺々しい言葉を述べる少女。

光の粒子で縫製されたかと見まごうような煌びやかな衣を纏った少女がいる。

 

「うふふ。 いいじゃない、少しぐらい遅れて登場するのがヒーローの必須条件なんだから」

 

後ろか抱き着いてくる夕焼けのような橙色と、夜空のような黒で構成された服を着た、長身の女性。

女性の帽子はつばの広い、先端の折れた円錐、まるでおとぎ話に出てくる『魔女』の帽子だった。

 

「お前たちは……」

 

今一状況が理解できていなかった。

死を覚悟して眠りに着こうとしたら、今度は5人の女性がいる空間にいていたのだから。

 

「我が名は『ベルセルク』」

 

「同意。我も同じく『ベルセルク』です」

 

「わ、私は……『ハーミット』です」

 

「『ディーヴァ』ですわ」

 

「うふふ。 『ウィッチ』よ」

 

ベルセルク、ハーミット、ディーヴァ、ウィッチ……どれも、七騎士の名前だった。

 

「もしかして……」

 

「そのとりよ。 私たちは七騎士のコア人格よ」

 

ウィッチが答える。

それにより、大体のことが理解できたが、まだ疑問が残っていた。

 

「俺は死んだはずだよな?」

 

そう、俺は致命傷を受け、海に落ちた。

そして専用機は簪の元にある。

だからここで騎士たちに会うのはおかしい。

 

「人はね。 死ぬ時、夢を見るのよ。 私たちはまだ、肉(・)体(・)を持っていないから、ここにこれるの」

 

言って、5人は手を差し伸べる。

 

「「「「「契約の名を」」」」」

 

「ああ」

 

俺は決めているんだ。

俺は……

 

「みんなの前では最強を名乗り続ける事に決めたんだ」

 

だから、ここで立ち止まるわけにはいかないんだっ!!

 

 

◇

 

 

「!! 織斑先生」

 

「どうした。 山田先生」

 

「これを」

 

空中投影ディスプレイには旅館を中心に地図が映し出されていた。

 

「正体不明のISがこの旅館から現れました」

 

「すぐさま、確認を」

 

「は、はい……え!?」

 

驚きの言葉を漏らす山田先生。

旅館から現れたISは猛スピードでとある方向を目指し始めたのだ。

 

「至急、専用機持ちを集めろ」

 

だが……

 

「ど、どいうことですか!?」

 

さらに、4つの正体不明のISを感知したのだ。

そして旅館から現れたISはその方向へと向かっていたのだった。

 

「一体何がおこっているのだ……」

 

 

◇

 

 

「始まったね……くれっち」

 

「そうだな……」

 

海岸の柵の上で眺める2人の影。

 

「束ちゃんも、一夏くんにプレゼントを贈っていたのね」

 

「そんなことを言ったら、くれっちもアレをあげてよかったの?」

 

篠ノ之束とファイ・D・フローライトは楽しげに話していた。

 

「8(・)番(・)目(・)の(・)騎(・)士(・)……識別名『エンジェル』」

 

「いいのよ……それに、元から彼女にあげるつもりだったから」

 

ファイは空中投影のディスプレイを表示する。

 

「あなたは、私たちにどんな物を見せてくれるのかね」

 

まるで子供を見守る母の笑顔を見せるファイだった。

 

 

 

 

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