インフィニット・ストラトス ~紅の騎士~   作:ぬっく~

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第43話

それは、中学の夏頃の話だ。

紅葉と束が夏休みに入った1日目に全ての宿題を終わらせ、IS開発に没頭していた時のことだった。

 

「なあ、紅葉。 何故そいつらにそんな名前を付けたのだ?」

 

「ん? ああ、それはね。昔、一人の少年が使っていた力を元に作ったからだよ」

 

「どう言うことだ?」

 

この時、紅葉は7つのISに変わったの名前を付けていたのだ。

悪霊(イフリート)隠者(ハーミット)悪夢(ナイトメア)乱暴(ベルセルク)歌姫(ディーヴァ)王女(プリンセス)魔女(ウィッチ)

 

「精霊…………隣界に存在する特殊災害生命体。 発生原因、存在理由ともに不明で、その世界に現れる際に、空間震を発生させ、周囲に甚大な被害を及ぼしていた。 そしてその戦闘能力も強大な為、通常兵器も効かなかった」

 

紅葉は窓を開け、涼しい風を入れる。

 

「人類は2つの対処法を編み出した。 1つは、武力を似てこれを殲滅する。 ただし前に言った通り、非常に高い戦闘能力を待っていたため、達成は困難だった。 だけど、彼はこれを選ばなかった」

 

「そいつは何を選んだだ?」

 

「2つ目をね。 2つ目はね……デートして、デレさせる」

 

「はあ?」

 

2つ目の答えが非常におかしかった。

存在するだけで脅威な者をデートをして、デレさせるだと?

 

「少年は精霊の力を封印する力を持っていたのよ。 だけどそれを使うには、精霊が彼に心を開かなければいけなかった。 手っ取り早く開けるとして、デートが早かったわけよ」

 

話を終えると、紅葉は作業に戻る。

 

「つまり、その少年が封印した精霊の名前をこいつらに付けているのか?」

 

「そうよ。 彼はのちに王と呼ばれる存在へと変わったの」

 

紅葉は作業を一時止め、天井を見つめた。

 

「人を止める代わりに……」

 

「っ……!!」

 

この時、言葉を詰まらせた。

少年1人を犠牲に世界が救われたというのか!!

 

「まあ、作り話だけどね」

 

「冗談はほどほどにしてくれよ」

 

「ふふふ。 そう言えば、弟はいいの?」

 

時間を見ると5時を過ぎていた。

 

「おっと、いけないな……またな」

 

「またね。 ちーちゃん」

 

千冬はそのまま、部屋を後にする。

 

 

 

 

もし、その話が本当なら……

 

「一夏……」

 

空中投影ディスプレイに写る光の玉を見ながら千冬は呟いた。

そして、2つの光の玉は一時停止した。

その直後、新たなシグナルが現れた。

 

「これは……『銀の福音』です!!」

 

「専用機持ちに連絡を。 そのまま、福音との戦闘に入る可能性があると」

 

「はい!」

 

あの時、紅葉が話していた事が本当なら、一夏は人ではなくなってしまうのだろ。

そう思うと、千冬は震えが止まらなかった。

世界で唯一の家族である弟を失うなんて……。

 

「一夏……無事に帰って来い」

 

僅かな可能性に賭けるしかなかった。

 

 

 

 

「…………」

 

海上200mの所で胎児のような格好で『銀の福音』は静止していた。

膝を抱き、身体を丸めた福音は、頭部から伸びた翼が守るように包みこんでいた。

 

「?」

 

不意に、福音は顔を上げた。

次の瞬間、超高速で飛来した砲弾が頭部を直撃し、大爆発を起こした。

 

『被弾を確認。 畳み掛けます!!』

 

5km離れた場所には2つのISがいた。

『赤騎士』と『折紙』だった。

 

「私はもう間違わない!!」

 

簪が、両手を広げる。

その動作に合わせるように、頭上の王冠がその先端を広げ、日輪の如く円環を作った。

 

「〈絶滅天使(メタトロン)〉―――【日輪(シェメッシュ)】」

 

簪が、静かに告げる。

瞬間、簪の頭上に広がった円状の天使が回転を始め、周囲に光の粒を振りまいていった。

 

「La…………♪」

 

福音は左手を広げると、自分の周りに障壁を張った。

一瞬あと、簪の天使から放たれた夥しい量の光の粒が、一斉に辺りに降り注ぐ。

それはあまりにも美しく、凄絶な破壊の雨だった。

一撃一撃が凄まじい威力を持ったエネルギーの塊が、幾千幾万と降り注ぎ、絶え間なく海上を蹂躙していく。

 

「俺を忘れては困るぞ? 福音!!」

 

『〈灼爛殲鬼(カマエル)―――【(メギド)】〉』

 

一夏の構えた〈灼爛殲鬼〉から、凄まじい炎熱の奔流が放たれた。

巨大な火山の噴火を数十センチの範囲に凝縮したかのような圧倒的な熱量が、空の彼方にまで一本の線を引いた。

 

「!!」

 

障壁を貫通するも僅かにずれ、絶対防御を発動させることは敵わなかった。

 

『敵機Bを確認。 排除行動へと移る』

 

「させない!!」

 

簪は上方に突き上げる。

 

「【天翼(マルアク)】!」

 

〈絶滅天使〉が再び終結し、簪の背で翼のような形を作る。

簪は〈絶滅天使〉を羽ばたかせるように動かすと、一瞬にして福音に近づいた。

そして、そのまま海へと叩き落とした。

しかし、簪の攻撃の手は緩まなかった。

簪が上方に掲げた手を真っ直ぐ振り下ろすと、簪の背に広がったいた翼が上下左右に飛び散った。

 

「【光剣(カドウール)】!!」

 

簪が叫ぶと同時に、バラバラになった〈絶滅天使〉が、それぞれに独立した意思が備わっているかのように軌道で空を縦横無尽に駆け回り、容赦なく光線を放ってくる。

 

「これで終わりだ……福音。 神威霊装・四番(エル)『アクア』」

 

一夏のISが赤から青へと変わる。

一夏は天高く右手を上げ、

 

「〈氷結傀儡(ザドキエル)〉!」

 

天使の名とともに、それを振り下した。

 

―――クゥォォォオオオオオオ―――

 

巨大な白兎の人形が姿を現し、人形を中心に海面が氷始めた。

 

「そのまま、ここ一帯を凍らせる」

 

福音を永久凍結する。

だが、予期もせぬ事態が起こった。

海面が強烈な光の珠によって吹き飛んだのだ。

 

「ちっ! まじかよ……」

 

球場に蒸発した海からは、青い雷を纏った『銀の福音』がいた。

 

「『第二形態移動(セカンド・シフト)』……」

 

それは、まるで大天使を思わせる姿だった。

 

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