海を前に柵の上で一夏たちの戦いを見ていた束とファイは箒の乱入に驚いていた。
「なんで、箒ちゃんが…………」
それもそのはず、現在IS学園が所持しているISは教員が全て管理している。
その為、生徒には絶対に触れることすらできないのに、篠ノ之箒はその場にいたのだ。
「これは…………」
ファイは篠ノ之箒が着ている装備などを見るにあることに気付いた。
「CR-ユニット……あいつの差し金か」
CR-ユニット
顕現装置を戦術的に運用するための装備の総称。
防護服である
標準装備として、ワイヤリングスーツに搭載されている基礎顕現装置が発動すると同時に自分の周囲数メートルに見えない領域「
随意領域は文字通り、使用者の思い通りになる空間でありCRーユニットの要でもある。
「これはちょっとやばいわね……」
箒が纏っているCR-ユニットは一般的に市場に出ているものではなく。
鈍色で構成された、先鋭的なフォルム。
X字に展開されたスラスターと、腰元に装備された巨大な兵装が特徴的だった。
これはDEM社の専用機だったのだ。
その為、普通のISだと歯が立たないと判断したファイは行動に移ろうとしていた。
「束さんが行こうか?」
あれを相手出来るのはファイか束、千冬の3大トップぐらいだろう。
しかし、今ここでファイが一夏と出会うのは非常に不味いのだ。
「すまない……。 本当なら私が行きたい所だが……」
「うんん。 大丈夫、くれっちはいっくんに出会う事が出来ない以上、束さんが行ってくるよ」
ファイはあの事件の後にある人物ととある契約を交わしていた。
それは、織斑一夏と出会うことを禁じる代わりにこの世界に留まると言う契約を結んでいたのだ。
その為、影で彼を見守るだけの生活を送っていたのだ。
そのことを知るのは、束だけである。
「一夏のことを頼んだ……」
束は頷き、2つの鈴が付いたISを取り出すと柵から飛び降りた。
「行こう……『紅椿』」
赤い装甲が特徴なISは一夏のいる方向へと向かっていた。
◇
箒は身の丈ほどはあろうかという、巨大な魔力砲を片手で構えると、何の躊躇いなく引き金を引いた。
砲門の奥に目映い光が灯ったかと思うと、そこから一夏たちに向かって、凄まじい魔力の奔流が放たれる。
「く―――」
一夏は息を詰まらせると、咄嗟に簪の身体を担ぎ上げ、左方に跳躍した。
まったく同じタイミングで専用機持ち達が空を蹴って上方に飛び上る。
「どう言うつもりだ! 箒!!」
「一夏は私の物だ……誰にも渡さん。 その為ならお前達をここで殺してでも手に入れる」
冷たい声でそう言って、箒が砲門の向きを一夏と簪の方に向けて来る。
その目には、迷いや逡巡のようなものは一切見受けられなかった。
普段の箒とは異なった、純粋な敵意と殺意に彩られた視線。
その異様さに、一夏は思わず息を飲んだ。
「……っ。 そうか……、だったらここでお前を倒す」
一夏の言葉は、箒には届かなかった。
箒は無言のまま、再度引き金を引いこうとする。
「く……ッ!」
再び簪を抱えながら跳躍しようにも、SEに限界が来ていた。
いくら騎士の数が多くても、SEは全ての騎士で共有しているのだ。
その為、一夏のISは【最後の剣】を放ったことにより、SEが限界領域に入っていたのだ。
しかも、簪も同じ理由でSEが無かった。
だがその瞬間、一夏に向けられていた砲口が不意に上方へと向けられる。
理由はすぐに知れた。
先程の砲撃の際に上方へ逃れたセシリア、鈴、ラウラ、シャルロットが上から箒に襲いかかったのだ。
濃密な魔力の光が、上に向けて放たれる。
しかし、専用機持ちはそれを紙一重でそれを避けた。
「出鱈目な出力砲だな……」
「確かに面倒ですわ」
「見た事のない型のISだけど、基本同じでしょ?」
「威力が高すぎて僕の盾では防ぎきれないよ?」
ラウラ、セシリア、鈴、シャルロットの順に一夏を守るように、箒の前に降り立った。
「さて、一応弁明を聞くが、箒。 冗談にしては度が過ぎるのではないか?」
「答える必要はない」
言うが早いか、箒は魔力砲を可変させると、その先端に魔力で編まれた巨大な刃を出現させた。
そしてそのままのレーザーブレイドを構え、専用機持ち達に向かって突撃する。
だが、その間に一本のレーザーが通り過ぎた。
「なんだ……!!」
放たれた方向に目を向けると赤いISを纏った女性がいたのだ。
「姉さん……」
「残念だよ……箒ちゃん」
決してもう出会うことはないと思っていた姉妹が、戦場と言う名の下で出会ってしまった。