インフィニット・ストラトス ~紅の騎士~   作:ぬっく~

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第66話

「一夏くん、ちゃんと着たー?」

 

「…………」

 

「開けるわよ」

 

「開けてから言わないでくださいよ!」

 

「なんだ、ちゃんと着ているじゃない。おねーさんがっかり」

 

「……なんですか」

 

第四アリーナの更衣室は普段ISスーツの着替え場所として使われるそこに、俺はいた。

服装は……王子様だ……。

 

「はい、王冠」

 

「はぁ……」

 

「なによ、嬉しそうじゃないわね。シンデレラ役の方がよかった?」

 

「イヤですよ!」

 

相変わらずこの人は、ああ言えばこう言う。心底困った人だ。

 

「さて、そろそろ始まるわよ」

 

一度覗いたんだが、第四アリーナいっぱいに作られたセットはかなり豪勢だった。観客席はもちろん満席で、時折聞こえてくる歓声は更衣室まで届いている。

 

「台本とか見ていないんですけど……」

 

「大丈夫、基本的にはこちらからアナウンスするから、その通りにお話を進めてくればいいわ」

 

大丈夫なんだろうか……本当に。

言いしれぬ不安を抱きながら、俺は舞台袖に移動する。

 

「さあ、幕開けよ!」

 

ブザーが鳴り響き、照明が落ちる。

するするとセット全体にかけられた幕が上がっていき、アリーナのライトが点灯した。

 

「昔々ある所に、シンデレラと言う少女がいました」

 

よかった。普通の出だしだ。それにしても、シンデレラ役って誰なんだろうか?

そんなことを考えながら、俺はセットの舞踏会エリアへと向かう。

 

「否、それはもはや名前ではない。幾多の舞踏会を抜け、群がる敵兵をなぎ倒し、灰燼を纏う事さえ厭わぬ地上最強の兵士たち。彼女らを呼ぶに相応しい称号……それが『廃被り姫(シンデレラ)』!」

 

……え?

 

「今宵もまた、血に飢えたシンデレラたちの夜が始まる。王子の王冠に隠された隣国の軍事機密を狙い、舞踏会という名の死地に少女たちが舞い踊る!」

 

「は、はぁっ!?」

 

「もらったぁぁぁ!」

 

いきなりの叫び声と共に現れたのは、白地に銀のあしらいが美しいシンデレラ・ドレスを身に纏った鈴だった。

 

「のわっ!?」

 

「寄越しなさいよ!」

 

反射的に避けた俺をキッと睨んでから、すぐさま中国の手裏剣こと飛刀を投げてくる。

 

「死ぬだろうが!!」

 

「死なない程度に殺すわよ!」

 

「意味が分からん!」

 

こんな所で死んでたまるか!

俺はテーブルの上にあったティーセットをひっくり返し、そのトレーで飛刀を凌ぐ。

 

「だりゃあ!」

 

飛刀の刺さったトレーを飛び蹴り上げで吹き飛ばす鈴。そしてそのまま踵落とししてくる。

 

「って、おい! ガラスの靴履いてんのかよ!?」

 

「大丈夫。強化ガラスらしいから!」

 

「アホか! あぶねえだろ!!」

 

鈴と格闘戦闘を繰り広げていると、ふと赤い光線が泳いでいるのを見つける。

 

(あれは……まさか!!)

 

次の瞬間、俺の顔の魔隣りにあった壺がパァンッと吹き飛んだ。

 

「サイレンサー付きスナイパーライフル……セシリアだな」

 

サイレンサーを装備している為、発砲音とマズルフラッシュがわからない。

さらに連射性に優れた銃を使っているらしく、立て続けに俺の王冠を狙って打ち込んでくる。

 

「流石にキツイぜ……」

 

身を低くして遮蔽物へと駆け込む。

鈴の次にセシリア……予想通りなら他の奴もいる。

 

「そちらがそう来るなら俺も抗わせてもらうぞ」

 

俺は急遽、ある所に連絡した。

 

 

 

 

(くっ……。逃がしましたわ)

 

足元に大量の薬莢の金属音を響かせながら、セシリアはスコープから目を話す。

狙撃の基本である『射撃と移動(ショット&ムーブ)』に中実に、次の狙撃ポイントへと向かう。

 

(今回は、何が何でも勝たせていただきますわ!)

 

女子組だけに教えられた秘密の景品。それは『織斑一夏の王冠を手にした子に、一か月同室同居の権利を与える』というものだった。

最初こそきょとんとしていた一同だったが、

 

『生徒会長権限で可能にするわ』

 

という楯無の言葉を聞いて、全員が奮い立った。

 

(一夏さんと同じ部屋、一夏さんと同じ部屋……)

 

すでに皮算用を始めているセシリアは、にへっと緩んだ笑みをこぼす。

しかし、悪夢が始まるのことに気付かずに……。

 

「あなたにはここで退場していただきます」

 

「へ?」

 

口もとしか見えない仮面をしたメイドが目の前に現れ、セシリアはすぐさま、スナイパーライフルを構えるが、それが手元からなくなっていた。

肝心のスナイパーライフルはメイドが持っていた。

 

「い、いつの間に……」

 

セシリアは言い終える前に首元を叩かれ、気を失う。

 

「これで、一人目」

 

一夏が呼んだ者たちはとんでもない集団だったことを彼女らは後で知ることになった。

 

 

 

 

「一夏、そこに直れ!」

 

「王冠は私がいただく」

 

箒は日本刀、ラウラは二刀流のタクティカル・ナイフ。

 

「ごめんね。僕もその王冠が欲しいんだ」

 

両手にサブマシンガンを持つ、シャルロット。

 

「さあ、渡しなさい」

 

飛刀を構える鈴。

狙撃が無くなったのはいいのだが、他の四人に囲まれ、絶対絶命の危機にあった。

 

「ぐっ……(まだかよ……)」

 

一夏は何かを待っていた。

そんなことを考えている暇はなく、鈴、箒、シャルロット、ラウラは一斉に襲いかかる。

 

「待たせたな!」

 

「反撃。攻撃開始です」

 

突如、一夏の前に二人のメイドが現れ、箒たちの進撃を阻んだ。

 

「な!?」

 

「あんたたち、邪魔をする気?」

 

「ってことは……」

 

「!! 上だ!」

 

目の前のメイドに気を取られ、鈴は上からの狙撃を回避できなかった。

 

「ちょ! なによこ……」

 

鈴は黒い球体に飲み込めれ、その場から消えた。

 

「何が起こった!?」

 

「あの弾……もしかして」

 

「ああ、間違いない」

 

シャルロットとラウラはその弾が何なのか知っていた。

 

「「B.C.T.L(強制時間跳躍弾)」」

 

束さんが暇つぶしに作ったっと言って学園に寄付した銃弾。その弾は当たった場所から半径1m範囲に展開し、一時間後のその場に飛ばすと言う、超兵器。

それを彼女らが持ちだしていたのだ。

 

「ご無事ですか? マスター」

 

「ああ、助かったぜ。サー」

 

メイド服にスナイパーライフルを持ったサー、矛と盾を持つ壱原姉妹、そして……

 

「どうやら、間に合ったようですね」

 

「まったくあの会長は」

 

「あ、あの……」

 

「さあ、反撃と行きましょうか」

 

「なんで、わたくしまで」

 

ライラ、フレア、アクア、ステフ、エンペラー、全員メイド服を着用して登場する。

 

「とんでもない者が来たね……ラウラ」

 

「ああ。だが、これぐらい無いとやりがいない」

 

箒、シャルロット、ラウラは己の武器を構える。

 

「「「「「「「「我らはメイド。主人を守るのが我らの使命」」」」」」」」

 

一夏の専用機全員による、激戦が始まった。

 

「さあ! ただいまからフリーエントリー組の参加です! みなさん、頑張って王子様の王冠を目指して頑張ってください!」

 

「なに!?」

 

城の門がぶっ飛び、中から数十人単位でシンデレラたちが、押しかけてきた。

 

「織斑くん、おとなしくしなさい!」

 

「私と幸せになりましょう、王子様」

 

「そいつを……よこせぇぇぇ!」

 

襲いかかるシンデレラにメイド組はプランBを発令する。

 

「折紙さん、お願いします」

 

城の陰から姿を現したのはメイド服を着た折紙だった。

彼女の手元には()()()()()()()が握られていた。

 

「邪魔ものは排除させていただきます」

 

無表情のメイドはバラララっと襲いかかるシンデレラを当てていく。

勿論、弾はB.C.T.L。

次々とシンデレラたちは消えていく。

 

「見つけたぞ、一夏!」

 

隙を突いて箒が現れた。

 

「その王冠を寄越せ! そうすれば、……そうすれば……」

 

「捕まる前に逃げる!」

 

「ふざけるな!! とにかく寄越せ! でないと斬るぞ!」

 

なにそれ、怖い! 誰か助けて!

 

「こちらへ」

 

「へっ?」

 

俺は足を引っ張られて、セットの上から転げ落ちた。

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