輝く
確率的に存在する数多の時空。ゆらぎ、時に交わり、繰り返す。
ウマ娘。走るために産まれた彼女たちは、数多もの
彼女たちのレース結果は、まだ、誰も知らない。
「ハア……ハア……ハア……ハアァー……勝った……」
黄色い歓声。観客席から聞こえてくる賛美の声は普段聞き慣れないフランス語ばかり。だからだろうか?それとも……
「コンプ……おめでとう……」
最前列で涙を流す男性、トレーナーの声がいつもより、よく聴こえた気がした。まだ整えきれない呼吸のまま、彼へ近づいていく。
「うぅ……本当に、おめでとう、ブリッジコンプ。」
遠い、とても遠い。フランスの地まで私を連れてきてくれた、付き合ってくれた彼。
今言わねば、いつ言うのか。
「コンプ……?」
覚悟は決まった。
「トレーナーさん……好きです!!」
‐10月22日‐
目尻からこめかみに、何かが伝う感覚で目が覚めた。
「……私、泣いてるの?」
なんだかいい夢を見ていた気がする。今の私にはないもの、大切に思ってくれるトレーナーさんや、大きな名声、そして勝利。欲しいものが全て手に入った夢だった。そんな気がする。
「朝の用意しないと……」
感傷に、夢に浸ってばかりいられない。なんせ今日は普通の月曜日。体調が悪いわけでもないので、私の学舎、トレセン学園へ向かわねばならなかった。いつものように、憂鬱な悩みを抱えて。
いつも通りの朝のルーティンを過ごし、学校へ向かう。早くもなく、かといって遅刻するでもない、そんな時間。校門前のたづなさんに「おはようございます」と、あいさつをする。するといつも通り「おはようございます」と、あいさつが返ってくる。いつもと同じだ。
そのまま変わりなく教室へ入ると、クラスメイトに軽くあいさつをして席へと着いた。
「おはよう、コンプ。土日はどうだった?」
「おはよう、ヴァッサゴ。特に何もなかったよ。いつも通り。」
ロータスピンクのツインテールに赤のラインの入った黒いバンドをつけたウマ娘。私の友達、ヴァッサゴが話しかけてきた。これまた、いつも通り。なんせ彼女は目の前の席にいるわけで、くだらない世間話やらをして、朝のHRまでの時間を潰すのが恒例だった。
そうやって話をしながら朝の用意を終わらせていると、キンコンカンコンと朝のチャイムが鳴る。同時に先生が入ってきて、HRが始まった。
「……というわけで、毎週言っていますが、そろそろトレーナー契約の締め切りになります。来月の9日までにトレーナーを見つけて書類を出してくださいね。でないと、来年からトゥインクルシリーズに出走できませんから、注意してください。」
先生の最後の連絡、トレーナー契約について。これこそ、私の憂鬱の種だった。