ウマ娘 phononstars ☆   作:Pz.III

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共鳴 α

時間は正午を過ぎ、食堂にはお腹をすかせた生徒やトレーナーが集まっている。退屈な座学を終えた解放感で、皆どこか浮かれた感じがある。午後はトレーニングだからかもしれない。

 

「いただきます。」

一方私の心は暗かった。座学なんて集中して聞いていれば心を満たしてくれる。でも、こうやって食事を摂っている間はそうはいかない。

悩みというものはこういう時に心を蝕む。

「はぁ……」

箸を止めて、思わずため息をつく。練習をやっても、選抜レースに出ても結果が出ない。だからトレーナーが付かない。

(どうしよう……もっとトレーニングを増やして、レースもいっぱい研究して……)

そうやって悩んでいるとカタンと向かい側の席にトレーが置かれ、誰かが座った。

「どうしたの?冷めちゃうよ、それ。」

「ヴァッサゴ……ううん、何でもないの。」

「嘘つかないでよ、今だってため息ついてたじゃない。最近なんか悩んでる感じするし。」

「そんなこと……」

言葉に詰まる。事実として、今の私には悩みがあるわけで、でも、相談して簡単に解決できるものじゃない気がした。

「当ててあげよっか。トレーナー契約のことでしょ?」

「んっ……」

さらりと悩みを当てられて狼狽してしまう。

「どうしてそう思うの?」

「だってお昼いつもそんなだし、ホームルームの時もさ、ちらっと顔見たらすごい萎えた顔してたじゃない。」

「うっ……そんなに分かり易かった?」

「うん、とっても。」

そんなに分かり易かったのかと恥ずかしくなっていると、彼女は意外な提案をしてきた。

「そんなに悩んでるならさ、私のトレーナーに相談してみよっか?」

「え?」

思わず「マジ?」と続けてしまった。「マジマジ」と返ってくる。

「じゃあさ、お昼過ぎたら私のトレーナー室に来てよ。」

「そ、そんなにすぐ?」

「うん。だってさ、友達がずっと暗い顔してるの、嫌だもんね。」

そうやって彼女は笑顔を見せてくれた。

 

時間は13時過ぎ、コンコンと目の前のドアをノックすると男性の声で「どうぞ」と返ってきた。「失礼します。」と言いながら中に入ると、ヴァッサゴともう一人、彼女のトレーナーがいた。

「こんにちは。」

「こんにちは。そして初めまして、ブリッジコンプ。まあ、とりあえずそこに座ってくれ。」

促されるまま中央のパイプ椅子に座る。すると私の隣にヴァッサゴが座り、その反対にトレーナーが座った。

「改めて初めましてブリッジコンプ。俺の名前は玉瀬(たませ)(みお)。知っての通りヴァッサゴのトレーナーをやってる。よろしくな。」

「よろしくお願いします。」

軽く会釈するとつづけた。

「早速だけど、ヴァッサゴから聞いたその、君のトレーナーのことなんだが、正直俺には厳しいな。」

「そう……ですか。」

やっぱり無理か、と思いうつむく。

「えぇ~!!いいじゃないトレーナーさん。コンプがいたほうがもっと楽しいのに。」

「そうはいってもな、俺もまだ新人で、一人を見るので手一杯なんだ。本当にすまないブリッジコンプ。」

そう言って彼は頭を下げた。

「こちらこそすみません、わざわざトレーニングの時間を削ってまで私に時間を使っていただいて……その、ありがとうございました。」

立ち上がって頭を下げる。そのまま暗い顔を見せないようにドアの方を向こうとする。

「ちょっと待ってくれブリッジコンプ。別に俺が担当できないって話であってだね……」

そういわれた時だった。コンコンとドアがノックされた。

「お、ちょうど来たな。入ってくれ。」

「来たって……?」

私の疑問の答えはかちゃりと音を立てて開くドアから入ってきた。

「失礼します。」

すらりとしたスリムな体つきと少し高めな身長の男性だった。肩下まで伸びた長い黒髪がふわりと揺れ、中性的なキリっとした顔立ちが見える。だけど、少しだけ暗い感じの顔つき。そしてグレーのスーツの襟元にはキレイなトレーナーバッチがあった。

「あなたは……」

「君は……」

目が合った。

瞬間、運命を感じた。

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