臆病者が行くIS学園 作:灰人
「安部君」
「ん? 貴方は誰でしょうか」
イッけねつい敬語で喋っちまった……て言うか誰だこの金髪さん。
「や、やだなあ忘れないでよ……一応君と同じクラスのシャルル・デュノアって言うんだけど……」
「へ〜そうなんだ。何かと生活しにくいとは思うけど頑張って」
「う、うん。それは頑張るけど……随分違うんだね」
「何が?」
違う? 何が言いたい。主語を言え主語をとは、言えないので心にしまっておく。
「一夏とのモチベーションの差……っていうのかな? 全体的にやる気が感じられないんだよね」
今カチンと来たぞ。なんだよモチベーションの差ってバカにしてんのか。俺だって好き好んでこんな兵器持ったわけじゃないんだよ。何も知らない癖に。
「あのな一応言っとくけどな、俺はお前らと違ってISにあんまり触れてなかったんだよ。ただ試験会場ミスってISに触ったら起動したんだよ」
あーイライラする、しかも一夏とって……なんで皆一夏基準なんだよ、馬鹿じゃねえの。普通からしてみれば一夏も充分狂ってるとは思うんだが……気のせい?
「でもそれって一夏も同じなんじゃ無いの?」
「…………」
「ゴメンね? 変な事言っちゃって。あはは」
うっざ。なにはい論破みたいな顔してんだ。
「……俺用事があるからこれで。機会があったらまた。マジウゼエ」
最後のうぜえは聞こえないように言い、その場から足早に去った。
〇〇〇
「やっと来たわね」
「…………」
先の転校生のせいで若干イライラしている俺。早く終わんねえかな。
「殴るなら早くしてください。俺勉強しなくちゃいけないんで」
「アンタマゾ? なんで好き好んでアンタみたいなクズ殴んなきゃいけないわけ?」
「じゃあ何で呼んだんだよ。意味が分からない…………ああ、俺みたいな下等な屑には理解できない、さぞ高尚な理由があるんですね。わかります」
言い終わると殴られた。別に痛くは無いから問題は無いのだが……こんなレベルで大怪我出来るのか心配になってきた。
「なんで俺を目の敵にするんだ? 妬み・嫉みか? うん?」
「……アンタ等帰っていいわよ」
取り巻き二人を帰らせた後、女はフゥーと息を吐いた。
「――――単純に気に入らないだけよ。土下座して解決すると勘違いしているアンタが」
「え、そんだけ? 俺が専用機持っているのが気に入らんとかそういうのじゃないのか……」
これじゃ色々考えてた計画が台無しじゃん……つまんねえの〜
「話終わった? じゃあ帰るわ」
女の横を通りすぎて寮に帰ろうとしたら、頭に衝撃が走る。いきなりの出来事だったので思わず転倒してしまった。
「アンタのスカシた態度。屑みたいな性格。男の癖に男の癖に男の癖に男の癖に男の癖に――――」
女の容赦の無い蹴りが、腹を足を……とにかく蹴られまくる。痛え……。
「ぐっ……や…めろ」
「何でゴミが喋ってんの? 理解できなーい」
不愉快な笑い声が耳に侵入してくる。うぜえ……でも反抗しても意味がないことは分かりきってる。ここでそんな事をしても更に調子に乗るだけだ……。
「ねえねえ起きてよ〜」
胸ぐらを掴まれ無理やり起こされる。女の顔はさっきと打って違って感情の無い人形のような顔。
女は空いてる手で腹を殴る。
「ガハッ!?」
口を抑えゲロを吐き出すのを我慢する。コイツ容赦ねえ……なんちゅう世間なんだよ……これもISのせいなのか……?
「ゲロ吐くとかやめてよ、ね!」
女から繰り出された蹴りは俺の腹に直撃して――――
「ウゲエェエ」
とうとう我慢できずに胃の中の内容物を吐き出してしまった。女はそれが面白いのか腹を抱えて笑っていた。恐い……なんなんだよ! こいつは! 何で人を殴って笑ってるんだよ! こんなのおかしい……狂ってる。
落ち着け……怖がるな……俺はコイツらを退学にするために「まだ足りなーい」……は?
女はそう言ってゆっくり近づいて来る。
「や、やめろ……来るなあぁ!」
「やっぱそうだよね! 安部はそうでなくちゃ☆」
女は何が嬉しいのか、俺に情け容赦なくパンチを繰り出す。もはや顔とか関係無しに殴る。女は終始笑顔で、それが更に恐怖心を加速させる。
「……ふうースッキリしたー。安部君ありがとね〜じゃあまた明日」
やっと終わった……俺も寮に帰ろ。
「あ、あれ? 足に力が」
やべえ、体中が痛え……誰か来ないかな…………姉さんに電話……いや自分で解決するって言った手前、言うのはちょっと気まずい。……仕方が無い自力で帰ろう。
痛む体に鞭をうち、壁に支えてもらいながら、ゆっくりと寮へ戻った。
寮へと戻る途中何度も生徒とすれ違ったが肩を貸してくれるなんてイベントは無かった。あったの嘲笑と敵意の視線だけだった。
近くにあった手洗い場に行き、蛇口をひねる。取り敢えず泥だらけの顔を洗い、次に口をすすぐ。
口が切れてるのか、ピリッとした痛みが襲い、眉をひそめる。
「ついてねえ……はあ」
今更だけど俺はこの学園に来て間違いだったと再認識した。
〇〇〇
「やっと着いた……泣きそう……」
もうダメだ……早く部屋に入ろう。俺は扉を「おかえ――どうしたの?!」…………ハア。
「姉さん。勝手に入らないで下さい」
やっと一息つこうと思ったら、姉さん襲来である。どこのラノベ主人公だ……はぁ。
「あ、ごめん……じゃなくて! なんでそんなボロボロなの?!」
「階段から落ちて。グランドで転んだりしました」
「明らかに嘘ってわかる。嘘をつかない!」
「別に姉さんが痛くないんだから良いじゃないですか! 良いんですよ俺は……別に前と変わらないし。それに自分で何とかするって姉さんに言い「でもこんな大怪我見逃せるほど私はっ」……」
「心配しなくても大丈夫です。なんとかしてみせます」
それにこれ以上心配されると、姉さんに甘えてしまいそうで……嫌だった。
「姉さんも仕事忙しいし疲れてるんですから……無理しないでください」
「私の心配するより自分の心配をしなさい!」
やめろ、それ以上心配しないでくれ……嫌だやめてくれ、俺に優しくしないでくれ! 俺の中に入ってくるな……折角覚悟を決めたのに……どうして?
俺は自分の心を悟らせないために笑顔を作った。姉さんを心配させないような言葉を口からひねり出す。
「そんなに心配しなくても俺は死には「バカ!」姉さん?」
姉さんは俺の言葉を遮り俺を抱き寄せた。なんで俺は抱かれてんだ? なんで? なんで? なんで涙が出てくるんだ? 分からないわからないワカラナイ。
「汚いから離して? 風呂も入ってないし……」
「……なんでそんな事しか言えなのかな〜人の好意は素直に受け取っておきなさい」
「……はい」
姉さんの心音がトクン、トクンと脈打つのを感じる。姉さんの体温はとても暖くて気持ちよかった。しばらく体温を感じていたら今更になって、眠気やら何やらが襲って来た。
「……おやすみ」
何かが聞こえたような気がした。
夢を見ていたような気がした。まだ俺がヘタレになる前……中学くらいか? その時は皆とは普通に話も出来たし、土下座もしなかった。
――いつから俺はヘタレになった?――
――いつから俺は土下座でなんでも解決しようと思った?――
――いつから俺は――――もういいや、なんでこんな事を考えるんだよ。
ゆっくりと目を開け、半身だけ起き上がる。
あの後どうなったんだっけ? よく思い出せない……なんだろう……なにか大切なことを――なんでもないか。
俺はゆっくりとベッドから出て行き、昨日入れなかった風呂に入る。と言っても今の時間は6時なのでシャワー程度しか浴びれないんだけど。
俺は制服を――しまった……めっちゃ汚れてる……どうしようか……やべえ。
「洗濯はどうだ――出来るわけないだろ……やっべまじやっべ」
よし今日はサボろう。それが良い。先生風邪ひきました〜って言ったらなんとかなるだろ。良し。そうと決まれば風呂に入ろう。
俺の気分はオゾン層を突き抜ける位にハイになり、バスルームのドアノブを捻った。
「風呂風呂風呂風呂風呂風呂風呂風呂風呂ォォォォォォ」
ジョ〇よろしく、奇妙な奇声を発しながらいざ「なんだ入ってきたんだ〜一緒に入る?」は?
なんだ今のは? 落ち着け〜落ち着けよ〜今の状況を確認しろ。
今日サボろう。
↓
奇声を発しながらバスルームに入る。
↓
何処からともなく聞こえてくる声「いや君の前に居るんだけどね」な、ななな、なんじゃこりゃああああああああああああああああ。
「姉さん! なんで! なんでここに!?」
「いや〜君が寝ちゃった後、私も寝ちゃってさ〜困った困った」
詰んだ人生詰んだ……もう駄目だ………俺は痴漢の容疑で逮捕されるんだ……しにたひ……。
「まあ私はもう終わったから次どうぞ♪」
「あ、わかりました。じゃなくて!」
この人は何も思わないんだろうか……こんなのね絶対おかしいと思うんだ。
とりあえず落ち着く為にシャワーを浴びよう、うん。なんか体の節々が痛いし……ハァ。まあ原因は分かってるんですけどね……あいきゃんふらいしたい。
そんなことを考えながら、シャワーの蛇口を捻る。シャワーから水が出始め、頭とかを洗う。
「あ〜気持ちいい〜風呂は人類が見つけた宝だよ」
どこぞの兵器よりずっと有能だしな。
そんなこんなで風呂場から上がり、スウェットへと着替え、バスルームから出た。
「あ、おかえり」
「……ただいまです」
この人いつまで居るんだろ? 今日学校なのに……と言っても俺はサボる予定だけど。そんなわけで学校行かないのかって聞いてみる。
「今日学校休みだよ?」
え、ええ、ええええ、マジで?「マジマジ」……ひゃっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。マジかよ! キタコレ! 俺 の 時 代 キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
そうと決まれば家に帰ろ! うんそれが良い。母さんの肉じゃがが俺を待っている! いざ行かん!
「姉さん外に行きたいです!」
「へえ、じゃあ外出届を受付で貰ってきてね」
「はーい。じゃなくて! 出てってくださいよ!」
「えーだってまだ6時だよ?」
そうだった……まだ時間が一杯ある……嫌だなあ〜どうしよっかな……取り敢えず制服を畳んで、あっちで洗濯しよ。それでそれで何持っていこうかな……あ、そうだ!
「姉さん姉さん!」
「?」
「一緒に俺の家行きましょ!」
「!?」
姉さんかなりビックリしてる様子で、フハハ気分がええのう。姉さんは迷っているのか、しばらく考え込んでいた。まあ来てもらってもあんま意味ないんだけどさ〜でも偶には友達を連れて行きたいっていう俺の願望があるわけでして、テヘペロ☆
「……行くわよ。行ってやろうじゃない!」
「本当ですか!? やったやった。姉さんいい人〜流石〜」
ヤッベ早く9時位にならないかな〜超楽しみ。そうと決まれば腹ごしらえですな。
「姉さん俺朝飯食べてきます」
返事も聞かずにさっさと部屋を出ていき、食堂へと向かった。
〇〇〇
カレーうどんをすすりながら、今日の予定を立てることにした俺。そんなわけで今日の予定。
家に帰る→母さんのお腹の子を見る→昼飯→何か色々→持っていく物を纏める。まさに死角なし、完璧な作戦である。もう早く家に帰りたいですわ。父さんに会えないかな……会えたら良いんだけどな。
妹? 怖いからパス。だってヤンキーなんだもん。だもん☆
やっべニヤニヤが止まらねえぜ。他の奴らから滅茶苦茶睨まれてるけど、そんなの気にしないぜ。今日はホンマにええ日やでぇ。
「双真」
「は? 誰?」
「何そんなにニヤニヤしてんだよ。良いことでもあったのか?」
「……まあそんな感じ。だって今日学校休みだからさ〜家にでも帰ろうかと思って」
「あ、そうか。そりゃ嬉しいよな」
一夏と話していたら、団体さんがこちらへやってきた。あ、勿論敵意の篭った視線付きで、言わないでも分かると思うけど、篠々之さんとチビッコと――金髪の人? 誰だ? まあいいか。
そう言えばセシリアが居ないな……まあいいか、俺には関係ねえ。
俺は自宅ライフを楽しむだけだ(キリッ なんちゃって☆
てか俺のテンション上がり幅がやばいんだけど、もう早く家に帰りたい。帰ったらまず何をしようか。
「なあ一夏」
「ん、なんだ?」
「俺あの金髪の人知らないんだけど……誰か知ってる?」
一夏の対面に座る金髪の人を指差し、確認を取ってみる。すると皆から呆れたような声がしたり、ハアとため息をつく人もいた。因みに金髪の人は驚きの余り目をむいていた。
「……それ本気で言ってるのか?」
「し、仕方ないだろ。教室行ったらヴォーデヴィッヒさんが自己紹介してるとこだったんだから……」
「なんでアイツの名前を覚えて、シャルルの名前を覚えてないんだ!」
「影が薄かったんだよ……きっと」
「一応シャルルだって男なんだから……影が薄いって言うのは、無いと思うけどな」
「え! まじー男だったの?! 知らんかった〜あー知らんかった〜てっきり女かと思ったぜ!」
俺が女って言った瞬間、シャルル君? は体を強ばらせ慌て始めた。なんかおかしな反応だな……一発騒いでみるか? でもリスクが……ここで騒いだりして、織斑先生がくるかもしれない。
うーん、騒がない程度にやってみるか。
「へえーよろしくシャルル'ちゃん'あ、悪い、シャルル君だった。俺の名前は――ってどうせ知ってるんだろ? いやでも、男だったんか〜てっきりおれぁ'女'かと思ったよ。体とか細いしさ、ちゃんとご飯食べてる?」
「…………食べてるよう! 馬鹿にしないで!」
うーん何か良心が痛むな……まあいいか。別に俺は何も悪いこと言ってないし。
「安部、弱いものイジメは楽しいか?」
篠々之さんが何か言ってる。弱いものイジメ? ハッバロス。
「え? これイジメ? じゃあ俺が織斑先生に無意味に殴られたのも、そこのチビッコに無理やり戦わされたのも、イジメじゃないって言うんですか〜どうなんですか〜」
もういいやこの際全部言ってしまおう。俺の心の中にある物全部吐き出してやる。
「そ、それは……」
「一応言っとくけどな、アンタ等おかしいよ。だってさ俺等が乗ってるISってなんだと思う?」
「宇宙活動「それは表の顔だろ?」…………」
「俺達が使ってるISは人を殺せるんだぜ? そこんとこ分かってくれよ。それなのになんでやれ専用機が欲しいだの、飽くまでスポーツだからとか言えるんだよ! おかしいだろそんなの」
「私たちは別に戦争に行くわけじゃないんだから、良いじゃないそんなの」
「テメェ代表候補性だろうが、なのに何でそんな口叩けるんだよ。馬鹿じゃね? お前みたいな奴が候補生だとどこぞの国も大変だろうよ」
一夏達は拳を握り締め、今にも殴られそうな雰囲気だったので、
「これからは代表候補性らしい行動と責任をもってくださぁい(笑)」
そう言い捨てさっさと食堂を出ていった。
「怖かった……うわぁ膝が笑ってる……」
死ぬかと思った……はっははは……ハァ。どうしてあんな事言ったんだろ。折角みんなと仲直りしようと思ったのに……あーあ。もう嫌だ……ハハハ。
「……何か疲れた。早めに部屋に帰ろ」
「おい、そこのお前」
「俺の事ですか?」
声を掛けられた方向を向くとヴォーデヴィッヒさんがいた。この人っていつも無表情で何考えてるか分からない顔してるよな。まるで軍人みたいな人だな。
「おはようございます。どうしたんですか? 貴方から声を掛けてくるなんて」
「フン。貴様の不抜けた面が気に入らなかっただけだ。――尤も先の大立ち回りは中々面白かった」
「いや、俺は至極真面目に言ったつもりなんですけどね……見苦しい物を見せてしまって申し訳ありません」
改めて言われる中々恥ずかしいな。うん、何かすげえ顔が熱い。
「まあ世の中そんなに強くない奴だっているんだって、言いたかっただけなんですけどね……ははは」
「そうだなお前は、その弱者の中の更に弱者だからな」
ううう、気にしてるところをズバッと抉ってくるなあ……この人絶対強いんだろうな……良いなあ、俺ももっと強くなって皆をぎゃふんと言わしてみたい。
「じゃあ俺これから用事があるんでお先に失礼します」
そう言って俺は駆け足気味に自室へと足を進めた。
双馬君の心変わりっぷりがヤバい。もっと深く表現したいですな。小説って難しい。