臆病者が行くIS学園 作:灰人
双葉が出ていった後、気絶した双真を楯無は抱き抱え、ベッドに寝かせた。
「可愛い寝顔」
思わず呟いてしまう。自分より遥かに頼りない双真はもはや楯無にとっては掛がえのない存在になりつつあった。
最初の印象は良くは無かった。不意討ちと言うルール違反を犯し、尚且つ危なくなったら降参。その様な男に何処に好感を持てるというのだろうか?
だが教員室での千冬や一夏達との対話で少し見方が変わった。誰も知らない双真の奥底にある感情をしった。
子供のように、泣き叫び今の現状を訴える。
そんな下らない事が楯無の心を揺さぶる。そして楯無は双真と屋上で邂逅を果たした。
その姿は、やはり自分の第一印象通りの男だった。正直ここまで印象通りだと、自分の背中が薄ら寒くなったのは覚えている。
そして保健室での対話。自分が脱臼しているのにも関わらず、楯無を治療しようとした姿に、ドクンと心臓が高鳴った。
他の人に言ったら、多分馬鹿にされるだろう。楯無自身誰彼構わず、意識する訳では無い。でもその時ばかりは、柄にも無く赤面してしまった。
なぜこんな男に? 疑問が浮かぶばかりで、解答がちっとも浮かばない。
「何で君なんかに惚れたんだろね? 可笑しな話だよ。本当に」
答えは未だに分かっていない。
○○○
「何で君なんかに惚れたんだろうね? 可笑しな話」
は? 今なんて言った、この人。信じられねえ。よーしここはねたふりしとこう。
……どっか行かねえかな……姉さん。正直心臓バクバクでうるさいんだが……誰の心音かなんて言わなくても分かると思うが、俺の心音だ。
それにしてもいつまでこうすれば良いんだろうか? すっげえ居心地が悪い。
そんなことを思っていたら、姉さんが扉を開け出ていった。あー良かった。
「……ふー漸くいなくなったか」
ゆっくりと起き上がり、蹴られた場所をさする。あのバカ妹手加減せずに殴るから、嫌なんだよ。昔はすっげえ可愛かったんだけどねぇ……いつからか急に暴力的になったんだよな。嫌な話だよ、本当に。
俺はベッドから降り凝り固まった体を伸ばそうと軽いストレッチを行う。
ストレッチする事数分、ポケットの中にある携帯電話が着信を知らせるために音楽をかき鳴らした。
着信の主は、俺が一番会いたい人の名前が液晶に写った。
「もしもし。どこいるのさ? 今」
『すまんな。今は日本なんだけどさ、まだ帰れそうに無いんだ』
「そっか……なら仕方ないよ」
『悪いな。所で深緑の調子はどうだ?』
「……さあ。別にいいだろ……ISの事なんて」
そう言うと父さんは大声上げて笑った。スピーカーから割れんばかりの音量に、俺は思わず電話を耳から離した。
て言うか何で笑うんだよ。
『そうかーまあそうだな。予想どうりの反応で思わず笑ったよ。すまんな』
「………………」
『そう怒るな。俺は自分の息子が変わってなくて安心したよ』
「俺は変わらないよ。一生ね」
『うん、そうだ』
だがな、と父さんは声を低くして言葉を紡いでいく。
『何時までも逃げてばかりじゃ話にならんな。お前はやれば何でも出来るのに、お前のその性格で台無しだ。これじゃ磨けば光る原石もただの石ころだ。ゴミだよ。中学の時みたいに何も考えずに暴れてみろ! それで一杯悩め。まだ若いんだ……やる前から考えていたら、最高に楽しい10代も灰色になるからな」
「……でも「でもじゃねえ! やるんだよ」……うん。やってみるよ」
『俺や母さんの頭だったらいつでも下げてやるから、心配すんな。女尊男卑なんて風潮なんて忘れてみろ。案外見方なんて変わるもんだぞ」
「……うん。俺頑張るよ。こっから変わる、約束するよ。やっぱ世界でIS使えんの俺と織斑だけだもんな、俺の背中に男の全部が乗っかてるんだよな。いつまでもへたれてたら、皆に笑われちまう」
父さんはまた笑った。結構良いこと言ったつもりなのに……ぐぬぬ。
『そこまでは言ってないんだがなぁ。双が言うんだ間違いない。俺は信じてるからな』
「任せとけって、今度会うときにはもっと格好よくなってみせるよ」
『そうか。まあ応援してるよ。じゃあなもう切るぞ』
通話が終わらやいなや、俺は携帯を投げ出しベッドに体を預けた。
「……やってやる。俺は変わる。んで持って強くなる。ISもあいつらよりも今の俺よりも……!」
「君って結構恥ずかしいんだね。人前でそんなこと言っちゃうなんて」
ん? おおおっと、何か姉さんの声が聞こえたぞぉ……おかしいなーさっき部屋から出たの見たんだケドナー。
背中に冷や汗が伝う。何かこの感じは覚えがあるぞ。
確か俺の部屋が勝手に掃除されてて机の上にエロ本が置いてあるあの感じだ!
「アーサラシキサンオソイナードコニイッタノカ「君のすぐ近くにいるんだけど」…………そっすね」
「素直なことは良いことだよ。褒めてあげる」
頭を撫でられる。うーんすげえ恥ずかしい。独り言もそうだけど、この状況もな。
顔が熱い。たぶんすげえ赤いんだろうな顔。
「どうしたの? 下向いちゃって。もしかして恥ずかしいんだー可愛いねぇ」
勝手に自己完結して調子に乗る姉さん。
「そうです恥ずかしいです! もういいでしょ。帰りますよ」
すると姉さんは驚いたような表情をしてこっちを見てくる。どうかしたのだろうか?
俺が考えことをしていると、少し嬉しそうな顔をして口を開いた。
「そっか。うんそうだね。帰ろっか」
「はーい。それと姉さん」
椅子に座ってる姉さんに俺は素早く土下座をした。これが恐らく最後の土下座になるだろう。バイバイ俺のアイデンティティ。
「俺に戦いかたを教えてください」
「ふーん……いいよ、別に。ただし逃げないでね。絶対」
「覚悟は決めた。やんなきゃいけないことが出来ました……だからここで足踏みするわけにはいけないんです」
取り敢えず一夏ぶっ飛ばそう。目標はノーダメ。その為には一杯練習しなきゃな。
大分スタート遅れちまったけど、ハンデと思えば心の持ち用はいくらでも変わってくる。
「そ。ならいいわ。じゃあ帰ったら早速やるわよ」
「分かりました。じゃあ母さんに帰ること言ってきますね」
立ち上がり部屋から出ていった。
○○○
「良い息子を持ったな」
振り替えると作業着を着た老人がそこにいた。
「将来が楽しみですよ。本当に」
「そうだな。何と言っても 男でISを使えるのだから」
老人は胸ポケットから煙草を取り出し火を点けた。
「期待はしないで下さいよ? シゲさんの期待は果てしなく重いんですから」
「ふん。ワシは良い息子と言っただけで期待などしとらんわ」
それを期待しているというのでは? 言おうとしたが言ったら十中八九面倒くさくなるので、笑ってごまかした。
葉真は煙草に火を点け、シゲと呼んだ老人に問いかける。
「そう言えば前に面白い事が起こったと言っていましたが、それは何なんですか?」
「ああ。深緑の武装が設定したものと違っとんじゃ」
「……言っている意味が分からないんですが」
「面倒くさいやつじゃのう。砕羽はのう元々近接ブレードじゃったんやが……何故か遠距離ライフルになっておったわ」
一体何を言っているのか分からない。刀が銃に変化するなど前代未聞である。
「……あれからかなり調べたんじゃが、何も分からんかった。あのバカ兎ぐらいしか分からんのんじゃねえんかの」
「まあそもそもの点からそうですがあの深緑は色々と、おかしかったじゃないですか」
「そうじゃな。残りの
ちゃんと確認したんじゃがのうとシゲは一人ごちる。葉真は顎に手を当て口を開いた。
「まだまだ俺達の常識は通用しそうにないですねえ……本当に面白いモノを作りましたよ彼女」
「バカ言うな。良い歳こいた人間が世界巻き込んで、
そう吐き捨てるとシゲは煙草を灰皿に投げ捨て部屋から出ていった。
「……俺は信じてますよ。彼女の言ったISに心はあるって言葉――っていいたかったんどけなーやっぱ怖いわあの人」
あーやだやだとため息をつき葉真も部屋から出ていった。
漸く第一章的な奴が終わりました。短いですがそこは許してください。
感想・指摘待ってます。