臆病者が行くIS学園 作:灰人
本当に申し訳ないです。
「あ~やべえ。遅れてまう」
今俺は廊下早歩き気味でアリーナへ向かっている。理由は簡単である姉さんに今日の事を報告して向かっている為である。断じて姉さんとの修行が嫌だからでは無い。だって姉さんの事好きだし。修行結構好きだし。
本当は昼休みに行きたかったんだが、織斑先生の有り難いお説教のせいで飯食うだけの昼休みになってしまった。ふぁっく。
本当は放課後もお説教タイムだったが、トーナメント向けて少しでもISに触りたいと言ったら、驚いたような表情してゴーサインを出してくれた。いやー俺の性格もこう言うときは使えるね。
なんか性格が変わった? とか言われそうだが、この性格が俺の本質みたいなもんだから気にすんなよ。
そうこうしてると、アリーナの更衣室の扉まできた。さっさと中に入り、やけにピッチリとしたスーツに袖を通す。
これ着るのは本当は嫌なんだよねピッチリしすぎて時間かかるから。
そんな事を考えながら早数分。漸く履き終えピットゲートまでダッシュ。ここには『廊下を走るな。馬鹿者』とか言いながら、拳骨をお見舞いしてくる馬鹿者はいないので気兼ね無く走ることができる。
「双真行きまーす」
某ロボットアニメよろしく。粋な掛け声と共にアリーナを飛び出してまず視界に入ったものと言えば、ヴォーデヴィッヒさんがセシリアをワイヤーみたいな物で首を締め上げ、チビッ子をボコボコにしているシーンであった。
「一体何が起きてるんですかんねぇ……」
これ助けた方がいいかな? 痴情のもつれとかで揉めてるんだったら、すげえ声かけ辛いんだが。
あ……セシリアの顔が赤を通り越して、紫っぽくなってる。死ぬかもしれないから助けよう。
俺は砕羽を呼び出し、ワイヤーみたいな奴に狙いを絞り引き金を引いた。
ワイヤーは切れて、地面にドサッと落ちるセシリア。うわあ……ゼエゼエ言ってる。ちょっとやり過ぎだろ、これは。
「邪魔をするのがお前みたいな雑魚とはな」
「そんな格好つける前に、相手の事を考えようぜ。あんまやり過ぎて退学とかなったら困るのアンタだろ」
「…………」
ありゃりゃ黙っちまった…………反省してくれたのか? と思ったらワイヤーが伸びてきた。
「こりゃこれ以上の会話無理っすな」
バーニアを吹かし右へ左へ避けていく。ああああああ面倒くさい!
逃げる際に視界に入るのはチビッ子の薙刀みたいな奴。これいいな使わせて頂きますか。
虚空を四つの砲門から打ち出す。当たらなくて良い、これは只の牽制(のつもり)。その隙に薙刀まで高速で向かう。
「取ったぁ!」
迫るワイヤーをぶった切り、ヴォーデヴィッヒさんの元へ向かう。途中ワイヤーが襲い掛かってきたが無視。所詮拘束用の武装など速度に限界があるので、迎撃には向かない。やるなら不意打ちだよな。
「貰ったああああ!」
薙刀を横薙ぎに払おうとするが、ヴォーデヴィッヒさんの目の前で固まってしまった。なんだこれ。
やべえ……故障か? 意味わかんねぇ! ふざっけんな動けよ!
「デカイ口を叩く前に、もっと強くなれ。話はそこからだ」
「……うるっせえ! ばーか! 今回は偶々故障したから負けたけど、次は負けねえよ!」
「吠えるなよ。ただの犬がっっ!」
間近でキャノン砲の引き金が引かれた。ドオン! と爆音が鳴った。俺は来るべき衝撃に備え、目を閉じ体に力入れた。意味無いけど。
……だが待てども待てども衝撃が来ない。何が起こったのか、分からない。
「ふん……命拾いしたな」
何いってんだこいつ…………すごく気になるので、目を開いてみる。
そこには『新しい武装が解放されました』と無機質な文字で、表示されていた。
「そこで何をやっている!」
おおっとまた随分と面倒くさい奴が現れたもんですな。ヴォーデヴィッヒさんがISを解除した瞬間、自由になる体。
ん? 故障じゃないのか、これ。どういうことだ……全く分からんぞ。
「何が起こった。説明しろ」
「あー俺とセシリアと鳳さんとヴォーデヴィッヒさんで実践形式で練習していたら、打ち所が悪くて……すいません」
ヴォーデヴィッヒさんが信じられないと言う目で俺を見てくる。なんか変な事言ったかな俺。
織斑先生はしばらく俊巡した後、何処かへ連絡していた。
「安部とヴォーデヴィッヒは後で職員室に来い。じっくり話を聞かせて貰うぞ」
はー? また話さなきゃいかんのか。面倒くさいな、こいつ嫌われてんの気付いて無いんかね? 俺は一秒たりともアンタの事をいい人だと思ったこと無いし、教えを請いたいとも思った事がねえよ。てか教員免許無い奴が偉そうにしてんじゃねえよ、カス。
だがそんな事を言うと、半殺しを通り越して全殺しコース間違いなしなので黙って頷く。長いものに巻かれた方が話が早く進む事って良くあるよね。
○○○○
「時間を取らせてしまってすまなかったな。もういいぞ」
織斑先生の煩わしいお話も終わり、職員室から出ていく。時間は丁度夕飯時、これは目的地は決まったようなもんですな。どうして面倒事が終わった後って、謎の解放感に包まれるんだろうか? こればっかりは永遠の謎かもしれない。
「さーてぱぱっと終わらせますか」
「おい。そこの貴様」
「俺っすか?」
何かと思えば一緒に事情聴取したラウラ・ヴォーデヴィッヒさんじゃあありませんか。何やかんやで口裏合わせてくれるし、この人はもしかしたらツンデレかもしれない。
「何故あんなことを言ったんだ」
…………すっげえ偉そうに口聞いてくんのな。まあ、別に気にしないけど。
「面倒事は早く終わった方がいいでしょ? ま、あんま気にしない方が良いと思います」
「……………」
「でもセシリアと鈴音さんには謝りの言葉を入れといた方が良いと思いますよ」
なんで私が……みたいな顔してるんですけどこの人。うわあ……怪我させといて謝らないとかどういう教育受けてんだよ。
相当DQN気質だな。悪い事をしたらごめんなさいだろ……常識的に考えて。
「だがあれは奴等がISをファッションぐらいにしか感じていない、軟弱な考えを持っているからだ。私は断じて悪くない」
何だコイツ……本気で思ってんのか? 思ってんだろうなあ……だって目が本気くさいし。これは相当質が悪い。
「分かりました。先ずは飯にしませんか? そこでゆっくり話をしましょうよ」
ヴォーデヴィッヒさんは首肯し、二人で向かった。
○○○○
「イヤッホオオオオオオオオ! やっと解放されたぜ! あのギンパッツがあああああああ!」
部屋に帰るなりにベッドにダイブ! ベッドの上でトランポリンをしながら日々のストレスを叫んで発散する。今日のストレスの原因はもっぱら
「なああにが! ISをファッションと勘違いしてる(どやっ)! だよ! お前が判断してそれを制裁を加える立場じゃねえだろうがバーーーーーカ!」
イライラしか溜まらねえよ、畜生め。ああいうのは本気で思ってるから更に性質が悪い。もうマジ迷惑。出来れば近くによらないで欲しいですね。
「しかもセシリアはトーナメント出れねえとか言ってたしさああ! もうマジなんなの! あいつ邪魔しかしてねえじゃん!」
しかもその後に何て言ったと思う? 今のお前ならタッグに組んでやらん事もない、光栄に思え等と意味不明なことを言って部屋に帰って言ったんだぞ。ふざけんなカース! どんだけ上から目線なんだよおおおおおおおお!
親の顔が見てみたいわ。
俺がベッドでトランポリンしながら叫んでいると、扉がノックされた。
「開いてますよおおおおおおおおおおおおお!」
扉が開き、来客者が顔を見せた。おー結構大所帯だなあ。
「どうしたんすか? 姉さんに布仏さんにあともう一人はだれだっけ?」
「えーべーやんそれは酷いよー」
「いや知らないし。てかべーやんやめろ」
「布仏本音です! これからよろしくー」
「あーね。布仏さんが言ってた妹ってアンタの事だったんか」
「そうだよー今朝はごめんねーお姉ちゃんがそそーを働いたみたいで」
「ああその件に関してはもういいんだ。俺も謝りたかったんだよ。少し言い過ぎたかも……って」
あ、やっべ今完璧に二人の事をかやの外に放り投げてた……こっからフォローしなければ。
俺は一回トランポリンをやめて、ベッドに座った。三人にも立ちっぱなしじゃ悪いので適当に座るように促す。
「安部くん。今朝はすいませんでした」
「いや俺も言い過ぎちゃいました。ごめんなさい」
でも意外だよなあ……こんな真面目そうな人がピッキングとかやらかすんだもん。人は見かけによらないって、マジでこの事だな。怖い怖い。
「それはお嬢様に指示されたので仕方なく……本当にすいません」
「うわぁ……それは御愁傷様です……貴方も辛かったんでしょうに。姉さんだったら仕方ないですね」
「そうだねーいくらお姉ちゃんでもお嬢様じゃしかたないねー」
あ、姉さんの肩がプルプルと震えているぞ。これは面白い物が見れたなー役得役得。
まあこれ以上やって怒らせるのも良くないし適当に謝ってお菓子でもあげとこう。
「まあ姉さん。これ食べて元気出してくださいよ」
まだ開いてない黒飴を姉さんに押し付けた。丁度良かった俺黒飴嫌いだし。
「いや私黒飴そんなに「大好物なんですか!? 」………………うん、ありがと……」
しゃあ! 腹いせに妹の部屋からパクってきた好物を押し付けたことによって、テンションが上がりトランポリンを再開する。
「それでなんの用があってここにきたんで? 超暇だったんで助かりましたけど」
「私が説明しましょう」
虚さんは眼鏡をクイっと上げ説明を始めた。要約するとこんな感じ。
・相方決まったの? 貴方友達いなくて心配。
・いじめ大丈夫?
・最近お嬢様がやる気になって、仕事がすぐ終わります。本当にありがとうございます。
「あーイジメね。忘れてました。」
「べーやん虐められてたの? ごめんね。気付いて上げられなくて」
「ほんねちゃんが気にすることじゃあ無い。明日以降にあいつら全員ぶっ飛ばすからみとけよー俺の超かっこいところ」
「……うわあ。すごい格好いい事言ってるけどベッドで跳ねながら言うと凄くカッコ悪いわね」
……今すごく心にグサッと来た。凄く痛いです、心が。
「そういえば安部くんに敷島製作所から貴方のISの武装が届きました。よければ明日の放課後に整備室まで足労お願いします」
「新緑の新しい武装? どんな武装っすか。布仏先輩」
「私達は詳しく知りません。有効なものを持ってきました、としか」
おおー新武装か……なんか燃えるな。こういう展開。どんな武器なんだろうか? 懐に入られた時用のブレードとかだったらマジで嬉しいぞ。俺が泣いて喜ぶね。
「では全ての連絡を終えたので私達はこれで。お休みなさい」
「あーい連絡ありがとうございます。おやすみなさい」
三人は往々にして立ち上がり、出ていった。さあて俺もシャワー浴びてシコッて寝よ。
○○○
「ただいまー」
本音が扉を開けルームメイトに帰ってきた旨を知らせる。ルームメイトは気付いていないのか、そのままキーボードをもの凄い早さで打鍵していく。
本音は何時も見慣れているのか、棚を開き菓子を取り出しながらルームメイトに話しかけた。
「さっきべーやんの部屋行ってきたんだぁ。そしたらねべーやん虐められてたんだって」
「ふーん」
「私達も何とかして上げたいねー」
「ふーん」
「晩御飯食べた?」
「ふーん」
ルームメイトがあまりにも集中しているので、声を掛けたのは失敗だった、と思ったが事情が変わった。
作業しているルームメイトの背後に立ち、首筋にフーと息を吹き掛け、作業の強制停止を図る。
「?!?!?!」
面白いぐらいにオーバーなリアクションをとるルームメイト。本音は誇らしげに胸を張る。
「今良いところ。邪魔しないで」
「集中するのは良いんだけどーやっぱりご飯食べないの良くないかなって……思ったんだけど、ごめんね?」
本音が申し訳なそうな顔をすると、ルームメイトは顔を歪めた。良心の呵責に刈られたのかルームメイトは大きくため息をつく。
「ごめんなさい。少し焦ってた」
「ううん、こっちこそごめんね? 簪ちゃんの作業邪魔しちゃって」
簪と呼ばれた少女はもう一度謝罪の言葉を入れて、棚にあるカップラーメンを取り出した。
ポットに水を入れて、最近本音が良く話題にする双真の話を振る。
「彼どうだったの? 安部君」
「んとねー最近ちょっとかっこ良くなったよーどれぐらい格好良くなったかって言うと、チワワが急に柴犬になった感じかなぁ」
全く想像が着かない例え方をされ眉を潜める簪。
「……そうなんだ。でも安部君の試合見たけど、酷いね」
何と答えれば良いか分からない簪は話題を無理矢理変えて、鳳と戦ったときの感想を述べた。
「あれだったら織斑君の方が断然いいよ。正々堂々戦ってるし、降参もしない。それが普通なんだけどね。それが出来ないって言うことは法律が守れない犯罪者と一緒だよ」
嫌悪感を丸だしで感想を言う簪。本音はドウドウと手で抑える。抑えられた後にはっと気付き、すこし言い過ぎたと後悔した。
本音はそうだねーと寂しく言い、既に沸騰しているポットを傾け、カップラーメンの中に注いでいく。
「会って話してみるときっとかんちゃんの印象も変わると思うよぉ」
(それは無いかなあ……馬鹿そうだし)
本人が居ないのを良いことに好き勝手に言う簪。まあ今までしてきたを事を纏めて考察したら、誰でも似たようなことを思うの自明の理であるが。
本音のフォロー虚しく、本人の居ないところで好感度がガラガラと音を立てて崩れていった。
年内に投稿されてたらラッキー程度に思っていてください。
こういって保険をかけておこう