臆病者が行くIS学園 作:灰人
昨晩言われた通りに整備室とやらに向かう。
詳しい話は何も聞かされていない……よくよく考えるとこの学園の指揮系統って割と滅茶苦茶っぽいよね。
大抵の事柄が事後報告な所が特に顕著だよな――――まっいいか、んな下らない事考えても悪い事象が改善する訳でもないので、ここ最近は諦めてるよ。
嫌違うな。諦めた方が話が早く終わって面倒なことが起こらない見ぬフリをしているって感じか? ああこっちの方がしっくりくるわ。
「やあ君が安部双真君かな? 初めまして俺は
後ろから声を掛けられ振り返ると、疲れたような顔をした男が立っていた。
俺も小此木さんがしたように似たような挨拶をして、早速本題に入る。
「とりあえず武装の紹介からしようかな? 双真君も行き成りの事で頭に入ってるかどうか怪しいからね」
むう……なんか馬鹿にされたよう気分。事実だから仕方ないけども。
小此木さんの武装の紹介を纏めると大体こんな感じ。
近接武装『マイクロソード:
見た目は鋸らしくない普通の刀。名前の由来は小此木さんの趣味日用大工な事から名付けられたとか。
常に刀全体が小刻みに振動しているらしく、従来のブレードの切れ味を数段上を行く。さらにカーボンを使用する事により軽量性・取り回し・強度を底上げした自慢の一品……らしい。
中距離武装『シールドライフル ハモニカ』
見た目は縦長のシールド。名前の由来は小此木さんの趣味である楽器演奏からとのこと。防御力はいわずもがな、一番の驚き所はシールドが二つに割れて、そこから覗くのは8門のビーム砲。趣味と武装を取り入れた、小此木さん至高の作品らしい。
「んま大体こんな感じか」
「…………」
「その顔は分からないって顔をしているね。まあやれば分かるから、ちょっと深緑を貸して」
言うや否や渡した深緑を変な板に置いてパソコンを立ち上げた。
「そう言えば君って葉真さんの息子なんだね。俺それ聞いた時、結構びびったよ」
あーあれか似てなさすぎて、逆にびっくりしたみたいな感じか。よく言われるから別に気にしていないけど、どこら辺が似ていないのかが気にはなるな。
「普段の君と葉真さん結構似てるよね。んで極めつけは模擬戦のときの降参。あれ見たとき昔の葉真さんにそっくりだったから、思わず笑っちゃったよ」
うっそ! 若い時の父さんってそんな事してたのか、血は争えませんな。
「よし! 出来た。んじゃまお喋りもそこそこにして、軽く君のクラス代表のして来てね。応援してるから~」
「は? あんた何言って「まあまあ。君のクラスの偉そうな担任にもちゃんと許可を取ったから」俺の許可は?!」
「あーうるさいなあ。さくっと倒せばいいんだよ。んなもん」
そう言うとさっさと整備室を出ていった。結局俺の許可とか言う話では無く、面倒事をぶっこんで出ていきやがった。
ちょっと対応が雑すぎやしませんかねえ……引くわ。だがこれ以上此処にいても、話しが進まないので俺はアリーナへと向かった。
◯◯◯
「あーだるいわ。くそ」
「いいのかなーそんな事言っちゃって」
大あくびをしながら、此方に近付いて来る小此木さん。
「まあ今の君なら勝てるよ。俺が作った武器は近接の脳筋共を狩る為に作ったんだからさ。まあそれを生かすも殺すも君次第って所かな?」
この人随分口が悪いなあ。まあ俺も人の事言えたわけじゃないけどさ。
ISを展開をして、ピットゲートから飛び出す。そこには不機嫌な顔した一夏がいた。
「すまんな織斑きゅん。こんな事になるなんて」
「……別に気にしちゃいないぜ。それに双真とは決着着けてたかったからさ。このマッチングには渡りに船ってやつだ」
おいおい偉くやる気出してくれてんじゃないの。そんな感じでこられたらさあ……本気で潰したくなるじゃん?
んま勝てるとは思ってないんだけどね。
「じゃあこの際どっちが強いか、分からせてやるよぉ!」
開始のブザーが鳴り、一夏がかなりの速度で突っ込んできた恐らくあれは瞬時加速だよな?
なろう……あんな大技もう取得してやがったのかよ……卑怯くせえやつだな。
そうこうしている内にあっさりと懐に入られブレードが振り下ろされる。だが素人目からみてもバレバレの剣筋、俺は鋸を展開し、鍔迫り合いへと持ち込んだ。
「やるなあ双真!」
「まぐれだぜ! バーカ!」
俺は空いている左手で一夏の右手を力の限りぶん殴る! どうやらIS越しでも痛覚はあるらしく、苦悶の表情を見せた一夏はブレードを落としてしまう。
ここが絶好の攻め時である。俺は鋸を横一線に払う! どうやらかなりのダメージがあったらしく顔を歪ませる一夏。だがまだまだ終らせない。
「それにしてもこれじゃちっとも面白くない。もっと本気でやって欲しいな」
「……ぐっ!」
「そらこいつでしまいだ!」
一夏の横っ腹に蹴りを繰り出す。右足のスラスターを吹かし速度と威力を倍増させる!
「……あり? おぎゃああああああああああ!」
俺は右足だけスラスターを出すのに対して間違えて左足を吹かしてしまったらしい。
しかも予想以上に吹かしていた為、アリーナの壁に激突する始末……全くついていないぜ!
それに激突した際に絶対防御が発動し、シールドエネルギーがごっそり持っていかれた……ああこれからはちゃんとISの機動練習しよ。
「ったく俺ってばホント馬鹿……」
あーこっからどうしようか? 折角ノーダメで行けたのに自分の下らないミスで自爆だもんなあ……まっいいか!
なるようになれだ。
とここで気になる武装を見つけた。『炎斑』・『円』と言う武装。
簡単に説明すると炎斑は両腰から発射できるアンカーワイヤ。円は点と線を繋ぎ、その面がバリアとなる。
これだけの武装があるのであれば! もう勝ったも同然じゃん!
「うっしゃあ! 待っててくれてありがとな!」
「こっちこそ雪片を取りに行けたからな。お互い様だぜ」
ほほう……イケメンは心までもイケメンでござるか……! こういうのがいるから我等ブサメンには日が当たらず、ただ影で蹲っているだけなのである!!
「……決着着けようぜ! ド腐れイケメン」
「望むところだ。根暗チキン」
え……ちょっとまって、そこで人の気にしてる事言っちゃう? あーあかん結構傷つくわ、さっきの一言。
俺が傷ついている間にちゃっかりと歩を進めていた一夏。
先ほどの様に一直線に向かって来る。どうやらさっきの火傷を覚えていないらしい。
俺は迎え撃つようにスラスターを吹かし、鋸を構えた。
もう少しでぶつかりそうになる直前! 一夏が目の前から
「もらったああああああああああ!!!」
「間に合え! 円!」
上からの襲撃にお俺は即座に点と線を繋ぎ円を自分の真上に描き展開させる。バチバチと力のせめぎ合いが俺の頭上で繰り広げられる。
一夏はバリアを破ろうと必死に押しているが円のバリアはただのバリアに非ず。
「今回は俺の勝ちだな一夏ぁ!」
「そんなの……やってみなきゃわかんねえええええええ!」
「終わりだよ……手前は拘束されて負けるんだよっ!」
円を消しバランスが取れずに変な格好をした一夏を両腰から伸ばしたアンカーで拘束し、シールドエネルギーが尽きるまでとにかく打ち続けた。
『勝者 安部双真』
「楽な戦いじゃなかったぜ。次はタッグトーナメントだな」
勝利の余韻もそこそこに次の戦いに向けて、色々しとかないとな。あとで小此木さんの所へ行こう。
なんか有益な情報でも貰えそうな気がするし。
○○○
「いやー大金星じゃないですか! 双真君」
「いや結構ギリギリでしたよ。俺が如何にISに触ってないって事も露呈してしまったし」
「そうだね。あの自爆は……まあ皆まで言わなくても良いでしょう! 武装もちゃんと使ってくれましたし……欲を言えばハモニカの方も使って欲しかったんですが、倉持のISを叩けたのでなんでもいいです!」
おおう……偉く饒舌だな。余程嬉しかったのか。
まあ俺も嬉しくないわけじゃないんだが、今回は予行演習みたいなもんだし、本番は二人一組だから全然気が休まらないんだよな……所詮タイマンだし。
「よしとりあえず今回の記録は取ってありますので、編集した後にパソコンの方に送っておきますね」
「それはありがたいです! 送ったら連絡ください」
俺は小此木さんにお礼をしてアリーナから出ていった。