臆病者が行くIS学園   作:灰人

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出来高の低さ


20話 タッグトーナメント 後

まずは様子を窺い、虚空とデュノアのライフルで相手の武装を確認する。目視で確認できるのは今の所一夏が持っているブレードによく似ているブレードだけだ。

 

牽制を二人でかけてみるが、虚空は最小限の動きで避け、デュノアのライフルはブレードを振り回し弾を弾いていく。五右衛門かよ。

 

「武装はブレードだけっぽいな」

 

「そうだね。でも織斑先生のISだったら、一夏と同じバリア無効化攻撃があるから、不用意に接近しない方がいいよ」

 

分かった、と返事をするが俺のシールドエネルギーはもうオワタ式なのであまり関係は無い。

 

「双真一度戻って、一夏と作戦を立てよう。もう偵察は終わったし」

 

通信が入り、俺は黒いISに背を向けて一夏の方へ向かった。

 

「落ち着いた? 一夏」

 

デュノアは一夏に声を掛ける。当の本人は円の中に閉じ込められて、何も出来なかったのですっかり拗ねてしまっていた。

 

「アレの武装は一夏によく似たブレードだけだ。だから俺とデュノアで牽制しながら、隙を見つけろ。デュノアも俺も余りエネルギが無いからな……一撃でキメろ。決めれなかったら全員心中だ――やれるな?」

 

一夏を無視して一息に喋る。精一杯の虚勢を張り落ち着いている様な雰囲気を醸し出す。

一夏も覚悟決めた様で、ゆっくりと頷いた。

 

「……双真、シャルル後ろは任せた」

 

キリッとした顔でそんな事を言う一夏を少し格好いいなと思ってしまう。

 

最初に飛び出したのはデュノア。三人の中でエネルギーまだ余裕があるらしく、先陣を買って出てくれた。

銃弾の雨を否応なく浴びせているが、黒いISはその場から動かず自分に当たるであろう弾だけを弾いていく。

 

そして俺はデュノアの後ろで虚空と砕羽を構えていた。

正直スナイパーライフル何て余り使わないから勝手が分からず、ヤキモキしてしまう。

 

「双真!」

 

ハッとして前を向くと黒いISが俺の前に立っていた。

圧倒的な存在感に呼吸すらままならない。ブレードを持つ腕が振りかぶり、俺の命を刈り取ろうとしていた。

 

ガギンッ!

 

「〜〜〜〜重いッ」

 

デカイシールドでブレードを防ぐデュノア。苦悶に満ちた顔は今にも崩れそうだった。

安心したのも束の間、冷静になれと自分に言い聞かせ炎斑を黒いISに絡みつかせた。

 

「ぐおお……何ちゅう馬鹿力……」

 

恐ろしい程の力で振り解こうしてくる黒いISに力比べ……めっちゃキツイ、マジで。

 

ズダダダダダダッ!

 

いつの間にか黒いISの後ろに移動していたデュノアが、持てるだけの銃弾を浴びせる。

力が緩むの感じて、一気に黒いISを炎斑で引き寄せ抱きすくめる。

 

「今だあああああああああああ!」

 

腹の底から声をあげ一夏に攻撃を促す。

 

「はあああああああああああ!」

 

最大出力であろうブレードが黒いISと俺を切り裂いた。

 

――――ありがとう――――

 

何処から聞こえた声。シールドエネルギー0と表示される新緑。

俺の意識は深い闇に落ちていった。

 

○○○

 

「あーあ疲れた。たまに本気出すとこれだよ」

 

誰もいない保健室で一人ゴチる。嫌だねぇ本当……誰も見舞いに来てくれないなんて――来てくれる友達がおらんかった。

 

「よっこいせ」

 

べっどから降りて周囲の散策をしてみる。まあ至って普通の保健室。

暫く歩き回っているともう一つのベットから絹擦れの音が聞こえた。

覗いてみようか……と思ったが流石にそれはどうなのだろうか?

 

「そんな事を考えるくらいならさっさと入ってこい」

 

「えー起きてたのか……」

 

「お前の独り言がやかましいからな」

 

やかましいったって……二、三言やんけ……どんだけ警戒心が高いんだよ。

俺は言われた通りにヴォーデビッヒさんの所まで歩いていった。

 

「あん時はごめんな。助けてやれなくて」

 

「別に気にしていない。アレは私の油断が招いた結果だ」

 

私も腑抜けになったものだ……寂しげに呟いた。

 

「そんな寂しい事言うなよ。ヴォーデビッヒさんが気にやむ事ないだろ……それを言うならば俺が弱くてヴォーデビッヒさんの、足を引っ張ってたね」

 

だからそんなに自分を悪く言うのはやめてくれよ……俺が悲しくなるからさ。そう言ってヴォーデビッヒさんの肩に手を置いた。

 

「……そうか……そう、だな。だがな私がした事は許されないんだ……尊敬する教官のコピーになってお前達を傷付けてしまった」

 

「あーあれかー俺は別に何も思わんかったけどなぁ。どう言う事情でああなったも興味無いから、如何でもいいんだよぁ」

 

面倒くさい事は先生がやるだろ、投げやりな言葉をかけてみるが俯いたままだ。

 

「たかが子供の癖に何悩んでんだよ。皆にごめんなさいって言えば、多分皆許しくれると思うぞ」

 

「でも「駄目だったら一緒に謝ってやる」…………ああ、分かった」

 

「あ、あとセシリアと鳳さんにも謝っとけよ。あいつ等すげえ悔しそうだったから」

 

まあこれは後から聞いた話だけどな。間接的に俺も被害を被っている訳だが……それはもう終わった事なので、どうでもいい。

 

「んま面倒くさい事は全部織斑に任しときゃいいんだよ。だからヴォーデビッヒさんは自分の事を考え「ほう。偉く喋るじゃないか」……じゃあ俺部屋戻るわ」

 

そう問屋がおろしませんと俺の首根っこを掴んでくる、担任の先生。

掴まれたお陰で首から変な音がしたのは内緒だ。

 

「そう嫌がるな。お前はどうでもいいが、ヴォーデビッヒの体調を確認しに来ただけだ」

 

だったらどうでもいいはいらないんじゃあないですかねぇ……俺は深くため息を吐いた。

 

「あ、そうですか。だったら先生がヴォーデビッヒさんを慰めて下さいね」

 

余り織斑と話したくもないので逃げる様に保健室を後にした。

 

○○○

 

「あ! いっけね本音に連絡入れねば」

 

シャワーから浴びて着替えている最中に姉さんの事を思い出した。

正直メッチャ気まずいもんなぁ……二日ぐらい前の話しだから、尚更ねえ……電話を押す指が震える。

 

「ええい! ままよ!」

 

ヤケクソで叫びながらコールボタンを押した。短いコール音の後に本音からもしもしと小さく聞こえた。

 

「あ、あのはな、はにゃしが……話がしたいんだけど……自販機の所まできちぇ……きて欲しい」

 

「君の部屋で良いんじゃない?」

 

「あ、いやしぃれだとあの色々と「もう行くから」……ま、待って」

 

ふー結構簡単に話が進んで良かった。本音も機嫌良さそうだったし……これで何も不安無く話せれば万々歳だ。

 

「よぉし気を落ち着けろ。これからの戦いはトーナメントより厳しい物だ……頑張れ双真」

 

深呼吸をして気分を落ち着かせる、電話をかけるだけで心臓がバクバクしているのは、初めての経験だ。

暫くすると、コンコンと扉をノックされた。

 

俺は扉を開けに行き、客人を出迎えた。

 

「よぉ本音。今日は大変だったな」

 

挨拶の言葉もそこそこに本音を椅子の方に促す。

本音はいつもの様な穏やかな雰囲気では無く、何故か少し不機嫌な感じだ。

 

「夜遅くにごめんな? 眠くないか」

 

「別に」

 

「べ、別にって……まあ良いけど……て言うかどうした? 何か不機嫌だけど」

 

「別に」

 

「……なあ俺何かしたか? あん時は確かに悪かったけどさ……そこまでムキになる事も無いと……思います」

 

本音は暫く逡巡した後、トコトコと俺の方に歩いてきて、隣に座った。

何でよりよって俺の隣に座るんですかね……むっちゃ良い匂いするし――変態みたいだな……俺。

 

俺は本音から離れるべくスイッと、横に移動した。本音も負けじと俺の方へ寄ってくる。何なんだ一体。

 

「なあ本音はどうしたいんだ……分からないぞ」

 

「もう何処にも行かないで……私から離れないで」

 

「無理だろ……じゃあ何? 今日泊まってくの?「うん」……いや無いわぁ……「お姉ちゃんとお嬢様に言うから」……………………えぇ」

 

今とんでもない爆弾を投下しようとしているんですけど……マジで、この場面でそんな事言われたら……いや、でも駄目だろ。常識的に考えて。

 

「……………………今日だけだからな。絶対今日だけだから! それ以外は何とかしてやるから、泊まるのは絶対今日だけだ! それと手も出さないからな」

 

「今日のトーナメントはあんだけカッコよかったのに……夜になるとこれだもんな〜〜本っっ当にヘタレだね〜」

 

「ぐぬぬ……今だってちゃんと話せてるし! って言うか普通の事だろ! もう俺はヘタレじゃないの!」

 

これ以上は構っても埒があかないので、逃げる様に布団に逃げ込んだ。

そして当然の様に俺の布団に入ってくる本音。

 

「何でや! 別に一緒じゃなくても良くない?」

 

「ええ〜〜良いじゃん。今日だけなんだから」

 

「…………好きにして……」

 

好きにしてと言った瞬間、俺の背中に抱きついて来る本音。

好きにしてと言ったが、そこまでするのはあんまりじゃないですかね……もう理性と言うダムが決壊寸前なんですが……それは。

 

「おやすみーべーやん」

 

「おやすみ……」

 

おやすみっていたけど、俺の息子はWAKEUPなんですよ。

この状態じゃ、萎えさせるのも無理なんですよ……誰か助けてくれねーかな。

 

俺は眠れない夜を過ごした。

 

○○○

 

あーすっごい……すっごい気持ちいいわ、この抱き枕。ギュッと抱きしめたら、抱きしめ返してくれるし……心なしか良い匂いもするし。

何で今までこんな良い抱き枕使わなかったんだろうな……すっごい俺。

 

「……抱き枕? さっきのは夢か?」

 

意識が徐々に覚醒して行く。

俺抱き枕持ってたっけ? あれれ〜おかしいなぁ。

 

瞼をゆっくりと開き抱き枕? っぽい物を確認する。

サラサラ感触が手に残る――これ人間の髪じゃね? え? 本音は?

本音は俺の背中に抱きついてスースーと寝息を立てている。

 

え? じゃあ誰なの? は? 銀髪? ヴォーデビッヒさん?

 

「おわあああああああああああああああ!」

 

余りの出来事に目を背けたくなる現実がそこにあった。俺は急いでベットから出た為、転げ落ちてしまった。

 

「なんじぇ……何でヴォーデビッヒさんがここここ……ここにいるんだ」

 

俺がデカイ声をあげた為ヴォーデビッヒさんと本音が起きた。

本音はマイペースに俺に挨拶してきやがる。何か突っ込めよ! この状況に!

 

「親しい人間夜這いをかけるのが日本の通説だと聞いたんだが……」

 

本音は洗面台に向かい、早々にいなくなってしまった。

誰か助けてくれませんか? 切実に願います。

そんな事を考えていたら、急に目頭が熱くなってきた。何だか急に涙が出てきてた

 

「もういやだ……グス……」

 

余りの出来事に頭の処理が追いつかない。考える事を放棄したい……もう放棄しよ。

 

ヴォーデビッヒさんにベットから退いてもらい、枕に顔を埋める。

誰にも泣き顔は見せたくない。

 

「そんなに私達といるのが嫌なのか?」

 

そんな事を後ろから言ってくるヴォーデビッヒさんに、首だけを振り、否定してみせる。

 

「もゔばやぐどっかいげよゔ! そっとしといてくれ!」

 

もう嫌だ。今は誰にも顔を合わせたくない。

 

「へそ曲げちゃって……子供だね〜〜ヴォーデビッヒさん行こうか。こうなったらもうダメだよ」

 

棘のある言い方がグサッと心に刺さる。そんな人を傷付けて何が楽しいんだ……バーカ。

やがて二人が出て行き、部屋の中に静寂が訪れた。

 

 

 

 

 

 




やっぱヘタレなんだなって
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