臆病者が行くIS学園 作:灰人
時間は飛んで一週間後。なんで一週間も飛ばしたって? 考えて見ろ男がずっと机に向かっている描写が延々と続くのなんて誰も楽しくないだろ? つまりはそういうことなんだ。
「よう、一夏そっちはどうだった?」
「……まあな」
酷くテンションが低い一夏。見たらなんか痣になってるしとても痛そうだ……。
「織斑君と安部君はこちらに来てください」
山田先生に言われるがまま誘導されていくと、そこには巨大なコンテナが二つ並んでいた。
「デカッ」
思わず間抜けな声を上げてしまったが、誰も言葉を発しなかったので俺の声は無かったかのように進められる。
「織斑君は『01』と書いてある方で阿部君は『02』って書いてる方です」
まず一夏のコンテナが開き白いISが姿を現したんだがISってこんなにでかかったんだな。
「織斑君のIS『白式』です! 続いて阿部君です!!」
コンテナが空くわけだが何か山田先生のテンションが以上に高い気がするんだが気のせいか? 開いたコンテナから緑色のISが目に入った。
「阿部君のIS『深緑』です。そのままですね!」
「……はあ」
山田先生のテンションが異常な程高くまともに応答が出来ない。それを見兼ねたのか織斑先生が奥からやってきた。
「取りあえずは……安部ISに乗ってみろ」
「分かりました」
俺は言われるがまま深緑に乗ってみる。
「背中を預けるように、あぁそうだ。座る感じでいい。後はシステムが最適化をする」
装甲の閉じる音や空気が抜ける音がやけに大きく聞こえる。成すがままに任せているといつの間にか準備が終わり、俺は深緑と繋がった。
「こりゃすごい…」
ISに乗るのは二度目だがあの時以上の感動が胸に突き抜けた。五感の方も優れていて360°見渡せるようになっていたりとか色々すごかった。
「後は、戦う順番の方だが――――」
戦う順番はと言うと。
安部双真対セシリア・オルコット
織斑一夏対セシリア・オルコット
安部双真対織斑一夏
一夏とオルコットさんは二回連続でやるのか……代表候補生って言っても辛いもんは辛いと思うのだが違うんだろうか?
「じゃ行って来ます」
「頑張ってこいよ」
「逝って来い」
……箒さんそれは死ねって事ですか? あまりの威圧感に何も言えず俺はピット・ゲートへと進み前傾姿勢を取った
教科書で読んだ操縦方法は自然と頭の中に入って来て、体へと染み込んでいってずっと一緒にいたかのような感覚を覚える。まだこれで最適化処理フィッティングも終わっていない初期化フォーマット状態なのだからこの後の進化に期待が膨らんで行く。だけどその前にやらないといけない事がある。
俺は飛ぶイメージを浮かべ空へと飛び立った。
「あら、ずいぶん遅かったんですね」
「……待たせてすいませんね」
相対しているのは青いISに身を包み、宙に浮かぶオルコットさん。彼女の方に目を向けるとセンサーを通して情報が流れて来た。
彼女の専用機『ブルー・ティアーズ』。特徴的なのは右手に携えた長大な銃と背中に装備されている4枚のビット。反重力装置によって重さの概念をさほど感じない為、今の僕達のように宙に浮かべたりオルコットさんのように自身の身長を超す武器を持てたりする。
やっぱり女子のISスーツってエロいよな。やばい顔が熱い、どうしようか……。
「どうかしましたか? 顔が赤いようですが
「何でもありましぇん……ありません」
「そうですか……」
気まずい空気が流れ始めたが、ここで試合開始のブザーがなった。
「最後のチャンスを上げますわ」
「チャンス……だと……」
願っても無い提案だ! 俺は真剣にこの提案を受けようか迷っていると、オルコットさんはまた話し始めた。
「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで降参してもいいですわ」
「マジで!? 良いの?!」
「そうですわ……って、ええ?!」
「どうかしたか?」
「どうかしたって…あなた本気で言ってますの?!」
本気もなにも痛いの嫌だし……ここで嘘を言っても仕方ないし。
「俺はいつも本気だ」
「あなたって人は……そうやっていつも逃げるんですね!」
「その言い方は酷いな! いいよ、やってやるやればいいんでしょ!!」
だがこれは挑発だった事に気付いたが時既に遅し。オルコットさんは『スターライトMK?』を構え撃ってきた。
飛んできた光線は一直線に俺に向かってくる、恐怖に駆られた俺はスラスターで横に移動したが腕に少しかすったらしくシールドエネルギーが少し減っていた。
ISの競技ルールは簡単に言ってしまえば操縦者を守るシールドに使われるエネルギー、所謂シールドエネルギーを相手よりも早く0にさせた方が勝ちになる。
0にさせるには攻撃するしかないが、威力に比例して実体の方にもダメージが通る。そのため破損箇所には大なり小なり影響を受ける。だがそれが原因で死亡しないように『絶対防御』という半自動機能が備わっており、大幅にエネルギーが削られる代わりにどんな実体ダメージも0にする。
でもこのくらいのダメージで『絶対防御』が発動するわけがない。となると、また痛みを感じていない、ってことか。
「このままじゃ負ける。武器は無いのか!?」
すると武器の欄が出てきて今使える武器が表示された。
「……遠距離ライフルっておま……」
仕方ないので遠距離ライフルを呼び出す、両手にスナイパーライフルが現れる。ずしりとした重厚感が手に収まり俺は覚悟を決める。
「……やるしかないのか……」
スコープを覗き込みオルコットさんを狙い引き金を引く。一直線に向かっていく弾丸はオルコットさんを掠める、どうやらギリギリでかわしたようだ。
「私と同じ中距離!? あなたどこまでも私をコケにしますわね!」
「違う長距離だ!」
そう言って引き金を引くがオルコットさんは余裕をもって避ける。流石に二度目は通用しないか……これ殆ど無理ゲーじゃねえか!
「このブルー・ティアーズを前にして、初見でこうまでほぼ互角にやりあえたのはあなたが初めてですわね」
「……そりゃどうも」
上から目線なのが腹立つわ〜だがこのまま行けばジリ貧だ、しかも相手はまだあのビットを使ってはいない。アレを使われると思うゾッとするな。
「ですがそれもここまで。ここで閉幕のフィナーレと行きましょうか!」
四枚のフィンが外れそれぞれ違う動きをしてこっちに迫ってくる。フィンから逃れようとするがそれぞれが動きを先回りして逃げられない。
ピキュン ピキュン ピキュン
ピキュン
タイミングをずらしながら撃ってくるレーザー光線にことごとく被弾してしまい集中力が途切れなすがままになる。
「これで終わりか……悔しいな」
初めてだこんなに悔しいと思ったことは……初めてだ負けたくないと思ったのは……!
「終わりですわ!」
四枚のフィンは俺を囲むように並び一斉にレーザー光線を発射させた。爆風がおこり自分の負けを悟ったが、
「……終わってない?」
――最適化処理フィッティングが終了しました。
見るとISの姿が変わり色も更に濃い緑色になったような気がした。
「まさか一次移行ファースト・シフト!?今まで初期設定の機体で闘っていたというの!?」
「……まだ戦える」
俺はその感動をかみ締め気を引き締める。今度は武器の欄が自動的に出てくる。
遠距離ライフル『砕羽』、両肩と両手に装備された遠距離エネルギー弾『虚空』。どうやら初期設定のライフルともう一つの武器が解禁されたようだ。取り敢えず俺は『砕羽』を呼び出した。
「ケリ着けようぜ」
「望むところですわ!」
オルコットさんはフィンを飛ばしながら牽制し様子を見ている。それを俺は躱しながら『虚空』を撃ちだし応戦していく。
俺は一旦距離を離し、スコープを覗き込む。
「狙い打つ!」
こっちに近付いてくるオルコットさんに引き金を引く。先ほどとは比べ物にならない程の速さで弾丸は飛んでいき直撃した。
「まだいけますわ!」
相当なダメージを食らった筈なのにまだ余裕そうなオルコットさん。フィンを動かしながら近付いてくる、二枚のフィンが近付いてきて牽制するが『虚空』を撃ちながら避けていると一枚のフィンに直撃した。
「残り三」
もう一枚のフィンを『砕羽』で打ち落とす。流石に焦りはじめたらしくフィンを引っ込め『スターライトMK?』を構える。
「そりゃ悪手だ」
狙いを定めているらしいが、俺は『砕羽』を引っ込め両手をかざした。両腕と両肩四つの砲門から『虚空』打ち出す。
「クッ!」
「ボサッとしてんなよ!」
必死に避けているが尚も打ち続ける。避け続けてスラスターゲージが無くなったのか急に動きが遅くなった。その状況に応じて『砕羽』を呼び出し狙いをつける。それに気付いたオルコットさんも『スターライトMK?』を構え狙いをつけている。
「「これで終わりだ(ですわ!)!」」
タァン ピキュン
同じタイミングで放たれた銃弾は対なる相手へと向かっていく。だがに疲労感に襲われ視界が霞んでしまう……結局目の前に光線が迫ってくるにも関わらず避けれなかった。
――勝者セシリア・オルコット
「負けた…」
気を抜くのもつかの間シールドエネルギーが0になった事によりそのまま地上へと落ちていく。俺死ぬのか……短い人生でした。
「何勝手に死のうとしてるんですか!?」
オルコットさんに抱き抱えられる、こういうのって良いもんだな。普通に考えたら逆なのかもしれないけど……。
「あぁ天使って言うのはこういう奴なんだろうな…」
「な、なに言ってるんですか」
もう疲れたお休みなさい。俺はゆっくりと瞼を閉じ、暗闇へと意識を手放した。