臆病者が行くIS学園 作:灰人
最近いいこと無いなあ……早く家に帰りたい……そんなことをよく考える、薄幸の少年安倍双馬です。
という訳で、俺は変…というか知らない女の子に勝手に勝負を挑まれました。
じゃあここで一言。
「やりたくねええええええええええええええええええええええええええ」
もう本当にやりたくないから部屋帰ろ。うんそれがいい。
「双馬どこ行ってたんだよ?!」
そんなことを思った矢先にコレである。ハア。
「どこって…………………第三アリーナですけど?」
なんとか誤魔化せたな……見てくれ、この俺のポーカーフェイス! こりゃハリウッドからオファーが来るな……間違いない。
「なら良いんだけどよ。俺はお前が逃げてどっか行くと思ってたらよ……少し安心したよ」
ギクッ
「や、やめろよ、そんな事言うの! お、俺だって今回の戦いに命賭けてるだから……そういう事言って水差すのはやめてくれ」
「それは悪い。まあとにかく頑張ってくれよ。応援してるから」
「おう」
この他愛もない会話が俺の緊張を解してくれる。口で言うのは恥ずかしいけど……心の中で礼を言って、第三アリーナまで歩いていく。
「そういえばさ」
「なんだ」
「どうやってアリーナを貸切? に出来たんだ?」
「それか……なんかよく分からん事を言ってて……」
よく分からん? なんじゃそりゃ? まあいいか。深く聞くとやばそうな雰囲気だったので聞くのをやめた。それからの話はと言うと、最近の歌手だとか漫画、世間話など他愛も無い会話が続いていく。
アリーナが見え始めたところで俺と一夏は別れ、俺は控え室へ真っ直ぐ進んでいった。
「あーあ、死にたくないなあ」
ISスーツに着替えながらそんな独り言を言言ってみる。もちろんそんなことを言っても誰も返してはくれないので言ってもしょうがないのだが……なぜか、なぜか喋ってないと異様な寂しさがこみ上げてくる。
「誰か俺の話を聞いてくれないかな〜」
(大丈夫だ。俺達がしっかりサポートしてやるからよ)
「は?」
なんだ今の声? 直接頭に送り込まれたような……まあいいか、気にしてもしょうがないし。どうせ幻聴だろ……あまりの寂しさに幻聴が聞こえてくるって、俺どんだけ……こんな事考えても意味ないのでやめる。
「さあて行きますか」
そのままみんながいる場所へ歩いていく。
〇〇〇
「やっと来たか」
「すいません。遅れました」
ピットに向かうと織斑先生とセシリアがいた。
「まさかお前が試合に応じるとはな……大方脅されて呑んだとしか思えんが」
「合ってますよ……どうせ俺はヘタレでチキン「いいじゃないか」ゑ」
「クラスに、お前みたいな奴が一人でもいても良いじゃないか。からかい甲斐あってこっちとしては助かるんだがな」
クソ外道め……この人の前世は鬼だ。違いない。
「と、とにかく頑張ってください! ソウマさん!」
やけにセシリアが優しいなあ、これってドッキリだったりするんだろうか? きっとドッキリだろう。
「早くISを展開しろ」
「わ、分かりました」
いそいでISを展開してピット・ゲートへと向かう。
「じゃあ行ってきます」
「いってらっしゃいですわ」
織斑先生は既にどこかへ消えてしまったが、セシリアは俺が外に向かうまでずっと居てくれた。そんな些細な事が嬉しくてつい顔がほころんでしまう。
「さぁてと中国代表候補生さんとごたいめ〜ん……つまんね」
「やっと来たわね。ビビって逃げたかと思ったわ」
腹立つわ〜でもビビっていたのも確かで、逃げようと思っていたのも確かなので何も言えないのだが……なんだか無性に腹が立ってくる。
「そんな軽口言う暇があったらかかってこいよ。それとも俺にビビって攻撃できないのか?」
「言ったわね〜もう許さ「甘ぇよ」んな?!」
俺はちびっ子が話している最中に虚空を打ち出していた。勿論開始のブザーは鳴ってないから反則なのだが、仕返しも込めて打ち出す。
ギャラリーはざわつくが構うものか。
「ざまあみろ」
一言呟いて、ようやくここで開始のブザーが鳴った。
「ぶっ殺す!」
チビッコは薙刀を展開してこちらへ向かってくる。すかさず俺は砕羽を展開しチビッコに照準を合わせる。だが予想以上に速くて容易に懐に潜り込まれる。薙刀を振りかぶった所で咄嗟に砕羽をだしてつばぜり合いの状態に持ち込む。
脳内麻薬がドバドバ溢れているような気がする。いかん……冷静に……落ち着けよ…俺。
「いきなり不意打ち食らわせやがって、アンタ何考えてんの?!」
「手が滑りました」
「……完 全 に 切 れ た !」
コケにされたと思ったのか薙刀をグイグイと押してくる。それに負けじと俺も押し返す。しばらくそんな状態が続いていた。
だが、今日の俺はなんだか冴えているのかこの状況を打開する名案を思いついた。
ちびっ子が押しているのに対して、俺はそっと後ろに下がった。
「っ?!」
突然そんなことされると、前に勢い良く飛び出てバランスが保てなくなってしまい無防備な状態を晒すチビッコ。そして目の前の無防備な奴を見逃すほど俺もチキンじゃないので、砕羽の引き金を引いた。
――タァンと乾いた音が響いた時には、既に直撃した後だった。俺はとりあえず距離をとりちびっ子の出方をうかがう。……五分ぐらい経ったのだろうか、しばらく動かないチビッコを俺は目を逸らさずにジッと次の出方を窺っていた。
「……さっきの一撃で漸く目が覚めたわ……これからは本気で行くわよ」
喉元にナイフが突き立てられたような感覚が俺を襲う。思わず後ろに下がって距離を取ろうとした直後に俺は見えない力によって吹っ飛ばされ壁に直撃した。
絶対防御が発動してエネルギーをごっそり持っていかれ、壁に激突したショックで肺の中の空気もごっそり奪われた。お陰で苦しいったらありゃしない事。
「これからアンタを嬲り殺してやるから覚悟しときなさいよ」
「じゃあ嬲られる前にお前を堕としてやんよ」
精一杯の強がりを吐いた後、俺はチビッコに照準を合わせ引き金を引く。銃口から火花が散り、チビッコにむかって飛んでいく。だが直撃もしなければ掠りもしない。
その異様な気配に気後れしてしまって狙いが定まらない。俺の体を、精神を、どんどん支配していく。もうダメだ……負ける……死にたくない……。
「何やってんの? 全然当たらないんだけど」
何か呟いたのかもしれないが、俺の耳には全く届かない。恐怖で体が震える。
「あんたつまんない男ね。なんであんたがISに乗ってるのかさえわからないわ……まあいいわ、ここであんたを倒せばそれで終わるんだし……」
そうだな…もう俺のシールドエネルギーも無いに等しいから。やるんなら早くしてくれませんかね。
「アンタとは仲良くなれそうにないわ」
「あっそ。お前が突っかかってきたんだろ……あ」
いいこと考えた!
「降参します!」
声高らかに発し、アリーナに、はては学園全体に響くような声だった。
ビー!
俺の降参を受け取ってくれたのか終了のブザーが鳴った。
そんなわけでこの試合は終わったのだが、目の前で降参宣言されたチビッコは目を丸くしていた。そして徐々に怒りの色が見えてき初め、今度は殺意の色に変わっていった。
「何それこわい……」
かくして俺は試合に負け『安部双真君、安部双真君。織斑先生がお呼びです至急教員室に来てください』……俺何かした!? ……したか。とりあえず急ご。
俺はピットゲートに戻りISを解除し、急いで司令室へと「ソウマさん!」このエンカウント率……今度からは聖水浴びながら学校を歩こうかな……。
「どうした」
「……見損ないましたわ」
「え? ああ、そう。じゃあ俺急いでるから用事があったら部屋にでも来てくれ」
後ろで何か騒いでるけどまあいいか。とりあえずは織斑先生のとこへ急ごう。なんたって至急だもんな、急いだほうが良い。
〇〇〇
俺は呼ばれた通り教員室とか言うところに入った瞬間、急に顔に火花が散った。そして床をゴロゴロと転がり、何かの機材にぶつかり漸く止まった。誰かが悲鳴をあげたような気がするがよくわからなかった。
「なんださっきの試合は」
これは誰の声だ? ああ織斑先生の声か……口の中が鉄臭い味で支配される。ここで漸く俺は殴られた……と認識した。
「いえ……言ってる意味も俺が殴られた意味も……分かり…ません」
「っ貴様……!」
「本当に分からないものは分からないんです! だって俺はただ不意打ちと降参だけじゃないんですか?! 先生は学園の皆に強くなって欲しいとかなんとか言ってたけど……そんなん無理ですよ! 大体俺は嫌だったんですよ! 初めからこんな兵器持たされて、戦え? 無茶を言わないでください! いいですよね先生はふんぞり返ってるだけで良いんだから! さぞかし気分がいいで」
俺はまた吹っ飛ばされた。どうやらよっぽど苛立っていたんだろう。
もう何だか疲れた……マジでこの学校辞めたろかい。そんな俺の心情とは裏腹に俺の口と体は動いていた。
「分かりましたもういいです」
「何がだ」
俺は待機状態である深緑を首から取り、床に投げつけた。こんなものが有るから……俺は……まじでむかくつわ。
「お前……何をしている」
「こんな物要りません。どうぞ初期化するなり、ぶっ壊すなりしちゃってください」
「何を……言ってるんですか! 双真君!?」
「俺には釣り合わなかったって事ですよそれぐらい考えてください。良かったですね織斑センセ問題児がひとり消えますよ〜」
この学校辞めよ。これからどうしようかな……中卒って就職出来るんだろうか? とりあえずバイト「双真!?」……聞いた声が入口から聞こえた。てか結構いるな……まあいつものメンバーなんだが。それとセットでチビッコがいた。
「よお一夏。俺この学校辞めようかと「甘えるな!」……なんですか」
「お前がやっていることはただの逆切れだ! そんなことをしてなんの意味がある?」
「少なくとも平穏は帰ってきますね。織斑先生に殴られたりもありませんね、うん」
「なんだお前は私に殴られるのが嫌なのか?」
「当たり前じゃないですか。あとこの学園じゃ"私が正義"っていう感じが嫌なんです。……ISが無ければ何も出来ないくせに……」
「双真テメェ!」
何故か知らないが一夏が急に殴りかかってきた。もちろん避けることも出来ず顔に直撃した。痛くてたまらないが無理やり立ち上がり、口から言葉をひねり出す。
「やっぱ根っこは変わんないんですね。最終的に暴力って……ちゃんと躾し…たん……」
最後まで言おうとしたが、目の前が暗くなりそのまま床に倒れた。
〇〇〇
「ここどこ……」
白い天井が見える俺何してんだ? あの時気絶して……なんか色々言って訳分かんなくなって。
「痛っ」
どうなったんだ……思い出せない……まいっか寝よ。
「ソウマさん!」
「ドリア……何してんの」
「ド、ドリア!? 私はセシリアです!」
憮然とした表情でこちらを睨んでくるが、別に怖くないし……なんて思っていたら急にこっちに近づいてきた。
バチン!
「……なにさ」
「貴方という人に心底腹が立った……というだけです。私と戦ったときは「うぜっ」なにか言いましたか?」
「いやなんでも無いよ。で? 続きは」
それからクドクドペチャクチャ説教垂れてくる。別に真面目に聞いてないからいいんだけど。でも騎士道精神がどうとか言ってたので、どうでも良い内容だったのだろう。
「あのさセシリア」
「なんですか」
「一応言っとくけど俺日本人。セシリアイギリス人。ここんところOK? それで続けんるんだけど、俺はそのキシドーせーしんとかブシドーせーしんとか言う奴嫌いなの、努力の次に」
セシリアは押し黙ったまま俺の話を聞いてくれる。
「まあ俺は俗に言うヘタレって奴じゃん。だから俺は生きれたら良いしその為だったら、反則使ったって良いし、降参も有りと思うんだが?」
言い終わるとまたビンタされた。いてぇ……。
「私もそれが悪いとは思いませんが、少なくとも今回のはやりすぎです。貴方は相手の事を考えずにああいう態度を取った事に怒っているのです。あんな行為人間のする「だから?」…………」
「俺は生きたいからしたまででお前に人間じゃないとか言われる筋合いは無い。そりゃ反則は……まあそりゃ悪かったとは思うけど、それは良いん「良くありません!」……なんなんコイツ」
「何がどう良いのですか! 貴方ちょっとおかしいんじゃないんですか?!」
「ああ俺はおかしいよ。お前ら英国人と違って騎士道精神とかは持ち合わせていませんから。だから俺は不意打ちもするし命乞いもする。お前は俺になんかの幻想抱いてんのかもしんないけど、俺はただのヘタレでチキンの小物です。貴方とは違うんです」
「……そうですか。もういいですさよなら」
セシリアは椅子から立ち上がり出ていった。まあ反則は良くない? よな。うん、良くない。あとで謝ろ。
「まいっか。寝よ」
俺はベッドに背を預てそのまま目を閉じた。