臆病者が行くIS学園 作:灰人
携帯のアラームが鳴り俺は目を醒ます。半覚醒状態の俺は寝惚け眼をこすり、洗面台へと向かった。
蛇口を捻り冷たい水で顔を洗う。
「スッキリ!」
何かの番組か忘れたが、それらしい事を言って灰色の脳みそを無理やり起こす。
「……やべえなあ。なんか教室行きづらい……」
織斑先生にも殴られたし、一夏にも殴られたし……はぁ、憂鬱。サボりたいな。でも考えても仕方がないので制服に袖を通し、準備が整った所で食堂へ向かった。
〇〇〇
気のせいだろうか……やけに視線を感じる。いつものように動物園のパンダを見る感じじゃなくて、無茶苦茶敵意のこもった視線……どうにも居心地が悪い。
仕方が無いので天そばを急いで口に運んでさっさと教室へ向かう。
昨日の事ってやっぱり駄目だったのか……? どうにも理解できない。
IS学園ってこんな学校だったのかよ……すこしいや、かなり幻滅した。もっと和気あいあいとした感じでISの事を勉強するのかと思ったら……ただの軍隊学校じゃん。
ああいうの……所謂覚えられなかったら、体で覚えろっていう感じ教育って性にあわんどうにも。
そりゃ学園にいる女子はそれが当たり前だったんなら、別に良い。俺は何も言えない。でも俺は所謂この世の中でいう負け組。
俺は小学校・中学校とをISの'あ'の字も知らずに生きてきた。偶に女子からはキモイだのウザイだのイチャモン付けられて殴られたりしたこともあった。それでもめげずに生きてきた。
って何感傷に浸ってんだ俺。過去はどうでもいいだろ。
色々考えていたら教室の前まで来ていたらしい。扉を開け教室にビシャ……なんだこれ……水?
ワッツハップン?
「ごっーめん。お茶飲もうとしたら。安部君にかかっちゃった☆ごめんね?」
「……じゃあ俺雑巾持ってきて拭いとくから……別に気にしなくていい……」
ここまでするかよ……エゲツネエ……女性不信になりそう、割りと真面目に。
とりあえず制服が濡れているので、一旦教室から出ていく。後ろから不愉快な笑い声が聞こえてくるが無視して、久しく忘れていた感覚に寒気を覚える。
乾かしたいのは良いがどうやって乾かすそうか……とりあえず屋上に行こう。外だったら乾くだろ。
俺は駆け足でいつもの屋上へと向かう。
「ハア……やっぱ昨日のが駄目だったか……」
先生に言ってもなあーまた面倒ごとになると思うし……それに先生たちの事だから、我慢しろだとか言ってまともに取り合ってくれないと思うし。悲しいなぁ、泣けるなぁ。
こんなときってどうしても仲の良かった奴等を思い浮かべてしまう。一人って辛いわ。
「もう授業とかどうでも良いや、寝よ」
天気は俺の心と違って快晴だし、春眠暁を覚えずって言う一文も有ることだしな。ゆっくり寝るとしよう。うん、それが良い。俺はベンチに寝転び目を閉じる。
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音で目を覚ました俺は半身だけを起こして誰か来てないか確認する。結局授業サボっちまった……まあいいか。あそこの空間にいるより百倍マシだし。それに授業サボって、後で織斑先生に説教受けたほうが精神的に楽だ。
でも不意に悔しいって思ってしまった。何故か女に良いようにやられて怒りが沸々ふつふつと湧いてくる。でも俺に何が出来る? 無理だろ、諦めろよ、お前はいつものようにヘラヘラ笑って、土下座してる方がお似合いだぜ、なんて心の声が聞こえてくる。
「ちくしょう……なんで俺はこんなに…………弱いんだ……」
声に出して言うと一層惨めな気分になる。勝手に涙が出てくる……止まらない止まらない止まらない。
いっそここから飛び降りやろうか……なんて思う。
そんな考えを首を振って頭の中から追い出す。でも結局は泣くことしかできない自分に腹が立った。この感情を誰かにぶつけてやりたい。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああ」
とりあえず絶叫して、床を殴った。こんな事をしても意味がない……けど、殴る何回も。痛みは感じない……けど胸がキリキリと締め付けられるような感覚がたまらなく鬱陶しかった。それがさらに怒りを増幅させる。
「こんな事やっても……虚しいだけなのになぁ」
よく見ると殴った方の左拳から血が出ている。それも結構な量……やべっ意識したら痛くなってきた。
はははははははは早く保健室に行かねば!
「やばいってマジで! どれくらいやばいって言うとマジやばい!」
「そんなにやばいんだったら保健室に行ったらどう?」
「変な声が聞こえたあああああああああ! きっとこれはこの屋上から飛び降りた哀れな女子生徒に違いない! そして俺を今から殺すために話しかけたんだー! きっとそうに違いない!」
「やっ、ちょっと待って! 私をいきなり学校の七不思議みたいな扱いにしないでくれる!?」
「父さん母さん妹よ。そしてまだ母さんのお腹にいる弟か妹よ、出来れば弟がいいです。俺は今から旅たちます……どうかお元気で「人の話を聞きなさい!」ごごごめんなさい! 食べないでください!」
「あ、うん、私の話を聞いてっていったけど、土下座はやめて欲しいなあ……お姉さん困っちゃうんだけど……」
何か言ってる何か言ってる。屋上の幽霊さんは殺す前の準備か何かをしているんだろうか。
てか血が! むっちゃ出てる! そして痛い!
「まあ良いや……話は保健室で聞くから。行くわよ」
無理やり立ちあがらせ、そのままどこかへ連行された。どこへ連れていくんだ……地獄? 霊界? はたまた天国? 戯言か……。
もういいや流れに身を任せよう。
〇〇〇
「そうか……そういう事なんですか……分かりました」
「どうかしたの? 主語が無いとお姉さん困っちゃうな〜」
何故か連れてこられたのは保健室で、何故か左手の治療されている。なんで何が起こった? その前にこの人誰? やっぱ幽霊?
「私は幽霊じゃないよ。まあ強いて言うなら……この学園の最強って言った所かな?」
急に扇子を取り出してバッと広げる。扇子には最強というふた文字が。
「で、そのさいきょーさんがどうして俺に構うのですか? 俺なんてただの路傍の石ですよ?」
「まあそんな風に言わないでよ〜。まあ強いて言うなら君がISの操縦者だから……かな?」
「じゃあ一夏の方が良いですよきっと。なんせ織斑千冬の弟なんですから。顔も良い、ネームバリューもそこそこ最高のブランド品じゃないんですか? 女にとっては」
「そういう言い方は良くないな〜。お姉さん困っちゃう」
飄々としている段々と態度がムカついてくる。抑えろまた問題を起こしたら……メンドイ事になる。一応治療してもらってんだから……抑えろ。
「そういえばどうしてさっきあんな所にいたの?」
「……貴方にはカンケーの無いことです。さいきょーさん」
「私本当は知ってるんだ。貴方が今微妙な……いやかなり危ない位置にいるの」
「知ってるのに態々聞いたんですか。貴方も大概下衆なんですね」
「そりゃ当たり前だよね。不意打ちして降参とか虐められても仕方が「うるせえな!」あらら怒っちゃった? でも言うよ。昨日行動は貴方の人間としての品位が動物「やめろっ!」」
俺は最強に殴りかかろうとしたが、簡単に動きを読まれ関節を極められた。抜け出そうとしても腕がミシミシと悲鳴を上げる……痛ぇ。
「抜けないよ無理無理、君の力じゃあ駄目「やってみないと分かんねえだろうがっ!」へ〜」
無理やり引き抜こうとすると悲鳴を上げる。痛いでも我慢する。ここで負けたら俺は……。だからやる。
力をもっともっともっともっともっともっともっともっと。限界を超える! 越えて見せる!
ゴキュ!
「えっ」
占めた! 力が弱まった瞬間一気に抜け出し脱臼してない方の腕で最強を突き飛ばした。やっぱり女なのか俺が突き飛ばしても結構吹っ飛んだ。
「痛たたた。まさか脱臼してまで抜け出さそうとするとは……予想外だったわ」
埃を払い立ち上がった。でも彼女の頭からは打ちどころが悪かったのか血が出ていた。痛む腕を庇いながら消毒液とガーゼを勝手に取り出しゆっくりと彼女方へ近づいた。
「まだなんかするの? 流石にもう止めてほし……あら?」
頭を打ったショックか分からないが倒れそうになるのを抱きとめる。無事な方の腕を貸してやり、ベッドへと降ろす。
「あらら意外と紳士なのね」
「黙って寝てください……つうっ」
左手は……動かないので、右手で……しまった脱臼してた。てか痛ええええええ! 洒落にならん! でも治療しないと行けないし……残ってるのは……口しか……あかん、恥ずかしい。
「大丈夫だよ。これぐらい」
「貴方は馬鹿なんですか。死ぬんですか。貴方は寝とけば良いんです」
「いやだって、君の方が明らかに重症じゃないの。馬鹿なの? 死ぬの? 君こそ寝れば良いじゃない」
そんな言質取ったみたいな顔してされても困るんですけど……。
「じゃあ俺が人呼んできますから、大人しくしといて下さい」
「大丈夫だよ。もう呼んであるから」
「じゃあそれを……つうー」
父さん…腕が…痛いです。
「はいじゃあ私と変わろうね〜」
言うが早いがベッドから飛び起きて、かなりの早業で俺をベッドに寝かした。この人人間じゃないな。
てかさ動きが捉えられないってどうよ。
「もう君は私の玩具だよ」
「貴方の玩具だったら、俺を壊してくださいよ。あ、それともサンドバッグにします? いいですよー口も動いて暇しないし、ムカついたら殴れば良いんだら」
さぞかし気持ちいいでしょうよ。とそんなことを吐いて彼女の反応を窺う。もっと嬉しそうにするのかと思ったら、何故か複雑な表情をしていた。
「……まあいいわ。貴方がそう思うんだったら勝手にしなさい。どの道サンドバッグ何かにはしないけどね。一期一会っていう言葉を大切にする人だから私」
「一期一会って何? 俺の事人間だなんて言うの。アンタ先言ったよな動物だって……もう言いんだよ……そういう気の遣い方……どうせアンタも後から笑うんだろ? 良いよ理不尽な扱いも理不尽な暴力も慣れてるからさ……許すから」
あーなんか自分で言って悲しくなる、目頭が熱い。なんだ泣いてるのか……やっぱ駄目だな……涙なんか他人に見せるもんじゃないのに……俺ははだしのゲンみたいにはなれないのか……残念だなぁ。
「こんなにグチャグチャになるんだったら、心なんて無きゃ良かったのに」
「……なんかごめんね」
「なんで謝るのさ。アンタは別に悪いことしてない。唯の野良犬の腕を脱臼させただけ、唯の野良犬に罵倒しただけ。アンタはなあんにも悪くない……でも」
「でも?」
「治療して貰ったのは……嬉しかった。ありがとう」
「あ、うん……でも元はと言えば私が悪いんだし……」
なんで貴方が泣きそうな顔をしているんですか? 理解ができないって言おうとしたけど何故か声が出なかった。なんでどうして分からない分からない分からない。
「さて治療が終わったんなら、部屋に戻ります。織斑先生の所にも行かないといけないし」
痛む腕を庇いながらゆっくりとベッドからゆっくりと起き上がる。もうこの人とも会うことは無いだろう。てかもう会いたくない。
「治療終わったっていうか、全然してないじゃない!」
「良いんですよ。別に貴方は痛くないんだから。痛いのは俺だけ」
「んな無茶な……あああああもう! いいから寝てっ!」
「ちょ、そんな強く引っ張ったら痛い痛い痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
そっち駄目な方だから、脱臼してるから! らめええええええええええええええええええ。
無理やりベッドに寝かされた。もうこうなりゃ自棄だ、従ってみよ。
「そういえばアンタの名前聞いてなかった」
「私の名前? えーと更識楯無と言います。以後よろしく」
「たてなし? 変な名前……プッ」
「笑わないでよ……しかも笑われたの初めてだし……」
以後もよろしくもしたくないけど一応頷いておく。
「俺の名前は……ってどうせ知ってるんだろ」
「えーでも君の口から聞きたいな☆」
「ハイハイワカリマシタ。俺の名前は安部双真です。多分会うことは無いと思うけどよろしく」
「はいよろしく〜」
そんな自己紹介も終わって沈黙が全速力で走ってきた。別に気まずくは無いんだけどなんか更識さんがすごい気まずそうに俯いてらっしゃるんですよ。変な人って思われてるんだろうか……当たり前か(笑)。
「お嬢様」
そんな声が聞こえたかと思うと女の子二人が歩いてきた。ひとりの方はどっかで見たような気が……しないでもない。まあ人違いだろ。
「あ、べーやんだ。どうしたの? 今日全然授業来なかったね〜」
「いや、いやいや、いやいやいや! その前にべーやんってなに!? っつう」
「なになにどっか痛いの? お菓子の食べ過ぎは良くないよ。うん良くない」
「何勝手に自己完結しちゃってんの!? いい加減……痛い……」
「本音。話が終わんないから。少し黙ってくれるかしら」
「出たよ! お姉ちゃんメーレー「ほ・ん・ね?」はーい」
本音さん? は口を3の字にしてまだブー垂れていたがしばらくしたら黙ってくれたようだった。
メガネを掛けた如何にもキャリアウーマンやってますみたいな人がメガネをクイッとあげ、口を開いた。
「で、どうして私たちを呼び出したんですか?」
「それはまあ見たほうが早いといいますか……なんというか」
メガネの人ジッとこっちを見てくる、どうなるんだろうって一瞬だけ不安を感じてけど、メガネの人は更識さんの肩に手を置いて――――
「警察に行きましょう」
スザ〇ヌもびっくりな発言をして俺と更識さんの目を丸くさせた。
双真君あらぶってますわぁ