透き通る世界で魔王は何を見る?   作:いぶりがっこ

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さて、上手く出来ているのか。自分でも分からないけど、ただの趣味の範疇なので、気を楽にしてこれからも楽しく書いていこうと思います。

では、今回も楽しめる方はどうぞ!


嚮導者

 

数刻前──

 

サンクトゥムタワー。連邦生徒会。

 

連邦生徒会の会議室にて、少女と大人が顔を合わせて、話し合っているのが見える。

 

失踪した連邦生徒会長の代行、首席行政官であるリンは深刻そうな表情で俯いている。だが、如何なる理由か、この場で唯一の〝大人〟であるシャーレの先生は、先程とはうってかわって晴れた表情をしているのだ。

 

「…………」

 

〝あー、リンちゃん。大丈夫かい?〟

 

先生は心配そうにリンの顔を覗くが、リンの顔色は依然として、悪いように見える。

 

「……これが大丈夫そうに見えますか?」

 

〝……辛そうだね〟

 

苦笑いを浮かべた先生に、一つ溜息をついたリンは、妙に晴れた顔をしたその〝大人〟に対して、思わず言葉を漏らす。

 

「……本当ですよ。報告を受けた時は、思わず耳を疑いました。まさか……」

 

「あの巨大な反応が、別世界から来訪した一個人が内包するエネルギーだなんて……そんな馬鹿げたこと、一体誰が予想できるんですか。全く……」

 

半ば愚痴のように言葉を零すリンとは対象的に、先生は生徒(ヒマリ)がもたらしてくれた情報に感謝していた。

 

自分と同じく、キヴォトスの外からやってきた子供。報告文について、ヒマリの所見ではあるが、彼の人となりについても記載されていた。

 

それを一読しただけで、先生は、アノスがキヴォトスに仇なす存在ではないとの確信を得たからだ。

 

「……先生。もう一度、聞きますが正気ですか?一時的にとはいえ、彼をシャーレに迎え入れたいだなんて……」

 

〝うん。ヒマリが報告で言っていたと思うけど、私はアノスが良い子だと思うんだ。それに……〟

 

「……それに?」

 

リンが不思議そうにこちらを見つめる。

 

〝元の世界に帰りたいのに、自由も拠点も無いようじゃ可哀想だしね。その点、シャーレなら居住区も有り余っているし、いざとなれば監視も出来るでしょ?〟

 

あまりに楽観的なその言葉に一瞬、リンは絶句した。確かに、先生はこのキヴォトスにおいて数々の事件を解決してきた、信頼の置ける大人だ。だが──

 

「万が一のことがあった場合はどうするのですか……?」

 

何か考えがあってのことなのだろう、とリンは思った。だが同時に、万が一、もしキヴォトスに何かあれば……リンは今のキヴォトスを預かるものとして、それを問わずにはいられなかった。

 

〝その時は──〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝私が大人として、全ての責任を取るよ。だから、安心して任せて欲しいんだ───〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ。なるほどな」

 

一通りの話を聞き終え、俺は先生に向き直る。

 

「つまり、便宜上は俺を監視するという名目で、キヴォトスでの自由と一時的な居住を、正式に保障するという訳か」

 

〝平たく言えば、そういうことになるね〟

 

先生が俺の言葉に頷き、肯定する。

 

ふむ、なるほどな。断る理由もない上、協力者の乏しい今、俺にとっては十分なメリットになると言えよう。

 

もし、仮にこれが罠だったとして、敵対するメリットがあちら側には無いことを暗に示している訳だ。

 

こうして今、俺と目の前で対談しているのが何よりの証拠だろう。

 

〝そして、何より──〟

 

だが、次の瞬間、俺は信じられない言葉を聞くことになる。

 

 

 

 

 

 

〝子供が困っているのを見過ごせないよ。私は大人で、先生だからね〟

 

 

 

 

 

 

 

──刹那、俺は絶句した。く、くく、くははっ…

 

「くはははははははっっ!!」

 

先生とリン、そしてその部下と思わしき生徒達が、笑いを抑えられなくなった俺に一瞬、肩をビクリと震わせ、怯えたようにこちらを見つめる。

 

〝ど、どうしたの!?アノス〟

 

「驚いたぞ。まさか今の時代に、これほど純粋な善意を持った人間が、まだ存在していたとはな」

 

先生から感じる感情。それは一切の打算や邪念のない、ただ純粋に子供を心配するだけの、純粋な善意だ。

 

やれやれ、俺が人間にここまで興味を持ったのは勇者カノン以来か?流石の俺も、ここまでされては頷く以外に答えなどない。

 

「決まりだな」

 

俺は先生に対し、スッと手を差し出した。そうして、呆然としていた先生はハッとし、それに応えるようにして、改めて俺の手を握る。

 

〝これからよろしくね、アノス〟

 

「ああ、よろしく頼もう」




さて。次回からまた、アノスがキヴォトスをぶらぶらし始めると思いますので、私も筆がのりやすくなりますね。今後とも本作をよろしくお願いします。

ちなみに、ちゃんとこの先生もイオリの足は舐めてます。それはもう、ガッツリと。
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