透き通る世界で魔王は何を見る?   作:いぶりがっこ

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疲れたよう…。何もしたくないよぅ……。


至りし境地

 

 

その白き空間から突然、影がぬうっと起き上がり、実体化していった影が背の高い男の姿を象っていく。だが、それはまるで──

 

「…………」

 

俺は目を見張り、絶句した。

 

魔眼()の前にいる男。それは異様に長い銀髪を持ち、夕闇を具象化したような外套を羽織っている。そして、無彩色の瞳を持つ背の高い男の姿だ。

 

その姿、その魔力、その根源を、俺は見間違えるはずがなかった。そこには紛うことなき前世の俺。二律僭主ノアの姿があったのだ。

 

「……くはは、流石に驚いたぞ。まさか前世とはいえ、俺まで再現してくるとはな」

 

まさか二律僭主(前世の俺)まで再現してくるとは。多少、驚きはしたが、その中で疑問に思った点がいくつかある。

 

「──弱いな。強さでいくと、今の俺より少し劣るくらいか?」

 

そう。その魔眼()にて深淵を覗くと、本来の二律僭主よりも断然、出力が劣っているのだ。流石に俺だ、完全には再現しきれなかったのだろう。

 

そしてそれに関係するように、二つほど気になる点が見つかった。

 

その身に纏う外套と混沌の力だ。夕闇を具象化したかの様なその外套は、さながら夜空の星々が煌めいているかのような見た目へと変わっている。

 

混沌の力も本来とは違う。全ての可能性が混じり合い、あらゆる要素が確定していないのだ。さながら<波身蓋然顕現(ヴェネジアラ)>を思わせるようで、しかし明確に違うものであることが分かった。

 

「さて。実質、俺vs俺ということになるな。一体どうなることか」

 

こんな機会はそうそう訪れまい。

 

それに俺の深淵を覗く、いい機会にもなる。俺は静かに、しかし轟々と燃え上がるような、そんな沸き立つような感覚に襲われた。だが──

 

「自分自身だからといって、過去に負けると思ったか」

 

俺は泰然と構え、そう言い放つ。如何に俺を再現しようと、紛い物にすぎぬ。どれだけ精巧に創ろうとも偽物は結局、偽物でしかないのだ。

 

故にその力の差、存分にその頭蓋へと刻み込んでやろう──

 

 

 

 

 

「あれは……ッ……!?ま……さか……!」

 

双頭の木偶人形が驚愕に震えている。

 

「クックック……!!まさかとは思いましたが、観察を続けて正解でしたね」

 

黒服の異形が歓喜の声を漏らした。

 

「彼の存在が克服した混沌、そして生じた追憶を経て……我々は遂に()の境地に辿り着いたのですね」

 

「そういうこったぁ!!!!」

 

紳士の服に身を包んだ首無しの男が叫び、それに抱えられた額縁に納められている男の絵画が嬉しさを滲ませている。

 

各々が万感の想いで、しかしようやく辿り着いたその境地に対し、静かにその名を口にした──。

 

 

 

 

 

「「「「────崇高に(そういうこった!)」」」」




アノス・ヴォルディゴードvs二律僭主ノア(崇高)、
遂に開幕です──。これが書きたかったんです!

透き通る世界で魔王は何処に行く?

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