透き通る世界で魔王は何を見る? 作:いぶりがっこ
日暮れ時──
シャーレオフィスビル、執務室。
〝ふぅ……。さて相談はこれで終わりかな?〟
「ええ。今日は大変って聞いたのに、相談に乗ってくれてありがとう。先生」
〝丁度、暇になったタイミングだったし、何よりヒナの可愛い顔も見れたから良かったよ〟
「……はぁ、もう。私以外にはそういう軽はずみなことは言わないようにしなさい」
〝???〟
先生とヒナは相談を終えたのか、近くのソファにもたれかかっている。ヒナは今回の相談に関しての礼を先生に伝えつつ、雑談を交えての休憩を挟んでいた。
彼と彼女の仕事量の多さ。そして、その多忙さに関して言い出せばきりがない。
シャーレは言わずもがな、ヒナは不良生徒達の鎮圧、書類仕事、そして
いつもは深夜までの業務。場合によっては徹夜も珍しくない彼等だが、今回に限ってはどちらも今日中の仕事を全て終わらせている。
そんな日暮れの、余裕のできた一時を堪能し、先生と心地よい時間を過ごしていると、ゆっくりとその場から先生が立ち上がった。
〝さて。アノスを待たせていることだし、そろそろ呼びに行こうかな?〟
「……先生」
ヒナが真剣な表情で、先生を呼ぶ。
〝ん、どうしたの?〟
先生は伸びの体勢になっていたが元の姿勢に戻り、再びヒナの方へ向く。そうして両者は真剣な面持ちで顔を合わせた。
「彼、アノス・ヴォルディゴードは──
◇
翌日、カフェ1号店。
「なるほどな」
現在、俺達はシャーレが管理するカフェにて話し合いをしている。そうして先生から一通りの話を聞き終えた俺はその言葉に肯定し、頷いた。
「つまり用事を済ませるついでに、俺を各学園に案内したいという訳か」
〝アノスにはもっとキヴォトスを知ってほしいからね。それにアノスはシャーレの部員だからどこの自治区にも介入できるし、仮とはいえ部員として各所を見て回った方が良いと思うんだ〟
どこの自治区にも介入できる、か。少なくともシャーレの部員として加入した意味はあったようだ。
「アノス・ヴォルディゴード」
先生の横に控えていたヒナが言う。
「今回は私や先生と一緒に、ゲヘナ学園に来てもらう」
「ゲヘナ学園。確か、キヴォトスにおける三大校の一つと聞いたが?」
「ええ。ただ……」
言い淀んでいるヒナに、俺は次の言葉を促す。
「どうした?言ってみよ」
言い辛そうにしているものの、意を決したのか真剣な面持ちでこちらを見つめる。
その表情にはまだ若干、心配の色が混ざっているようだが。
「ゲヘナは自由と混沌が校風だから、お世辞にも治安が良いとは言えないの。出来る限り、守るように努力するわ。それでも先生と同じく、外の世界から来た貴方が無事で居られる保証は……」
「くははっ。ヒナ、誰に対してものを言っている?」
その言葉に俺は一つ、笑声を漏らす。一瞬驚いた表情をしたヒナだったが、今度は疑問といった顔でこちらを見ている。
「なに、そう心配せずともよいぞ」
俺は泰然と構え、その場に立ち尽くすヒナと先生に対してこう言い放った。
「無秩序だからといって、俺に乗り越えられぬとでも思ったか?」
次回こそ……次回こそは、ゲヘナ学園に行くぞ!給食部に行くアノス様が見たい読者様も居るようですし……なるべく頑張りますよ( ・ω・)