透き通る世界で魔王は何を見る?   作:いぶりがっこ

24 / 35
はい、投下ァ!


ゲヘナ学園

 

──ゲヘナ学園、第一校舎前。

 

シャーレから近場にある電車に乗り、足を運んだ俺達は現在、ゲヘナ学園の第一校舎前に立っている。見たところ、なかなか豪奢な学園のようだが……

 

 

ズドドドドドドドドドオオオオオオオオオオオン!!!

 

 

「ふむ。確かに、お世辞にも治安がよいとは言えないな」

 

校内外問わず、響き渡る銃声や笑い声がこの学園の治安を表している。なかなかどうして、自由と混沌を校風にしているだけのことはある。

 

「全く。私が学園から離れてる隙に、暴れた連中がまた出たのね。さて……」

 

ヒナは愛銃である終幕:デストロイヤーを構え、暴れている生徒達に照準を合わせる。

 

「終幕:イシュ・ボシェテ──」

 

そう言い終えると、身の丈程の銃で不良生徒達に向かって、まるで雨あられのように銃弾を連射した。

 

「ぐはっぁあ──!?」

 

「ぐあっ…!?な……に、が……!」

 

銃弾の嵐が次々と不良生徒に命中し、撃ち終えた頃には皆静かになっていた。なるほど。事前に聞いてはいたが、これがゲヘナ最強と呼ばれる少女の実力か。

 

「ごめんなさい先生、アノス・ヴォルディゴード。多分、この先もうちの生徒が迷惑を掛けると思うから、先に謝罪させてほしい」

 

「気にするな。この程度、迷惑の内にも入らぬ」

 

〝大丈夫だよ。子供は元気が一番!……だけど、あの子達は少し元気過ぎるよね……〟

 

全く気にしていない俺と、「たはは」と笑う先生。その様子を見てヒナは肩の荷が降りたのか、薄く笑みを浮かべて「ありがとう」と一言告げた。

 

 

 

 

 

 

 

俺達は学園内へと歩を進める。そうして最初に訪れたのはとある食事処と、それに併設されている厨房だ。そこには二人分の影が見える。

 

「ああ〜もう!!あいつら、こんなに散らかしてっ!」

 

「落ち着いてください、フウカ先輩……!」

 

一人は赤い瞳を持ち、額に特徴的な二本の長い角を生やしている少女だ。そしてもう一人の少女も側頭部に二本の角を生やしており、どこかおっとりとした雰囲気を感じさせる。

 

そのどちらもエプロンを着用しており、この学園の食事を担当する者だとすぐに分かる装いだ。

 

そんな二人の少女に先生は声を掛けた。

 

〝おーい。フウカ、ジュリー!〟

 

「せ、先生!?いつの間に……」

 

「先生、お久しぶりです」

 

声を掛けてきた先生にフウカは驚き、ジュリはその顔に嬉しさを滲ませている。久しぶりなのか、彼女達は先生との再会に喜びを隠しきれない様子だ。

 

だが、しばらくしてジュリは俺に気付いたのか、疑問と若干の驚愕が入り混じった顔でこちらを見つめている。

 

「ところでヒナさんの方は分かるのですが、その後ろの男の人は一体……?」

 

「本当……って、人間の男の人?先生以外で見たのは初めてかも……?」

 

ふむ。そういった反応をしてきたのはモモイ達以来か?まあいい。俺も名乗らぬ訳にもいかぬので、簡潔に自己紹介をするとしよう。

 

「俺はアノス・ヴォルディゴード。仮とはいえ、今はシャーレの部員として活動している。そういった事情で、これから顔を合わせる機会も出てくるやもしれぬのでな。よろしく頼むぞ」

 

「アノス……」

 

「ヴォルディゴード……?」

 

フウカとジュリは、まるで違和感を覚えたかのように首を傾げている。

 

「ふむ。いつかのモモイ達にも同じような反応をされたが……俺の名に違和感が?」

 

そう問うと、慌てたようにしてフウカが答えた。

 

「……ああ、いえ!珍しい名前だったもので、外の世界の中でも更に外の方から来た方なのかなと」

 

「まあ、そういったところだ」

 

なるほど。違和感を感じていたのはそういう理由だったか。確かにこの世界の住民の多くは、名前が姓の後からきている。そう感じるのも無理はないだろう。実際、フウカの予想は当たっている。

 

「ところで先生方は給食部にどの様な用事があって、いらっしゃったのでしょうか?」

 

〝今日はアノスにキヴォトスを知ってもらう為に、各学園を案内しているところなんだ。丁度、シャーレにヒナも来ていたし、今回はゲヘナが良いかなと思ってね〟

 

「なるほど……」

 

先生は疑問を浮かべるジュリに対し、その疑問を晴らすためにそう答えた。ジュリも納得したらしく、うんうんと頷いている。しかし、だ──

 

「……それにしても、随分と散らかっているな。これは生徒の仕業か?」

 

「そうなんですよ!全く、あいつらときたら!!」

 

「フ、フウカ先輩!?落ち着いて──」

 

食事処の方を見てみると、食器や食べ物がいたるところに散乱しており、綺麗なところは数ヶ所を除いて他にはない。なかなかどうして、ゲヘナには問題児が多いようだな。それに──

 

「せっかくだ。片付けるついでに、俺も仕込みを手伝おうと思うのだがいいか?」

 

「ええ!?」

 

突然の提案にフウカは驚き、少しばかり顔を歪める。

 

「そんな、悪いですよ……!それに、もし仮に分担するとしても仕込みは四千人分もあるんです。しかもそれを来たばかりの人に任せる訳には……」

 

「くはは」

 

笑う俺に、フウカは一瞬肩をビクつかせるも、今度は疑問の入り混じった顔でこちらに問うてきた。

 

「私、何か変なことを言いましたか……?」

 

「三分だ」

 

「……え?」

 

突然、訳のわからぬことを言い出す俺に、フウカは戸惑いを隠せないでいる。

 

「その程度の仕込み、俺ならば三分で済ませられる」

 

フウカ達と同じ様にエプロンを着用し、着終わった俺の身体から徐々に魔力が放出される。

 

「まあ、信じられぬのも無理はない。そこで見ておけ」

 

その魔力にて魔法陣を描き、更に魔力を込めていった。

 

「お前達にも見せてやろう、魔王の仕込みを」




魔王様3分クッキングのお時間です。
さて、次回どうしよ(いつもの)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。