透き通る世界で魔王は何を見る? 作:いぶりがっこ
※今回使用する魔法の一部に、本作のオリジナル設定を含む場合がございます。ご注意下さい。
「ほ、本当に大丈夫なんでしょうか……」
心配しているジュリを余所に、俺は魔法陣を描く。今回、使用する魔法は──
「<
迸る光とともに出現したのは、数多無数の食材。現れた食材は、そのどれもがミッドヘイズにおいて高価とされるものばかりだ。
「……ええっ!?」
「な、何ですかこれ!大量の食材がいきなり……!?」
目を白黒させるフウカ達を置いて、俺は作る料理を決めていく。
「今回は……そうだな。キノコグラタンがいいか」
四千人分もの量を作るのだ、作るからには気合いを入れていかねばな。その為にはまず、この魔法を使う。
「<
あらゆる距離や数の制約を超越し、万物を掴み取るその手にて、この場にある食材を同時に掌握する。
そうして食材を一口大に切り、その切断する動作とともに無数の食材が勝手に動いた。
その動きに合わせ、まるで連動するかのように他の食材もまた切られていくのだ。
「<
使用したのは<
だが今回は動作だけを連動させるので、魔法は使わない。その分だけ魔力が少なく済むので、効率がいい。
後は──
◇
「こんなところだろう」
三分が経ち、気づけば山のように積まれたグラタン皿が厨房を埋め尽くしている。母さんやミーシャほどではないが、なかなか上手くできた。
流石に四千人分だ。仕込みだけでもここまで手が掛かったが、フウカやジュリはほぼ毎日作り続けているというのだから、この少女達の腕も尋常ではない。
「まさか、本当に四千人分を三分きっちりで作り上げるなんて……」
この光景を目のあたりにしても未だ信じられぬといった面持ちで、フウカは辺りを見渡している。
「くはは。俺が嘘をつくと思ったか?」
俺がそう口にすると、フウカ達はその顔に希望を浮かばせ、やる気に満ちた声を上げる。
「これで不味いと言われ続けてきた給食部の汚名挽回も夢じゃないかも……!アノスさん!!」
「私達、給食部の名誉顧問になってくれませんか!?」
「……ほう?」
フウカは興奮冷めやらぬといった様子で、俺に提案を持ちかけてきた。……名誉顧問、か。ふむ。
「……あ!す、すみません。少し興奮してしまいました。やっぱり今の話は……」
「いいだろう」
「……え?いいんですか!?」
即答する俺にぽかんと口を開けるフウカだったが直ぐ様、調子を立て直して、再び問うてきた。
「生徒の頼みであれば、なるべく引き受けるのがシャーレという組織なのだろう?であれば、快く引き受けるのが道理というものだ」
普段の俺ならば答えは違ったかもしれぬが、今の俺はシャーレの部員。ならば今回は先生に倣うこととしよう。
〝ふふっ。じゃあ、アノスの給食部名誉顧問就任のお祝いもしないとね〟
先生はニコリと笑みを浮かべ、俺の就任祝いについて考えているようだった。
「そんなこともあるかと思ってな。キノコグラタンを人数分、作っておいた。お前達もどうだ?」
「……いいの?」
ヒナが問う。
「ああ、せっかくだ。これを就任祝いとしよう」
それを見越していた俺は、仕込みの四千人分に加えて、キノコグラタンを余分に作っておいたのだ。
各々が自分の皿を持ち、キノコグラタンを食しているようだ。皆が「美味しい!」と口々に言い、そのキノコグラタンをどんどん食べ進めていく。
〝……アノス〟
グラタン皿を手に持った先生が、場に似つかわしくない静けさで話し掛けてきた。
「どうした?」
〝これからもシャーレの部員としてよろしくね〟
そう喋る先生の顔には、いつにも増して柔らかい笑みが浮かんでいた。それが父さんと母さんの笑顔と重なり、俺も自然と笑みがこぼれる。
「……ああ。任せろ」
一見すると物騒で、俺の求める平穏とは程遠いように見えるこの
……だが、この瞬間。この場においてだけは我が世界と同じく、愛と平和に満ちているように思えてならなかった。
はい、調理部分はバッサリとカットしてしまいました……。初心者の私には荷が勝ちすぎた。
その分、他の描写は頑張って書くので許して()
※本作はただの暇潰しで書いている作品なので、普通に更新が止まる時もあります。許してね()