透き通る世界で魔王は何を見る? 作:いぶりがっこ
「さて、どこから話したものか」
俺は一つ、溜息を吐きながら言葉をこぼす。
「ヒナ。先程、お前は俺の中に強大な何かが眠っていると言ったな?」
「ええ。勘、なのだけれど……」
至って真剣な顔でヒナは答えた。
「結論から言おう。お前の勘は正しい」
ヒナは僅かにその目を丸くする。確信に近いと思っていたはいえ、勘は勘。本当に当たっているとは思わなかった。そんな顔をしている。
「だが、お前はなんの確証もなしに納得できる質ではあるまい?」
ヒナは鷹揚に頷きつつも、鋭い目つきをこちらに向ける。
「……じゃあ、どうするのかしら?」
「証拠を見せよう」
そんなヒナに俺は軽く答えた。
ヒナが疑問を浮かべる前に、俺は自らの胸に魔法陣を描いた。そうして、その手を魔法陣の中心に突っ込んでは、自身の根源を掴む。
〝ア、アノスッ!?〟
「くはは。なに、心配はいらぬ」
俺の行動に驚いた先生は心配の声を挙げたが、それを宥めるようにして返事を返した。
すっと魔法陣から手を引き、掴んだ拳を徐々に開けていく。すると、強大な力の塊──滅びの根源がその姿を現した。
「──これが根源だ」
「根源……」
「直感で適当な言葉を選んだのだけれど……本当にそういった名称だったのね」
〝何というか、見ているだけで総毛立つ様な感覚に襲われるね……〟
俺の根源を目にし、各々が感想を口にしていく。
だがやはりというべきか、皆の様子を確認すると若干の震えが見てとれる。俺との存在格の違いを、無意識にではあるが理解してしまったのだろう。
「霊魂や魂魄とも言えるものだが、根源はその更に深淵。俺達を俺達たらしめるもの、いわば存在の核だ」
「魂魄……」
「そうだ。だが根源には様々あってな。中には特殊な力を秘める根源が存在する。俺の根源も、その特殊とされる内の一つ」
静かに、淡々と俺は語っていく。
「滅びの根源。それが我が一族、ヴォルディゴードに連綿と受け継がれる根源だ。お前はこれが内包する力を無意識に感じ取ったのだろう」
「……随分と物騒な名前なのね」
「くはは。物騒?これは物騒どころのものではないぞ、ヒナ 」
くつくつと喉を鳴らし、笑い続ける俺を先生達は呆然と見つめる。
「その名の通り、滅びの力を内包する根源。だが、これがまた厄介な代物でな。内包する力があまりに強大過ぎて、制御を誤れば軽く世界が滅ぶ」
〝………世界が?〟
「ああ。滅びの力は凶暴だ」
息を呑む先生達に言葉を返し、根源を体内へと戻しながらも、淡々と話を続けた。
「虚無を滅ぼし続けるほどにな」
すみません、次回へ続きます!
引き続きアノスの強大さと、グラハムについて語る回になると思います。ブルアカ陣営の話についても、話は練っていますので暫くお待ち下さい。
今回も短いなぁ……(泣)