透き通る世界で魔王は何を見る?   作:いぶりがっこ

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魔王と算術使い

 

数日後──

 

シャーレオフィス、休憩室。

 

時間は昼を過ぎ、何時ものように舞い込んでくるシャーレの業務もその殆どを片付け終えた後だ。

 

誰かの足音が聞こえる。

 

ずんずんと床に響く音が、こちらに向かってやってくる。足音からして、どうやら一人のようだ。

 

やがてその音はこちらに近づいてきて、気づけば部屋の前までやってきた。

 

「せ〜ん〜せ〜い〜!!」

 

バンッと勢いよく扉が開いた。出てきたのは見知らぬ生徒だ。

 

腰まで伸びた菫色の髪をツーサイドアップにしており、羽織られた白いジャケットと黒いブレザーが特徴的な少女。

 

校章を見るに、ミレニアムの生徒だろう。

 

「って、あれ?ここにも居ない……」

 

検討が外れた。そう言わんばかりに眉を下げ、少女は物悲しげな表情を浮かべている。

 

様子から察するに、どうやら先生に用があるようだ。

 

「やっぱり何処かに出かけているのかしら?」

 

「生憎、先生は留守にしていてな。用があるなら、日暮れ前にもう一度、ここを訪れることだ」

 

少女の独り言に口を挟み込む形で、俺は答えた。

 

やはり気づいていなかったのか、少女はギョッとした様子でこちらに視線を向ける。

 

「……男の人?先生以外の?」

 

「もしかしてモモイ達が言っていた……」

 

少女は顎に手を添え、長考し始めた。

 

辺りに再び静寂が訪れる。

 

……どの程度の時が経った頃だろうか。

 

その様子を一通り観察していた俺は、未だ思索にふける少女へと声を掛ける。

 

放っておけば、夜まで考え込みそうな勢いだ。

 

「そういえば、まだお前の名を聞いていなかったな」

 

俺が言葉を発すると同時に現実へと戻ってきた少女は、考えが纏まっていないのか、拙いながらも言葉を紡ぎ始める。

 

「……えぁ、え?ああ、ごめんなさい!」

 

少女は佇まいをしっかりとしたものにし、名を名乗った。

 

「……改めて、ミレニアム・サイエンススクール2年。セミナー所属、会計担当の早瀬ユウカです。えっと、アノス・ヴォルディゴードさん……ですよね?」

 

俺を知っている、か。

 

ということはモモイやヒマリ達に聞いたか、あるいは彼女らが俺の情報をうっかり漏らしたかのどちらかだろう。

 

「ああ。シャーレ所属、アノス・ヴォルディゴードだ。短い付き合いになるやもしれぬが、よろしく頼む」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

ニコリと笑みを浮かべ、ユウカは俺に握手を求めてきた。

 

すっと差し出されたその手を見る。

 

無論、断る理由などあるはずもない。俺はすかさず、その握手に応じた。

 

「なかなかどうして、お前とは良い関係を築けそうだ」

 

こちらも笑みを返し、その手をしっかりと握った。




はい、ということで今回はユウカ登場回でした。
次回もユウカ関連の話(だと思います)です。
どうか、お付き合い頂ければ幸いです。
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