透き通る世界で魔王は何を見る? 作:いぶりがっこ
一週間後──
トリニティ自治区。トリニティ総合学園。
シャーレから徒歩でしばらく。
俺達はトリニティ総合学園へと足を運んでいた。
その校舎や建物の数々は美麗な建築で建てられており、街並みも石畳が敷かれた美しい建築が目を引く。前に見たゲヘナの校舎と比べても、遜色などないほどに豪奢な造りをしているのだ。
〝さて、着いたね。アノス、ここがトリニティだよ〟
「ほう」
俺は周囲を見渡す。
そこでは生徒達が道を行き交っており、口々に「ごきげんよう」という挨拶の言葉を交わしている。ゲヘナの混沌さとは異なる、高貴であろうとする人々の姿がそこにはあった。
「なるほど。ゲヘナとは似ても似つかぬな」
〝ははは、確かにそうだね。じゃ、ナギサ達を待たせているから先に進もうか〟
「ああ」
「はい、先生」
俺とユウカは返事をする。
そうして更に歩き、俺達は校内に入っていった。
途中、視線を集めるようなことが多々あったが、俺達は気にせず奥へと進む。そうして歩いた先に見えたのは、一つのドアだ。
そこには護衛と思しき生徒が立っており、先生を視認すると、すぐさま生徒達は背筋を伸ばす。
「シャ、シャーレの先生!おはようございます」
〝うん、おはよう。申し訳ないけど、ここを通してもらって良いかな?〟
「は、はい!直ちに開けますので……」
護衛達は扉に手をかけ、ドアを開ける。そして扉を潜り、待ち受けていたのは二人の生徒だった。
広々とした部屋の中、一人の少女が静かに紅茶を傾けている。その優雅な仕草から、目の前の少女からは育ちの良さが滲み出ている。そして対面に座るのは先生、俺とユウカも同席しているのだ。
「お忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。先生方」
少女は礼儀正しく頭を下げた。
「さて、本日はトリニティと連邦生徒会との協力体制について議論させていただければと思います」
〝ありがとう、ナギサ。早速だけど、トリニティ側からの提案を聞かせてもらえるかな?〟
「はい。ですが、まず別件で最初にお伝えしたいことがあります。これはトリニティから、正式にシャーレへ依頼したい事案なのですが……」
〝依頼?〟
その少女、ナギサは真剣な表情になる。
「最近、トリニティ自治区内で不穏な動きがあるのです。それもティーパーティーのメンバーだけでなく、一般の生徒にも怪我人が出ています」
彼女はカップを置き、テーブルの上のファイルを取り上げた。
「これが被害者のリストです」
ナギサが差し出した書類を受け取ると、俺と先生はページをめくる。そこには生徒の名前と学年、負傷した状況が細かく記録されていた。
「被害者はいずれも無差別に狙われており、特に多いのが放課後の時間帯です」
先生は眉を顰めた。
〝これだけの数となると偶然ではないね。何らかの組織的な意図を感じるけど……〟
ナギサは頷いた。
「ええ。さらに調査を進めると、裏社会の武器商人が関わっている可能性が高いという情報も入ってきました」
〝なるほど。それで私達に調査の依頼を?〟
「はい」
ナギサは深く息を吐いた。
「トリニティ内部でも調査を行っていますが、どうしても手が回らない部分があります。そこでシャーレの力を借りようと考えました」
〝なるほどね。分かった、シャーレの方でも調査してみるよ〟
「ありがとうございます。ところで……セイアさん。先程から黙ったままですが、何かあったのですか?」
ナギサが不思議そうな表情で、横にいる狐耳の生徒──セイアに声をかける。おそらく、彼女もまたティーパーティーの一人なのだろう。
だが、それとは別に気になる点が一つ。
「……先程から視線が気になっていたのだが、俺の顔に何かついているか?」
「…………」
俺はセイアに問うた。
だが、セイアは依然として黙ったまま、俺の方に視線を向けている。その顔は何かを畏れているかのように目を見張り、脂汗を滲ませているのだ。
すると、しばらくしてセイアはこの状況に耐えかねたのか、静かに声を発した。
「…………すまない、体調が優れないようでね。ナギサ、先生方。少しの間、席を外させてもらっても良いかい?」
「え、ええ。構いませんが……」
「それじゃあ失礼するよ──」
そうしてセイアは席から立ち上がり、退室した。
その
セイアは直感で何かを察したようですね。
さて、彼女は何を察したのでしょうか……?