刀使ノ巫女 笑顔の守り人   作:桜庭カイナ

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第十一話

『ただいま敷地内から出ることは禁じられています。各学園の生徒ごとに集合し、待機するようお願い致します』

 

折神家本部の敷地内出入口には機動隊に警備にあたる刀使によって封鎖され、そこにはマスコミ達が集まっていた。

パトカーのサイレンが鳴り響き、警官達は紫を襲撃した可奈美と姫和の服装や特徴を無線で他の警官達に報告している。

 

御前試合会場も刀使達は紫様が襲撃されるという異常事態に困惑しながらも、学園ごとに別れ集まっていた。

 

紫は執務室に戻り、真希達は荒魂討伐などの任務の際に使わられる作戦指揮室にて待機していた。

部屋には数十台のコンピューターに、壁に掛けられた巨大なモニターには折神家本部周辺の監視カメラの映像が映し出され一定間隔で切り替わる。

 

「藍華!あれは一体なんの真似だ!」

「あの時、あの子は写シが剥がれていました!でも真希さんはあの子を斬ろうと!」

「紫様をお守りして逆賊を排除するのは親衛隊の務めだ!君は逆賊の幇助をしたんだぞ!」

「私は必要以上に人を傷つけて欲しくなかっただけです!」

「そんな生温い考えで紫様を御守りできるのか!」

 

藍華の妨害により、紫の暗殺を企てた反逆者達を捕らえ損ねた真希は怒り心頭な様子で藍華に叱咤する。しかし、藍華は一歩も譲らずに反論を続ける。

 

「いい加減に……!」

「お二人とも、ここは作戦司令室ですわよ?少しは落ち着きなさいな」

 

二人の間に割って入り、寿々花は藍華達をなだめる。あのまま口論を続けていては、オペレーター達のサポートの妨げになるのは目に見えていたからだ。

 

「ですが藍華さん?貴女は真希さんの妨害をし、逆賊を逃した。これは紛れもない事実ですわ。貴女はこの責任をどう取るおつもりですの?」

 

寿々花は怒りに満ちた瞳を藍華に向け、彼女にそう問う。

紫を守護する親衛隊。その一人が逆賊達の手助けをした。これはその場で拘束されても文句は言えない状況だ。

だが、そうされないのは真希達の情けがあってこそだと藍華は理解している。

 

「……私が二人を捕まえます!私に捜索許可を!」

 

藍華は自身が親衛隊第五席だということを忘れてはいない。真希達とはやり方は違えど、逆賊達を捕らえたいという気持ちが彼女にはあった

 

「……少し待て」

 

真希は上着のポケットから携帯端末を取り出し、紫と連絡を取る。

親衛隊が動くには折神紫の許可なしでは許されないからだ。

 

「はい、承知いたしました。紫様から許可が出た。警備隊を率いて逆賊達の捜索に当たってくれ」

「はい!」

「それと約束してほしいことがある。もし抵抗すれば、容赦なく斬ると」

「……善処します」 

 

藍華はハッキリしない返答を残し、作戦司令室を後にした

 

「大丈夫……と言いませんでしたわね」

「……ああ」

 

寿々花の言葉に真希はため息混じりの返事を返した。

藍華の口癖である《大丈夫》

彼女と同じ親衛隊の仲間として数ヶ月間共に過ごしてきた真希達は、その言葉を聞かなかった日は全くと言っていいほど無かった。

 

「なぜ紫様は藍華さんを親衛隊にスカウトしたのでしょうか。親衛隊たるもの、紫様のご判断に疑いを持ってはならないのは理解してはいますが」

 

親衛隊の責務は荒魂から人々を守るだけではない。荒魂、人間問わず紫に仇なす者を排除することも含まれる。

真希と寿々花は公務の為に移動する紫を襲撃した逆賊を何人も拘束し、必要ならば危害を加えるのも厭わなかった。

 

だが藍華は違う。たとえ悪党であろうと彼女にとって人を傷つける事は強く拒む。

真希達は、藍華のその生温いポリシーに嫌悪感を抱いていた

 

「それは僕たちが考える事じゃないよ。今必要なのは、彼女の生温い考えを捨てさせられるかだ」

 

 

藍華は沈んだ表情をしながらエントランス前のベンチに腰掛けていた。

 

「(逆賊を幇助した……か)」

 

あの時の真希の言葉が胸に突き刺さり、自身の行動が間違っていたのではないかと疑いを持ち始めた。

 

「(でも……人を傷つけちゃいけないよ。相手も私たちと同じ人間なんだから)」

 

人語を理解せず対話ができない荒魂を斬ることはできるが、自分と同じ対話ができ、赤い血が流れる人間となれば話は違う。

悪人であれば斬り捨てる。藍華はそう簡単には割り切ることができなかった。

あの暗殺未遂も何か悲しい行き違いがあったのではないかとさえ考えてしまうのだ。

 

「落ち込んでいても始まらない!さて!衛藤さんと十条さんの捜索に行かないと!」

 

自分の両頬をパチンと強く叩き、ベンチから立ち上がる。

すると、聞き慣れた声が聞こえた。

 

「藍華ちゃん」

「千里先生!」

 

声が聞こえた方に目をやると、そこには千里がいた。藍華は溢れんばかりの笑顔で彼女に抱きつく。

だが、いつものように藍華の頭を撫でる様子はない。藍華は顔を見上げると千里の曇った表情が見えた

 

「藍華ちゃん……大丈夫だった?」

「うん。ちょっと怒られただけだから心配しないで」

「大丈夫……って言わないの?」

「あっ……。もう、意地悪だなぁ……」

 

千里は藍華が落ち込んでいるのをすぐに見破った。長年あおぞらで藍華を見てきた千里には容易かった。

 

「ねぇ千里先生?千里先生は……悪い人なら簡単に傷つけていいと思う?」

 

その質問を聞いて何があったのかは千里はすぐに予想できた。

人を傷つけることを激しく嫌う藍華のポリシーを否定され、それが揺らぎつつあると。

彼女も客席から紫暗殺未遂の一部始終を見ていた。藍華が真希の刃を弾き、犯人達を捕らえ損ねたところも

 

「確かに藍華ちゃんは親衛隊第五席の刀使で、紫様をお守りするのが藍華ちゃんの責務。真希さん達が怒るのも無理はないわ」

「うん……」

「でも、真希さん達に怒られて考えを曲げるつもりは?」

「ないよ。相手も私たちと同じ人間だから。生温くても、これが私だから」

 

藍華は千里の目を見てハッキリとそう答えた。すると、千里は微笑む

 

「じゃあ、藍華ちゃんは藍華ちゃんのやり方を貫きなさいな。藍華ちゃんなら大丈夫よ」

「……うん!」

 

千里は微笑みながら藍華にサムズアップを見せると、藍華も笑顔でサムズアップを返す。

 

「じゃあ千里先生、行ってくるね?」

「ええ、いってらっしゃい」

 

千里はエントランスの出口へ駆けていく藍華を見送った。大切な教え子の幸を願いながら

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