記憶が流れ込んでくる。
自分じゃない誰かが、僕の身体を使って戦っている時の記憶だ。
圧倒的だった。
その誰かは、僕の身体を使ってあの理不尽な存在を——魔人族をボコボコにしていた。
使ってる魔法も次元が違うものだった。
重力崩壊とかブラックホールとかあまりにも規格外すぎる。
だから、はっきりと理解できた。
今、僕の身体を使っている存在は、間違いなくこの世界の
目を覚ますと、そこは見たこともない不思議な空間だった。
頭上では無数の星々が煌めいている。
さらに地面と思われる場所もまた星空のように輝き、鏡のように天で煌めく星々と僕の姿を映し出していた。
凄く綺麗だ。
それに、この幻想的な星空の世界に包まれる感覚は妙に心地良いと感じた。
「本当にどこだ……?」
ただ、この場所がどこなのかはまるで検討がつかなった。
「お、目が覚めたようだな」
不意に背後から声がした。
その声は、僕が意識を失う直前に語りかけてきた声と同じ声だった。
振り向くと、そこには一人の青年が立っていた。
青年は、ぼろきれのようなマントを羽織り、薄汚れた制服のような服を身にまとっていた。
でも、一目見ただけでわかった。
オーラは隠しきれていない。
青年から、明らかに僕のような凡夫な存在とは違う
実際、その姿はどこかやつれているように見えるが、背筋はまっすぐに伸び、鋭く感じる目に宿る光からは揺るぎない力強さが感じられた。
そして金髪に紅い瞳——どこか見覚えがある顔立ちだった。
「君が……」
「そう、俺がジアだ」
青年——ジアが静かにそう名乗った。
その声は穏やかでありながら、どこか底知れぬ力を感じさせる響きを持っていた。
「ここは精神世界だ」
ジアは僕の疑問に答えるように説明を続けた。
「ここなら、肉体を失った俺でも、お前と直接対話ができる」
精神世界。聞き慣れない言葉だが、確かにこの空間が現実とは異なるものだというのは、直感的に分かった。
「安心しろ」
さらにジアは微笑みながら、さらりと信じられないことを告げた。
「今回の出来事はすべて魔法でなかったことにしておいた。それに、襲撃してきた魔人族もぶち殺しておいたから安心していいぞ」
その言葉に、僕は思わず息を呑んだ。
村を襲った
やっぱり間違いない。この人は凡夫じゃない《向こう側だ》。
「さて、では改めて自己紹介といこうか」
一度、ジアが咳払いをしながら言った。
その仕草はとても洗練されていて、どこか儀式めいた雰囲気さえ感じさせた。
「俺の名前はジア——いや、お前にはこう名乗るべきだろう」
一瞬の間を置いて。
そして次の瞬間、驚くべき言葉を口にした。
「俺の本来の名前はアメジア——そう、未来のお前だ」
その名前を聞いて、僕は今までにない衝撃を受けた。
「遥か未来——この世界でも完全に凡夫と決別できなかった”アメジア”という名の男の成れの果て……それが俺だ」
目の前の存在——ジアと名乗った青年ははっきりとそう言った。
いきなりそんなことを言われても、信じていいかどうかわからない。
それでも、話を聞いて改めてジアのことを見つめ直してみる。
思えばその顔立ちはどこか似ていなくもないと感じた。
実際、髪の色も瞳の色も同じだ。
さらに言えば、僕は記憶を持って転生をして、この世界にきた。
ならタイムスリップがあってもおかしくない気もする。
とはいえ、今すぐ、この話を完全に信じて受け入れられるかといえば、否だ。
「まあ驚くのも無理はない。とはいえ、俺が未来から来たのは紛れもない事実だ」
それでもジアは自信に満ちた物言いを崩さなかった。
まるで僕の疑念を一蹴するように。
本当にジアは未来の僕なのだろうか?
考えれば考えるほど、頭がこんがらがっていく。
ところが、ジアはさらに混乱させる言葉を投げかけてきた。
「さて、この時代の俺よ。今からお前には俺に協力してもらう」
その声には妙な威圧感があった。
「協力……?何を……?」
疑問に思ったので問い返すと、ジアの眼差しが一層鋭くなる。
「俺はこれから運命を捻じ曲げる予定だ」
「運命を……捻じ曲げる?」
「そうだ。具体的には、死ぬはずだった人々を救い、滅びるはずだったこの国を救う。そのために、みんなの死や滅びの原因となった
話が壮大になってきた。
「……ええ?」
困惑のあまり、思わず力なく情けない声が口から漏れる。
それでも、ジアはなおも僕から視線を外すことなく言葉を続けた。
「そしてお前には、運命を変えるために俺と契約してもらう。俺の器になれ」
声は真剣なものだった。そして何より、言葉で表せないほどの想像を絶する覚悟が感じられた。
「それに、これはお前のためでもある」
そして、ジアがとある疑問を投げかけてきた。
「例えばの話だ。もしも俺が逆行してこなかったら、お前とレダ母さんはどうなっていたと思う?」
「……僕と母さんが?」
突然の質問に、胸の奥で嫌な感覚がざわつく。
冷たく嫌な予感が走る。
そして次の瞬間、最悪の可能性が頭をよぎった。
「まさか……」
「どうやら察したようだな。そうだ。俺が運命を変えなければ、お前は母さんと死別していた」
そのまま、ジアは語った。
「聞かせてやるよ。転生して、この世界でなら、前世の凡庸で、凡愚で、凡俗だった自分と——凡夫な存在と決別できると考えて生きた、
ジアにとっては過去の、僕にとってはこれから訪れるかもしれない未来の出来事を。