オレは反省した。どうもオレがやった江戸建立許し虎参りは、江戸中の噂になってしまったらしい。そして、小野忠明のところで道場破りをやらかした話も同時に、だ。
その結果、相当な厄ネタということであちこちから警戒されることとなったらしい。
だからリアル門前返しを喰らったわけだわ。
これは困ったことになった。
道場という金庫が使えねぇ、てことになる。
そうなると日々の宿屋のお金も夕雲育成のための食材とかも、調達出来なくなってしまうってことだ。
それはいかん、後悔した。
オレの軽挙妄動が、夕雲を困らせてしまうことになったからだ。
なので学習し、もっと上手くやることにした。
「夕雲。よく見ておけ。これが虎眼流の江戸建立許し虎参りだ」
三日後。反省したオレは別の道場の前に立っていた。ドヤ顔を決めて夕雲に言うが、凄ーい冷めた目でこっちを見てる。
なんというか「強いし尊敬できるけど付いていって大丈夫かな、この人?」と思ってる顔だ。腰に携えるレイピアと仕込み杖を触りながら悩んでる。
止めてくれよ。それを持って逃げるの止めてくれよ。
ちゃんと弟子として育てるからさ、それを使いこなせるまでちゃんと稽古を付けるからさ。
中途半端なまま武器を持って逃げないでくれ。生兵法は怪我の元だぞ……。
「たのもー!!」
夕雲の心配をよそに、オレは門の前に立った。大声を上げて呼びかける。
中からバタバタと慌てる音が聞こえてきた。
ふ、わかってるぞ、ここからの展開なんぞ。
オレはいつでも対応できるように構える。同時に夕雲もうんざりした顔で少し腰を落としていた。
止めてくれよ、「どうせこいつと一緒にいると塩を掛けられるし避ける準備をしとくかぁ……」みたいな態度を取るのはさ。
人って何気ない仕草でも傷つくんだぜ? 心は硝子なんだぞ。
門が勢いよく開くと、中から出てきた壮年の男性が手に持った壺の中身である塩を掴み、こちらに向けて投げてきた。オレと夕雲は予想できてたので、二人して躱す。
本当に投げてきたんだなぁ……とちょっと悲しくなりつつ、一歩前に出た。
「貴様! さては噂の虎眼りゅ――」
「お願いしまーす!」
土下座。
それはそれは見事な土下座を決めた。
道場主のおっさんの前で、もう足をペロペロなめられるくらいにはみっともないけど立派で綺麗な土下座を決めた。
「オレが馬鹿なことをしたのはわかってます! でも、せめて我が弟子の出稽古だけでもお許しください! オレと違って節度ある弟子なんです! だから、せめて弟子だけでも!」
オレが必死に頼みこむが、おっさんは黙ったままだった。
ど、どうなった……と恐怖するオレだった。
記念すべき100話目がオリ主の土下座で良かったのだろうか……。