気づいた時には死んでた。
空を飛ぶ妙な感覚と一緒に眼下に広がるのは、かつて俺が住んでたアパートだ。
それが燃えてる。全焼してる。
「え、なんで?」
呆けていると、なんか凄い力で引っ張られるのがわかった。
何がなんだと認識する前に、俺の耳に聞こえたのは、
『すまない。運命が捻れた。お詫びに、君が望む能力で、君が望む世界へ転生させよう』
だった。
目を覚ましたとき、俺の目に飛び込んできたのは、古い家屋の天井。
さらに数人の子供の泣く声、騒ぐ声といろいろだ。
「源之助! さっさと飯を食いな! トロトロすんじゃないよ!」
なんだ、なんだ? 何が起こっている?
「裕次郎! あんたも寝てないで、起きて飯を食って働きな!!」
源之助? 裕次郎? 誰にそれを言ってる?
「早く起きな!」
ギャンギャンと騒がしい女の声を不愉快に思いながら体を起こすと、目の前に広がるのは狭くて汚い、古い農家の家みたいな内装。
囲炉裏と竈、さらに床には御座が敷かれていて、男児二名が胡座を掻いて座っていた。
やかましい女は男児の前に座り、茶碗へ飯をよそって出してた。
そして、俺の前に一人、別の男児がいる。
無表情で、感情が見えない顔つき。俺を見ても何も言わない。
ジッと俺を見るだけだ。
「全く源之助は……愚鈍なんだから!」
源之助、愚鈍。
この二つのワードで閃いた。
「げ、源之助……? え? その顔って……」
俺は知ってる。なんだったら、目を覚ます前に読んでた漫画で見た。
全巻読んで、時間があるからまた一巻から読んで、と繰り返したから覚えている。
「え、まさか……これ、シグルイの世界ぃ……?」
俺は呆然と、驚愕と恐怖で動けなかった。
「……夢か。夢だな。そうに違いない」
慌てちまったよ……こんな無体な夢があってたまるか。
アパートが火事になって? 生まれ変わったらシグルイ世界ってやつですかアハハハハ。
「おやすみなさい」
「起きて飯を食えって言ってるだろう!!!」
寝転んだ俺の頭を、ババァが全力でゲンコツを落としやがった。
目の前に火花が散ったんじゃないかってくらいの激痛!
痛みで怒りが沸き上がり、俺は体を起こしてババアを怒声を浴びせた。
「ふっざけんなババァ!! 痛ぇじゃねぇか!!」
「は? 裕次郎? あんた……て誰がババァだい!!」
迫り来るゲンコツを交わしつつ、俺を気づいた。
痛みがある。
感覚がある。
となると、これは、まさか……。
「……夢じゃない……??」
油断したところで再びババアのゲンコツを貰う羽目になり、俺は気絶した。
起きて飯を食った。食わんと死ぬ。