「はぁ……ちくしょう、殺り損なったぜ……」
オレは落ち込みながら、自室に向かっていた。
伊良子殺害計画は失敗に終わった。あとはもう、親父が虎眼流に迎え入れるだろう。
同門同士の殺し合いは親父どころかアニキすら許さないだろう。牛のおっさんは言わずもがな、だ。
正直、涎小豆に乗り込んで「僕がやりまーす!」からの「失敗しましたー! ごめん!」で伊良子の頭をパックリ割ろうかと思ったんだけど……思ったけど……。
いや、良いアイディアだな?
良いアイディアだ。親父に「虎眼流の跡目になる覚悟が決まりました! オレに三重ちゃんをください! つきましては今回の涎小豆はオレがやります!」とか言えばどうにかなるか!
……ダメか。
「うーん、そうなるとオレが三重ちゃんと祝言を挙げることになってしまう……」
腕を組んで悩む。うんうん悩んでみるが、無理かもしれん。
そもそも涎小豆に乗り込んで代わりにやって失敗するとか……待てよ?
「そうか! オレがやります! の流れで三重ちゃんと祝言を挙げても、最初の涎小豆を失敗して責任を取って跡目になるのを放棄します! をすればなんとか……!」
ならんな、と落ち込む。
そうなったら、源之助アニキが責任を取って切腹を命じられるかも。
オレは死なないかもだが、源之助アニキは死ぬ。てか、切腹って腹を切るだけじゃなくて首までチョンパだからな。死ぬわ、そんなもん。
となると涎小豆に割り込むことができんっ。
こうなったら、プランBだ。伊良子を兄者と呼んで慕いつつ、真人間方向に教育し矯正させる。
原作ブレイカーを防ぐ不思議パワーが働くことはないってのは、今までで証明できてる。
虎眼に弟子と認められた。
そして、伊良子の顔に跡を残せた。
原作になかった、虎眼以外の人間が伊良子の顔に跡が残るような傷を負わせられた。
ちなみに源之助アニキが昆嶽神社でマウントからの鉄槌連打で顔をボコボコにしてもちゃんと治ってたからな。明確に跡を残せたのは、大きな成果だ。
分岐を、因果や因縁を間違えなければ、ハッピーエンドになるかもしれんな。
しかし、できるか?
相手は漫画史に名が残る、寝取りクソ天才剣士こと伊良子清玄だ。
これは難しいかもしれん……。かといって検校だの忠長だのを殺して回っても、それはそれで源之助アニキが窮地に陥る……身内の恥は身内が雪ぐもの、として切腹を命じられる。
となれば……だ。
「基本はプランBだが……プランC……それもダメならプランCからプランEまでの仕掛けを発動させるしかない……」
伊良子清玄を改心させるプランB。
伊良子清玄の改心に失敗したと思ったなら殺すプランC。
そして……伊良子清玄がもし、虎眼の親父を殺すことができてしまったなら……もう流れは止められないだろう。
最悪の場合を想定したプランDとプランEを同時に発動させる必要がある。
プランDは、原作通りに源之助アニキに伊良子清玄を殺せるように鍛え導くこと。
そして、プランEは……三重ちゃんが死なず、源之助アニキと一緒に逃走を成功させること。
今までの中でプランDとプランEのための準備は整えてきた。これからも、その準備は続く。
もしプランEまで使うことになったなら、オレは死んでるだろうな。
仕方がねぇ。それまでに全部を知りながら止められなかったオレの責任だ。
「さて、今はどうやって涎小豆に介入するか……うん?」
オレの部屋に前に行くと、なんか誰かいる気がする。
中を覗くと……そこには
「おお、これは裕次郎どの」
「なんでお前がオレの部屋にいるんだよ!!」
「え、ここは座敷牢とは違うのでござるか……??」
「オレは虎眼流でバカをしすぎて座敷牢にぶち込まれることが多かったから、必然と座敷牢がオレの部屋になっちまったんだよ! 昔はちゃんとした部屋だったけどな!!」
何故かオレの部屋と化した座敷牢に、伊良子清玄がぶち込まれて寝転がっていた。
こ、こいつ! 人の部屋で勝手に寛ぎやがって!
いやそういえば原作でも伊良子は座敷牢にぶち込まれてたし、元々座敷牢は私室になる部屋じゃねぇや。
ストックが尽きちゃった……。
明日、更新できるよう頑張ります。