伊良子抹殺に動いたけど上手くいかなかったから、後々のために舟木流と縁を繋ぐべく動く裕次郎。その目的は兜割の習得と屈木頑之助の抹殺であった!!!
掛川から出て早数日。稼いだ銭で食料を買いつつ先に進み、時には野宿し時には野盗をヒャッハーして進む。
そして辿り着きました、日坂です。
店で適当な飯を頼み、舟木道場の場所を聞いて、これから突撃をかます!!!
「たのもー!!!」
兵法指南舟木流道場。
厳かな道場の前で、オレは大声で呼びかけた。
というか呼びかけるしかなかった。
残念なことに、オレにはこういうときの作法は知らんのだ。
なので呼びかけるしかない。
「たのもー!!!」
しかし返答はない。どうやら道場で気迫の籠もった声が響いていることで、オレの声が届かないらしい。
仕方ねぇ、入るかー。
オレは勝手に門に入り、道場の方へと向かう。威勢のいい声がよく聞こえる。
ポテポテと道場前に来ると、なんか男たちが群がっていた。
なんか見た事あるー、と思って近づく。
「あ、原作で千加が道場に来たときのあれか……」
そうだ、この熱狂。確か原作で千加が道場に来て、薄着のまま横チラしてるのを血気盛んな男達が見ているときのあれに似てる。
こっそりと群衆の中に紛れて入り込み、道場の中を窺う。
確かに、男と向かい合って少女が
あれ? なんか原作で見たことある千加よりも幼い気がする?
オレは気づいた。そうだ、確か千加がシグルイで初登場したのは兵馬数馬兄弟が源之助アニキたちに討たれた後、その五年後くらいに登場したんだった。
だからそれより五歳は幼いわけだから、そりゃそうだ。
で、奥を見ると全く同じ顔で大柄な男が二人、全く同じ様子で座って道場を見ている。上座には小さな老人、恐らくあれが舟木兵馬、数馬兄弟と、舟木流開祖の舟木一伝斎て奴だろう。
なのだが、そのはずだが……。
「お、おかしい……爺さんの怪我が原作よりも重い気がする……」
オレは背筋に冷たい汗を流しなら、一伝斎の爺さんの怪我の具合を観察する。
確か漫画だと、舟木一伝斎は虎眼の親父と立ち会った際、誤って当てられて下顎を削ぎ飛ばされた、という話のはずだ。
それがどうだ、右頬も抉れてるし下顎の削がれ具合も重い、さらには右手の中指と小指がねぇ。
重傷だ、どうみても……!!
何があったか知らんが、虎眼の親父によっぽど酷くやられたか、もしくはオレの影響がバタフライエフェクトよろしく、別のどこかで怪我を負う何かを起こしたのか……!?
やばい。この状況で虎眼流と仲良くしてください、ていうのか??
恨み骨髄に徹するだろ、どう考えても……!!
しかし、ここに来て退くわけにもいかない。どうやら試合が終わったようだ。
さすがに原作のように男を持ち上げる、まではいかないが、片手でぶん投げる様はまさしく怪力の申し子。しかも薄着で横チラが激しい。
刺激が強いな、これ。
「次は誰ぞ?」
千加が道場の者を見渡して聞くが、誰も答えない。気まずそうに目を逸らすばかりだ。
奥で座っている兵馬数馬は溜め息を吐いているが、一伝斎の爺さんは黙って門弟達を見るばかり。
しゃーねーな。ファーストペンギンって奴をやるか!
こういうときに一番に名乗りを上げるのは大事って、社会人の頃にも教わったし!
「オレがやる!!」
勢いよく手を揚げて、野次馬を押し退けて道場に踏み入る。
なんだなんだ? と門弟たちはオレを見るが、まるっと無視して背負っていた荷物を道場の端に置いた。
「誰ぞ、おぬし???」
一伝斎の爺さんがオレに聞いてくるので、立てかけてある蟇肌を勝手に片手で持った。
千加の前に立ってオレは、格好良く左親指で自身の胸を指して宣言する。
「オレの名前は藤木裕次郎!! 虎眼流の門弟の末席に名を置き、虎眼の親父と義息子の関係にある剣士だ!!」
ふ、キまった。
だが、一瞬だけ彼らの時間が止まってしまった。なんで?
そしたら、すぐに一伝斎の爺さんがオレを指さし、怯えた顔で言った。
「な、こ、虎眼流!!? 者ども、であえであえ!!!」
え、なんで? 一伝斎の爺さん、なんでそこまで???
「此奴、堂々と道場破りを仕掛けてきおった!!」
「しかもあの虎眼流だ!! 」
「己の友人も伊達にされた……! その恨み晴らさで置くべきか!!」
「生きて返れると思うなよ虎眼流!!」
「簀巻きにして叩きのめして、虎眼にたたき返してくれる!!」
「殺せ! 己の親類も虎眼流に鼻を飛ばされた……! 貴様の死体も鼻を削ぎ耳を削ぎ腕を捥いでやるから魚の餌になれ!!」
「わーお、虎眼流への恨みが凄ーい……」
一瞬にて囲まれ、門弟全員が蟇肌どころか真剣や槍まで持ちだしてきてしまいました。
ええ……と、オレは向けられる怒りと敵意があまりにも強すぎて呆然としてしまった。
「何を呆けておる! さっさと腰のものを抜かんか!!」
周りの怒号にようやく気を取り戻したオレは、とりあえず腰の刀に手を伸ばし――。
それを腰から抜き、その場に置いた。
周りが静かになる中で、オレは大声で叫んでやった。
「さあ抜いて置いてやったぞ? 何をぼさっとしてるんだ、稽古だろぉ稽ぇ古ぉ?」
あえて挑発するように、バカにするような顔をして言ってやる。
ここまで来たら勢いだ勢い、やってやらぁ!!
「ふざけんなぁ!」
「ぶち殺したらぁ!」
「生きて帰れると思うなよぉ!!」
「なーにが生きて帰れると思うなだ! 未だに周りでぴーぴーぴーぴー鶏の雛みてーに囀って脅すだけだろうが、臆病者が!!」
周りの怒号に対し、オレは傲岸不遜に返してやった。
一人に蟇肌の鋒を向けてみる。周囲がざわ、としたあとにその一人を中心に後ずさる。
別の奴に向けてみても、同じように後ずさる。
は、笑える。
「ふん……かの兜割を極意とする舟木流、骨のある奴はいねぇのか!? そこの小娘の呼びかけに応じて出てみれば、臆病者だらけで襲いかかりもしない!!
じゃあオレが言ってやるよ。誰ぞ? オレに襲いかかるは誰ぞ?
次は誰ぞ!!」
嘘ですほんとは膝が笑いそう。ギリギリ堪えてるだけ。数十人の門弟に囲まれるってこえぇ。
オレが叫んでやると、奥から笑い声が響いた。
野太い男、二人の男の声だ。重なってるから一人だと思った。
「虎眼流! 随分と気骨があるな!!」
「敵地に一人で乗り込み挑発とは、随分と豪胆な男よ!」
おぉ、と門弟たちがモーゼの十戒の如く退いていく。奥から刀を腰に差してくるのは、舟木流免許皆伝の双子、兵馬と数馬か。
ちなみに千加も門弟に庇われる形で退いてた。
「名乗りを上げて道場破りに来た威勢の良い士よ!」
「おら退け! さっさと退け! 囲んで襲いかかれぬものは、我らの戦いを見ておれ!!」
兵馬数馬の声かけに、門弟たちは大人しく道場の隅に座り、溢れるものは外に出てオレたちを見る。
なんとまぁ、剛毅だなこの二人。格好いいわ。
ぬふぅしてるくせに。
「虎眼流、真剣を抜かぬのか?」
「これは稽古だろ。そっちが真剣を抜こうとも、こっちは蟇肌で立ち向かう。そも、虎眼流は木剣で骨を軋ませ身体を鍛えいじめ抜く流派だし。今更真剣相手に木剣だの蟇肌だの今更だよ、何を持っても殺傷できるし」
こっちは素手で木剣を砕いて骨を折り、木剣を使えば巻き藁すらぶった切る虎眼流だぞ。
だいたい源之助アニキだって蟇肌で相手の背中の肌を爆散させるしな。何を使ったって一緒だもん。
すると双子のうち一人が真剣を抜き、オレの前に立った。お、漫画で見た八相の構えじゃん。
かっけぇ、身近でみるとかっけぇ。迫力もすげぇや。
「その油断、後悔させてやる。構えろ虎眼流、頭蓋ごと叩っ切って割ってやろう」
どっちがどっちかわからんが、双子のうち一人は後方腕組みをしてる。
どうやら一人ずつらしい。オレは蟇肌を右手に持ち、相手の溝へと向けた。
うーん、なんか足らん。ここでなんか……お、そうだ!
ここは源之助アニキの真似をしてみよう! あれって格好良いんだよなぁ!
オレは蟇肌の先を下ろした。
何事かとオレを見る双子と舟木流の一門全員に聞こえるように言ってみた。
「一人ずつにござるか?」
キマった……! 源之助アニキのめちゃくちゃ格好良い台詞! 言ってみたかったんだよなあ!
憧れの台詞だぜ!
「ふざけおって!!!!!」
「そこまで死にたいのなら殺してやろう!! 覚悟せい、虎眼流!!!」
あれー? 舟木のみんながブチ切れてるー?
一伝斎の爺さんまでキレてるし千加までキレてるし、門弟のみんなから殺気が出てるー!
よく考えたらこれ、挑発だわ。失敗した。
双子が並んで同じ構えを取った。すげぇ殺気、怖いわこれ。
やっちまったもんは仕方ねぇ、やるか。
オレはもう一度蟇肌を握り、今度は両手で下段に構えるのだった。
お久しぶり!
というわけで執筆再開です。
ですが受ける試験が多い中での一時的な再開なので、また中止するかもしれません。
そうならないように頑張って書き溜めて、皆様の毎日のぬふぅに貢献できれば嬉しいです。それでも中止したらどうかお情けを。
よろしくお願いします。