シグルってたまるか   作:風袮悠介

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17話・二太刀にて汝らを沈める!!!

 全く同じ構え、全く同じ雰囲気、全く同じ覇気を放つ双子がオレの前に立っていた。

 確かあの刀、大業物の波泳兼光とかいう刀だっけ? きれーだなーとか暢気に考える。

 

 どうしよ、これ?

 

 なんか格好付けて源之助アニキの真似をしてみたけど、殺気を抱きすぎて冷静になって、オレの目の奥を見透かすような鋭い目つきになってるわ。

 言っちまったもんは仕方ないし……やるか。

 ここまで来たら、とことんやってやらぁ!!

 

「では、舟木兵馬殿、舟木数馬殿」

 

 下段の構えを変更、オレは再び右手片手に持った木剣を、今度は担いでみせる。

 一伝斎の爺さんがひゅー!! と驚いた声を出した。四足獣の悲鳴みてーな声だ。原作再現で感動だぜ。

 

「虎眼流が太刀を担いだら用心せい!!」

 

 一伝斎の爺さんが双子に向かって叫ぶ。

 双子は油断なくオレの構えを見て、対処しようとしてる。さらには観察してる門弟たちの視線も突き刺さるなぁ。

 

 安心しろよ、一伝斎の爺さん。

 こんなところで“流れ”は見せねぇよ。

 虎眼の親父との約束だしな。

 

 そのままオレは担いだ刀を、担ぐだけに終わらずにさらに身体を捻る。だが、原作漫画にある氷面鏡(ひもかがみ)にまではならない。身体を捻り、膝を少し畳み、体勢を低くする。

 もう一度言うが、“流れ”を使うつもりはねぇよ。一応、うちの秘伝だしな。

 

 てか使うまでもねぇ。舟木流の弱点は、すでに解明されている。

 

「舟木兵馬殿、舟木数馬殿……」

 

 ぎろり、と二人を睨め付けて宣言する。

 

「汝ら二人を、二太刀にて沈める!!」

 

 オレの宣告に双子も門弟も、一伝斎の爺さんも、千加さえも驚いた。

 この二人を相手に、たった二太刀で終わらせる、と聞けばそうなるだろう。

 

 オレは左足で膝抜きを行い、一気に重心変化と移動を開始。

 右足で身体を押し出すように地面を蹴り、左足を道場の床を滑らせるように前に進ませた。

 

 一気に間合いが詰まる。

 その間、双子の顔が同時に動き、力む。

 死の間合いまであと数㎝、タイミングはずらせない。

 

 来た。

 双子の真っ向唐竹割り、兜割の斬撃が来る。

 

 さらに膝の力を抜き、体勢を一気に低くする。

 

 双子の動きは全く同じ。狙いの位置に左手が来た瞬間。

 

 オレの腰で溜められた捻りの力と左足で止められていた止めの力が解き放たれる。

 これは、オレが流れ星を見て閃いた、流れ星の派生技。右手の虎の握りと左手の指で刀身を挟む、所謂デコピンを拡大解釈したもの。

 見た目ではわからぬ腰、足、肩と、身体の各所にて行われる力の溜めと止めと解放の術理応用。

 そしてオレが開眼した秘奥“凶つ星”と“綺羅星”の骨子にあたる、二つの星に繋がる身体操作の基本。

 

 解き放たれた力は腰の回転と共に、目にも留まらぬ速さにて双子の左手を蟇肌の軌跡が通り過ぎた。

 

 ぐぐしゃ。

 

 一瞬で双子の左手は砕かれ、真剣はあらぬ方向に飛び道場の壁に突き刺さった。

 双子の顔は驚愕と呆け、痛みによる悶絶と様々な色が混じる。

 

 まだだ。

 ここからだ。

 

 振り抜かれた斬撃を、もう一度腰を捻りきることで力を受け止めて溜める。

 本来の流れ星はその場で回転することで勢いをある程度維持するが、オレはしない。

 勢いを腰の捻りで受け止め、溜め、再び解放!

 

 全く同じ体勢の双子の顎先を、寸分の狂い無く捉えて打ち抜き、一気に脳みそを揺らす!!

 

 すん。

 

 打突音も無く双子の顎を通り過ぎた蟇肌だが、確かに手応えはあった。顎を掠めた、その手応えが。

 双子が白目を剥き、全く同じタイミングで倒れ伏した。

 

 道場内に沈黙が下りる。だーれも何も言わない。

 オレは一息吐いてから、立ち上がる。

 

「ふぅっ」

 

 緊張したわー。タイミングがズレてたら、死んでたわ。

 舟木流に明確な弱点があるからこそ、オレはそこをつけた。

 

 舟木流の弱点。それはズバリ「兜割を極めようとしすぎて、低姿勢の相手に弱い」ことだ。

 これは屈木が証明している。

 屈木頑之助が使う蝦蟇剣法ってのは、でっかい頭を支点にして天地逆転にて背のバネを使って跳ねて、下から強烈な斬撃を放つ技だ。極端なまでに体勢が低いが故に、唐竹割りが届くまで距離がある。

 さらには下に行けば行くほど斬撃の威力は弱くなり、結果として屈木の背中の強固なかさぶたで防がれ、両膝を叩っ切られる。

 ちなみに笹原の親類だか言う槍の名手は、ただ槍を手に持ってなかったから負けただけだな。

 蝦蟇剣法は戦場の心得とかいうけど、屈木は槍を相手に蝦蟇剣法の相性が最悪だってわかってたからこそ、奇襲戦法に出たわけだ。

 

 前々から思ってたけど、シグルイにおける有名な流派や剣術家や兵法家って、明確なメタを張られて負けてんだよな。

 流派に囚われずに戦えば勝てたと思うけど。無理だろうな。

 

 だからオレも体勢を低くして、双子の斬撃が届く猶予を作った。

 そこに本気の一撃。さらに追撃。これで終わったってわけ。

 

「さて、一伝斎の爺さんよ! オレが勝ったぞ!!」

「っ」

 

 オレは大袈裟に両腕を広げ、倒れている兵馬数馬の前に立つ。

 てか息してる? 不安になってきた。

 

「日坂最強舟木兄弟を倒した! これで……!」

 

 これで!

 

「これで……えっと……」

「……?」

 

 一伝斎の爺さんがオレが戸惑う様子を見て不思議がっていた。

 なんせ言葉が段々と尻すぼみになっていく。どう考えても勝った奴の態度じゃない。

 

 し、仕方ないじゃんっ。

 だって、こうなるって思ってなかったしっ。

 こうしてからどうしようなんて考えてなかったんだもん!!

 

「えー……その……あ、兜投げ、参加させてもらえますかー……?」

 

 ほんと、勢いだけで行動するもんじゃないな。

 

 オレは心底後悔しながら、変な要求をするしかなかった。

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