シグルってたまるか   作:風袮悠介

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R7.4/19追記:すみませんがまたお休みをください。かなり疲れた……。
休日のたびに家族や誰かの用事に駆り出されて、所属サークルの試合参加に駆り出されてると、終末の休みが全部疲労回復のために飛ぶ……。


22話・あれから一ヶ月が経ったことにすれば途中過程はキャンセルだ!

 オレが舟木流に来てから一ヶ月が経った。

 勝手に屋敷の座敷牢を間借りし、そこを勝手に私室にして日々稽古にせいを出してるよ!

 

 今日も勝手に座敷牢に持ち込んだタンスから稽古着を取り出して着替え、勝手に座敷牢に用意した蟇肌を手にして、さっそく道場に来ました! 朝の冷たい空気が気持ちいいなあ!

 

「おはよーございます!!」

「帰れ」

 

 ええ……ちーちゃん、なんでさ……。

 

 道場には熱心な門弟が数人と双子、そして千加ことちーちゃんがいた。

 そのちーちゃんは蟇肌を片手に稽古着姿、双子も同様だ。

 門弟の前で双子たちが熱心に指導をしている。なんだろう、漫画に見なかった姿だな。

 

 ちーちゃんは何故か、オレをジト目で睨んでる。

 

「なんでだよちーちゃん。毎日ちゃんと稽古してるじゃん。確かにオレは虎眼流の門弟と舟木流の門弟を兼任してて印象悪いと思うけどさ……オレたち同じ釜の飯を食った仲じゃん!! なんでさ!!」

「うるさい」

 

 なんかちーちゃんが冷たい。

 

「なんだよちーちゃん、何が原因なんだよちーちゃん、教えてくれよちーちゃん! オレの何が悪いかをさぁ! なぁちーちゃん!!」

「そのちーちゃんを止めないからだろ!!!」

 

 ぼぐ、とオレの鳩尾にちーちゃんの拳が突き刺さりました。

 うぼぉ、内臓がひっくり返る……! オレは道場の床に倒れて悶絶しましたとさ。

 

「全く……! 毎日毎日ちーちゃんちーちゃんちーちゃんと!! 生意気だぞ!」

「だ、だって……ちーちゃんはちーちゃんだろう……」

「その幼子にするような呼び方を止めろ!」

「やだ。これはオレの親しみの証だから」

「うわぁ立ち直るのが早すぎる!」

 

 そら、オレの身体は傷なんてあっという間に治るわけだから。鳩尾一発の打撃のダメージなんてすぐに治るよ。

 そんなオレとちーちゃんのやりとりを見た双子が笑い出した。

 

「ははははは! 今日も千加がやり込められておるぞ兄者!」

「ははははは! 裕次郎よ、それは千加の照れ隠しよな!」

「わかってるよ兵兄ぃ、数兄ぃ。ちーちゃんはツンデレだからな。普段はつんつんとつっけんどんだけど、たまーにオレに惚気てデレてくれるんだ。可愛いくて強い可憐な女の子だよ」

「ふんっ!!!」

 

 ぼぐ、と再びオレの鳩尾に拳が沈んだ。今度は沈みすぎて息が詰まってしまった。

 

「この、この軟弱者が!!! そうやって女を誑かしてるんだろう!!! ふん!!!」

 

 ちーちゃんはどすどすと道場の床を踏み鳴らしながら去って行った。その様子を双子、兵兄ぃと数兄ぃが大笑いして見ている。

 お願い、まずは助けて。息が出来ないんだ。

 

 

 

 

 オレが舟木流に来て一ヶ月が経った。大事なことだから二回言う。

 あの一伝斎の爺さんたちと酒を交わした次の日、さっそく道場にやってきたらなんか歓迎された。

 歓迎されたからさ、気前よく見せちゃったよ、流れ。いやー盛り上がったなぁ。

 

 脳裏に牛のおっさんが激怒してる姿を幻視した。

 

 んで、この一ヶ月間は舟木流の道場に毎日来て稽古に参加して、頑張ってる。

 そして稽古が終わったあと、門弟達が帰ったあとで兵兄ぃと数兄ぃ、そしてちーちゃんとオレの四人が残った道場で“検討会”が行われる。

 

 

 

 

「だからさ。兜割は威力過剰なんだよ。虎眼流の流れや三寸切り込めば殺せるの理屈でさ」

「しかし防御されれば、それごと叩ききらねばならん」

「いや、そこまでいらなくねって話じゃん。首とか顔面、胸、脇の下とかで」

「そんな箇所、都合良く切れる筈がなかろうが。そこを防がれた場合に」

「兜割、か」

 

 道場の床に座り、己の左に蟇肌を置き、四人であれやこれやら討論会、オレたちは検討会と呼ばれる理論のぶつけ合いが行われる。

 オレの虎眼流としての視点と、他三人の舟木流としての視点から、お互いにある技や術理の有利不利を洗い出し、新たな術理の理論や仮説を組み立てるためのもんだな。

 最初の頃は己の知識を出すことを厭うていた三人も、ものの一週間でさらっと議論ができるようになってる。

 この人ら、ぬふぅの印象が強いけどちゃんと話ができるところがあるな。

 

「となると、兜割を横薙ぎに放つわけだけど……それで兜投げ、成功できる?」

「「……難しいな」」

 

 兵兄ぃと数兄ぃは二人同時に否定した。

 

「己らの兜割は大上段より振り下ろす、それが基本よ」

「裕次郎のような逆風以外のものでも、できるかわからん」

「でも防御された急所への攻撃を、刀ごと兜割で切り込めれば効果的か」

 

 今ではこうして真剣に意見を交わせる。楽しいよ、これ。

 

「いつもいつも兜割ってできるの? なんかすぐに疲れそうだけど」

「我らの鍛錬を舐めるな」

「何百本打とうが疲れぬわ」

「実戦の緊張感の中でできればいいけどな。それに……」

 

 話の内容は基本的に実戦でいかに虎眼流、舟木流の技を効果的に使えるか? 効果的に使うにはどうするか? に終始されてる。

 そして机上の空論は基本的に除外される。そら理想論だけで話が進めば戦いなんて戦いになりえないしさ。

 

「突然伏兵というか、陰に隠れていた奴に襲われたら体力が保たないんじゃない?」

「ふむ……」

 

 この時代は牢人者が多いからな、いきなり襲われることが多いからな。

 

「だからこそ、効果的に兜割を使ってさ。さっさと一対一の勝負を……」

 

 こんな感じで、毎日討論している。

 

 

 

 

 

 結構、充実した毎日だったりするが、一つだけ、今日起きた問題が頭を悩ませるハメになった。

 

「裕次郎」

 

 寝ているところに、ちーちゃんがやってきたのである。




力尽きた。
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