「こやつ、こやつめ、この百姓が!! この藤木源之介にこのような狼藉を働くとは、覚悟はできているのだろうな!」
肘の痛みに耐えながら俺が目を開くと、悪童藤木源之介が脇差しを抜き放っていたところだった。油断から右肘をやられたせいで、右腕が動かねぇ。
だけど、ここで動かないと殺される!
「う、おぉおおおお!」
気合い一喝、俺は肘の痛みに耐えながら立ち上がる。
ちらりと視線を巡らせば、未だに源之助アニキは立ち上がらない。気絶したままかっ。
いかん、このままだと殺される。俺は右肘の折れた箇所を、無理矢理元に戻す。
ゴキン、と音を鳴らし、通常の位置に戻した。
「うぐぉ……はぁ……!」
痛みのあまり意識が飛びそうになったが、今はこれでいい。これで良いが……なんか右腕に違和感があるな。なんかこう、急激に痛みが引いたというか。
……まさか。
俺は自分の予想を確かめるべく、時間稼ぎを始めた。
「は、覚悟だぁ?
「なに?」
悪童藤木源之介が俺を睨む。いいぞ、そのままだ。そのまま怒り続けろ。
「覚悟を問うべきは
「何が言いたい……?」
「俺もよくわからん。頭が痛みで鈍ってる。ただ、今更覚悟を聞いたって仕方なくねぇ?」
俺は悪童藤木源之介に向けて左手を差し出して、ちょいちょいと挑発する。こっちに来いよ、と。
「ここまでやったんだ。お前をぶっ殺して川に投げ捨てねぇと、俺ら殺されっちまうからさ? そっちこそ、覚悟を決めろよ?」
「っ……!」
「お前が俺らを殺せるように、俺も、お前を殺すからよ」
ここまで来たら、俺も覚悟を決めて目を鋭くして睨み付けた。
「さぁ、殺し合おうぜ。どっちが生きるかくたばるか、てな」
悪童藤木源之介が、足を一歩引かせた。
気合いで勝ってる。
あとは、勝負に勝つだけだ!
「うおおおおぉぉぉお!!」
一気に走り、詰め寄る。右腕を隠すように半身となり、左腕を突き出した。
悪童藤木源之介はビビりながらも、脇差しを振った。滅茶苦茶な袈裟切りだ、余裕で躱す。
左腕に警戒した悪童藤木源之介の腹に、
俺の右ショートアッパーが、突き刺さる。
「ぅぉっ」
悪童藤木源之介は口から涎を垂らし、脇差しを手から落とした。
そのまま前に数歩だけ進んで、どうと前のめりに倒れる。
ピクピクと痙攣しているから、生きてはいるらしい。すぐには立ち上がられないだろうがな。
思い切りを腰を捻り体重を乗せた、一撃必倒の拳。
予想通り、
怪我が瞬時に治る、不思議な能力が。
さすがに首を切り落とされりゃ、死ぬだろうがな。
だから、右腕を無理矢理戻したとき、痛みが引いて骨の違和感が引いていったときに、賭けに出た。
この一撃で終わらせるために。
「よっしゃあああああ!!」
俺は倒れた悪童藤木源之介を前に、勝ち鬨を上げた。