「う……ぐ……」
体中のだるさで目を覚ます。ゆっくりと身体を起こすと、オレの意識が鮮明になってくる。
頭を振って周囲を見ると、いつもの牢屋敷という名のオレの自室だ。
「オレは……確か……」
ゆっくりと記憶を蘇らせていく。
立ち上がり、フラフラとタンスに手を掛けた。今のオレの服は寝間着襦袢だ、何故この格好を?
オレは確か溜めたお金を隠し、道場に戻ろうとして――。
その瞬間、オレは全ての記憶を把握した。
昨夜のこと、全てを。
すぐに胴着に着替え、走り出す。屋敷の中を走るオレを、屋敷の人間は驚いた顔をして見るが、全て無視!
ドタドタと走り、道場へと顔を出した。
バン、と扉を開けると、そこには体中に包帯を巻いたり青痣を作った男達だらけだった。
ああ、オレがやった奴だな。全員がオレの顔を見て驚いている。
てか一人も死んでなかったか。ち、殺り損ねた。
「ち、生きてたか」
「裕次郎ぉぉぉおお!!!!!」
そして、一気に状況を理解したらしい牛のおっさんがカジキを片手にこっちに来る。
だが、オレはそれを無視することにした。
「すまんな牛のおっさん。あばよ!」
「待たんかぁぁぁああ!!」
牛のおっさんがカジキを片手に襲いかかってくるが、さっさと躱してトンズラ。
道場にいなかったということは、あそこだろう。
虎眼の親父を、今度こそぶん殴らねば気がすまない。
自室の方にいるはずだ。
だから部屋の前まで来たオレだったが、障子越しに声が聞こえてくる。
悩ましい女性の声と、それに這うような獣の如き男のうなり声。
一気に頭の中が、覚醒した。
「おらぁぁ親父ぃぃぃぃいい!!!」
障子を蹴り飛ばし、中へ乱入する。
中では半裸状態のいくさんと、同じように襦袢のみを来ている親父の姿。
こいつ、あんなことがあった次の日には乳繰り合ってやがった!!
「ゆ、裕次郎っ?」
いくさんがはだけた着物で胸元を隠し困惑している。オレはそれに構わず、親父を見た。
親父は最初、獣のように唸っていたのだが、徐々に目がハッキリとしていった。
「先手必勝!!」
だが待ってやらん!! オレは親父の顔面を蹴り飛ばした。
曖昧な状態から復帰までまだだったらしく、親父は顔面に蹴りをまともに受けた。
仰け反るようにして鼻血を流し、手で鼻を押さえる。
ようやく曖昧な状態から抜けたらしい親父が、オレの顔を見て憤怒の表情を浮かべた。
「裕次郎、貴様――」
「昨日のことがあったってーのに、ご機嫌だな!!!!!」
もう一度オレは親父に殴りかかる。
対して親父はすぐに反応、オレの拳を受け止めようとした。
やると思った。
オレは殴るのを止めて、親父の服の裾と襟元を掴んだ。
「おらぁ!!!」
そのまま引き寄せつつ一気に背負い投げを放った。
背中を通して伝わる、親父の身体が宙に舞う感覚。
親父は投げられる最中、裾を掴んでいるオレの指を掴み、折った
ぼきり、とオレの手に激痛が。
「ぐっ!?」
思わず手を離し、不格好な形となった背負い投げ。床に叩きつけることができず、親父は受け身を取って立ち上がる。
「裕次郎」
親父は折れた鼻を掴み、ボグッ、と無理矢理元に戻す。
そのまま鼻に力を込めて、鼻腔に溜まっていた血糊を布団にぶちまけた。
「お主、何をやったかわかっておるのか」
「もちろん」
オレは折られた指を、無理矢理元に戻す。ゴキリ、と音を鳴らして元の位置へ。
痛みで頭がチカチカするが、この痛みと負傷はすぐに治る。今は、ただ。
「虎眼流を叩き潰す。それだけだ」
あの日の三重ちゃんの涙に、報いてみせる。