「ようやく、江戸に到着だぁ!!」
伊良子追放から数ヶ月後。
オレはようやく江戸に辿り着いていた。寄り道しつつ江戸を目指したのだが、寄り道しすぎて予定よりも遅くなっちまった。
だが、それももう終わり! 途中で野盗をぶっ殺して装備を奪って売って、襲ってきた牢人を殺して装備を奪って売って路銀を稼ぐ生活は終わりだ! オレも都会デビューである!
オレの旅、ちょっと殺伐としすぎてない?
さて、江戸についたとはいえ、江戸は広い。とにかく広い。
日中に到着したオレだったが、周囲をキョロキョロして探る。
人が、多い。
とにかく人が多い。すれ違う人が多い。しかもみんななんか垢抜けてて、雰囲気おしゃれ……。
「……」
気になって体の臭いを嗅いでみる。最近、殺伐とした野盗狩りだの牢人狩りだので風呂どころか水浴びもできないし……みんなちょんまげ結ってるし……総髪オレだけ……。
田舎者として目立ってる気がしてきた。なんかみんな、オレを見てる気がする。
いかん、被害妄想だ。
ともかく、オレの目的を果たそう。
「まずは……剣術道場がどんなところに建っているか、どこに建てるのか良いのかを調べてみよう……」
オレの目的の一つ。将来、虎眼の親父を裏切る金岡雲竜斎が建てるとされる、大道場がどこに建てられるのか調べることだ。あいつはとことん怪しい。
伊良子に協力して虎眼の親父が襲ってきたから正当防衛のため、なんて証言をした奴だ。
江戸を歩いてても腹立ってくる。あいつ、マジでふざけんなよ。
原作だと師範二人が虎眼の前に立ったとき、あいつは動いてないんだよな。しかも姿を消してる。
そら虎眼の親父も検校の手下か! と牛のおっさんとアニキを疑うわけだよ。よりによって昔の三人の弟子の一人、師範が裏切ってたんだから、それを親父が知らないとはいえ周りの全てが疑わしくなるわ。
「んじゃ、まずは」
肩を回して、さぁダッシュ!!!!!
「江戸グルメを堪能だぁ!!」
蕎麦とか喰いてぇ!!!
蕎麦はなかった。
どうやらこの時期の蕎麦はそばがきと呼ばれる、なんか蕎麦の塊だった。
美味かった。
この時代の主流はうどんだった。
美味かった。
……オレが二八蕎麦とか更科系の蕎麦をここで作ったら儲かるのではなかろうか?
いや、それは後年の蕎麦職人の皆様方への侮辱だ、あかん。
え、絵巻物はいいのかって? あれは……良いんだよ。
江戸グルメを堪能したオレは、適当に道場が建っても問題なさそうというか、ここらへんかな? という場所に目星を付けて回っていく。
江戸は広いがなんとかなるなる。で、今はとある剣術道場の横を通り過ぎ、広い空き地を見ていた。
腕を組んでぼんやりと見て、オレは空を見上げた。すっかり夕焼け空である。
「あいつ、金だけでどうやって道場を建てたんだ?」
いろんなめぼしい、良い土地を巡ってみて思った。そういう土地にはすでに人が道場にしろ屋敷にしろ、立派な門扉の建物が建っているんだ。
すでに先住民がいる。ちょっと言い方が違うか?
また、良さそうなところであっても先約があるし、または土地の縁で簡単に買えそうにない。
腕を組み、空を細めで睨んだ。
「……ああ、なるほど。こりゃ検校だけじゃないな」
金岡は伊良子と組んで親父をハメたが、金岡の背後には検校がいる。
だが、金の出所はわからないと来た。
つまり、金岡は検校側の人間じゃない。いや、検校と伊良子の目的である虎眼流潰しと岩本虎眼殺しと同じ目的を持っていた側の人間ってわけだ。
そして、虎眼を潰したい人間で、金岡に大金を渡せて、さらには江戸で伝手がないはずの金岡に大道場を開けるほどの土地を融通できる人間。
となれば、ああ、そうだな。
「まさかここで、因縁が続くなんてなぁ。柳生新陰流?」
親父が道場破りに行き、何人もの高弟に重傷を負わせた。さらには柳生宗矩を追い詰めたことへの意趣返しか? 今更? なんで?
わからないことだらけだが、改めて柳生宗矩を倒さねばならんなと決意を新たにする。
暑さにダウンしてましたが、なんとか復帰してきました。
また更新していきます。宜しくお願いします。