シグルってたまるか   作:風袮悠介

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46話・オラオラ、お前のノウハウを寄越せ……寄越せぇ!

「それで? 道場運営に必要なものは他にある?」

「はい……とにかく目立つことです……武功を立てるとか、強者に勝つとか……強い人間の元に習いに来るので……」

「うーん曰く至言。親父の言い分は正しかった」

 

 やぁ、みんな。元気にしてたかな?

 オレこと藤木裕次郎は、訪れた一刀流? とかいう道場に戦いを挑んだぞっ。

 

 木刀で全員をぶちのめし、気絶する門弟たちを尻目に道場主を正座させてノウハウを教わってるんだ!

 道場主のおっさんは月代(さかやき)と顔、あと腕や足に青痣を作りまくって、ペコペコと頭を下げながら色んなことを教えてくれる、良い人だ!

 

「あとは……何かしらの後ろ盾を得るとか……」

「ほほぅ。具体的には?」

「その……有名な道場や流派の師範と懇意になって、腕前を見てもらって技を磨いて……認められて名前を借りるみたいな……」

「まさかお前、一刀流のお偉いさんに尻を出したのか? お前の強さはそんなに大したことなかったし」

「そんなわけがなかろうが!!! 某は小野忠明様に師事し一刀流を学び、この道場を開くことを許された高弟であるぞ!! そのような尻小姓みたいなこと、断じてしておらぬ!」

 

 おっさんが必死になって否定してくるが、実に疑わしい。こうして正座のまま文句を言ってくる姿とか、オレが流れの一撃で失神仕掛けたところを素手で叩きのめした後の情けない姿を知ってるからな~。

 疑わしい。実に疑わしい。本当に高弟か?

 

「小野忠明って人がどんな奴か知らんが、大したことなかっただけじゃねーか?」

「貴様!! 小野忠明様は小野派一刀流の当主にして将軍家剣術指南役であらせられるお方だぞ!! どこの田舎侍だ、小野様のことを知らんとは!!!」

「そんなお偉いさんの高弟を名乗る人が、オレにぶちのめされて道場運営に関する知識を抜かれたわけだが? 本当なら看板を燃やしても良いんだけど」

「そ、それだけは止めてくれ! そんなことになったと知られたら、儂はもう江戸で生きておられん……!」

「オレに負けた時点で危険にはなってる訳だしなぁ」

 

 自分でそういう状況に相手を追い込んどいてなんだが、この程度のやつに道場を任すような将軍家剣術指南役とか今の時代、どうなってんだ?

 親父、岩本虎眼の方が何倍も強いぞ?

 

 いや、その分政治的な面で陥れられてダメになったわけか。親父には同情するわ。

 

「まあいい。色々と教えてくれたお礼にいいもんを見せてやるよ」

 

 そういうとオレは持ってきた荷物の中から、二本のかじきを取り出した。これを持って江戸まで来るの、なかなかに大変だったぜ。

 いきなり巨大な木剣を持ち出したことにおっさんは怯えていたが、オレは構わずにかじき二本を片手で持つ。

 持ち手が大きい分、相応の握力が必要になるがこれくらい大したことはねぇ。

 

「な、なんじゃあその木刀は。素振り用ではないのか」

「応とも。見ておれ、これぞ」

 

 オレは二本分のカジキを片手で握り、振り上げる。手の中でメキメキと音を鳴らして軋む。

 そのまま、一気に振り下ろす。

 

 ぶぉん、と風圧が周囲に行き渡った。

 

 道場の中でそんなことをしたもんだから、寝っ転がってた弟子たちも驚いて起き上がってきた。

 オレは彼らを見て、ニヤリと笑って言ってやる。

 

「オレに道場運営のコツを教えた礼として……江戸に道場を建てるのを許してやる……。

 これぞ無双許し虎参りならぬ、江戸建立許し虎参りよ……!」

 

 ぶぉん、と片手でカジキを振り回し、落ちていた袋にカジキをしまう。

 荷物を背負って道場の入り口に立った。

 

「ふ……研鑽いたせよ、お主ら」

 

 そのままフェードアウトでござる。

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