拠点にしてる宿に戻り、オレは着流しを身に付け黄昏れていた。
とりあえず一刀流の奥義はGETしたんだが、いらんもんまでGETしちまった。夕方に染まる江戸の街を、疲れた顔をして見てる。
「なぁ帰らない?」
「弟子にしてください」
一緒に宿に戻ってきたこのハゲ。刺突剣を携えてここにいる。怖いわ。
稽古着のままここにいるので、どうしたものかと悩んでいた。
ちらりと見ると、ハゲは正座してこっちを見てる。見るな帰れ。
「……ふぅ」
これはダメだ。
このハゲ、帰らねぇ。
てこでも動かねぇつもりだ。
どうしたもんだか……と俺は悩む。
悩んでみたが、よく考えたらこいつがいた一刀流道場はオレが潰したも同然だ。奥義まで奪ってトンズラこいてるわけなので、あの道場がこの先どれだけ保つか……と言われると困る。
そんな情けなくて弱い道場って意味なくなーい? 通う意味なくなーい? きゃはは! と心の中のメスガキが騒ぐ。
心の中のメスガキってなんだ?
「あー……その、聞きたい事があるんだけど」
「なんでしょうか」
「あの道場、これからどうなると思う?」
「ふらりと現れた道場破りに門下生のほとんどを打ち据えられ、道場主たる忠明様さえも負けたとなれば、剣術指南役の任を解かれるのも時間の問題。もともと本人の気質が柳生様と比べても幕府内でやっていけるようなものではないので、自然となくなって田舎に引っ込むかと」
そこまで言う? そこまでなっちゃう?
オレはもう一度大きく溜め息を吐いて、今度はハゲの前に正座で対面する。
「その場合、お前はどうなるんだ?」
「……行き場を無くすかと」
「わかった。お前を弟子にする」
ハゲがぱぁっと嬉しそうな顔を浮かべた。
さすがにそんな話を聞かされて見捨てるほど、オレは酷い奴ではないつもりだ。
こいつの行き場を奪った以上、ちゃんと責任を取らねばならん。
何より、今考えたが。
こいつのフェンシングの技術は凄い。
こいつを弟子入りさせ、オレの虎眼流を身に付けさせ、オレとは違う虎眼流を発展させるのも楽しいのではなかろうか。
親父もオレに虎眼流を教えたとき、そう考えていたのかな。
ないわ。
あいつはきっと壊れない弟子を相手にこれでもかと打ち据えたいだけだわ。
その結果として強くなったのを嬉しく思っただけだわ。
原作に比べて虎眼の親父は丸くなったと思うが、本人の根っこの部分はそのままなのでそういう考えは絶対に残ってる。
「本当ですか!」
「ああ。仕方がねぇだろ。ところでお前の名前ってなんだっけ?」
「夕雲と申します」
……。
「夕雲」
「? 夕雲です」
オレは頭を抱えてのたうち回った。
オレを心配して夕雲がオロオロするが、それに構わず続ける。
なんでオレはメインキャラの名前を忘れてたんだよ!!
こいつ、この時代に合わないタイプの人間だぞ!!
親父にボコボコにされた印象深い原作キャラなのによぉ!!