私はいつの日か、夢の中にいることが増えたような気がした。囚われているって言ったらいいのかな。よく分からない状態が続いた。いつもそれは私を責めるような声だった。時には水希が、時には後輩くんも言っていた。でも毎度出てくるのは母だった。
母はいつも私を悲しげな目で、そして苦しそうな目で見ていたな、と思いながらその母の声を聞いていた。母の心の叫びに聞こえてくるようになっていた。母が必ず夢で私に言っていたことがあった。私はそれが母の本心としか思えなかった。
「 貴方がいなければ、母さんはここまで壊れなかったはずなの。でも、貴方が嫌いなわけじゃないの。なら、母さんはどうしたらよかったのかな。 」
その母の声は、どこまでも苦しそうで、言い聞かせているようにしか聞こえなかった。でも、あんなにも私を避けていた母が、私を嫌いじゃないというのはなぜか信じられなかった。
そんな母の言葉に、「 貴方に聞いても意味ないのにね… 」という自嘲気味な副音声が聞こえたのは気のせいではないと思う。
ある日、私がたまたま起きていた日に、後輩くんが来た。後輩くんは何を考えているか分からない、しかし覚悟の決まった目で私に言った。
「 先輩。どうして水希先輩にも言わないんですか。水希先輩は貴方の幼馴染なんでしょう?俺に言えないことでも、彼女なら先輩のことだって、 」
「 こーはい君。君が知りたいのは僕の気持ち?それとも僕の心?どちらにしろ、君が望むような回答は今の僕にはできないよ。 」
「 貴方の心情を知りたいのは事実です。けど、俺が言いたいのは…! 」
「 どちらにせよ、君の望みは叶えられないかな。君たちが頑張って僕のことを知るのが最善じゃないかな? 」
「 貴方しか知らない心情を、どうして俺らが分かると思ったんですか!?俺はただ、 」
「 諦めて、こーはい君。僕が自ら口に出すことはないと思うよ。だからね、 」
「 諦めるわけないでしょう! 」
突然、後輩くんが吠えるように叫んだ。私はまさか後輩くんがそこまで真剣に考えてくれているとは思っていなくて、びくり、と震えてしまった。それを見てはっとした後輩くんが慌てて私の方に駆け寄ってきた。震えた彼の手は何かに怯えているように見えた。
「 こーはい君?気にしないで。少しびっくりしただけだよ。大丈夫だから、そんなに震えなくても…。 」
「 違うんです。ごめんなさい、先輩。俺が、強く、言いすぎた、から、ごめんなさい。そんなつもりじゃ、なく、て、だから、 」
「 落ち着いて…。大丈夫だから。 」
あからさまに動揺した後輩くんをなだめつつ、私はぼんやりと考え事をしていた。
なぜ、後輩くんがここまで動揺しているのか。私が頑なに言わないから?それだけでは無いだろう。彼には“何か”がある。彼がここまで私に執着する理由が。なぜ?経験?ただ、それだけにしては過剰なような気がする。何かが重なって、彼の心情を揺さぶっているのだろうか。だとしたら彼にはそれだけ私を思って狂ってしまう何かを経験しているのだろうか。そちらの方がよっぽど興味をそそられてしまう。
そんなことを考えながら後輩くんが落ち着いたのを確認して帰らせた。そんな時に限って、私は夢に魘された。それは何日も何日も続き、妹曰く、1ヶ月寝ていたとのこと。私には1年に感じるくらいの、長い長い夢だった