原作ではサラマンダーか陰陽師……何方かのルートを進めないといけませんが、こう言う感じにしました。
そして魔導師の末路ですが、オリジナル展開で惨い描写にしてみました。
Side トパーズ
「……へ、陛下……其方の御仁は?」
「新たな帝国の協力者だ」
帝都から遠く離れたムリエの漁村の船着場にて、
「どうも初めまして、モールのシエロと言います〜」
と言うか、人ではありませんでした。
灰色の体躯に眼鏡を着用し、民族衣装を身に着けていました。
突然の紹介に私は勿論のこと、マウスちゃんやテリーさんも呆気に取られています。
「え…え?陛下、随分唐突ですね……」
「つーか、どう言う経緯で連れてきてんです?」
「あ、貴方達!失礼ですよ!?」
ソーモンの港から船でマイルズの町へ到着後、ステップ、サバンナ、サラマットを経由してこの漁村へと行き着いた私達。
その際陛下が「少し寄り道させて欲しい」と進言してサバンナで別れ、私達は先にムリエへ。
そして二日後の今日、陛下が見慣れぬ彼──シエロさんを伴って合流したわけですが…。
そもそもの経緯は遡ること234年前──嘗てサバンナで起きた悪夢。地下に巣食うアリのモンスター……タームによって多くのモールが犠牲になり、サバンナの平和を守るべく当時の皇帝たるダイナマイト様によりタームの
モール族は平穏が戻った見返りに自らも陛下の一助となる事を誓い、同族の数が増えた時に訪れて欲しいと伝えました。
そして時が流れて現在──モール族は繁殖していき、盟約に従ってクワワ様が訪れ、一族を代表してシエロさんがクワワ様の力になる事に。
「あ、これは我々の祖先が陛下とタームの戦いを題材に書いた本です」
シエロさん達モール族に伝わる書物を受け取り、私達はコムルーン島へ向かう船の上でそれを読む事に。
昔々……サバンナの地下深くにはモールと言う種族が暮らしていました。
モールは手先が器用で地下に集落を作り、自らの爪で穴を掘ったり、集落を開拓して子供や同族達を養っていました。
しかしその平和は長く続きませんでした。
硬い体表に覆われた昆虫のモンスター──私達が現在タームと呼ぶ白アリの軍勢が現れたのです。
タームはモーム達の集落を襲い、ある者は巣穴に連れていかれ、またある者は餌としてその場で食べられてしまいました。
誰もがその地獄に苛まれ、全員が絶望視していきます。
そんな絶望の淵に追いやられた彼等の前に、希望が現れたのです。
アバロンと言う遠い国の皇帝と名乗る人間であり、皇帝はちぎっては投げ、ちぎっては投げ──その繰り返しでタームを次々に退治していきます。
皇帝はモール族に言いました。同胞の無念を晴らし、サバンナを悪夢から解放すると。
その後、皇帝はターム達の親玉──
これは正しく先帝ダイナマイト様の事ですね。
彼の偉業を遺した伝記にもサバンナでの戦い──タームの
更にその伝記にはモール族がタームを討伐してくれた暁に、仲間の数が増えた時に陛下の力になると言う記述がありますが、まさに今その通りに実現されていますね。
少し涙腺が緩んでしまいそうです。テリーさんは感動しているのか咽び泣き、マウスちゃんも同様で何度も腕で目を擦って涙を拭っております。
感動する要素が不明ですが、兎に角シエロさんを同志として迎え入れましょう。これを
※
さて、船は無事コムルーン島へと停泊しました。
一見すると何も変わりないようですが、ツキジマの方々から不安を滲む声が聞こえております。
但し町長さんはそれに気付いておられない御様子で楽観的に捉えており、会話の際に振動が来ても「地震かな?」と暢気な反応を示していました。
町の方々は不安がっていると言うのに、彼だけは愚かにもそれさえ気付いていないとは……そんな様子にクワワ陛下が拳を握り締めていたのを私達は気付いていました。
「あの町長、この島の異常事態に気付いてねェのか?」
「今にも火山が爆発しそうだって言うのに、真性のおバカさんじゃないかしら?」
町長の家を後にしてテリーさんとマウスちゃんが愚痴るのを聞きつつ、私達は宿酒場へと赴く事に。
ダメ元で何か情報を得られないかと思いましたが、有力な情報を耳にする事に。
この島の何処かに炎と共に生きる一族が町を築き、平穏を享受していると言うものでした。
それを聞いたシエロさんは「ひょっとして、サラマンダーではないでしょうか?」と心当たりがある御様子で呟く。
この世界には火、地、水、風……四つの亜人族が何処かで町や集落を築き、其処で平和に暮らしているそうです。
シエロさん達モール族が地中で暮らす様に、そのサラマンダー族は炎と共に生きる種族の様ですね。
そう言えば宿酒場で変わった出会いがありました。
宿酒場の二階でその御仁はある目的の為、この島に留まっていました。
彼──セイメイさんは異国より訪れた陰陽師で、古代の魔術である冥術を得意としているそうです。
セイメイさんがこの島を訪れたのは、この島周辺の何処かにあるとされる古代の魔術書を求めてきたのだとか。
陛下の噂は彼の耳にも届いており、セイメイさんは陛下に魔導書の捜索を依頼してきました。
因みにその古代の魔術書は危険な代物で、正しき心を持つ者によってきちんと管理するべきと考え、もし悪しき者の手に渡れば恐ろしい力が世に振り撒かれると警告するセイメイさん。
唯でさえ七英雄が世界に対して猛威を振るっていると言うのに、古代の魔導書の力が世に放たれてしまうと思うとつい想像してしまいます。
顔色を若干青褪めつつ、私達は目的地であるゼミオへと赴くのでした。
Side クワワ
サラマンダー達の築く町、ゼミオは島の北部にある。
本来ならばマグマの海と熱気に覆われている町であるのだが、嘗てダイナマイト帝が火山の火口をアイスシードで固めてしまったが故に、町全体が何とも寂れた雰囲気に包まれている。
私には当時の先帝の記憶が受け継がれているが為、罪悪感が胸中に刻み込まれる。
知らなかったとはいえサラマンダー達に苦労を掛けさせてしまった、……何としても火山問題を解決しなければいけない。
サラマンダー族は赤い鱗が体表に覆われ金色の瞳を宿し、背中に襟巻きが施された容貌だ。
私とシエロ以外はその容貌に見事に驚愕しており、シエロ達モール族とは全く異なる事を思い知らされた。
波止場であった場所から歩いて町中に入っていき、ツキジマと同様にサラマンダーの者達の声に耳を傾けてみる。
誰しもがコムルーン火山の異変に不安を孕んだ声を上げていて、中には噴火の鎮圧自体間違いだったのかと言う声も上がっている。
他には族長に関する声が上がり、町中にある一つの家を訪ねる。
「……ほう、客か。この様な見た目の種族に会うのは、初めてかな?しかも珍しい事に、地底族の者も同伴しているとは」
その家に佇むのは一体のサラマンダー。だが他の者とは違い、飄々とした厳格な雰囲気を感じる。
しかもシエロがモール族だと理解しており、シエロも思わず「わ、分かるんですか?」と問い掛ける程。
彼等サラマンダーは古からこの火山の麓で暮らしていて、火山の噴火は幾度も発生していたと語る。
「だが……間もなく訪れる災いはこれまでとは比べ物にならん」
「…!」
話の最中、またも床や壁、天井が揺れ始めた。
「ま、また揺れたわ…!」
「……火山の大爆発が迫って来ておる。ツキジマの者達に逃げる様に伝えなさい」
「貴方方は避難しないのですか!?」
「……多分、彼等は逃げる事はしないと思います」
「嗚呼……我々は逃げない。火山と共に生きていくのが、我々の
シエロが指摘した通り、サラマンダーは炎と共に生きる種族。
故郷を捨てて生き延びる事は彼等にとって侮辱と同意義、場合によっては自ら自決する事も辞さないだろう。
大爆発的噴火が迫る中で族長殿は我等に「早く行け」と急き、その言葉に従って飛び出した。
※
「皆さん、急いで下さい!」
「早く乗れ!死にたくねェだろう!」
「押さないで下さい!順番に並んで!」
「子供達をなるべく先に乗せて!」
ツキジマの船着場は帝国からの避難船に乗船するツキジマの者達で溢れ返っている。
安全確認の為にトパーズを始めとする臣下達が島民達の避難誘導を行い、不安な表情で彼等は避難誘導に従う。
先ず訪れて早々町長殿の下へ赴き、彼に火山の噴火の事を伝える。
町長殿は酷く驚いていたが、判断を決めかねていて迷走していた。
私はその優柔不断な姿に痺れを切らし、彼の襟を掴んだ。
「──自惚れるな!自然の力を甘くみるんじゃない!!」
「…!?」
「貴方の判断一つでこの町は溶岩に飲み込まれ、多くの命が死に絶える!それでもいいのか!!?」
柄にもなく発した叱責に町長殿は驚き、私が掴んでいた襟を離すと彼は島民に避難指示を出すと伝えて家を飛び出す。
外に出て私も臣下達に島民の避難誘導を命じ、高台からその様子を見つめる。
避難誘導が終わり、臣下達の苦労を讃える意味で「御苦労だった」と彼等に伝える。
「皇帝陛下……一体これは」
「あ、陰陽師さん」
船着場から避難船を降りてセイメイ殿が我々の下へ歩み寄る。
「もう存じていると思うが、間もなくコムルーン火山は噴火する。貴方は早く船に──」
「ええ……勿論重々承知しております。ですが、例の魔導書を手に入れないまま島を離れるわけには……」
「……それが麓のサラマンダー達の命を引き換えにしてもか」
「え…?」
「先程私はゼミオの町の書庫で拝見した事だが」
「そう言えば陛下、先程少し寄り道をすると仰っていましたが……」
その通りだ、トパーズ。私はコムルーン火山の再活性を知ってから、何か予感を覚えた。
ふと先帝の記憶を一から振り返り、脳裏に過ったのは……この島で砦を築き観測を続ける魔導師の姿。
その記憶を頼りに書庫の文脈を読み上げてみたが、それは過去に起きた出来事──そしてこれから起きる未来を記していた。
噴火の鎮圧から234年後──つまり現在における再活性化、そして大爆発的噴火によって島は溶岩に飲み込まれ、サラマンダー達の命が潰える。
そしてその噴火の影響かこの島の西に、一つの島が海底から浮上。その島にある古代遺跡に眠るであろう魔導書、その一文に記される"ヘルファイア"なる術法はサラマンダーの身体を焼き尽くすらしい。
「そして噴火が発生して浮上した島に眠る魔導書の封印が解かれる。それで得するのは誰なのかは明白だが、あくまで私の憶測な為、聞き逃しても構わないが」
その仮説は不確かな為、本当にそうであるかは不明だが。
セイメイ殿は顔色を青褪め、口元を手で押さえる。
私の言葉で己が魔導書を手にする事がどういう事かを知り、唖然と立ち尽くし……衝撃が大きいだろう。
「コムルーン島で砦を築く魔導師……先帝の伝記にその者に関する記述がありました……ですが」
「許せない…!観測と研究を続けているって記されていたけど、全部その為だったって事!?」
「そんなもんの為に島の連中を謀ってやがるってか?ふざけているぜ!」
テリーやマウスの怒りを滲む声が漏れる。本性は下衆極まりないとしても、奴の人心掌握は目を張るもの。
島民の殆どは奴を信用している為、下手に砦に赴いて批判したとしても証拠がない。
一先ず島民の避難は済ませた、サラマンダーの族長殿に報告するしか他あるまい。
因みにセイメイ殿は呆然としており、今はそっとしておくとしよう。
Side シエロ
現在、私達はコムルーン火山の山道を走っています。
勿論平穏な登山ではなく、火山の噴火を防ぐ為に火口を目指して。
私達は島民の皆さんの避難の完了を族長さんに伝え、族長さんは安堵してました。
だけどそれで終わりじゃありません。島民の皆さんは無事で済んでも、サラマンダーの皆さんはこのままだとみんな死んでしまいます。
陛下は「噴火を防ぐ方法はないのか?」と問い掛け、族長さんはその問いに答えてくれました。
火口を塞ぐ溶岩の塊が点在していて、それを砕けば爆発を妨げる事が出来るようです。勿論簡単ではなく、彼等も試そうとしたそうですけどモンスターに阻まれて辿り着けなかったみたいです。
クワワ陛下は自らが岩を砕くと意志を示しました。族長さんは変わらず警告していきます、岩を砕いても溶岩が溢れ出して命を落とすリスクがあると伝えてきます。
族長さんは陛下の瞳に宿る光を見て何かを見出したのか、私達に岩を砕くハンマーを託してくれました。
そんな経緯もあって、私達は火山の山道を登っています。
モンスター達は我々の行方を阻もうと襲い掛かりますが、陛下達は怯む事もなく討ち取っていきます。
陛下率いる親衛隊に加わったばかりで、まだ未熟な私も微力ながら力添えしていきます。
我等モールは手先が器用なので小剣と地術、そして鍛え上げた棍棒で次々にモンスターを蹴散らしていきました。
「見事だ、流石モール族だ」
陛下はそんな私を褒めてくれて、私は棍棒と小剣を中心にモンスターを一蹴していきました。
押し寄せてくるモンスターを一蹴していき、山道を登っていき……山頂に辿り着いた所でトパーズさんが声を上げる。
「陛下!あれを…!」
彼女が指差した先には巨大な岩の塊、その隙間から何やら熱の様なものが見え隠れしています。
もしかしてあれが溶岩の塊でしょうか?これは早く破壊しなければ、と私は装備しているコムルーンハンマーを構えます。
「!……どうやらそう簡単に事は進まないようだ」
何処からか獣の唸り声が響き、続いて聞こえてきた足音。
現れたのはこの島に生息する獣型のモンスター……ヘルハウンドの群れ、しかもその中には亜種らしき青い鬣の個体も確認されました。
「ちっ……獣共が」
「向こうは邪魔する気満々ってわけね」
「其方にも事情があるのだろうな……だが、今は島の存亡が掛かっている。押し通らせてもらうぞ…!」
私達はそのまま駆け出し、ヘルハウンドの群れは我々の行手を阻んできます。
テリーさんの斧とマウスさんの小剣で肉薄し、トパーズさんが槍を振るって相手の首元を狙い先端で突き刺します。
陛下は奴等を牽制するべく弓矢で気を逸らし、その間に私は単身塊の前へと向かいます。
正直な所、場違い感があります。
私達モールはサバンナの地下でひっそりと暮らし、採掘を繰り返して生活を続けていました。
だけどあの悍ましいモンスター……タームと呼ばれる白アリ達に住処を荒らされ、仲間の多くは連中によって捕食されたと御先祖様の代からそう伝えられてきた。
聞けば聞くだけで全身が震え、実際目にしたわけじゃないのに震えが止まらなかった。
我々の中で遺伝しているのかは不明ですけど、タームに対する恐怖が忘れたくても忘れられません。
そんな臆病な我々を救い、手を差し伸べてくれたのが……我々の命の恩人──アバロンの皇帝陛下でした。
陛下は世界統一に私達の力が必要だと仰って下さった。
それは同情でも慰めでもなく、真心を込めた勇気への第一歩でした。
このまま臆病風に吹かれているより、自分が変わりたいと言う勇気が必要でした。
我々は陛下の手を取り、自らを変える決意と意志を示す事を誓った。
此処で逃げ出せば一生臆病者のまま、そう思って何度も塊を棍棒で殴ったり、小剣で突き刺したりしました。
途中でヘルハウンド達が襲い掛かって来たものの、陛下を含む皆さんが身を呈して壁になってくれた。
この島を救う為、自らが変わる為、そして……帝国に対する恩義を返す為。
そんな私の意志に応えてくれたのか、コムルーンハンマーに眠る力が目覚めたのです。
「グランド……バスター!!」
隆起した地面の杭が塊を刺激していき、徐々に塊の亀裂が広がっていきます。
そんな私に続いて陛下、トパーズさん、テリーさんの連携攻撃が決まり、亀裂が更に広がって光が溢れていきます。
「皆……下がれ!巻き込まれるぞ!」
その様子に陛下は我々に後退を命じ、一目散に私達は駆け出しました。
その後方で塊は爆発、溢れてきた溶岩にヘルハウンドと青い鬣の個体──後にガルムと呼称されます──の群れは瞬く間に呑まれていきました。
「はあ、はあ、はあ……皆、無事か?」
「は、はいぃ…!」
「し、死ぬかと思ったぁ……」
後方に広がるは泡立つ溶岩流、うっかり足を入れてしまったら火傷じゃ済まされないでしょう。
「上手くいってよかったですな」
「命の危険を感じましたけどね……兎に角、これで大爆発を未然に防ぐ事が出来ました」
コムルーン島を大噴火から救うなんて、ついさっきまでは考えられない偉業ですね。
その瞬間に立ち会った私は少し胸が高鳴った気がします。さて、サラマンダーの族長さんに報告しないといけませんね。
※
ゼミオの町の方も溶岩が流れ、町の周辺は溶岩の海になっていました。
渡ろうにも溶岩に直接入ったら自殺行為ですし、悩んでいると見張り番のサラマンダーさんが「以前はツキジマの商人が石の船で町まで溶岩を渡っていた」と言葉にします。
聞き耳を立てたクワワ陛下は「まさか……」と呟く、何か思い当たる様子で駆け出しました。
数刻経過すると陛下は帝国の兵士さん達と共に、石で出来た船らしきものを運んで来ました。
驚く私にトパーズさんが説明してくれました。あの船はまだ先帝ダイナマイト様の時代、彼がサラマットの森林の中で見つけて長年ずっと宮殿の倉庫内に保管していたそうです。
今回の遠征でもしもの時に備えて避難船の船倉に運び込まれていたそうですけど、まさかこんな形で役立つとは陛下も思わなかった筈ですよね。
兵士の皆さんは陛下に敬礼して去っていき、私達は石の船に乗って溶岩を渡っていきました。
そして溶岩を渡り、族長さんの家へ向かいます。火山は目と鼻の先にある為、経過を知っていても念の為に報告します。
「──大噴火は防いだようだな」
「ああ……善意ある協力者が手を尽くしてくれたお陰で」
陛下を含む此処にいる皆さんの目線が一点集中され、私は照れくさくなって頬を掻きます。自分自身でも必死だったので、何だか恥ずかしいですがね。
族長さん曰く、火山の噴火は続くも、先程の様な大規模な噴火はもう発生しないそうです。
一先ずこの島に平和が戻ったと言う事でしょうか。
我々が安堵の表情を浮かべていき、族長さんは陛下に「一つ聞いていいか?」と問いを掛けます。
「何故……わざわざあんな危険を冒した」
「………」
ツキジマの人々は既に避難していた、にも関わらず陛下や私達が島からの避難よりも大噴火阻止──下手すると命を落とすかも知れない危険性を優先した事、それが族長さんには不思議でならないようです。
その問いに対して陛下は微笑み、答えを示します。
「それは誰にでもあるだろう……"
「……!」
「そ、それは……」
その言葉は族長さんだけじゃなく、私の心にも強く響きました。
「……そうですね。御存知かと思いますけど、今や世界の脅威たる七英雄。暴虐の如く恐怖を振り翳す彼等に対し、陛下は彼等全員を討伐する──そしてそれが世界統一に繋がると信じているのですから」
「歴代の皇帝もみんな、そんな気持ちがあったんじゃないの?」
「俺達は全員、そんな陛下だからこそついていくんだよ。平和を未来に繋げる為にな」
他の皆さんも続けて言い放ち、誰もが晴れやかな笑顔を浮かべていました。
そんな彼等の言葉に族長さんは「……そうか」と納得した様子。
「その悲願への道標、我等サラマンダーも手を貸すとしよう。今、そんな気持ちになった」
「族長殿……」
「我はサラマンダーが長、名はケルート。地の果て、海の果て、そして向かい風の果てに我は参ずる事を誓いましょう……皇帝陛下、そして大地の同志よ」
族長さん……基、ケルートさんは陛下と握手を交わします。これでモールと同様、サラマンダーも帝国の盟友となった瞬間ですね。
「……早速ですまないが、一つ立ち会って欲しい事がある」
「陛下の御命令とあらば何なりと……それで立ち会って欲しいとは?」
「……この事態を引き起こした黒幕の目的を明るみにし、断罪する」
『!!?』
我々全員は息を飲み、同時に陛下が成そうとする事を理解してしまいました。
Side クワワ
ダイナマイト帝の記憶を頼りに我々は魔導師の住う砦に踏み入れ、静かに歩く。
当時は入れなかった扉は開錠されており、罠と警戒して砦の屋上を目指す。
またしても仕掛けられていた仕掛けを解除して、最奥の扉を開ける。
当時と姿が変わらない……恐らく子孫の可能性があるだろう、兎に角魔導師は椅子に座して微睡の世界に陥っていた。
先程まで島は危機に陥っていた。だと言うのにこの者はのうのうと寝息を立てていて、その呑気な姿に拳を握り締める私。
「ごはっ!?」
自分でも分かりやすい怒りを抱き、椅子を蹴飛ばす。
うつ伏せに倒れた痛みで目が冴え、完全に眠りから覚める魔導師。
「き、貴様……アバロンの皇帝!?」
「よく眠っていたみたいだな」
「何故この島に……い、いや、そんな事はどうでもいい!火山は……火山は大爆発を起こしたのか!?」
ずっと眠っていた魔導師は記憶が朧気で、眠っていた間の事を知らぬらしい。
「まるで火山が噴火する事を知っていたような口ぶりだな」
扉の向こうで待機していたケルート殿が入室し、魔導師の身体が硬直する。
「…!サ、サラマンダー…!?ま、まさか……何という愚かな事を…!」
ケルート殿の存在、それが何を意味するかを理解した魔導師は自らの目的を吐露する。
コムルーン火山を爆発させる事により、海底に沈んだ島を浮上させる。その島には私が憶測した通り、古代の魔術書が眠っていて……奴が島に住み着いていたのもそれを手に入れる為。
だが我々が噴火を防いだ事により、魔術書は永遠に海に沈んだ。結果的に奴の野望は泡沫に消え、その様子を見て落胆しているのが察せられる。
「何を勝手な事を…!火山が噴火すればコムルーン島は壊滅し、ケルートさん達サラマンダーは勿論、ツキジマの方々は皆……命を落としていたのですよ!」
「魔術書を求めるのは勝手だけど、島を火山で滅そうとしたのは見過ごせない!」
「とことん狡賢い人みたいですね〜」
「この下衆が…!私欲の為に島の者達を謀り、犠牲にしようとするとは……絶対に許せん!」
トパーズ達の叱責の声に青筋を浮かべ、魔導師は勢いよく立ち上がる。
「何をゴチャゴチャと!術こそ全て!其処の女術師、貴様も分かるだろう!?己の目的の為ならば信頼など不要、己以外の下等な命なんぞ一々気に掛ける余地などない!術を極めていけば何れ、古代人共が残した叡智を得る!そしてそれは、世界にのさばる七英雄など脅威ではなくなる!」
トパーズに向かって狂気じみた正論をぶつける魔導師。七英雄を否定しているようだが、他人の命を極端に過小評価するその思想は共感出来ない。
扉がまた開かれる……そう言えば
「術の素晴らしさ、己が肉体で味わうが──」
「──ペイン」
彼……セイメイ殿が放つ冥術の基本攻撃術、それを不意に受けて怯む奴にケルート殿の振るう戦斧が投擲。
「!?う、うぎゃああああああ!!?」
手首が切断され、その断面から血が流れる。
「て、手が、わ、私の手が、こ、この、トカゲ風情がああああああ!!!!」
「彼が行った行為は当然の報いです」
「…!き、貴様は…!?」
「貴方と同様に魔術書を求めてこの島を訪れたのですが、私は犠牲の上で手にする物を欲しようとは思いません。私欲の為、手段を選ばぬ貴方と違って」
最初は奴と同じように魔術書を求めていたセイメイ殿だが、真実を知って割り切ったようだ。
「貴方は魔術書を悪意のある者から守る為に求めた、それは正しき人間としては当然の責務。だが此奴は違う、自らの欲求を満たす為に他人を顧みない外道だ」
私が彼を諭す中、ケルート殿は奴の襟を片手で掴み上げる。
「わ、私を殺すのか。ク、ククク……だがしかし、所詮はトカゲの化け物だ、私を殺した貴様を島の連中は拒絶するだろうな」
「……勘違いするな、貴様を断罪するのはケルート殿でもセイメイ殿でも、私でもない」
「は……?」
魔導師は何がなんだか分からずに困惑、奴はケルートに引き摺られて屋外に連れ出される。
砦の周囲にはヘルハウンドを始めとするモンスターが徘徊しており、それを見て全てを理解した。
「や、やめろ──」
「貴様を断罪するのは……この島に生きる命だ」
ケルート殿は奴を投げ飛ばし、奴はそのまま地面に転落。
手首から流れる血の匂いを嗅いでか、周囲のモンスターが魔導師を囲う。
「ひ…っ、く、来るな!来るんじゃない、この醜い獣共!」
腰を抜かして後退りするも、相手は獰猛なモンスター。話を通じるわけもないが、彼等が放つ火術や火炎で精神的に追い込まれる。
数体のヘルハウンドが口を大きく開き、奴に向かって飛び掛かった。
「や、やめろ!来るな────いぎゃあああああああああああああ!!!!」
断末魔の叫びとも取れる絶叫、夥しい鮮血が飛び散り、人肉を食らい尽くす咀嚼音。
トパーズとマウス、シエロは口元を押さえて顔色を青くし、テリーは呆然とする。
私とケルート殿はそれを表情を変えずに眺める。
ヘルハウンド達は食事を終えた様子で去っていき、その場には血飛沫が飛び散った仮面とローブの布地だけが遺された。
※
その後ツキジマに戻り、町の住人達は私達に感謝の言葉を送った。
魔導師に関しては惨い最期を皆それぞれ胸の奥に仕舞い込み公表せず、遠い地へと旅立ったと虚偽の報告をする事に。
セイメイ殿もこの島で起こった事の顛末を受け止め、彼は異国へと舞い戻るらしい。
長くも短くはあった濃厚なコムルーン火山の一件は終着、サラマンダーと言う新たな盟友を得て我々は帝国へと戻った。
後にサラマンダーを代表してケルート殿、モールを代表してシエロが帝都へ参られ、新たな同士を祝う為の宴を開いた。
続く
次回はレオンブリッジ周りのイベントを執筆していきます。