今回は臣下達の伝承法に対する反応を投稿しました。
Side ???
我が名はカール。
この南バレンヌの田舎町、ニーベルの近郊にある龍の穴に集う体術を極めし格闘家の総帥──当代の"ザ・ドラゴン"だ!
弟子達と共に拳の道を生き、拳の道の下に殉ずる──それこそが龍の穴に生きる武闘家たる者の宿命よ!
ニーベルの町の者達は我々を最強、英雄と祭り上げているが我々はそんな事の為に鍛えているのではない!
我等の拳は強き者を挫き、弱き者を救う正義の拳──ましてや正義を忘れ、邪道に堕ちた七英雄の様に堕落するなど毛頭ないわっ!!
一年前……北バレンヌの帝都アバロンが七英雄の一人、クジンシーによって襲撃され皇帝レオンが崩御したと言う噂を聞いた際、我が耳を疑った!
第一子たるヴィクトール皇子もその最中で犠牲となり、嘗て栄えた帝国もこれまでか…と懸念していたが、第ニ子たるジェラール皇子がクジンシーを討ち取ったそうだ!
風の噂ではジェラール皇子は戦いとは無縁である上、学術に勤しむ軟弱者と聞かされていたが、やはり噂は噂──鵜呑みするべきではないな!
北バレンヌとルドン地方の境目にあるこの地だが、現在大変悩ましい状況下にある!
ニーベルの西にあるモンスターに悩まされているのだ!我等の面子に掛け、我等が討伐するべきだと意気込んだのだが……。
我等は甘く見ていた。彼奴等の中に我等の拳が通らぬ輩がおり、その輩共は柔軟性のある液状体のモンスター……幾ら拳を駆使しても攻撃が通らんのだ…!
皮肉な事に我等は術を扱わん、故に奴等……"ブヨブヨ"共の術に日夜悪戦苦闘しているのだ!
ニーベルの者達からの信用はガタ落ち、挙げ句の果てに諦めの声も上がる始末だ!
これは拙い!本当に拙いと危機感を覚え、あたふためく状況に弟子の一人が私に申してきた。
「ザ・ドラゴン…!このままでは長引いてしまいます!此処は早急、帝国に救援を要請するべきでは…!」
「戯けた事を言うなぁ!!余所者の──ましてや帝国の者に尻尾を振るなど、龍の穴の誇りに掛けて決して認めん!帝国の力を借りるなど、愚か者の行為だ!」
「は、はい…!」
そう言って彼は離れる。私自身でも分かってはいる……このままでは埒が開かない事は。
だが!我等の流儀も曲げるわけにもいかんし、帝国に媚びるなど……私は絶対に揺るがんぞ!
この身体一つで!"ブヨブヨ"を倒してみせる!!
Side out
Side ジェイムズ
あの悪夢の様な悲劇、そして奇跡を齎した新皇帝の即位から一年の月日が流れた。
突然の悲劇の痕跡の面影もない程にアバロンの町は復興し、私達は一時の平和に甘んじて訓練を繰り返していた。
私、ベア殿、テレーズ。
それからヘクターとアンドロマケー。
ヘンリーにライーザ、アリエスとエメラルド。
揃いも揃って町の酒場に偶然出会し、相席を預かって酒を嗜む。
ジェラール陛下の統治の下、アバロンは一時の平和を噛み締める。
だが平和はあくまで一時的なもの、いつクジンシーの様な七英雄がアバロンに牙を向くか預かり知らぬ。
「そう言えば聞いた?陛下の意向で、鍛治屋と術法研究所が建設される話」
「ええ。我々術師としては実に有難い話、新たな術法の研究に精が出ると言うものです」
「確かにそうですわね。私もそれは個人的に嬉しい話、ですが……私達宮廷魔術師は非力ながら術の研究に勤しむ時間がありませんわ」
アリエスとエメラルドは揃って深い溜息を零す。
正直に言って私達は彼等が羨ましい。魔術を巧みに駆使し、戦闘や回復のサポート──臨機応変に対応出来て、とても助かる。
しかし幾ら彼等が術に秀でていても、術師達の数が足りない。
嘗て大国だった帝国も今や唯の小国、七英雄クジンシーを討ち倒したとはいえ、帝国の名を轟かせるにはあまりに小さい。
「陛下──ジェラール様と言えば……あの話には驚かされたわね」
酒瓶を置いてアンドロマケーが呟く。
「嗚呼……"伝承法"だったか」
ヘンリーも耳を傾ける。
レオン陛下の崩御を皮切りにジェラール様は変わられた。レオン陛下やヴィクトール様の様な勇猛な性分と本来の優しさを併せ持ち、勇敢な性格へと変化を遂げられた。
その急激な一変に誰しもが当惑と疑惑を持ち、クジンシー討伐から一月後──ジェラール様本人から我々はその話を齎された。
ヴィクトール様が戦死される数日前、オアイーブなる魔道士が何度もレオン陛下の謁見を申し出ていた。
兵士の話では若くて美しい女らしく、その女は陛下にクジンシーを始めとした七英雄の存在を警告してきたのだ。
勿論レオン陛下は疑心暗鬼を貫いていたが、ヴィクトール様の戦死後──再び彼女を宮殿に招き入れ、改めて話を聞く事となった。
詳しい事は聞いてはいないものの、女魔道士はアバロンが生き存える為に"伝承法"と言う術法を伝えた。
その伝承法なる秘法は己の力と記憶を次代の者に受け継ぐと言うもの、
ジェラール様はそれを如何わしいと罵っていたものの、レオン陛下の言葉は一つ一つ重みがあった。
ジェラール様と我々、そして
七英雄との長い戦いと言う運命に課せられしジェラール様を鼓舞し、たとえこの身が朽ちようと魂は共にある──それがレオン陛下の最期の言葉だった。
そして結果的にジェラール様はレオン陛下を始め、歴々の皇帝の力と記憶……そして遺志を受け継ぎ、クジンシーを討ち取った。
これがジェラール様の急激な一変の種明かし、それを聞いた我々は当惑したが……誰しもがジェラール様を咎めようとはしなかった。
レオン陛下は自らの命を捨ててまで我々に道を示し、ジェラール様に未来を託したのだ。
あの御方に疑惑を持つと言う事は、帝国を──そしてジェラール様を冒涜するのと同意義である。
「あの話をされた時のジェラール様の目は
ヘクターが息を吐き、天井に首を仰ぐ。
「己の人生の全てを捨てて戦う覚悟……か」
「何て重みのあり、そして過酷な言葉ね……」
レオン陛下の遺言にベア殿もテレーズも考えさせられる、私や他の皆も同じ気持ちだ。
あの日までには考えもしなかったレオン陛下とヴィクトール様の死、悪逆の限りを尽くす七英雄、ジェラール様の即位、そして……伝承法の存在。
特に伝承法の話が本当であれば、何れ我々も覚悟しなければならない。
我々も何れ老いて天寿を全うする、ジェラール様もそうなるであろう。
そしてジェラール様の遺志……レオン陛下の悲願は後の時代、次代の皇帝となる者へと継承されていく。
それを胸の内に刻み込み、我々はジェラール様を支える事を決断して酒を飲むのだった。
Side out
Side ジェラール
あれから一年の時が経ち、この北バレンヌ内の混乱は収まった。
父上の悲願──帝国統一を成さんが為、いつまでもアバロンに座すわけにもいかない。
領土拡大、国力増強、そして七英雄打倒の為、先ずは協力者を集める必要がある。
その第一歩として南バレンヌにあるヴィクトール運河の奪還。現在は何者かの手によって要塞が築かれ、難攻不落の壁として立ち塞がる。
他にはルドン地方に通ずる宝石鉱山にも手を伸ばす必要性も示唆する声が上がっている、どちらにせよ直接赴く必要があるな。
帝国の更なる発展の為、強固な武器や防具を作り上げる鍛冶屋、術法の更なる発展として術法研究所の建設。
鍛冶屋の責任者として帝国から代々鍛治職人を輩出してるファブリ家の御令嬢が抜擢され、この勅命にその御令嬢は嬉々として「武具や防具の開発ならば、喜んで承ります!」と意気込んで豪語した。
術法研究所の方はフリーメイジと言う術の発展を図る術師二人が大任を引き受けた。
貴婦人で大人の女性であるローズに、飄々とした御老体だが掴み所のないレグルス。
妙にアンバランスな二人だが、大任を引き受けた以上果たさなければという使命感がある。
アリエスとエメラルドも時折訪れ、四人で術法について語り合う所がある。
あ……ヘクターがローズに対して「あんたみたいなオバハンに術の開発なんて出来んのかよ」と宣った途端、地術…ロッククラッシュが彼の頬を掠めるという一幕があったな。
誹謗発言を取った彼にローズは「何か仰ったかしら?」と笑顔で威圧してきた為、ヘクターはそれに折れて「……何でもないです」と答えて逆らわなくなったとか。
まあそれはさておき、確か宝石鉱山があるティファールの近くにはニーベルと言う町があったな。
彼処には体術を駆使する格闘家達が治めていると聞く。
七英雄打倒の為の協力者集めならば、先ず格闘家達と接触しないと。
先ずはニーベルへと赴き、運河要塞攻略の人員を確保する必要がある。
私はライーザ、ヘンリー、アリエス、エメラルドの四人と共に出立する。
……そう言えば近頃、城下町で夜分に謎の影を見かけると言う声が出ているが、今はそれに構っている状況ではないか。