地球、アフリカ大陸北東部。エジプト。
ここに、宇宙から人知れず墜落した宇宙船があった。
その宇宙船の名は、ロストライト号。
「朝だーっ!」
「うるさいぞロディマス!全くお前はこんな状況だと言うのに・・・・・・」
「良いじゃねえかマグナス!・・・・・・ていうか、こうやって空元気出しとかねえとやってらんねえっての・・・・・・」
所々が壊れ内部が剥き出しになっているロストライトから這い出てきたのは、艦長のホットロディマスと副艦長のウルトラマグナス。
「それにだ。怪我の功名って言うだろ?ここは俺達の目的地!プライムレコードが指し示した場所!エジプトだぜ!?」
「怪我の功名か。そう言うには大怪我が過ぎるがな。ロストライト号の修理にどれ程の時間が掛かるか・・・・・・」
「そう悲観すんなって。どうせしばらくはアースにいるんだ。気長にいようぜ」
「全くお前という奴は・・・・・・ロストライト号が動かなければ宇宙には上がれんぞ?お前が参加したがってるヴェロシトロンレースにも参加出来ん」
「・・・・・・そうだった・・・・・・」
ロディマスの顔が目に見えて青ざめていく。
「考え無しか、全く・・・・・・」
「あああやべえ!おーいみんな!全身全霊で修理してくれー!」
「うるさいぞ今やってる!」
「叫ぶくらいなら手伝え艦長!」
「集中してんだ話しかけんな!」
「あー!ミスったー!?」
「誰だ今ミスったって言ったの!?」
ロディマスの言葉に船員達は思い思いに答える。
「ロディマス、彼らは君が思っている以上に本気のようだな」
「だけどよお、なんか罵倒が聞こえたんだが?」
「ハッハッハ!頼もしい限りじゃないか」
「お前なぁ・・・・・・ん?おーい!サイクロナス!どこ行くんだ!?」
ロストライト号から這い出てきた仲間に声をかける。すると不機嫌そうに振り向き答えた。
「用事がある。しばらく失礼する」
「おう!そうか!ちゃんと帰ってこいよー!」
サイクロナスは特に返事をせず行ってしまった。
「あいつもマイペースだな」
「お前には負けるさ」
「うるさいよ」
「おい、どこへ行くんだ?」
「プライムレコードが指した場所へ行く。エジプトってだけじゃなく、もっと細かく情報が入ってたからな」
「そうか・・・・・・よし。私も行こう」
「え?ついてくんの?」
「嫌かね?」
「とんでもない!良いボディーガードが出来たぜ!」
「調子の良い奴め」
「ようし!そうと決まればついてきな!トランスフォーム!」
走り出したロディマスはそのままファイヤーパターンのあるスポーツカーに変形した。
「全くいつの間にスキャニングしたんだか・・・・・・トランスフォーム!」
ウルトラマグナスはエイリアンキャリアカーに変形し、ロディマスに続いた。
「この先だ。この道をまっすぐ行けば、プライムレコードに記された場所だ」
「なにか見えてきたぞ」
砂の上を進み続けていた二人の目の前に、車や様々な機材が並べられ簡易的な小屋が建てられた光景が現れる。
「この星の原住民のものだろう。だが、こんな暑さだというのに設備が乏しい。一時的なものだろう」
「とにかく行ってみようぜ!」
「ああ!待て!」
ウルトラマグナスの制止を聞かず、ロディマスは接近した。
「トランスフォーム!やあやあ!どうも!」
「うん?・・・・・・おお!?な、なんだ!?」
「驚くのも無理はないよな。俺はホットロディマス。宇宙から来た、トランスフォーマーさ!」
その場にいた人間達は突然やってきたロディマスに驚き散り散りに逃げ出したが、ただ一人立派な髭を蓄えた小太りの男はロディマスを見上げていた。
「トランスフォーマー。聞いたことがあるぞ?確か・・・・・・日本に現れたっていう宇宙人か」
「日本?ははあ、確かサイバトロン軍がアースにって話は聞いたが、そんな名前のところに・・・・・・」
「それで?宇宙人がなんの用だい?」
「ああっと、忘れるところだった。ここでなにしてるんだい?気になってね」
「ここで?ああ、ここは臨時の調査所。いや研究所といった方が良いかな?今から二千年以上前にあった文明の後、遺跡が出土してね。こうして調査研究しているわけさ」
「なるほどロマンだねぇ・・・・・・」
「分かってくれるか!?嬉しいもんだ!・・・・・・それで、ここで出たもんが・・・・・・これさ!」
「これは・・・・・・」
男は近くのテーブルからB5用紙程の大きさの写真をロディマスに見せた。
「おーい!ロディマスー!」
いつの間にかロボットモードに変形していたウルトラマグナスはロディマスに追い付いた。
「全くお前というやつはいつも無鉄砲に・・・・・・」
「それよりもマグナス、こいつを見てみろ」
「うん?これは・・・・・・写真か?」
「ああ・・・・・・ビンゴだぜ。こいつは・・・・・・」
視線を写真からウルトラマグナスに移し、ロディマスは一呼吸置いてから言い放つ。
「こいつはセイバートロンの都市と同じだ。同じ金属だ。プライムレコードに記された座標は、アースにあるトランスフォーマーの施設の場所だったんだ!」
「なに・・・・・・!?」
パアッと瞳を輝かせるロディマスとは対照的に、ウルトラマグナスの顔は曇りだしていた。
この時ウルトラマグナスの頭の中には二つの事が思い浮かんでいた。
地球にあるトランスフォーマーの施設とは十中八九プライム関連のものだということ。そして既に原住民がいる場所なのだから干渉しようがないということである。
「なあ、あんた。俺達はここを目指してこの星に来たんだけどさ、入っても良いかい?」
「バッ!ロディマスお前・・・・・・!」
「あー、俺はかまわないが、上がちょっとな・・・・・・」
「上?」
「ほら言わんこっちゃない・・・・・・」
「まあ時流ってやつだな。最近のISで色々とな・・・・・・ま、事なかれ主義の爺さんから欲深い婆さんに変わってな。どっちが良いのやらってもんだが。・・・・・・お前さん達はこの遺跡に何の用があるんだ?」
「え?あー、ちょっと探し物」
見るからにガッカリと腕を垂らし猫背になったロディマスは男に答えた。
「なるほどね・・・・・・ここだけの話、正午になったらここの偉いさん方は一回国に帰ることになっててね。狙うならそこだ」
「本当か!?」
ロディマスの目に光が戻った。
「その、正午というのは?」
「太陽が真上に来る頃さ。後・・・・・・30分ってところかな。偉いさん方はとうにここを発してるが、念のため後30分は待った方がいいだろう」
「ありがてえ、ありがてえぜ!ありがとな!」
「ありがたいのは確かだが、なぜ、得体の知れない我々に、貴方は情報をくれるんだい?」
「理由なんてあるか。ただ、ここの調査は難航していてね。ちょっとストレスが貯まってたのさ。あんたらが派手に暴れたら、ちょっとはスッキリするかもってな」
「何にせよありがとう。貴方はこの星に降り立ってできた、我等の初めての友だ」
「よせよ友だなんて。ああーっと・・・・・・俺はもう知ーらない!監視とか色々はもーどーでもいーや!あばよ!」
そう言うと男は二人にウィンクして歩き去った。
「親切なもんだぜ。それで、後30分だったか?」
「ああ。待っておいた方が良いだろう。リスクは少ない方が良い」
「そうだな・・・・・・」
腰を下ろしたロディマスはそのまま寝転がった。
「にしたって暇だな。どうだいマグナス?この間にこの星のマシンをスキャニングしたらどうだ?」
「この星のをか?どれ程滞在するかもわからないのに?」
「だからこそさ。いつまでもセイバートロンのままじゃあ不便だろ?」
「それもそうだが・・・・・・よしておこう。私は今のままでいい」
「そうかい?ならいいさ。場所は近いんだ。俺は寝るぜ。時間になったら起こしてくれ」
そう言うとロディマスは本当に寝息をたて始めてしまった。
「全くお前というやつは・・・・・・うん?誰だ!?」
ロディマスにため息をつくウルトラマグナスは、背後に気配を感じ銃を手に振り向いた。
「誰もいない・・・・・・いやそこだ!」
「ぐあっ!?」
光線は低い砂丘を撃ち抜き、その中からサソリ型のトランスフォーマーが現れた。
「ぐ、うぅ・・・・・・」
「砂の中にいただけではないな。おそらく光学迷彩か・・・・・・何者だ?お前は?」
「うぅ・・・・・・申し訳ありません、不肖パラロンこれまで・・・・・・!」
「あ、おい待て!」
「オールヘイルプライマース!」
ウルトラマグナスの理解も追い付くことなく現れたトランスフォーマー、パラロンは自爆してしまった。
「なんなんだ一体・・・・・・ロディマス!起きろ!ロディマス!」
「なんだよもう時間か?全然寝れてないぜ・・・・・・」
「そうじゃない。我々以外にもいる!プライムレコードの示す場所に狙いを定めた者が!」
「・・・・・・ま、だろうな。元々ロックダウンから奪ったもんだ。そういうのは織り込み済みだぜ。まさかホントに来るとは思わなかったがな!」
勢いよく立ち上がり、ロディマスは拳を握りしめる。
「こうなったらうかうかしてらんねえ。プライムレコードが示したもの・・・・・・その真実を確かめる。この目でプライムが何を残したかったのか、それを見る。先を越されちゃ意味がねえ!待ってる場合じゃない、行くぜマグナス!」
「ああ!」
自分とウルトラマグナスに気合いを入れ、ロディマスは遺跡へ走った。
「「トランスフォーム!」」
遺跡は砂丘の中に洞窟のように通路が延び、その先に空間があるというもの。二人の慎重では通路に入りきることができず、ビークルモードに変形し駆け抜けた。
「走りやすい・・・・・・もう金属が使われてる。近いな!」
「空間が見えた!行くぜ!トランスフォーム!」
通路を抜けたロディマスは勢いのままロボットモードに変形し、遺跡に降り立った。
空間は広く逆四角錐台に掘られており、通路から壁に沿って坂が延び、本来ならそこを下るのだろう。天井は底から見れば高いが、通路から見るとロボットモードのウルトラマグナスがギリギリ坂に立てる程しかない。
「この歩く感覚、セイバートロンの古い施設を歩いた時と同じような・・・・・・これは」
「どうした?マグナス?」
「操作盤のようなものがある。我々トランスフォーマーの背丈に合わせたものだ。どれどれ・・・・・・かなり古いな、だが見たことのあるものだ。これで・・・・・・よし!」
「明かりが・・・・・・」
暗がりの中ライトを照らしてスイッチを押すと、遺跡の天井に明かりがつき全体を照らした。
「間違いない。ここはトランスフォーマーの施設だ。このエジプトにかつて栄えた文明はおよそ5000年前に始まったもの。その時代に電気は存在していない。こんな設備は外からの協力無しに作ることは不可能だ!」
「なんかやけに詳しいな、お前」
「少し心配性気味なもんでね。一応この星の、この地域の歴史は調べていた」
「そうかい、そりゃ頼りになる。そんな賢人に質問なんだが、こいつはなんだと思うね?」
そう言うロディマスが指差したのは、空間の中央に設置された巨大な箱。
「いきなり聞かれてもな。わからないものはわからないさ。だが、この大きさだ。トランスフォーマーに関するものではあるだろう」
「だよな。俺もそう思ってたところだぜ」
右腕を丸鋸に変形させ、回転させる。
「なにをする気だ、ロディマス!」
「決まってら、この箱開けるんだよ!」
「馬鹿な真似はよせ!君も知ってるだろう!?この遺跡はこの星の生命体の研究対象だ。そんな勝手は許されない!」
「じゃあどうすんだよ!?お前の話だ、お前が俺達以外にも狙ってる奴らがいるって言ったから走ってきたんだぞ!ここにはこの箱しかねえ、"古いトランスフォーマーの施設だすごーいやったー"なんて言うために来たんじゃねえんだぞ!?」
「だからと言ってな!」
「その通り!」
「「誰だ!?」」
部屋の中央の箱の前で言い争う二人の言葉を遮るように通路から声が響いた。
通路の出口に立っていたのは、黒い体に紫の差し色がされた細身のトランスフォーマー。
「よくここまで辿り着いてくれました。照明までつけてご苦労様。もう帰ってよろしい」
「訳のわからねえこと言いやがる。誰だお前は!」
敵意を剥き出しにして吠えるロディマスに対し、乱入者はにやりと口角を上げたまま右腕を上げた。
「やれ」
そう言い放つと、数秒と経たずに天井を突き破る光弾が降り注いだ。
「な、なんだ!?」
「あいつ・・・・・・外に兵隊でも置いてんのか!?」
「ご明察。降下なさい!」
号令と共に光弾によって開いた穴から10人の同じ姿をしたトランスフォーマーが降り立った。
「ドローン兵か・・・・・・?」
「いいや違う・・・・・・見たことがあるぞ」
「教えてくれマグナス、こいつら何者なんだ?」
背中合わせの二人と箱を囲むように陣形を組むトランスフォーマー達は銃を構え、絶体絶命の状況が作り上げられた。
「見ろロディマス、奴らの胸を。あれはセイバートロン管理局のマークだ。私もかつて身を置いていたから分かる。あれは管理局所有の兵隊だ!一定の地位以上の者の警護等に使われるが・・・・・・」
「なるほどね。つまりはあそこにいるやつは相当な偉いさんか」
「そうなるな・・・・・・どうする?ロディマス」
「野暮なこと聞きやがるなお前も・・・・・・迎え撃つぜ!トランスフォーム!」
「ショルダーミサイル!」
ビークルモードに変形したロディマスは管理局兵に突撃して陣形を崩し、一瞬の動揺が広がった瞬間ウルトラマグナスの両肩に装備された二連装ミサイルを放ち半数を吹き飛ばした。
「トランスフォーム!」
「うおっ!?」
「くらいやがれ!」
ロボットモードに変形し管理局兵の一人に飛びかかり、残った兵達に両腕のマフラーが変形した機銃を連射。あっという間に管理局兵は全滅した。
「鈍ってねえな、マグナス!」
「お前も相変わらずで安心したよ」
「それでだ・・・・・・後はお前だけだな!管理局の・・・名前は知らないが、お前を倒してゆっくりと箱を開けさせてもらうぜ!」
ロディマスは両腕の機銃を、ウルトラマグナスは取り出した銃を未だ通路出口に立つトランスフォーマーに向ける。
「ふ、ふふふ・・・・・・ははははははははは!」
「何が可笑しい!」
「何が?失礼、何もかもが可笑しすぎて笑いが込み上げてきました。ははははははははは!」
「テンメェ・・・・・・!」
「ああ、怖い怖い。そんなに表情を変えるとフェイスパーツが劣化しますわよ?それに、私にばかり注目していると、自分の首を絞めますわ」
「何!?」
「ッ!ロディマス!」
「うおっ!?」
「グワアアアアアアッ!!!」
何かを察知したウルトラマグナスはロディマスを突き飛ばし、背後から放たれた巨大な剣のようなものに腹部を貫かれ倒れてしまった。
「マグナス!おい、マグナス!!!」
「あ、あぁ・・・・・・」
「あーあー、可哀想。仲間を庇って倒れるだなんて」
「この野郎!!!」
激昂したロディマスは機銃を放つが、上から降ってきた物体に辺り着弾は叶わなかった。
「ご苦労様。貴方は二階級特進ね」
床に落ちた物体はメカサソリの姿をしたトランスフォーマー。
「お前・・・・・・仲間を盾に」
「ええ。驚くことではないでしょう?弱い者は強い者のために。摂理ですわよ?」
「・・・・・・」
口から出た言葉にロディマスは驚愕し、言い返すことが出来なかった。
「それに、野郎だなんて・・・・・・失礼しちゃいますねぇ。私は、れっきとした女だというのに。どうやら熱血が行きすぎてブレインサーキットが焼け焦げしまっているようね。なんて哀れなのかしら!」
「な、な・・・・・・」
未だロディマスは硬直し動けずにいた。その様はまさに蛇に睨まれた蛙。
「ああ、死ぬ前に教えておいて上げましょう。そこの倒れてるデカブツにも。私はエアラクニッド。セイバートロン管理局局長、センチネルの秘書にして唯一の側近。この名前、オールスパークにまで持っていってくださると幸いですわ」
エアラクニッドが言い終えると、壁や天井から続々とメカサソリが現れ、ロディマスに尾の先の剣を向ける。
ロディマスはこの時直感で理解した。このサソリの攻撃でウルトラマグナスは倒れたのだと。
先程の兵隊とは桁違いの数に囲まれた状況に、思わず固唾を飲む。
「それでは、さようなら」
エアラクニッドの言葉を皮切りにメカサソリ達は一斉にロディマスに飛び掛かった。
(どうする!?このままじゃ俺達二人ともスクラップだ!この数は俺だけじゃ対処しきれねえ、あいつ、それを知っててマグナスを!)
高速で思考を巡らせ、どうにか窮地を脱する術を考えるも、ロディマスの頭脳には何の策も浮かばなかった。
「う、うおおおおおおおおっ!!!」
両腕の機銃を四方八方に撃ちまくり、どうにか退け続ける。
しかし限界は早かった。
「ぐおっ!?」
ロディマスの左胸を剣が貫いた。
ウルトラマグナスのような投擲ではない。飛び掛かったメカサソリを跳ね返せず尾についたままの剣が突き刺さったのだ。
「こ、このっ!」
メカサソリを剣から無理矢理取り外しそこらに投げる。
「ぐぅ・・・・・・うああああああああああああっ!」
しかし大量のメカサソリは絶え間なくロディマスに襲いかかり、あっという間にロディマスはメカサソリの山に埋もれてしまった。
「簡単ね。やはり数は多いに越したことはない、至言ね」
メカサソリ達の動きを止め、降りたエアラクニッドはメカサソリの山に近づいた。
「さ、屑鉄の顔を拝見といきましょう」
エアラクニッドが腕を伸ばすのと同時にメカサソリ達は山を崩し下敷きになっていたロディマスを露出させた。
「ふふふ。装甲はべこべこ、配線ははみ出て千切れちゃって、あらあら足は潰れてるじゃない!」
「ぐがああっ!?」
未だ胸に刺さっていた剣を引き抜くと、ロディマスは苦悶の叫びを上げた。
「へえ?まだ生きてたのね。感心しちゃうわ。その生命力、恋に落ちちゃうかも」
「馬鹿なこと、言うな・・・・・・微塵も思ってねえくせによ・・・・・・」
「あら?随分察しが悪いのね。さっきも言ったでしょう?弱者は強者のために。私はセンチネルに敵わない。だから従っているの。それに、こんな時に下らない嘘はつかないわ」
「はっ・・・・・・余裕かましやがるぜ・・・・・・俺は、まだ、動けるぞ・・・・・・マグナスには指一本触れさせねえ・・・・・・」
「美しい友情ね。胸焼けしちゃいそう」
「グワアアアアッ!」
「テメェッ!」
ロディマスの言葉を聞いたエアラクニッドはその尖った足を倒れていたウルトラマグナスの足に突き刺した。
「許さねぇ・・・・・・よくも、よくも俺の仲間を!絶対許さねえ!」
「許さない?それは優位に立っている時に言う言葉。今の貴方では負け犬の遠吠え」
「何とでも・・・・・・言いやがれ・・・・・・俺はロディマス、ホットロディマス!・・・・・・ロストライト号の艦長、多くの仲間と宇宙を駆ける!ロストライトのリーダーだ!・・・・・・諦めねえぞ、俺は、俺は!・・・・・・俺はッ!!!」
壊れかけた体を奮い立たせ、無理に立ち上がる。
今にも倒れそうなその姿に、エアラクニッドは笑いをこらえるのに必死になっていた。そんな姿を目にしたロディマスは、ギギギと壊れそうな音を立てながら右腕を丸鋸に変形させる。
しかし丸鋸は回ることなく外れ、落ちてしまった。
「う、うぅ・・・・・・ううう!」
全身を駆け巡る痛みに耐えながら、眼光を放ち続ける。
執念ではない。仲間であるウルトラマグナスを弄ばれた怒りが、自分の情けなさが、ロディマスを動かしていた。
既に当初の目的はロディマスの頭から抜け落ちていた。
「う、うおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「叫んだって惨めなだけよ!」
エアラクニッドの背中から伸びたアームがロディマスの腹を貫き、倒れたロディマスは背後にあった箱を破壊しついに目から光が消えた。
「ロディ、マス・・・・・・」
「アハハハハ!滑稽ね、主人公にでもなったつもりだったのかしら?まあ良いわ。さっさと目的を達成しなきゃ」
壊れた箱に手を伸ばし、ロディマスを退かすためその体に触れる。
そのときだった。
「なに!?あああああ!」
突如箱の中から光が溢れだし、空間を白く塗り潰した。
「ここ、は・・・・・・?」
「若者よ」
「あなたは・・・・・・?」
「目覚めたね?若者よ。君の勇気は私を震わせた。この場にはいないが、私の友も君を称賛しているだろう」
「それは嬉しいね。だが、なんで俺はこんなとこに・・・・・・ここがオールスパークなのか?」
「いいや、オールスパークではない。君も私も、オールスパークへは未だ向かえていないのさ」
「とすると、ここは?」
「ここは、言うなれば精神の世界。私が持つ心の中。君に聞きたいことがあって、君を呼んだ」
「俺に聞きたいこと?」
「そう。君は、平和を愛しているかい?なんでもない一日が好きかい?誰かと共に笑い合うことを楽しめるかい?」
「・・・・・・はははっ。なんてこと聞きやがる。好きさ、大好きさ、愛してるさ!隣いるやつなら誰とだって肩を組めるさ!塞ぎ込むより大手を振るさ!悲しむよりも楽しむさ!暗いだけなんてごめんだね!必ずどっかに楽しみがなきゃ、そのうちぶっ壊れるだけさ!何も無いなら作ってやるぜ!」
「わかったわかった。・・・・・・私の目に、心に狂いは無かった。マカダムマカダム・・・・・・」
「ん?あんた今マカダムって」
「さあ行け若者よ!未来は君の手の中にある!我々が信じた明日を生きる者よ!君の明日に光あれ!」
「何!?何なの!?」
光が晴れると、そこには倒れる前よりも逞しい体になったロディマスが立っていた。
その胸は強く光輝き、エアラクニッドとメカサソリ達を後退させる。
「ロディマス・・・・・・その姿は・・・・・・?」
「すまなかったな、マグナス。俺がもっとしっかりしていれば、お前をそこまで・・・・・・」
「それはいいんだ・・・・・・説明してくれ、お前、何が・・・・・・」
「俺にもよく分からない。だが、光の中で、先人と出会った。彼と語らった・・・・・・もう大丈夫。俺は戦える。行くぞ!」
「姿が変わったからってなによ!そんなベタなこと、認めないわ!やれ!」
声を荒らげるエアラクニッドは浮遊しメカサソリをけしかける。
「ロディマアアアアアアアアスッ!!!」
「この声は!」
その時、管理局兵の開けた穴から叫び声が響き、メカサソリ達の注意はそちらに向いた。
「サイクロナス!」
「受け取れ!この星のエネルギー、マグマエネルギーを使って鍛えた剣だ!お前の剣だ!」
穴から投げられた剣は真っ直ぐにロディマスの前に突き刺さり、紅く輝く刃が異様な存在感を出していた。
「俺の、剣・・・・・・」
「そうだ!名はボルカニカス!熱を耐えず発し炎をも放つ、他に類を見ない炎の剣だ!俺の最高傑作だ!」
「最高傑作・・・・・・そいつは良い!ありがたく使わせてもらうぜ!鍛冶屋さんよ!」
鍛冶師サイクロナス。ロストライト号の最も新しい乗組員であり、ロストライトのメンバーの中で唯一の武器の製造の専門家。
そのサイクロナスが最高傑作と豪語する剣を引き抜き、ロディマスは胸の前に構えた。
「それで!どう使えばいい!?」
「感じるんだ!お前が望めば剣は応えてくれる!剣と心を一つにしろ!やれ!ロディマス!」
「そういう感じね!やってやろうじゃないの!」
柄を握る力を強めると、次第に刃の光が強まりマグマのように光がうねりだす。
「くらえ!名付けて、斬撃波!」
剣を横に薙ぎ払うと、その軌道の衝撃波、斬撃波が飛ぶ。
放たれた高熱の衝撃はメカサソリ達を瞬く間に切り裂き、一気に半数を撃破した。
「・・・・・・何をやってるの!とっととかかりなさい!やりなさいよ!」
エアラクニッドの命令に戸惑いつつも、メカサソリ達は一塊になってロディマスを押し潰さんと飛び掛かる。
「フ・・・・・・大体分かったぜ。こいつの使い方がな!」
ボルカニカスで空中に円を描いてから腕を引き、落下してくるメカサソリの塊に向かって突き刺した。
「うおおおおおっ!燃えろ!ボルカニカスッ!」
突き刺さったボルカニカスの刃から炎が溢れ、内部からメカサソリを焼き溶かしていく。
「ハアアアアアアア、ハアッ!」
再び腕を引き、さらに深く剣を刺す。
より深い場所に到達したボルカニカスの炎がついに外に溢れだし、爆発させた。
「な、なんで・・・・・・こんなこと・・・・・・!」
「やってみたらいけるもんだな。流石職人のお手製だ。さて、次はお前だ!エアラクニッド!」
「ありえない。ありえないありえないありえない!こんなこと、あっていい筈がない!」
分かりやすく狼狽するエアラクニッドに剣先を向け、ロディマスは臨戦体勢を崩さない。
「こんなの、もう、もうセンチネル様に合わせる顔がない・・・・・・うぅ、うわああああああああああああっ!」
錯乱したエアラクニッドは変形し、どこかへ飛んでいってしまった。
「行っちまった・・・・・・」
「ロディマス!」
「サイクロナス」
遺跡に降りてきたサイクロナスは、倒れていたウルトラマグナスの肩を持ち立つのを支えた。
「よく俺の剣を扱って見せた。やはりお前は俺の見込んだ通りの男だ。アースに行くと、満足させてみせるという誘いに乗って良かった」
「そう言ってくれると嬉しいもんだぜ」
「ところで、さっきまでずっと胸が光っていた。君が復活を遂げたのと関係があるかもしれない。胸を開いてみてくれないか」
「ああ。こうか?」
ウルトラマグナスの提案を聞き、ロディマスは胸のチャンバーを開いた。
「これは・・・・・・!」
「なんと、綺麗な・・・・・・」
「え?なになに?俺見えないんだけどなにがあるの?」
「ウルトラマグナス、これは」
「ああ。間違いない。これは、マトリクスだ」
「マトリクス!?それって、サイバトロンの司令官が受け継ぐってやつか!?」
「いや、それはエネルゴンマトリクスだ。あれはエネルゴンを凝縮した、言うなれば模造品。これは純正、
「まじかよ!?」
「我々は、とんでもない場所に来てしまったのかもしれないな・・・・・・」
「・・・・・・ちょっと待てよ」
青ざめた顔のままロディマスは思い出したかのように壊れた箱からなにかを掘り出した。
「ロディマス、それは、もしや・・・・・・」
「光の中で聞いたことでよ、もしやと思ったが、これも、もしかして・・・・・・」
ロディマスの手には胸に収まるマトリクスと同じ大きさで少し形の違うものがある。
「・・・・・・だろうな」
「やっべー!俺達やってること墓荒らしじゃねえか!」
「いや、待て。少なくとも胸のマトリクスは自然と入ったものだ。きっと盗難にはならない。きっと」
「信じるぞ!?信じるからな!?」
「そうただの鍛冶師に念押ししないでくれ。俺だってこういう時どうすればいいとかわからんからな」
「そういえば、あのエアラクニッドは、目的を達成するといってあの箱に近づいていた。もしや、管理局はマトリクスの存在を知っていて、これを狙っているのでは?」
ウルトラマグナスの考察に、他の二人は一瞬考え込んだ。
「・・・・・・しゃあ!なんかよくわからないが、俺はマグナスを信じるぜ。このマトリクスが誰のものかは分からないが、管理局は前からきな臭い噂やら悪い噂をよく聞く場所だ。俺達のロストライト号で預かろう」
「そうだな。ここで置いて帰り、いつか管理局の手に渡り・・・・・・となれば寝覚めが悪い」
「そうか・・・・・・なら、早くロストライト号に戻った方が良い。ちょっと・・・・・・暴れすぎたからな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・だな!」
そうして、三人は逃げるように遺跡を後にした。