トランスフォーマーIS   作:ダイダゼノンド

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第五話 日々の中

 デストロン軍海底基地、またの名をデストロンシティの玉座の間から物語を始めよう。

「コグの移し替えは終わったぜ。バイオメガトロン様」

「ご苦労だったな。トリガー。いやしかし、狙撃の名手たるお前が腕を持っていかれるとは」

「全くだ。グレンがスペアパーツを作っていてくれて本当に良かった」

「それにしても、サイバトロン基地がIS学園に本当にあったとはな。贅沢な気はしたが、トリガー、お前を偵察に向かわせて正解だったな。よもや戦力を二つ削るとは」

「まあ、望まれたなら応えるさ。貴方の願いは、俺の支柱だ」

「うむ。良い心がけだ。トリガー、もう下がって良いぞ。得物のメンテナンスに励むが良い」

「仰せのままに。バイオメガトロン様(マイマスター)

 そう言うとトリガーは謁見の間を出た。

「いやにしてもトリガーは本当に出来たやつだ。まさかコグを持ってくるとは。アレは元の持ち主の情報がある程度入っているからメガザラックはそれを読み取って影響を受けてしまうからな。これで静かになるわい」

「大変だ!バイオメガトロン様!」

「なんだスタースクリーム。そんなに慌てよって」

「メガザラックが、メガザラックが!」

「フフフ。静かになったもんだろう。トリガーに感謝しておけよ」

「いや違う!確かに前より声はデカかねえが、ブツブツブツブツボヤきやがって耳障りなことこの上ねえ!」

「な、なんだとぉ!?」

「ここが一夏の家か」

「ああ。自慢かもしれないけど、広いだろ?」

「確かに」

 この日、IS学園はゴーレムⅠの襲撃に関するメンテナンス及び対デストロン用の調整のため、生徒達に一週間の帰宅命令が出されていた。

 一夏はリワインドを連れ、自宅に帰ってきたのである。

「そういえばよ、セシリアとかの留学生はどこに帰ったんだ?日本に家があるわけじゃないだろ?」

「ああ、セシリア達はホテルを用意してくれたって。それか、知り合いの家に泊めてもらうんだとさ」

「へえ、なるほど。だからいるのか。鈴音」

「鈴で良いわ」

 中国からの留学生、鳳鈴音はホテルではなく一夏宅に泊まることを選んだ。余談であるが、これに対して周囲は大変な騒動を起こしたが、"リワインドがいることで仲は発展しないのでは?"という結論に落ち着いた。

 その際セシリアと鈴音はどちらが一夏宅に泊まるかで揉めたが、最終的にじゃんけんで勝敗が分けられた。

「フッフッフ・・・・・・この一週間、一夏との仲を少しでも進めてみせるわ。リワインドがいるから、なんて言い訳は通用させないんだから・・・・・・!」

「安心しろよ。俺は色恋には関わんねえから」

「2人とも何話してるんだ?」

「な、なんでもないわ!とにかく入りましょう!ね!」

 鈴音の催促に応えドアの鍵を開く。

「何にもないけどさ。まあくつろげるとは思う」

「へえ。結構きれいだな」

「ところどころ埃が溜まってるけどな。掃除手伝ってくれよ、リワインド」

「わかってるさ」

「それじゃあ、私、これから一週間ご飯作ろうか?」

「え!良いのか!?」

「もっちろん!」

「お前料理出来るんだな」

「ああ。鈴の中華は絶品だぞ」

「フッフッフ。一夏と離れてからもずっと料理の腕は磨いてきたわ。期待してくれて良いわよ!」

 その夜。

「確かにこりゃ美味えや」

「前よりも美味くなったな!」

「当然でしょ!」

 夕飯として振る舞われた酢豚に一夏とリワインドは舌鼓を打っていた。

「これ、酢豚って言ったっけ?毎日食っても飽きそうにねえ味だ」

「ああ。このレベルが毎日食べられたら幸せだろうな」

「へ、へぇ~・・・・・・それじゃあ、約束もあるし、毎日作ってあげてもいいけど?」

「え?約束?」

「そ、そうよ。料理が上達したら、毎日私の酢豚を食べてくれるって!喜んでくれてたじゃない!」

「ああ!あれか!そりゃ、毎日ただ飯食えるっていうならさあ!」

「は?ただ飯?」

「え?違うの」

「ま、一夏だしそんなもんだわな」

 朴念仁を発揮した一夏に言葉を失う鈴音だった。

「ところでこの前やったっていう会見ってどういう内容だったんだ?俺等見れてないんだけど」

「え?あ、ああ!会見!?気になるの!?」

「確かに見れてないな。セイバートロニアンの存在が認知されて、世界中に知れ渡ったって聞いたけど」

「まあ、だいたいはそんな感じ。会見のとか言ってたのは、サイバトロンとデストロンのこと、目的とか、あとIS学園にサイバトロンがいるってことくらい。多少混乱とかもあったけど、最近はもう聞かないわね。別のニュースで埋もれちゃって」

「まあニュースなんてそんなもんだよな。ごちそうさま」

「お粗末様でした」

「俺、風呂沸かしてくるな」

 食べ終わり空になった食器を台所の流しまで運び、一夏はリビングを出た。

「・・・・・・自然なやりとりで」

「は!」

 一夏と鈴音のやりとりを見ていたリワインドの呟きに、鈴音は顔を赤くした。

「まるで夫婦のそれだ。ま、一夏のことだ。無自覚だろうけど」

「そ、そんな・・・・・・夫婦だなんて・・・・・・」

「おい、戻ってこい。ものの例えだからな?聞いてる?」

「エヘ・・・・・・エヘへへ・・・・・・良いこと言うじゃない!見直したわ!」

「あで!いて、やめろ!」

 嬉しさのあまりリワインドの体を強く叩く。

「夫婦、夫婦かぁ・・・・・・あんなのが毎日・・・・・・えへへ・・・・・・」

「あー、だめだこりゃ。これからは言葉ってのは真剣に選ばなきゃな・・・・・・」

「お湯炊きしたぞ・・・・・・あれ、まだ食べ終わってないのか?」

「ほっといてやれよ」

「そうか?」

「ああ」

ピンポーン

「うん?こんな時間に誰だろ?」

 時刻は夜七時半。

 基本的に来訪などあり得ない時間になったインターホンに、夢心地だった鈴音も現実に戻ってきた。

「俺、出てくるよ。はーい」

 そう言って玄関まで向かい、それを見送った2人が聞いたのは悲鳴だった。

「ぎゃあああ!」

「一夏!」

「何事だ!?」

 急いで玄関の一夏の元まで向かう。

 そこには、腰を抜かした一夏と巨大なネズミの姿があった。

「あ、ああ、あ・・・・・・」

「あの、ちょっと?そんな腰抜かれちゃオイラだって良い気しないんだけど。まあ、珍しいってのは分かるだけどさ〜」

「お前・・・・・・ラットルじゃないか!」

「うえ?・・・・・・ああ!リワインド!やっぱり君だったんだね!」

「え?知り合い?」

「ああ!こいつはラットル!一夏と出会う前にたまにつるんでた、ビースト戦士さ」

「ビースト戦士?なにそれ?」

 リワインドから出てきた単語に鈴音が疑問を呈した。

「ビースト戦士ってのは、トランスフォーマーの種族の一つでさ。俺達みたいな普通のトランスフォーマーとは違って、動物のモード、ビーストモードを持つんだ。無機物だけの俺達と、有機体を持つビースト戦士って違いで覚えられるぞ」

「へぇ。そういえば、セイバートロニアン以外にもトランスフォーマーってよく言うけど、どういうことなんだ?」

「ああ。変形するロボット生命体はセイバートロン星以外でも生まれるからな。トランスフォーマーは総称なんだ」

「へ〜」

「そういえば、なんでここに来たんだ?ラットル?」

「いや~オイラこの辺りの下水道とか森に住んでるんだけどさ、最近街の方でコンボイとかセイバートロンとか聞いて、何事かなーって色々調べてたんだ。そしたら、この家からサイバトロン反応が微弱に出ててさ。そんで来てみたってわけ!にしても驚いたな〜、まさかリワインドがサイバトロン軍に戻るなんて!」

「まあ、俺は下っ端の下っ端みたいなもんだった。ブレードコンボイと話してみて、考えが変わったんだ」

「え!?サイバトロン、入ったのか!?」

「ああ。そういえば言ってなかったな。俺が白式の左手をスキャニングする時、武器を付けてもらったろ?恩ができたもんで、丁度いいから入り直したんだ。ブレードコンボイ直属でな」

「全く、そういうことはすぐ言ってくれよ・・・・・・」

「悪い悪い」

「仲良いな、君達」

 一夏とリワインドのやり取りを見ていたラットルはそう呟いた。

「そうだ、立ち話もなんだし上がってくれ。風呂も沸かしてるし」

「えー?じゃあ、お言葉に甘えて」

「ちょっと待ったー!」

 ラットルが家に上がろうとしたとき、蚊帳の外だった鈴音が叫んだ。

「なんだよ、鈴?」

「なにって、ネズミよ!?失礼だけど、菌とか持ってるかもしれないじゃない!」

「あー、そういうこと。オイラは普通のネズミじゃないからそういうのは大丈夫だけど、これなら良いかな?変身!」

 変身。そう言うとラットルは人型、ロボットモードに変身した。

「これ、スリッパね」

「はいはいー。取り敢えずお風呂入って良い?流石にお湯で体洗いたくてさあ」

「丁度湧いたし、一番風呂だな」

「・・・・・・」

 さも当然のように振る舞う一夏に唖然とし、しばらく鈴音は玄関から動けなかった。

 翌朝、自室のベッドで一夏は目を覚ました。

「あれ、もう朝か・・・・・・」

「うん・・・・・・重い・・・・・・」

「むにゃ・・・・・・チーズはもういいって・・・・・・それより野菜・・・・・・むにゃ・・・・・・」

「ああ・・・・・・眠い・・・・・・」

「うう・・・・・・重い!」

 ベッドの上でリワインドの上に一夏とラットルが乗っかっていたが、耐えられなくなったリワインドにベッドから落とされた。

「あいた!?なにするのさー、せっかくいい夢見てたのに」

「お前ら、人の上に被さりやがって・・・・・・」

「悪い悪い」

「おーい朝だ・・・・・・なんだ、みんな起きて・・・・・・て、まだいたんだ」

「う~ん、ネズミだからってそんな邪険にしなくてもいいのに。ほら、オイラのビーストモード、とってもキュートでしょう?」

「うっさい。朝ごはん作ったから、リビング来てね」

「ああ。ありがとな」

 リビングのテーブルには4人分のご飯、味噌汁、鮭の塩焼きが置かれていた。

「あれ、なんだ!オイラの分もあるじゃん!」

「そりゃ、出ていくって言われてないしね」

「でもさっきまだいたって」

「一夏の部屋にって意味。別の部屋に移ったと思ったら・・・・・・」

「あ、そういうこと」

「取り敢えず座って座って。冷めちゃうから」

 食卓を囲んだ4人はいただきます。の一言とともに箸をとって食事を始めた。

「ラットルお前、箸使えたんだな」

「ネズミは器用なのよ」

 朝食はあっという間に完食した。

「あ、食器は俺が洗うよ」

「そんな、悪いわよ」

「いやいや、こっちのほうが色々やってもらってるからさ」

「そ、そう?」

「仲良いね〜、ヒューヒュー!」

「あれで付き合ってもないんだぜ。不思議なもんだよな」

「そこの2人!うるさいわよ!」

「ははは」

 傍から見ればこの4人は家族のように映ることだろうが、鈴音はそれに気づくことはなかった。

「そうだ。ラットル、これからどうするんだ?」

「どうするって・・・・・・うーん。どうしよ」

「なんかないのか?森に帰るとか、旅に出るとか?そういうニュアンスだと思うが」

「いやー、オイラデストロンが嫌になってアースに来たからさ。もともと気ままにやっててさ。改めてどうするともなると・・・・・・」

「待って。あんたデストロンだったの!?」

「うん。オイラだけじゃない。ビースト戦士は殆どがデストロンなんだ。サイバトロン側は、ビースト戦士への風当たりがキツくてさ。たまにサイバトロンで生まれる奴もいるけど、大体のやつはデストロンに入るんだ」

「サイバトロンは良い意味でも悪い意味でも思想が強い奴が多い。それで嫌気の刺すやつはごまんといる。俺みたいな、な」

「デストロンだっておんなじさ。バイオメガトロンだったり、それ以外のリーダーについていけなくなったり、しんどくなったりして逃げ出すんだ。オイラもその1人」

「デストロンの、バイオメガトロン以外のリーダー?」

「うん。オイラはロックダウンてやつの下にいた。あいつは傲慢で貪欲でね。ついていけなくなったんだ」

「辛かったな・・・・・・ラットル・・・・・・」

「へへ!まあ、過去は過去さ!とにかくさ、これからどうするかを考えなくちゃ!オイラはリワインドみたいに日常に溶け込むのは難しいだろうけど、なにか、案はない?」

「そういうことなら、この家にいればいいよ」

「一夏、あんた何考えて・・・・・・」

「だって、行く当てもないし、目的もないんだろ?じゃあ、丁度いいからこの家を管理してもらおうかなって」

「いや、そんな・・・・・・オイラが言うのはなんだけど、不用心すぎない?オイラが絶対に安全とは限らないわけだし・・・・・・」

「大丈夫。俺はラットルを信じてる」

「そんな無茶苦茶な・・・・・・」

「じゃあサイバトロンにつくか?」

「たぶん今人材は大募集中だと思うぞ」

「え、ええ・・・・・・サイバトロンって言ってもなぁ・・・・・・」

「少なくともまだ俺達はこの家にいるからさ。ゆっくり考えれば良いよ」

「いや、あー、うん・・・・・・そうだね。お言葉に甘えさせてもらおうかな。オイラ、この家にいて良いかい?」

「ああ。どこに行こうか、何をしようか。決まるまで、決まったとしても、この家にいて良い。君が悪いやつじゃないっていうのは、昨日の夜で分かったから」

「一夏・・・・・・一夏ぁ!ありがとうぅ〜!」

「は?昨日の夜?」

「男の秘密だぜ。鈴」

 またも蚊帳の外に置かれた鈴音だった。

 宵闇の中、歩を進める。

 デストロンの基地、太平洋海底にあるデストロンシティからおよそ9000km以上。ドイツ軍基地。

 デストロン軍防衛参謀レーザーウェーブは、ドイツが所有するISを奪取し解析するため、海を渡りドイツ軍まで赴いたのだ。

「・・・・・・どこからでも来るが良い」

 暗闇の中でも敵の気配を察せられるのは、レーザーウェーブが自らに改造を施し、もともと優れていたアイセンサーの他に聴覚機能を増強したためである。

「・・・・・・およそ10人。一個小隊分だな。なめられたものだ」

「かかれぇ!」

「!」

 隊長と思われる女声が響くと思うと、暗闇から光弾が放たれる。

「この程度・・・・・・安全装置(セーフティ)か?威力が低いにも程がある」

 光弾を避けずに受け切り、左手の光線銃を発砲し敵を撃ち抜いていく。

「怯むな!行け!行け!行け!」

「感情的だな。破綻している」

 隊長からの指示を受けレーザーウェーブに突撃するIS部隊員達を躱す。

「仮にも指揮を執る立場がこれでは、勝てる戦も負け戦だな」

「うあっ!?」

 突撃していたうちの1人を掴み、声のした方向へ投げる。

「このっ!」

「ふっ・・・・・・!」

 レーザーウェーブに殴りかかる隊長の攻撃に、一瞬怯む。

「やあーっ!」

「ぐうっ!これは、電撃か・・・・・・!」

 左腕から放たれたプラズマ手刀を喰らい、レーザーウェーブはさらに後退する。

「驚きだ。まさかここまでの強者がこの星にいたとは。それほどの強さ、他者との共同に慣れていない。いや、拒んでいるのか?そこまでの強さを持つ隊長ならば、隊の錬度も高いはず」

「・・・・・・私が、強い?」

「そうだ。私はこの星に来て、この星の存在の中で、現状貴様が最も強者だ」

「強い・・・・・・強い・・・・・・いや!騙されは、しない!」

「なにを?」

「くらえ!」

 肩部のレールガンにエネルギーを回し、暗闇の中に淡い光源が現れる。

「うあああああっ!」

「トランスフォーム」

 放たれた超電磁砲(レールガン)は真っ直ぐにレーザーウェーブを狙うが、レーザーウェーブは四脚戦車に変形して回避。ドリフトの要領で背後に回った。

「トランスフォーム」

 背後に回りロボットモードに変形し地面に押さえ込む。

「くっ!離せ!」

「許せ。本来ならうつ伏せに押さえはしないが、今は任務がある。強敵よ」

「くうっ・・・・・・強敵だと・・・・・・やめろ、私を、貶めるな・・・・・・私は、強くなど無い!強ければ、私は、成功作なんだ、失敗なんかじゃないんだ!」

「成功?失敗?何の話かは知らないが、私はデストロンの幹部。食らいつけるならばそれ相応の実力があるということだ」

「実力・・・・・・なんて・・・・・・」

「さて、話はもういい。私はISについて知りたい。2、3機渡してもらおう」

「はあ・・・・・・隊長、エマージェンシー・・・・・・本部に・・・・・・もうすぐ、来ます・・・・・・」

「っ! う、らあっ!」

「むっ!?」

「かあっ!」

 隊員から緊急要請をしたことを伝えられ、レーザーウェーブの拘束を振りほどこうと体を回転させるも、仰向けの状態で押さえつけられてしまう。

「全く、まだここまでの余力を残している、と、は・・・・・・」

「はあ、はあ、はあ・・・・・・」

 その時、基地内の照明が一斉に点灯した。

「な、なんと・・・・・・」

「あ、ああ・・・・・・」

 軍人達が集まり、目にした光景は、ロボットがISを着た少女を地面に押し倒している光景だった。

「美しい・・・・・・」

「な、なんだ、この、これは・・・・・・」

「・・・・・・名前は?私は、レーザーウェーブ」

「わ、私は、ラウラ、だ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

「ラウラ、ラウラか・・・・・・」

「そこのお前!今すぐ正座して手を上げろ!」

 勲章を胸に着けた上官が声を上げるも、それを2人は聞いていなかった。

「ラウラ、その、デストロンに来ないか?我々は人材を欲して、いや、決して君を戦力でしか考えていないわけでは・・・・・・」

「いや、戦力として役立つなら、それは、嬉しい・・・・・・」

「ええい!発砲許可する!」

 痺れを切らした上官が部下たちに銃撃を開始させた。

「むう、空気の読めんやつらだ」

 体に鉄砲玉が当たり、現実に引き戻されたレーザーウェーブは静かに立ち上がり、上官の方へ左腕を向ける。

「・・・・・・」

「な、何をする気だ」

「警告する。これは威嚇射撃だ。二度目は当てる」

 そう言うとレーザーウェーブは誰もいない地面を射撃し、コンクリートを爆ぜさせた。

「あ、ああ・・・・・・」

「はあ・・・・・・要求する。ISを一機、我等デストロンに献上せよ」

「そ、そんな頼み、聞けるか!」

「要求する。これは依頼ではない。すでに威嚇は済ませたぞ」

「く、うぅ・・・・・・」

「・・・・・・妥協しよう。型落ちでも構わん」

「・・・・・・倉庫にある第一世代を一機持ってこい」

「しかし!」

「やつは・・・・・・本気だ」

「あ、は!」

 命令された部下は慌てて走りっていった。

「持ってきました。これを」

 車で運ばれた第一世代ISを手に持ち、レーザーウェーブは品定めする。

「・・・・・・よろしい。これで十分」

「良かった・・・・・・」

「・・・・・・ラウラよ、また会える日を。トランスフォーム」

 そう言い残すとレーザーウェーブはロボットモードに変形し、どこかへ走り去った。

「レーザー、ウェーブ・・・・・・胸が、心臓が早く・・・・・・また、会いたい・・・・・・」

「うわあ~・・・・・・なんか、すごい変わったな・・・・・・」

 一週間が経過し、ラットルに家を任せIS学園に戻った一夏と鈴音。モノレールの車窓から2人の目に飛び込んだのは、変貌したIS学園だった。

 面積が約3倍にまで広がり、学園を囲むように配置されたレールの上に戦車のようなマシンが常にその上を動いている。

 中央には独特の形をした建物。その後ろにはロケットの発射台のようなものとロケット。

 透明な道路が空中に作られ、寮やアリーナ等の施設を繋いでいる。

 滑走路やヘリポートが点在し、線路も見える。

 モノレールも増設されていた。

「確か、この後はホールに集まるんだったよな?」

 ホール。IS学園にある屋根付きのアリーナ。いわゆる体育館である。

「ええ。荷物を部屋に置いたら9時までにって。端末に地図が送られてるはずよ」

「本当だ」

 スマートフォンの連絡アプリを確認すると、確かに地図が配信されていた。

「もう着くわね。それじゃ、また後でね」

「ああ」

「そうだ、一夏。俺はなんかブレードコンボイに呼ばれたから一旦離れるぜ」

「そっか、またな」

 モノレールはIS学園に到着し、人流に乗って一夏達は寮へ向かう。部屋で合流した箒と軽く挨拶をし、足早にホールへむかった。

 ホールには前から1年、2年、3年の順で、横からクラス順に並んでおり、9時前に整列が完了した。

「全員揃ったな?では、全校集会を始める。今回はこの新しくなったIS学園についての説明が主になる。心して聞くように」

 織斑千冬がステージで説明。その後、スクリーンにブレードコンボイが映し出された。

「やあ。私は、サイバトロン軍総司令官。ブレードコンボイ。これから新しくなったIS学園、またの名をスクランブルシティ。私達サイバトロン主導で作り上げた防衛都市であるこのスクランブルシティについて説明するよ」

 スクリーンに映ったブレードコンボイは画面を操作して新生IS学園、スクランブルシティの全体図を表示した。

「まず説明するべきは交通手段についてだろう。今まではモノレールによって本土と繋がっていたが、今回橋を架け、我々トランスフォーマーの移動、及び物資運搬をスムーズに行うことができるようにした。以降この橋は連絡橋と呼称する。モノレールは残してある。悪いが生徒諸君にはモノレールを使って欲しい。次に学園を囲うこのレールと、その上を動くマシンについて。これは迎撃システムの一つであり通信装置でもある。戦車のような形をしているのは、この形が一番ちょうど良かったからだ。次に中央にあるこの施設。これはメトロフレックスと言ってね、私達サイバトロン軍の本拠地になる。普段は許可された者しか入る事ができない事を覚えておいてくれ。そして、その後ろにあるロケット。これも迎撃システムの一つだ。機銃やミサイルを搭載し、学園全体を包むバリアを展開する事もできる。最後にこれらの滑走路や道路、線路についてだが、これは私達トランスフォーマーが移動するためのものだ。学園面積が約3倍程大きくなったため、移動用のバスや電車を走らせる予定だから、生徒諸君も利用してもらう事になるね。これで私からの説明は以上だ。これで集会も終わりになる。1年1組から退場してくれ。それと、現状専用機を所持している1年生。織斑一夏、セシリア・オルコット、鳳鈴音の3名は織斑千冬先生のところに集まってくれ。それでは」

 スクリーンに映された映像が消え、職員達の指示で生徒達が退場を始めた。

「よし、3人揃ったな。行くぞ」

 他の生徒達が退場していく中、織斑千冬に連れられた3人はホールを出て学園の中央スクランブルシティに向かう。

「ここだ」

 トランスフォーマー達が入る車両用の入り口から入り、人間用の階段、エスカレーター、エレベーターを経由して司令室に辿り着いた。

「待っていたよ。一夏君、セシリア君、鈴音君」

「ブレードコンボイさん、あ、リワインド!」

「待ちくたびれたぜ一夏」

 司令室にはブレードコンボイと副官マイスター、リワインドがいた。

 そして

「ホントホント。お姉さん退屈で仕方なかったわ~」

「貴女は・・・・・・」

「せ、生徒会長!?」

「ええ。はじめまして。私は更識楯無。生徒会長よ」

 IS学園生徒会長、更識楯無がいた。

「彼女はこの学園の生徒をまとめ上げる存在だ。これから大切な話をするからね。念の為同席してもらっているんだ」

「そ、そうなんですか」

「そろそろ本題に入ったらどうだ?時間はあるが、そう長引かせるようなものでもないだろう」

「そうだな。千冬君。実は、君達にはスカウトをやってもらいたい」

「スカウト?」

「正確に言えば、説得とサイバトロンの戦力増強だな。この星にはサイバトロンにもデストロンにも属していない、かつては属していたが抜けた存在が多くいる。我々サイバトロン軍はデストロンよりも数が少ない。それに、セイバートロン星から人員を呼ぶのにも時間がかかる。そこで、現地調達というわけだ」

「そうか、リワインドやラットルみたいな・・・・・・」

「そういうこと。一夏は誑しだからな。ピッタリだろ?」

「誰が誑しだよ。誰が」

「ですが、そう簡単に見つかるのですか?リワインドさんから察せられますが、普段は姿を隠しているのでしょう?」

「そう。だからこそ学園をスクランブルシティとして改良したわけだ」

「というと?」

「学園の外周を回るマシン。アレは迎撃システムだと説明したが、トランスフォーマーを探知するソナーの役割も持っているんだ。我々はセイバートロニアンだけではない、変形できるロボット生命体が持つ魂たるスパークから発せられる微弱な電波を、スパークシグナルと名付けた。このスパークシグナルをキャッチし、君達にトランスフォーマーの元へ向かい、サイバトロン軍への加入を促して欲しいんだ」

「本当はもう1人専用機持ちはいるんだけど、まだ完成してなくてね。しばらくは君達3人に任せることになるわ」

「でも、俺達は学生だし、何よりまだ経験だって・・・・・・」

「経験が無いからだ。ちょうどいい機会だろう?」

「そんな・・・・・・」

「安心しろ。野良トランスフォーマーのスカウトに行くときは公欠にしてやる」

「それは安心ですが・・・・・・」

「君達の懸念もよくわかる。みんながみんな優しい訳じゃない。戦闘に発展することだってあるだろう。赴く際はサイバトロン戦士と同行してもらう。これは、私達トランスフォーマーだけでは、説得するにもトラウマを思い起こさせるかもしれない。君達のような、我々の事情に一切の関係が無い者の力を借りなければ、上手くいかないかもしれないんだ。卑怯なのはわかっている。この通りだ」

 そう言うとブレードコンボイは膝をつき土下座した。

「あ、頭を上げてください!なにもそこまでしなくても」

「・・・・・・そうはいかない。これはケジメだ。卑怯に走る私への」

「一夏、この人はこういう人だよ」

「リワインド・・・・・・責任感が強いんだろうけど・・・・・・」

「ねえ、やっても良いんじゃない?」

「そうですわね。これも良い経験ですわ」

「・・・・・・そうだな。ここまでされて断ったら失礼だもんな」

「みんな・・・・・・!」

「話はまとまったわね。それじゃ、私は席を外すわ」

 楯無は司令室を出ていった。

「・・・・・・それでは、君達のISに、これを付けてもらいたい」

 それは、サイバトロン戦士達がつけているマーク。インシグニアだった。

「これは君達の所属を示す以外にも、もしもの時のSOS発信装置にもなっている」

「どこにつけてもいいの?」

「ああ。見える場所ならどこでも良い」

「どうする?ここでつけてくれれば、我々も確認できて助かるんだが・・・・・・」

「それじゃあ、ここでつけましょうか」

 マイスターの言葉に応え、3人はISを展開。

 渡されたインシグニアを一夏は肩部の装甲に、セシリアは脚部装甲に、鈴音は胸部装甲に取り付けた。

「よし。それでは、今日はこれで解散だ。これから出動してもらうときは放送で呼ぶ。部隊の名称は・・・・・・スカウトチームかな。よろしくね!」

「「「はい!」」」

 こうして、サイバトロンスカウトチームが結成された。

 しかし、司令室の窓からその様子を覗く影が一つ。

「ブ~ン。良いこと聞いちゃった〜」

 デストロン軍団のワスピーターだ。

「この情報を持ち帰れば、僕ちゃん大手柄だブ~ン。早速あのぐるぐる回ってるやつに発信機を取り付けよ〜。こんな虫さん一匹通すようじゃ、サイバトロンもまだまだだね。よ~し。これで出世間違いないブゥ~ン」




オリキャラとの恋愛という展開はかなり難しい。大変なものに手を出してしまったと思っています。
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